寄付文化は日本に根づくか?

うかつにも今日まで知らなかったのですが、
昨年(2010年)末に、日本初となる

『寄付白書 2010 - GIVING JAPAN2010』
(日本ファンドレイジング協会)

が発行されていたんですね。

ネットでちょっと調べてみました。

同白書では、日本の寄付とボランティアの全体像を
把握するために、大規模な全国調査を実施した結果が
まとめられているようです。

それで、日本全体の年間寄付額についてみると、
総額で1兆円強でした。内訳としては、

・個人寄付:5500億円
・法人寄付:4900億円

となっています。


さらに、上記の明確な寄付行為以外に、
個人が「会費」として年間3700億円余りを
払っています。

私自身も数年前から、
アジアの途上国を支援する某NPOの会員になり、
わずかな会費を出していますが。

こうした会費も、実質的な寄付行為とみなすことが
できるでしょうから、日本人は知られざるところで
結構寄付を行なっているということですね。

たまたまメディアで取り上げられて、
注目を集めることになった「伊達直人を名乗る人たち」
ばかりほめていてはだめなんです。(笑)


まあ、日本人もそれなりに寄付をしていたとはいえ、
個人寄付については、米国のわずか40分の1の規模だそうです。
(米国の個人寄付には一部資産家の莫大な寄付が
 含まれているでしょうけど)

人口比を考えても、日本人の寄付額は圧倒的に少ないですね。
もちろん、だからと言って米国と同じ水準を目指すべき、
という競争的な発想はしたくないですけど。


さて、「平等意識」が比較的強い日本の文化の
視点からみると、日本人は相対的に「寄付行為」が
苦手だと思います。

お互いに助け合うということはOKでも、
あからさまな「寄付」は、心理的な上下関係を
生み出してしまうからです。

古くからそれほど明確な社会階級が存在しなかった
日本では、「一方的な慈恵行為」は、するほうも、
されるほうもあまり好きではない。

一方、欧米の階級意識はかなり根強いものがあります。

「ノブレス・オブリージュ」
(貴族などの、地位や財力、権力の高い者は、
 社会に対して相応の責任を果たすべきという考え方)

という言葉があるように、自分よりも下位のものに
恵むことは当然という考えが根底にあるようです。

また、寄付をすることは、
彼・彼女の自尊心を高めることでもあるのです。

以前、某日本人が書いたエッセイに書かれていたのですが、
外国人の知り合いが、街中でお金を乞うているホームレス
の人などに気軽に小銭を渡しているのを見て

「どうしてそうしたことをするの?」

と聴いたら、

「だって、気分がいいじゃないか!」

と応えたというのです。

この回答には、「見下している」とまでは
言いませんがちょっとした「優越意識」が感じられますよね。

私たち日本人には、なかなか理解しにくい
感覚ではないでしょうか。

日本人の寄付が欧米に比べて圧倒的に少ないのは
このあたりに起因するところがありそうです。


ただ、逆に言えば、伊達直人現象に見られたように、
寄付者が誰かがわからなければ抵抗がないわけですから、
インターネットなどを通じて、気軽に、ひそかに寄付が
できる環境が整いつつある今後は、日本人の寄付行為も
さらに増加していくことにはなるかと思います。


*日本ファンドレイジング協会 Webサイト
http://jfra.jp/

投稿者 松尾 順 : 10:15 | コメント (0) | トラックバック

コミュニケーションは'BIG WHY'から始めよ!

『Start with Why: Hwo Great Leaders Inspire Everyone to Take Action』

の著者、Simon Kinek(サイモン・キネック)氏が、

「TED(Technology Entertainmet Design)Conference」

で行なった講演の動画をご覧になったことがありますか?

キネック氏の話は、まさにInspiring(示唆に富む)もの。
大変面白く、かつわかりやすくので必見ですよ。


さて、彼は、スティーブ・ジョブズや、
マーティン・ルーサー・キングといった
偉大なリーダーたちはまず、

「Why(なぜ)から語っている」

と述べています。

そして、Whyを実現するために

・How(どうやって)
・What(何をするか)

という順序で話を進めるのです。

つまり、偉大なリーダーは常に、
次のような順序で語っているのです。

Why ⇒ How ⇒ What

実際、スティーブ・ジョブズは、

「私たちのライフスタイルに革命を起こす」

という'Why'を印象的に語った上で、

・美しくデザインされて使いやすい(How)
・iPod、iPhone、iPadといった製品を(what)世に送り出す

と続けることで、人々の熱狂と共感を起こすことに
成功していますし、結果として同社製品は世界中を
席巻していますね。


一方、世の中に出回っている多くのメッセージを
見てみると、'What'から始まっていることがほとんど。

・こんな製品を出します(What)
・これはこんな設計に基づいています(how)

しかも、なぜ、その製品、あるいは企業が、
世の中に存在する価値・意義があるのか=Whyまで
きちんと語られていることがありません。

モノが欠乏していた時代ならともかく、
現代は、'What'から語り始めても人の興味・関心を呼び、
また、購買意欲を喚起させることはできないのです。


企業のコミュニケーションは、
「Whyを語ること」から始めなければなりません。

それは、企業や製品の社会における存在価値・意義
をまず相手に理解してもらうことです。

なぜなら、人々はもはや、'Why'が明確でない企業、製品
を受け入れてくれないからです。


ただし、キネック氏の主張に補足させてもらいたい
のですが、単なる'Why'では駄目だということ。

'Big Why'であることが望ましいということを強調したい。


'Big Why'とは、一個人の生活を超えて、
地域全体、あるいは国全体、世界全体、さらには
宇宙全体に変革・革命を起こすというレベルまで
'Why'のレベルを高めたもの。

まあ、「宇宙全体」は多少オオゲサとしても、実際、

世界全体の大問題=グローバル・ビッグ・イシュー
(地球温暖化、熱帯雨林の消失、旱魃・飢饉等)

を企業経営の主軸に沿え、これらの解決に寄与すること(Why)
を最初にメッセージとして前面に出しているグローバル企業
が増えつつあるのです。


フィリップ・コトラーの『マーケティング3.0』では、
マーケティングの目的の変遷を次のように示しています。

マーケティング1.0:製品を販売すること
マーケティング2.0:消費者を満足させ、保持すること
マーケティング3.0:世界をより良い場所にすること

マーケティング3.0でもやはり、

'Big Why'
を目的に据えなければならないとしているのですね。


あなたの会社・商品は、'Big Why'から語っていますか


TED Conference:
Simon Sinek: How great leaders inspire action

投稿者 松尾 順 : 13:23 | コメント (0) | トラックバック

ソーシャルネットワークと共感力

女性の高い共感力は、近代よりもはるかに長く続いた
原始・狩猟採集時代に培われたと言われています。

男性が狩りに行っている間、女性たちは集落に残り、
近くの木の実を拾ったり、家事・育児をやったりといった
仕事を協力しあってやっていました。

こうした毎日では、女性同士は極めて密接な関係性が
あり、濃密なコミュニケーションが要求されるため、
相手の表情、言葉遣い、態度などから相手の気持ちを
的確に推測する力=共感力が高まったのです。

ちなみに、共感力に加え、原始時代の生活が影響している
と考えられ、今も根強く見られる女性固有の心理としては
以下のようなものがあります。

・つながっていたい
・ステイタスの差を最小限にしたい
・感情や弱みをみせる
・話すことで他者とつながる
・他者を助けることで自分の力を感じる
・協力のほうが楽しい
 
(出所:『女性のこころをつかむマーケティング』)

さて、女性の社会進出、すなわち、男性文化が根強い
企業で、女性が男性に伍していこうとする中で、女性の
共感性が低下していく可能性があるでしょう。
なぜなら、企業社会では、女性が本来好まない、

「競争」的発想をどうしても意識しなければならず、
共感性が高すぎると、競争を回避してしまいたく
なってしまうからです。

しかし、一方で、ソーシャルネットワークの浸透によって、
女性、そして男性の全般的な共感力を高めることに
つながる可能性があります。

ソーシャルネットワークは、そこでうまくやっていくためには
高い共感力を必要とします。お互いに認め合う、相手の気持
ちをわかりあうということができないと孤立してしまう。

孤立するのであれば、ソーシャルネットワークに所属している
意味がありません。

しかも、抽象性の高い「言語」主体のコミュニケーションから
相手の心理を的確に読まなければならない。これは相当負荷
の高い共感力養成トレーニングになるのです。
(ですから、すっかり疲れて果ててしまったり、十分な共感力が
 身に付かず、ソーシャルネットワークから離脱してしまう人も
出てきます)

というわけで、全般的に言えば、ソーシャルネットワークの浸透
により、私たちはますます高度な「共感社会」に向かっていると
言えるのではないでしょうか。

投稿者 松尾 順 : 17:09 | コメント (0) | トラックバック

フェイスブックの浸透を加速させるのは「疎外感回避」

このところ、昔の職場の元同僚たちと、
数年ぶりにフェイスブック(以下「FB」)上で
芋づる式に‘再会’し、

「同窓会でもやりましょう!」

という話が進んでいます。

皆さんの間でもこんなこと起きてませんか?

FBのメッセージ機能、イベント機能を使って、
日時・場所を簡単にすり合わせできるので便利ですね。


さて私は、FBは日本でも急速に浸透すると確信していますが、
それは、たくさんの人とつながることができて、また、
便利な機能が使えるといったポジティブな理由からだけでは
ないと感じています。


FBをやっていないと、FB上だけでなく、
リアルな状況でも自分だけ仲間はずれにされるかもしれない。

そんなネガティブな「疎外感」を回避するために、
(意識的にも無意識的にも)皆始めざるを得ないと
感じています。

こんな疎外感は従来のSNSでは、
たぶんほとんど感じることがないですよね。

‘君、mixiやってないの?’

‘君、FBやってないの?’

では重みが違う。

基本的に匿名ベースであり、ヴァーチャルな付き合いが
多い従来のSNSでは、リアルとある意味分離している
おかげで、リアルな疎外感はそれほどありません。

自分だけ、mixiやってなくても平気なのです。


ところが、実名制のFBはリアルの延長であるため、
FBでの存在感がリアルな存在感とダイレクトに
結びついてしまう。


実際、冒頭に述べた同窓会も、
FB上にいない人には声をかけていません。

別の方法で連絡取れないこともないのですが、

「めんどくさいし、まあいいか」

となってしまうわけですね。


したがって、逆の立場、つまりFBやってない人に
とっては、知人・友人がなだれをうってFBを始めたら、
疎外されないために自分もやるしかない。

いわゆる「ネットワーク外部性」による利便性向上
に加えて、「疎外感回避」のためにFBの利用者は
どんどん増えていくことになるというわけです。


もちろん、その影には「FB弱者」を生み出すという
大きな負の側面がありますが。

「FB弱者」についての議論はまた改めて。

投稿者 松尾 順 : 13:42 | コメント (4) | トラックバック

カチッ・サー理論:自動車販売会社の取り組み事例

「カチッ・サー理論」とは、カセットレコーダーの
スイッチを「カチッ」っと入れると「サー」とテープから
音が流れ出すように、外部からの働きかけに対して、
人が無意識に、つまり‘自動的’に反応してしまうパターン
(=心理的スイッチ)を理論化したものものです。

昨日ご紹介したように、
ビューコミュニケーション(NPO法人)では、
「カチッ・サー理論」に基づく心理的スイッチ
(同法人では、「対人関係心理」と呼んでいます)と
して以下の10項目があるとしています。

1 返報性
2 コミットメント
3 容姿
4 類似性
5 お世辞
6 協同性
7 連合性
8 社会的証明
9 権威性
10 希少性

それぞれの解説は昨日のブログをご覧ください↓
http://www.mindreading.jp/blog/archives/201102/2011-02-03T0944.html

今日は「カチッ・サー理論」を業務の現場に
応用している自動車販売会社(セールスパーソン対象)
の取り組み事例をご紹介します。

ただし、取り組み始めてからまだ数ヶ月が
経過したばかりであり、明確な成果報告が
行なわれたわけではない点をあらかじめ
おことわりしておきます。


神奈川県の大手自動車販売会社、K社には、
いわゆる「セールスパーソン」が約500人います。

K社では、このうち30人のセルースパーソンを選抜、
彼らの顧客各30人に対してアンケート調査を実施し、
自分の担当セールスパーソンについての評価を
してもらいました。(回収サンプル数合計900件)

評価項目は、上記心理スイッチの10項目です。
アンケートで得られた心理スイッチの評価点と、
各セールスパーソンの販売台数との関係性を
分析したのです。


その結果、セールスパーソンの販売力と
最も正の相関が高かった上位3項目は以下でした。

1 類似性
2 多数性(社会的証明のこと)
3 お世辞

「正の相関が高い」というのは、
上記の項目に対する評価が高いセールスパーソン
ほど、車をたくさん売っているということです。


第1位の類似性というのは、この場合、
顧客とセールスパーソンになんらかの共通点が
あることです。生まれた場所や出身学校が同じ
だとか、どちらもサッカーや野球が好きだとか。

おそらく、優れたセールスパーソンは、
お客さんとの会話を通じて共通点をたくさん
見出し、それを会話のネタとすることで
好意度を高めているのでしょうね。


第2位の多数性とは、

「今これが一番売れています」

といった他の人の評価を伝えることです。

「他の人も買っているのならきっといいんだろうな」

といった、「多数派の意見・行動」に同調しがちな
人間心理をうまく刺激するのがうまい人ほど、
販売力があるということになります。

そういえば、先日の新聞記事で読んだのですが、
ビックカメラの販売員の方の話によると、
店頭セールスのコツの一つとして、

「最近売れている商品はですね・・・」

と周囲の人にも聴こえるように大きめの声で
説明すると、自分の周りにたくさんの人が
集まってきて、芋づる的にたくさん商品を
売ることができるそうです。

皆、自分以外の人が何を買っているか、
つまり、売れ筋って気になるものですよね。


第3位のお世辞。

多少薄っぺらいお世辞だとしても、
言われた方の気分は悪くないものですよね。

優秀なセールスパーソンは、
上手にお客さんを褒めること、つまり
「持ち上げること」ができる。

そうしてお客さんの気分をよくさせて、
クロージングに持ち込めるということでしょう。


以上の分析結果を読んだ方の中には、

「なんだ、どれも当たり前のことだよね・・・?」

と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、大事なのは、売れるセールスパーソンと
売れないセールパーソンの違いが何かを明確に把握し、
的確な改善施策を打てるようになることなのです。


実のところ、トップセールスの多くは、

「なぜそんなにキミは売れるの?」

と聴かれてもうまく言葉で説明できないのです。

「なぜだか売れちゃうんだよね」

としか言えない人が多い。

従来は、結局「センスの良し悪し」で
片付けられていたことも多かったわけです。

ですから、セールス研修でも、せいぜい礼儀作法や
セールストークのロールプレイをやるだけ。

「カチッ・サー理論」のような、対人関係心理に基づく、
効果的な販売増につながるセールス方法を学ばせること
はほとんどやられてこなかったというのが実情なのです。


さて、話を元に戻しますが、K社では、
調査結果を元に、カチッ・サー理論に基づく
セールス活動のあり方についての研修を開始し、
心理スイッチに関連した販売ノウハウのあぶり出し、
その共有化を図っているところです。

前述したように、まだ成果を検証できるところほど
時間が経過していませんが、大きな期待をかけている
そうです。

というのも、自動車自体で明確な差別化を図ることは
もはや難しく、結局のところ、

「セールスパーソンという人間をまず売ること」

ができなければ、自動車は売れないという
厳しい現実があるからです。

投稿者 松尾 順 : 13:59 | コメント (1) | トラックバック

カチッ・サー理論とは?

昨日(2/2)午後は、
ビューコミュニケーション(NPO法人)が主催する

[ECS研究会 実証実験 成果発表会]

に出席してきました。

同法人は、顧客満足度指標(CSI)をはじめとする
各種評価事業を行なっている団体です。


‘ECS'とは、拡張された顧客満足度の意味です。
(Extended Customer Satisfactionの略称でしょう)

従来のCSの概念ではカバーできない領域を指標化
しようとする試みのようです。


さて、昨日の成果発表会は、

1部:売上の科学
2部:顧客の心をつかむ科学

の2部構成でした。


1部の「売上の科学」は高度な分析方法を用いた
実証研究の話でしたので割愛します。

2部の「顧客の心をつかむ科学」について
簡単にご紹介したいと思います。


顧客の心をつかむ科学は、

『影響力の武器』

で提示された「カチッ・サー理論」が
下敷きとなっています。

これは、スイッチを「カチッ」っと入れると、
「サー」と音が流れるカセットレコーダー
(喩えが古いですけど、まだCDが普及して
ない頃に書かれた本なのです)のように、
外部からの働きかけに対して、人が無意識に、
つまり自動的に反応してしまうことを意味
しています。

そして、このカチッとスイッチを押すことの
できる働きかけの主なものが末尾に示した
10項目です。


実証実験では、この「カチッ・サー理論」を
実務の現場で実際に活用してその効果を
検証することが目的になっています。


今回は、以下の2組織の取り組み事例の
発表が行なわれました。

・自動車販売ディーラー(セールスパーソン)
・病院(看護士)

上記2組織の取り組み内容は、
明日明後日に続編としてご紹介しますね。


今日は、ビューコミュニケーションズが
指標として設定している「カチッ・サー理論」
の10項目がどんなものかを示しておきます。

------------------------------

1 返報性

受けた恩義に対しては、
将来報いなければならないという心理。

最初に無料プレゼントをもらってしまうと、
その代わりになにか買わないと悪いと感じて
しまうようなこと。

2 コミットメント

自分の態度や行動が「一貫していること」
は望ましいとみなす心理。

一度、小さい依頼に「YES」と言ってしまうと、
次の大きな依頼に対しても「YES」と言いたく
なってしまうようなこと(「NO」と言うのは、
一貫性が保てないから)

3 容姿

外見の良さ(「みだしなみ」も含む)
は好感度に大きな影響を与えるという心理。

いわゆる「ハロー効果」が効いています。

4 類似性

自分と出身地や趣味関心事が似ている人に
対して親近感を覚える心理。

5 お世辞

たとえ、真実ではないとしても、
自分を称賛してくれる人を好ましく思う心理

6 協同性

自分の味方になってくれる人、協力してくれる人
を好む心理。

7 連合性

望ましいこと、望ましくないことを
結びつけてとらえる心理。

おいしい食事の時に会った人に
対してはその好ましい思い出とその人が
結びつき、その人に対して好感を持つような
こと。

8 社会的証明

他者がどうしているかに基づいて、
自分の行動を判断してしまう心理。

「これが一番人気ですよ」と言われると、
自分も欲しくなるようなこと。

9 権威性

権威がある人は、自分よりもある分野において
知識があり、その人に従うことが自分にとって
利益になる」ということを知っているから、
無意識に服従してしまう心理。

資格や肩書きが立派な相手をむやみに
信用しがちなのは、この権威性によるもの。

10 希少性

機会を失いかけると、それはより価値が
あるものだと感じてしまう心理。

限定●●個と言われると、
売り切れる前に買わなきゃと、
たいして欲しいものではなくても
感じてしまうようなこと。

----------------------------------

上記10項目は、販売やサービスの現場で多くは、
経験則的に、つまり無意識に適用されており、
優れたセールスパーソン、サービス提供者は、
これらをうまく活用できている人々なのです。

ただ、こうして「形式知」として体系化され、
伝授されることが今までほとんどなかったという
のが現実なんですね。

では、明日は取り組み事例をご紹介します。
なかなか興味深いですよ。

『影響力の武器 第二版 なぜ人は動かされるのか』
(ロバート・B・チャルディーニ著、社会行動研究会訳、誠信書房)


ビューコミュニケーションズ Webサイト
http://www.viewcom.or.jp/index.html

投稿者 松尾 順 : 09:44 | コメント (3) | トラックバック

今の売り手が果たすべき役割は「ステージャー」である!

『経験経済』(1999)の中で、
パイン&ギルモアは、経済システムは
次のように変化していると述べています。

農業経済

産業経済

サービス経済

経験経済

そして、それぞれの経済において、
売り手の役割は以下のように変化しています。

取引業者

メーカー

プロバイダー

ステージャー

農産物が主な商材であった「農業経済」では、
売り手は、自然から収穫されたものを市場で
相対取引する‘取引業者’という役割でした。

モノ(有形物)が主流となった「産業経済」では、
モノを製造する‘メーカー’としての役割がメイン。

サービス(無形財)が主流の「サービス経済」では、
有形物を製造はせず、サービスを提供することが
重要なので、売り手は、‘プロバイダー’と
呼ぶのがふさわしい。

そして「経験経済」では、

思い出に残るような経験

を買い手に提供するための「場=ステージ」を
演出する‘ステージャー’としての役割が
求められています。

経験経済の中で、買い手たる顧客は、
「クライアント」というよりは、
「ゲスト」と呼ぶべき存在になります。


今はまさに、
経験経済の真っ只中にいると言えますね。

例えば、デパートの外商さんは、
富裕層を相手にしているわけですが、
デパートで売っているようなものは
ほとんど持っていて、もはや欲しいものは
ないと言われる。

むしろ、

「今持っているドレスやバッグを身に
 着けていける 機会・場所が欲しいわ」

と外商さんに言うのです。

つまり、何かを売るためには、
まさにそれを活用できる

「ステージ」

も用意してあげないといけないのです。


また、カフェにもっとお客を呼びたければ、
例えば、

「早朝の街のゴミ拾いボランティア活動」

みたいなものとセットで仕掛ける。

ちょっと善いことができるステージを
提供することでカフェへの集客増も実現する。

従来のように、割引クーポンを配って、
直接カフェに呼ぼうとするのもありですが、
以前ほどの効果は期待できなくなってますよね。


これから、あらゆる売り手は、
自分たちの主な役割を「ステージャー」とみなし、
顧客・見込み客に対してどんな素晴らしい

「ステージ」(場・機会)
を提供できるかを
まず念頭に置かなければならないといえます。


『新訳 経験経済』
(B・J・パイン、J・H・ギルモア著、
 岡本慶一、小高尚子訳、ダイヤモンド社)

投稿者 松尾 順 : 10:06 | コメント (0) | トラックバック

マーケティング3.0考

●最新マーケティングバイブル『Marketing3.0』

『Marketing3.0』は、これからのマーケティングのあるべき方向性を明確に
示 した良書です。マーケティングの「最新バイブル」とも呼べる内容であり、
マーケターの必読書となることは間違いありません。

『Marketing3.0』では、新しいことが説かれているわけではありません。
マー ケティングがこれからどうなっていくかについての「きざし」をうまく
整理し、概念化してある点に本書の良さがあります。

実は、『Marketing3.0』の核となるアイディアは、アジアで生まれています。
コトラー氏の共著者は、東南アジアに拠点を持つマーケティング会社の人です。
これからポイントを紹介していく中でなんとなくわかると思いますが、
東洋的な思想がマーケティングに取り入れられたのが『Marketing3.0』です。

ですから、日本人の私たちにも結構しっくりくることが書かれています。

●マーケティングの進化

過去数十年間、マーケティングは顧客や市場環境の変化に伴って進化を遂げて
きました。最初の「Marketing1.0の時代」は作れば売れる時代のマーケティング
でした。製品を売ることしか頭になかった「製品中心のマーケティング」。

そのうち、市場にモノがあふれ競争が激化し、消費者の嗜好が高度化・複雑化
したため、「Marketing2.0の時代」へと進化せざるを得なくなります。2.0の
時代は、「顧客中心のマーケティング」です。個々の消費者のニーズにきめ
細かく対応し、製品を売るのではなく、顧客を創造することがマーケティングの
最大目的となりました。

そして今、「Marketing3.0の時代」が到来しつつあります。3.0の時代を迎え
た背景には、地球温暖化などの地球環境や生物多様性に関する問題、
人口爆発、経済成長のひずみが生み出した貧困問題など、社会・地球規模
で取り組むべき課題が増えたことがあります。

現代の消費者は、ただ自分の欲求を充たすだけではなく、自分の購入する商品
が地球環境などに悪影響を及ぼさないかということを懸念するようになってい
ます。あるいは、身近な日本社会における問題、さらには発展途上国の諸問題
について憂慮し、「自分にできることが何かないか」と考えるようになってき
ました。

つまり、現代の消費者は、個人としてだけでなく日本社会というコミュニティ
の一員として、さらには、様々な生物と共に大きな一つの生態系を作りあげて
いる地球に住む人類の1人である、という意識で行動するようになっています。

こうした消費者に受け入れられるため、マーケティングは、消費者の個人的な
ニーズだけに着目するわけにはいかなくなりました。単に「商品を購入する人」
として見るのではなく、全人間的に消費者を把握し、彼らが抱えている社会・
世界レベルの懸念や関心事にも、ビジネスを通じて何らかの形で対応する必要
があります。

つまり、Marketing3.0は、「人類中心(human-centric)のマーケティング」
なのです。

個人的なニーズを超え、現代の消費者が抱える社会全体・地球全体に関わる
問題(=人類レベルの問題)の解決に、ビジネス、そしてマーケティングが
何らかの形で'意識的に'貢献することが必要になったということです。

●3つの力

まず、「Marketing3.0」という新たなマーケティングの概念が要求されるように
なった背景にある「3つの力」について解説しましょう。3つの力とは、
「参加の時代」「グロバールパラドックスの時代」「創造的社会の時代」です。

・参加の時代

「参加の時代」とは、企業の商品開発やマーケティングコミュニケーションに、
消費者が積極的に参加することができるようになったということです。
これを実現したのは言うまでもなくIT革命ですね。低価格のパソコンや携帯
電話、インターネット接続サービス、そして多くの場合、無料で手に入る優れた
オープンソースの各種ソフトウェア。

IT革命によって、企業と消費者は、簡単に双方向のやりとりができるようにな
りましたし、人々がつながりあうソーシャルメディアによって、消費者の集団
的なパワーが増大しました。

したがって、これからの企業は、事業活動に積極的に消費者を巻き込み、
彼らの意見や要望をリアルタイムに取り入れることが求められます。これは、
消費者が本当に求めている、有益な製品づくりに役立つだけでなく、顧客との
絆づくりにもつながるのです。

ブランド構築についても、マーケターは従来のようなコントロール力を持ち
得ず、消費者ネットワーク、消費者コミュニティの集団的パワーが、ブランドに
大きな影響を与えるようになっています。もはや、ブランド構築もある意味、
消費者に委ねる時代なのです。

・グローバルパラドックスの時代

次に「グローバルパラドックスの時代」について。IT革命と輸送技術の進展の
おかげで、世界の国々の間の情報・物資のやりとりは非常に早く簡単に
低コストになりました。いわば世界は一つの国のようにあらゆるものが自由に
流れつつある時代です。

ただ、グローバル化は、同時にいくつかの矛盾というか「パラドックス」を
生み出しています。ひとつは、グローバル化は誰にも平等の恩恵をもたらした
わけではないということです。低賃金労働問題のような形での所得格差を大きく
することにもつながっているのです。グローバル化によって生まれた様々な問
題に対する懸念が高まっているのです。

また、グローバル化によって、ファーストフードに代表される、画一的な商品
・サービスが世界の都市を席巻することで文化が世界的に均質化する傾向が
ある一方で、その反動としてのローカルな文化、伝統を守ろうとする動きが
強まっています。つまり、人々は以前よりもますます自分たちの文化・伝統に
対する関心を高めているのです。

こうしたグローバル化の矛盾によって、やはりビジネス、マーケティングは、
個人のニーズだけを考えるのではなく、社会・世界全体レベルでの視野を
持たなければならなくなっています。

・創造的社会の時代

最後の「創造的社会の時代」ですが、お金で買えないものに価値を見出す、
また精神的なものを大切にしたいとする人々が世界的に増加しているという
意味です。彼らの多くは創造性が要求される専門的な職業に従事している
ことから「クリエイティブ・クラス(階級)」と近年呼ばれるようになっています。

創造的社会では、ただ便利とか安いというだけでは商品は選択されません。
デザインの美しさなどの情緒的価値の高さに加えて、人々の奥深くにある魂を
揺り動かすことのできるような価値をも提供しなければならないのです。(これ
は、必ずしも、いわゆるスピリチュアル、宗教的なものというわけではありま
せん)

●価値駆動の時代

またちょっと別の視点でMarketing 3.0を考えてみます。

Marketing 3.0は、「価値駆動の時代(Value-driven era)」において、
求められるマーケティングの取り組み方法だと言えます。「価値駆動」とは、
人々は、自分が大切にしたいと考えること=価値観に基づいて消費を行うと
いう意味です。

従来のように、ただ充たされない欲求があるから製品やサービスを購入する
のではなく、地球全体、あるいは社会全体の問題に対して「どうにかしたい」
という思いを商品選択で重視するようになってきたということです。

ですから、Marketing 3.0では、従来のように、単に「消費者」として人々を
見るのではなく、知性(Mind)、感情(Heart)、そして人間性(Spirit)を
併せ持つ一人の「人間」として把握しようとします。

ここでちょっとわかりにくいのが「人間性」(Spirit)という言葉です。

人間性とは、人々が誰もが本来心の奥底に持っていると思われる、個人の欲求
を超えたところにある、社会的価値の追求、さらに言えば地球的価値の追求と
言えるでしょう。したがって、前述した「価値駆動の時代」に最も大きく
関わってくるのが、この人間性です。

要するに、自分個人よりも社会全体、地球全体の調和や幸福を願い、その実現
に対して、自分が何らかの形で貢献したいという思いのこと。一言で形容でき
るぴったりの言葉は今のところ発見できていませんが、いちおう、私は
「人類愛」と言い換えることにしています。

●水平的につながった消費者

Marketing 3.0では、今日の市場においては人々の企業に対する「信頼」が
劇的に低下していることを指摘しています。実際、日本においても偽装事件が
次々と明るみに出るなど、企業に対する信頼性は随分と失われました。

一方、信頼性が高まっているのが消費者お互い同士。SNSやツイッターなど
インターネット上で水平的に広がるネットワークを通じて頻繁に情報を交換
しあっています。

消費者の中にはもちろんガセネタを流す人もいます。しかし、ソーシャル
ネットワークは、友人同士がつながるところから始まっているだけに入手
できる情報は十分に信頼に足るものが多いのです。売上のためにしばしば、
ウソの情報を流してきた企業とは大違い。

従来、消費者の情報入手方法が実質マスメディアに限定されていた時には、
企業は、マスコミュニケーションを通じて消費者が得る情報内容をかなりの
程度自由にコントロールできました。

豊富な予算を持つ企業が、情報においては上位に立ち、孤立した消費者たちを
上から見下ろすかのように、垂直的な情報操作を行ってきたのです。しかし、
そんな時代はインターネット革命によって終焉を告げたのです。

消費者はもはや孤立しておらず、数億人、数十億人の規模で水平的に
つながりあい、巨大なグローバル企業でさえ凌駕するパワーを持つように
なってきました。

消費者がその気になれば、世界規模で特定企業の商品ボイコットや糾弾活動を
展開し、企業を事業停止に追い込むことさえ比較的簡単にできる可能性がある
のです。

今、企業人としての私たちは、ネットワークでつながった消費者が持つ
強大なパワーを決してみくびってはいけないのだと痛感しています。

●消費者の信頼を回復するMarketing 3.0

企業に対する消費者の信頼が大きく展開した今、信頼を回復するためには、
「新消費者信頼システム(the new consumer trust system)を構築する
必要があると『Marketing 3.0』では説いています。

「新消費者信頼システム」は、消費者間の横のつながりを尊重するものです。
従来のように、企業が上位に立ち垂直的にコミュニケーションを行い、消費者
を恣意的に操作することができなくなった現代における新たな取り組みです。

そして、この新消費者信頼システムの構築において主要な役割を果たすのが
「マーケティング部門」なのです。ここでマーケティング部門には、広報、
広告、販促、営業などが含まれます。

なぜ、マーケティング部門が主要な役割を果たすのでしょうか?

言うまでもありませんが、消費者と直接的な接点を持つのがマーケティング
部門だからです。消費者は、マーケティング部門と行うコミュニケーション、
また、当該部門の人々と直接触れ合うことによって、企業に対する信頼を
形成していくからです。

このことは、自社Webサイトや公式ツイッターなどを運営することによって、
マスメディアを媒介せず、ダイレクトに消費者とコミュニケーションを行う
ことができるようになった今、極めて重要なポイントだと言えます。

『Marketing 3.0』では次のように述べられています。

“マーケティングはもはや、単に売ることでもなく、需要を生みだすための
 道具を使うことでもない。マーケティングは今、消費者の信頼を回復する
 ための、企業にとっての大きな希望と考えるべきである。”

●共創、コミュニティ化、性格(キャラクター)形成

企業が、Marketing 3.0を実践して成功を収めるためには、消費者が近年、
ますます重視するようになってきた3つのことを深く理解する必要があります。
それは、「共創(Cocreation)」「コミュニティ化(Communitization)」
「性格形成(Character Building)」の3つです。

・共創(Cocreation)

共創とは、企業と消費者が共同、協力しあって、新たな価値を生みだすこと。
共創を実現するためには、企業は、消費者との共同・協力の場となる基盤=
プラットフォームを構築する必要があります。

この一例を挙げれば「クックパッド」。消費者が自分の得意な料理レシピを
投稿することにより成立している情報サイト。企業が構築した基盤の上で、
消費者がお互いにレシピを入手することを通じて、企業は、新商品開発に
つながる貴重なヒントや事業収益の機会を得ています。

・コミュニティ化(Communitization)

ここでのコミュニティ化というのは、SNSなどだけを指しているわけではあり
ません。従来の多くのコミュニティが地域などの地縁で成立していたのに対し、
特定の興味関心や共通するライフスタイルなどによって結びついた現代の
新たなコミュニティのことです。

企業として忘れてはいけない点は、コミュニティはそこに属するメンバーの
ために存在しているのであり、企業が勝手に操作しようとすべきでないこと、
むしろ、コミュニティに奉仕すべきであることです。

・性格形成(Character Building)

企業や製品を「人」だと考えてください。人はそれぞれユニークな性格や価値
観を持っていますね。企業は製品もまた、ユニークな性格を形成していく必要
があるのです。

もちろん、単にユニークであるということだけでなく、正直で真摯で信頼にた
る性格を形成することによって、消費者とのきずなを深めていくのです。

●マーケティングの進化

さて、『Marketing3.0』では、これまでのマーケティングの進化についても、
実に手際よく、わかりやすく説明されています。本書によれば、
マーケティングは大きく3つの基本的な考え方に基づいて進化してきています。

すなわち、「製品管理」「顧客管理」「ブランド管理」の3つです。

「製品管理」とは、製品の開発・生産・販売に重点を置いたもの。
作れば売れた時代のマーケティングですね。日本で言えば高度成長期。
冷蔵庫、エアコン、自動車など、生まれて初めて買うという消費者がほとんど。
いい製品を作ること、その存在を広告することだけを考えていれば十分でした。

しかし、市場が成熟し競合も激化。新規購入ではなく、買い替え、買い増しの
消費が主流となると、「どんな製品を買うか」ではなく、「どの企業から買う
かという判断が重要になってきます。このため、製品だけでなく、顧客対応や
サービスの充実が求められるようになってきた。

そこで「顧客管理」がマーケティングにおける中心課題となったのです。
私の専門としている「CRM(Customer Relationship Management)が、
当時の最新のマーケティングの考え方として大きな注目を浴びました。

そして、顧客管理に続く、マーケティングの進化として生まれてきたのが、
「ブランド管理」です。「ブランド」とは、消費者の頭の中にある、商品に
ついてのイメージや好き嫌いなどの評価や感情のこと。

マーケティングは、製品や顧客との関係性を管理するだけでなく、
消費者の頭の中にあるブランドを望ましい形で形成することに目を向ける
ようになったのです。

●マーケティング=経営

マーケティングの進化には、別の視点もあります。Marketing3.0で
説明されている内容を私なりに噛み砕けばやはり次の3段階になります。

「戦術的」→「戦略的」→「経営的」

前項の「製品管理」の初期の時代では、「戦術的」なマーケティングが
行われていました。要するに、基本的に作った製品を「売る手段」に
過ぎなかったわけです。小手先のテクニック開発がメインでした。

しかし、製品自体だけでなく、優れた顧客対応やサービスも要求されるように
なってくると、より高所的、全体的な視点でマーケティングを組み立てる必要
が出てきます。製品開発・生産・販売・サービスという価値連鎖を考慮した
「戦略的な」マーケティングが広まっていきます。

そして、近年はさらに経営全体の視点からマーケティングを考える必要が
出てきました。ある意味、マーケティング=経営という等式が成り立つほど
ビジネスにおけるマーケティングの存在が大きくなったのです。

「経営的」マーケティングが求められる理由。それは、消費者が社会、
また地球規模の影響を考慮して商品を選択するようになり、企業の社会に
おける存在意義を問うようになったからです。

したがって、マーケティングは、社会における企業の存在価値を証明する
活動として位置づけるべきであり、ここには経営レベルの視点が不可欠
なのです。

●まるごとの人間

マーケティング3.0では消費者を「まるごとの人間」(Whole Human beings)
として把握し、対応する必要があると説いています。本の中では、
『7つの習慣』のスティーヴン・コヴィーの説を引用していますが、まるごと
の人間は、以下の4つの基本的な要素を持っています。

・身体(physical body)
・知性(mind)
・心(heart)
・人間性(spirit)

すなわち、物質的な「身体」、独立した考えや分析を行うことのできる
「知性」(mind)、感情を司る「心」(heart)、そして、「人間性」(spirit)
です。

「人間性」(spirit)は以前もご説明しましたが、今回は別の説明を加えると
そもそも人間とは何か、なぜこの世に存在しているのかといった哲学的な
思いをはせる部分のことだと理解してください。

マーケティングは、当初、「知性」を対象にコミュニケーションをして
きました。つまりこの製品は役に立つ、といった論理的な判断を求める
方法です。製品が持つ「機能的価値」「便益的価値」を訴求するわけです。

しかし、同じような「機能的価値」「便益的価値」を持つ競合他社商品は
山ほどありますよね。そこで、消費者の「心」、言い換えると「感情」に
訴えようとするコミュニケーションが台頭してきたのです。

これは、例えば、「この商品を買うと、楽しい気分になりますよ、
心地よいですよ、誇らしいですよ」といった「情緒的価値」を伝えるという
ことです。このアプローチは、一般に「感情マーケティング」と呼ばれ
現在全盛期を迎えていると言えます。

●グローバル・ビッグ・イシュー

そして近年、増える兆しを見せてきたのが、「人間性」に訴えるアプローチ
です。これは、個人の欲求を超えたところにある、社会、あるいは地球規模の
課題や心配事、不安について、企業がどのように考えており、それらの解決に
どのような貢献ができるかを伝えることです。

人間性に訴えるマーケティングは、外国の大手グローバル企業は既に
積極的に取り組んでいます。たとえば、GEやネスレなどです。こうした企業
では、「グローバル・ビッグ・イシュー」を解決するということを事業の根幹に
据えて活動していることを対外的に公言しているのです。

「グローバル・ビッグ・イシュー」とは、文字通り「地球規模の大課題」と
いうこと。具体的には、貧困、伝染病、資源の枯渇、絶滅危惧種、地球温暖化
といった課題の解決を企業として目指す。

その一環として様々な商品を開発、提供するということです。 具体例として
は、GEの「ecoimagination」(エコ イマジネーション)があります。Web
サイトがありますので興味のあるかたはアクセスしてみてください。
この取り組みはGEが環境問題の解決のためのものであり、具体的には、
太陽光発電用のパネル、風力発電用タービンなどの 製品に結びつけています。
単にお題目としてではなく、実際に環境問題の解決に貢献していることを
伝えているのです。

「人間性」に訴えるマーケティングは、単に以前のメセナやフィランソロピー
のように、収益の一部を寄付するといった活動に限定しません。企業全体と
して取り組む、商品を通じて貢献するという点が従来と大きく異なります。
すなわち、「経営的」なマーケティングなのです。

●ブランドの所有者は消費者

2010年10月頭、米GAPが公式ベージ上のロゴマークを新しいマークに切り替え
たところ、ツイッターやフェイスブックなど、ソーシャルメディアで消費者
からの反対の声が上がり、わずか数日後には、元のロゴマークに戻すという
事件がありました。今月(2011年1月)にも、スターバックスのロゴマーク
変更に対して、利用者から賛否両論の意見が湧きあがっていますね。

ブランドは、いったん成立したら、もはや企業のものではなく消費者のもの
であると言われてきました。この言葉が単なるお題目ではなく現実にそうで
あることを「GAPロゴマーク事件」は実感させてくれました。

Marketing 3.0では、イケアのフォント事件が紹介されています。
イケアは、 2010年からカタログなどに利用している文字を従来の「FUTURA」
から「VERDANA」に変更しました。

「VERDANA」は、紙でもWEBでも使いやすいこと、また「FUTURA」は
有料でしたが「VERDANAは無料のため、コスト削減にもつながり、
それが顧客の利益にもなるという判断だったようです。

ところが、やはり消費者の反発を受け、元のフォントに戻すオンラインの
署名活動が行われたほどでした。新しいフォントは、イケアの持つ
スタイリッシュなブランドイメージにそぐわないということらしいのです。

イケアの場合、旧フォントに戻すまでには至っていませんが、ソーシャル
メディアによって消費者が横につながり、社会的な発言力を高めたおかげで
企業に対する賛成、あるいは反対の意向が即座にかつ明確に社会に広まる
ようになったこと。

これが、消費者を真の意味でブランドの所有者にしたのでしょう。

●望ましいブランドミッション

もはや企業はブランドを所有できない。そしてブランドのミッション(使命)
は、消費者のミッションと等しいのです。つまり消費者が日々の生活の中で
目指していること、望んでいることをブランドが体現しているということです。

Marketing 3.0では、このような現状において企業ができることは、ブランド
のミッションに沿って、自らの企業行動を行うことだと述べています。もし、
ブランドのミッションに反するような行動を取ったら、すぐにブランド所有者
である消費者から、強烈なパンチを食らうことになります。

では、よいブランドのミッションは何なのでしょうか?それは、消費者の生活
をより良い方向に変えることです。小手先の商品を出して束の間の満足を与え
ることにとどまらず、ライフスタイルを大きく変えてしまうくらいのインパクト
を持つもの。

そうした商品は必然的により大きな視点、すなわち社会や世界、地球全体と
いった視点で、より望ましいライフスタイル、生き方を捉え直すことから
始める必要があります。

そしてまた、わかりやすく、心に響く「ブランドのストーリー(物語)」が、
ブランドミッションと共に、人々の間で語り継がれていくことが望ましい。

目先の顧客ニーズだけを追っている場合ではない時代なのです。

●洞察力がブレークスルーにつながる

企業が持つべき、望ましいブランドミッション(使命)は、消費者の生活を
大きく変えることのできる(もちろん良い方向に)インパクトを持つことです。
これは、極めて強い競争優位性の確立につながります。

近年、これを実現しているブランドとしては、やはりiPod、iPhone、
iPadといった製品を世に出した「アップル」が一番わかりやすいでしょう。
アップル社の製品は、まさに私たちのライフスタイルを大きく変える力を
持っています。

では、こうした「ブレークスルー」(飛躍的な革新)とも言える製品を開発
するにはどうしたらいいのでしょうか。それは、消費者、というより、人間
そのものについての深い理解、そして、深い理解に基づく洞察力を持つこと。

洞察力とは、人がほとんど意識していない微かな欲求、あるいはすっかり
慣れてしまったために、普段は気付かない不平、不満、不便を感じ取る力
だと言えるでしょう。これらは、「インサイト」とも呼ばれます。

「インサイト」を感じ取る力が洞察力。もちろん、言うは易しで簡単に身に
つくものではありません。いわゆるカリスマリーダーと呼ばれる人たちの
多くは、洞察力を生まれながらに持ち合わせてるようですが。

大事なことは、中心部ではなく周辺に目を配ること。大勢ではなく少数派の
動きに注目すること。というのも、周辺部にいる少数派の人々は、いち早く
多数派がまだ気付いていないインサイトを顕在化させ、それを言葉に
出している可能性があるからです。

すなわち、企業は、外部で起きている小さな変化、兆しに敏感になる必要が
あるということです。私の専門分野である「マーケティング・リサーチ」
について考えると、基本的に多数派の意見を吸い上げることに向いている
アンケート調査だけでは不十分です。

サンプル数は数件でも、消費の現場に行き、現実の顧客とじっくり対話する。
あるいは、ありのままの消費行動を観察させていただく。そうすることで、
小さな変化、兆しを捉えることができます。また、こうした行動が、洞察力
を高めることにもつながります。

●ブランドストーリーも重要

さて、消費者の生活を大きく変えるようなブランドには、ブランドを支える
ストーリー(物語)がつきもの。ブランド・ストーリーを通じて、
人は感動し、共感・共鳴し、ブランドの熱烈な支持者となっていきます。

実は、ブランドストーリーも、やはり企業だけが作るものではありません。
基本のストーリーはもちろん、企業内で生まれます。しかし、昔ばなしが、
人から人へと伝えられる過程で少しずつ変貌していったように、ブランド
ストーリーも消費者との共同作業になります。

Marketing 3.0では、ブランドストーリーもまた、企業がコントロールしよう
とはすべきではなく、消費者に手渡すべきだというのが基本主張です。
企業がやるべきことは、真摯(Integrity)で真正(Authenticity)であること。
そうすれば、否定的なストーリーへと変容させられていくことはありません。

●グリーンマーケティング

「石」からできている紙があるのはご存知でしょうか?石灰石の粉末に
ポリエチレン樹脂等と加えたもので、丈夫で防水性も高いそうです。
製品名は「リッチ・ミネラル・ペーパー(RMP)」です。

「石の紙」は値段的にはちょっと高めです。しかし、木材パルプを使用して
いないため、森林資源の保護につながる点がメリットです。個人的には、
こうした製品がもっと普及してくれればと願っています。

地球環境保護に役立つ製品は、おおむね割高なのが課題ですね。しかし、
普及すればするほど生産コストも低下して、手に入りやすい価格になる、
おかげでますます利用されるようになるという「善循環」を私は期待して
いるのです。

さて、地球環境保護につながる製品を開発したり、マーケティング施策を行う
ことを「グリーンマーケティング」と呼びます。「グリーン」とはもちろん、
緑豊かな自然を喩え、それを守ることを意図しています。

近年、地球環境の悪化が顕著になるに伴い、グリーンマーケティングに対する
消費者の関心が大きく高まっています。同時に、これまで述べてきたように、
企業の社会貢献意識も強まったことから、企業のグリーンマーケティングへの
取り組みもますます積極的になっています。

ただ、現実にはまだまだ普及途上であり、「エコに配慮した製品を開発した
ものの、消費者はなかなか買ってくれない」という企業側の嘆きを聞くことも
多いのです。

●グリーン市場4つのセグメント

グリーンマーケティングがなかなか浸透しない背景には、個々の消費者の心理
の違いがあります。端的に言ってしまうと、環境に配慮した製品に対して肯定
的で、積極的に購入する人は少数派であり、まだまだ慎重派、懐疑派が多数を
占めているということです。

Marketing3.0では、上記について「グリーン市場の4つのセグメント」という
視点を提示しています。すなわち、グリーン製品(環境保護に貢献する製品)
に対する消費者心理の違いから、「トレンドセッター」「バリューシーカー」
「スタンダード・マッチャー」「コーシャス・バイヤー」という4つのセグメ
ント(グループ)に分けているのです。

「トレンドセッター」は、自らも環境保護活動を行っているような、いわば
「環境マニア」です。彼らは、環境保護に役立つ革新的な製品を歓迎する
人たち。感情的・精神的動機からグリーン製品を購入します。ロジャースの
普及理論に当てはめれば「イノベーター(革新者)」や、「アーリー
アダプター(初期採用者)」です。

「バリューシーカー」は、合理的な動機、効率向上、コスト削減にも役立つと
いう理由でグリーン製品を購入する人たち。つまり、グリーンマーケティング
に積極的ではあるものの、ただ環境保護に役立つという理由だけでは買わない。
普及理論では「アーリィ・マジョリティ(前期追随者)」に該当するでしょう。

「スタンダード・マッチャー」は保守的で、グリーン製品が広く利用されるよ
うになるまで様子見を決め込む人たち。スタンダード=標準となるまではなか
なか購入しようとしない消費者です。普及理論では、「レイト・マジョリティ
(後期追随者)」のセグメントに入るでしょう。

「コーシャス・バイヤー」は、最も保守的で懐疑的な人たち。グリーン製品な
んて、企業が売るためのまやかしなどと思っている人たちもここに含まれます。
普及理論では、「ラガーズ(遅滞者)」です。

企業がグリーンマーケティングに取り組む際には、こうした消費者心理に
基づくセグメントを意識する必要があります。

●「ありがとう」こそ最高の言葉

ちょっとうろ覚えで申し訳けないのですが、歌手・俳優の加山雄三さんが以前
どこかでおっしゃっていたことで今でも強く印象に残っている話があります。

それは、お客さんから頂く言葉で一番うれしいのは「ありがとう」という感謝
の気持ちを表す言葉だということです。加山さんのようなエンタテイナーだけ
でなく、様々な製品やサービスを提供する側にとって最高のほめ言葉は
「ありがとう」でしょう。

ちなみに、一般的な顧客満足度調査では、「とても(大いに)満足した」と
いった選択肢が最高ですね。しかし、実は、満足の先に、「感激した」あるいは
「感動した」というより高次の表現があります。そして、究極の満足に達した
顧客が発する言葉が「感謝したい」という表現なのです。

従来、満足度調査において、「感動した」「感謝したい」という表現を使用
するのはちょっとオオゲサかなと感じていました。しかし、近年はむしろ
積極的に取り込んでいくべきではないかと考えるようになってきました。

というのも、地球環境や社会の様々な問題解決に対して、自社の各種製品や
サービスを通じて貢献することを強く意識し始めた企業が増えているからです。

こうした地球・社会問題解決型の企業は、実際のところ、顧客から
「ありがとう」という言葉をもらうことが多くなっています。本当に困って
いたことが解決したり、ずっと望んでいたことが実現できた顧客の口から
思わずこぼれ出るのは、感謝の言葉になるのです。

●感謝される企業

例えば、池などからくんできた汚れた水でも、特殊な粉末を入れてかき混ぜる
だけでたちまち浄化でき、漉しとればおいしい水が飲めるようになる製品を
開発・販売している日本企業があります。

こうした製品は、非常時用だけでなく、水道が普及していない発展途上国で
使ってもらえるようにすれば、おいしい水が飲めるようになった現地の人に
とっては、「ありがたい」という言葉しか出てこないでしょう。

あるいは、数千円台で購入できるパソコンが最近開発されています。こんな
パソコンは、従来は高価すぎて利用不可能だった途上国の子どもたちに
使ってもらうことで、識字率を低下させ、学力向上に役立てることができます。
子どもたちもまた、パソコンメーカーに対しては、単に満足するのではなく、
大いに感謝してくれることでしょう。

この連載記事では、過去半年ほど「Marketing3.0」の考え方をご紹介して
きましたが、結局のところ、これからの企業が目指すべき方向性、それは、
「感謝される企業を目指す」ということではないかと思っているのです。

「感謝される企業」を目指すことは、企業の私利・私欲を追わないということ
です。また、顧客のせつな的な欲求を充足することでもありません。むしろ、
「本当の意味での幸せ」を実現することに貢献することだと考えています。

「本当の意味での幸せ」は定義が難しいですが、あえて言い切ってしまうと、
自分ひとりがいい思いをすればいいのではなく、社会全体、また地球の
あらゆる生物を含めた全体が調和し、皆が活き活きとした「生」を謳歌できる
ことだろうと思います。

キレイゴトに聞こえますか?しかし、こんなキレイゴトに真剣に取り組む
企業しか、これからは生き残れないと私は確信しています。

投稿者 松尾 順 : 02:26 | コメント (0) | トラックバック

未来予測は当たるのか?

先日、日本能率協会総合研究所、
マーケティング・データ・バンク主催の

『未来予測セミナー』

を受講しました。


当セミナーは大変充実した内容で、
今後の世界、また日本を変えていくであろう、

「大きな潮流」

を再確認するよい機会となりました。

具体的な内容については、
今後、折に触れご紹介したいと思っています。


さて、そもそも、
未来予測って当たるんでしょうか?

実際のところ、

「大きな潮流」

については、
その変化の「芽」が多少なりとも
地面から顔を出していることが多いので、
ほぼ確実に当たります。
(「芽」に気づかない人も多いですが・・・)


しかし、

「個別業界や個別商品の先行きがどうなるか」

について言えば、
正確な予測は極めて難しいのが現状です。

というのも、
確実なひとつの収束点というものはなく、
たいていは複数のシナリオがありえるからです。

しかも、どのシナリオが実際に展開することに
なるのかは、確率的にしか予測できませんから、
結局はその時になってみないとわからないのです。


ですから、もし予測が当たったとしたても、
それはまぐれ当たりに過ぎないと言えるでしょう。
(超能力者を除き・・・)


ただ、そもそも、

「ビジネスにおける予測」

はそれ自体が目的ではありません。


たとえ、複数の「未来シナリオ」があるとしても、
将来の変化に適応して生き残るために、
今から準備しておくべき行動が明確になります。

そして、未来のためにやるべき行動が明確であれば、
あとは、それぞれの未来シナリオが現実化する確率を
踏まえて、優先順位をつけた行動計画を立案し、
早速着手する。


すなわち、予測困難だからこそ、
あえて予測してみることで、
未来に備えるために今から取り組むべき
行動を認識する。

これが未来予測の意義だと言えます。

よく、

「どうせ、未来はどうなるかわからないんだから、
目先のことに全力を注ぐべき」

という方がいますよね。

しかし、こんな人は、今転ばないように、
足下の石ばかりみて歩いているようなもの。

ふと顔を上げたら目の前は断崖絶壁だった!
どんづまりにいて、もはや後戻りもできない!

という事態になりかねませんよね。


足下の石ころに気をつけるのも大切ですが、
同時に、遠く水平線を見渡して、自社(自分)が
どんづまりの道を進んでいないかを常に確認する
ことも必要なのです。

要するに、これが未来予測をやる意義です。


ところで、変化には次の3種類があります。

---------------------------------

(1)パラダイム的変化

場・価値基準が短期間に大きく変化するもの
(ex.ガソリン自動車→電気自動車)

(2)構造的変化

一方向に進むが、新しい局面を生み出すもの
(ex.ノートPC→ネットブック)

(3)循環的変化

波状、元に戻る性質のあるもの
(ex.景気循環)

---------------------------------

そして、上記3種類の変化に対して、
企業が取るべき適応戦略の基本方向は以下の通り。

・パラダイム的変化 ←新しい競争条件の予見と革新準備

・構造的変化 ←ニーズギャップの調整や次世代製品

・循環的変化 ←生産調整やカイゼン


現在、私たちは昨年秋のリーマンショックに端を発した
世界的景気低迷期から少しずつ回復しつつあります。

これは、循環的変化ですね。

しかし同時に、
明らかにパラダイム的変化にも直面しています。

パラダイム的変化にはいくつかありますが、
その中で最も看過できないのはやはり、
地球温暖化や地球資源枯渇といった

「地球環境問題」

でしょう。

このパラダイム的変化は、
既に私たちの消費行動にも大きな影響を及ぼし
はじめており、企業は早急な適応戦略を立案し、
行動する必要性を感じはじめています。


というわけで、我田引水ですが、
INSIGHT NOW!さんの主催で、

『ソーシャル消費時代の適応戦略(製造業編)』

という勉強会を開催することにしました。

ご興味・ご関心のある方はぜひご参加ください!

『ソーシャル消費時代の適応戦略(製造業編)』


*本文中、3種類の変化については、
『未来予測セミナー』の内容を参考にしました。

講演者の安部忠彦氏(富士通 研 取締役)、
および、清水克彦氏(東京創研 取締役)には、
この場を借りて御礼申し上げます。

*日本能率協会総合研究所
マーケティング・データ・バンク
http://www2.mdb-net.com/

*富士通総研
http://jp.fujitsu.com/group/fri/

*東京創研
http://www.tokyosoken.com/

『未来予測2009/2019』
~大不況後の事業戦略立案のための基礎資料

投稿者 松尾 順 : 14:30 | コメント (0) | トラックバック

「休憩所」から、目的を持って「立ち寄る場所」へ

京葉道路で人気のサービスエリア(SA)が、
「pasar幕張」です。

2008年夏の開業以来、我が家でも、
千葉・房総方面に車で出かける時は
必ず立ち寄ってしまいます。

松戸の自宅を出て、
まだ1時間も経っていないので、
あえて立ち寄る必要はなんですけどね。


‘pasar’というのは、スペイン語で

「立ち寄る」「時を過ごす」

また、インドネシア語では、

「市場」

を意味するそうです。

従来のSAと違って、
体育館のように天井が高く、
柱の少ない建物。

休憩用のテーブルは、
ゆったりと配置してあります。


ごちゃごちゃした雰囲気がなく、
洗練された開放的な空間設計が、
思わず立ち寄りたくなる理由でしょう。

また、他のSAにはない、
専門店があるのも人を惹きつける磁石の
役割を果たしているようです。


従来、高速道路のSAやPAは、
ドライブに疲れた時やトイレ休憩など、
必要に迫られて行く場所ですよね。

そして、私たちは休みたくなるタイミングが
おおむね同じなので、PAやSAによって
混雑の度合いが随分違います。

例えば東名高速では、

「海老名SA」

が休憩を取るのにちょうどよい地点にあるため、
一番人気ですね。

ところが、隣の

「足柄SA」

はといえば、海老名に比べると
立ち寄る人の数は寂しいものです。

したがって、足柄SAに出店している店舗は、
けっこう厳しい経営を余儀なくされています。

個店単位でいろいろと集客努力を
されてはいるようですが、

‘pasar幕張’

のようなトータルなコンセプトチェンジ&
リニューアルが必要なのかもしれません。

投稿者 松尾 順 : 10:54 | コメント (2) | トラックバック

交通整理のおじさんが3人いるパン屋

千葉・松戸の自宅から、
車を走らせること10分少々。

目当てのパン屋さん発見。

店前の行列ですぐわかったんですけど。
20組ぐらいかな、並んでたのは。


「わあー、いったいどれくらいの時間
 並ばなきゃいけないんだろう・・・?
 家から近いから出直そうかな!」

と思いましたが、
ともかくもそばの駐車場へ。

交通整理のおじさんが2人もいました。


車を止めて、店に向かうと
店の前にも1人、交通整理のおじさん。

「歩道に広がらないように並んでください」
「自転車、通りまーす」

などと注意を促してます。


この人気のパン屋さんは、

「Zopf(ツォップ)」

という名前のお店。

先日(09年9月6日)のソロモン流(テレビ東京)
にて、店主の伊原靖友氏が紹介されたおかげで、
お客さんがさらに増えたようです。


実は、ツォップは、
随分前から地元でも知られたお店。

でも、私は今回が初めて・・・

わざわざ行くのが、
なんか面倒だったんですよね。

実際、駅からも遠く不便な場所にありますが、
ジモティの私の場合、車ならわずか10分でした。
(もっと昔に行っとけば良かった・・・)


さて、行列に並ぶこと30分、
意外に早く順番がやってきました。

中に入ると、6畳ほどの大きさ、
というか狭さ。

しかし、驚くほどたくさんの種類のパンが
並んでいます。

一緒に行った息子は、
あれも欲しい、これも欲しいと
次々と選んでいきます。

息子が大好きなメロンパンも、
2種類ありましたので両方とも買いました。


値段はとみると、100円台のパンも多く、
他店と同じくらいの水準です。

例えば、ソロモン流で一番人気と
紹介されていたカレーパンは1個160円。

パンのさくさくした歯ごたえは、
他の店のカレーパンでは味わえない食感。

確かに病みつきになりそう!


ソロモン流によれば、
当店では1日300種類ものパンを
焼くそうです。

そして、1日に売れるパンの数は、
なんと約6,000個!


さて、ツォップが、
開店時間の朝6時半から、
夕方6時の閉店まで途切れることなく、
お客さんが続くほどの人気店になった
理由をまとめておきます。


・300種類から選ぶ楽しさ

 店主の伊原氏によれば、
 1種類当たりの販売個数は少なくしても、
 種類数は減らさないとのこと。

 実際、たくさんのパンの中から、
 自分の好みのパンを選べるのは実に楽しい。
 (一般的には1店当たりせいぜい
  50種類くらいですかね)

 しかも、ありきたりのものだけでなく、
 オリジナリティあふれた創作パンもあります。

 パン自体を味わえること以前に、まず
「パンを買う楽しさ」も味わえるのが、
 ツォップの最大の魅力でしょう。


・手頃な値段

 私が買ってきたツォップのパン、
 どれもおいしかったですが、

 「他店よりも格段においしいか?」

 と言われると、正直それほど大きな差は
 ないかと思います。

 しかし、一般消費者が「お手頃」と感じる
 値段でこのおいしさなら満足です。

 「そこそこ安いのに十分おいしい」

 という実感を与えてくれる点が重要でしょう。


私は、今の「大衆向け飲食業界」において、
成功するために押えておくべき基本線は、

「そこそこ安いのに十分おいしい」

だと考えています。

「餃子の王将」しかり、「サイゼリア」しかり。
「ツォップ」もまさにこの路線だと言えます。


高いお金を出せば、
相応においしい食事ができるのは当たり前。

しかし、値段を抑えつつ、
「十分においしい」と感じさせる食事を
提供するのはそう簡単なことではないんですね。

逆に、この基本線を押えることに成功すれば、

「どうせ行くならあの店にしようや」

と優先的に選ばれる存在になりえるわけです。


私自身も今後は、

「どうせパン買いにいくなら、
 やっぱりツォップにしよう!」

と思いますもん。


Backstube Zopf
パン焼き小屋 ツオップ
千葉県松戸市小金原2-14-3
http://www.zopf.jp/b_zopf.html

*食べログの評価
http://r.tabelog.com/chiba/A1203/A120302/12000514/

投稿者 松尾 順 : 15:56 | コメント (0) | トラックバック

ガソリンスタンドがなくなる日

先日、両親の金婚式のため福岡に里帰りした際、

「自動車整備」

の会社をやっているイトコたちと久しぶりに
話すことができました。

イトコたちも私もいい年(中年)なので、
自然に仕事が話の中心になります。


自動車整備業界も厳しい昨今ではありますが、
長年地元に根ざして信頼を築いてきたおかげで
彼らの会社もなんとか回っているそうです。


とはいえ、自動車の電子化の進展によって、
修理・整備の能力がどんなに高くても、
いわゆる従来の

「自動車整備士」

では手に負えない部分が増えてきています。

ですから、長期的には楽観できないし、
次世代の自動車整備士として生き残って
いくためには日々勉強が必要のようですね。


さて、これからの自動車整備士に、
確実に新たなスキルを要求することになるであろう、
電子部品だらけの

「電気自動車」

の本格普及期はいつ頃やってくるんでしょうか?


日産自動車社長&CEOのカルロス・ゴーン氏は、

「2020年までに電気自動車は市場の一割を占める」

と予測しています。


たとえ、

・エンジンからモーターへ
・ガソリンから電気へ

という移行が完了したとしても、

「自動車」

そのものが不要になることはないでしょうから、
自動車整備の仕事は残るとしても、
間違いなく存亡の危機に立たされるのが、

「ガソリンスタンド」(以下「GS」)

ですね。


当面、電気自動車の「電池」の容量の制約から、
ガソリンと同様、街中に充電設備が必要です。

ですから、従来のGSが

「充電スタンド」(電気スタンド?)

へと生まれ変わっていく流れが、
まず起こるでしょう。


ただ、1台の電気自動車の充電に
必要な電気代は200円足らずなのだそうです。

充電スタンドにとっては、この電気代が

「原価」

になりますよね。

これに、諸経費、利益を乗せたとして
1台当たりの売上はせいぜい、

300-400円

といったところでしょうか。


ガソリンの場合は、おおむね

2,000円以上/台

でしょうから、
充電スタンドの売上(単価)は
現在の数分の一にとどまる。

とても採算が取れません。


また、危険物を扱うため、
厳しい規制の元で設置されるGSと異なり、
充電器はコンビニなどにも簡単に設置可能。
(現在は1台800万円くらいするようですが)

ですから、

「充電サービス」

だけでみると、
充電スタンドの競争相手は
拡大することになります。

GS業界にとっては、
さらに厳しい時代が間近に迫っているのです。


しかしながら実は、

そもそも充電器さえ不要になる時代

が、おそらく50年くらい先には
やってきそうなのです。

現時点ではまだ実験段階ではありますが、

「無線で電気を飛ばす技術」(無線充電)

が実用化され社会に浸透した時、
GSはおろか、

「充電スタンド」

さえ過去のものとなるでしょう。


無線充電装置が、路肩のガードレール、
あるいは、道路のアスファルトに
埋め込まれていれば、電気自動車の受電装置に
常時電気を送ることが可能になります。

そうすると、
レールから常時電気をもらって走る電車と同様、
電気自動車も、充電の心配を一切することなく
好きなところに行けるようになる。

充電のために立ち寄る施設は、
もはや不要になるというわけです。


今回、随分未来の話をしています。
しかし夢物語ではありません。

先端技術動向をチェックしていれば、

いつ(WHEN)変化が起きるか

までは正確に言えないけれど、

「確実にやってくる未来」

を見ることは可能です。


ここで、

“まだまだ先のことだから・・・”

と油断していると、
どんな業界、どんな会社・人にも

「時代遅れ」
「過去の遺物」
「無用の長物」

などと言われる日が、
あっというまにやってきます。

実際、ドッグイヤー、マウスイヤーと呼ばれる
インターネット技術の進展と社会への浸透に
よって、わずか10年足らずの間に、
消滅を余儀なくされつつある業界や会社が
既に出てきていますよね・・・


GSに話を戻しましょう。

ガソリンスタンドは、実は和製英語。

米国では、

「サービスステーション」(SS)

と呼ばれているのをご存知かと思います。


今後、GSが生き残っていくためには、
給油、あるいは充電サービス以外に、

「どのようなサービスが可能なのか?」

を真剣に考え始める必要がありそうです。


*参照記事

『充電インフラ整備、どこも及び腰 
 電気自動車、普及に向け不安』
(日経ビジネス、20098月10日・17日号)

『2030年への挑戦 次世代産業技術
 光速充電技術(下)』
(日経産業新聞、2009/07/29)

投稿者 松尾 順 : 12:09 | コメント (2) | トラックバック

かりんとう&カステラ

先週末、
ちょっと福岡(八女)に里帰りしました。


戻りの福岡空港。

搭乗口に向かっている途中、

「かりんとう饅頭」

の試食販売を発見しました。


かりんとう+饅頭

という一見奇妙な組み合わせが気になり、
一口食べてみたらけっこういける!

1箱買って帰りました。


この商品の正式名称は、

「花林糖まんじゅう 笑x2」
(注)笑の2乗です


鹿児島のメーカー

「美味芋本舗」

が製造してます。


ちょっと気になったので、
ネットで調べてみたんですが、

「かりんとう饅頭」

は、特に鹿児島名産というわけではなく、
全国のあちこちで作られているようですね。

どうやら、「かりんとう饅頭」は、
密かなブームになりつつあるようです・・・


さて、「かりんとう」で思い出したのが、
日経MJ連載中のコラム

「招客招福の法則」
(小阪裕司氏、オラクルひと・しくみ研究所)

に先日書かれていた内容です。


ある店が、
中華街で人気の冷凍食品、

「かりんとうドーナツ」

を仕入れたんだそうです。


これは本来自然解凍して食べるもの。

しかし、この店では冷蔵庫で解凍し、
冷たいままで食べる

「冷菓」

として店頭で売ることにしました。


見た目はかりんとうなので、

「冷やしかりんと」

とネーミング。


チラシを作り、
既存客にはDMも送付。

店の前には、
立て看板まで置きました。

ところがさっぱり売れない。
味や食感には自信があったのに・・・


そこで、20代の男性に試食してもらったところ、

“チェーン店のドーナツに負けていないですね。
 もうひとつ食べていいですか”

と、実際食べてみた人の評価は高かったのです。


店主は、この男性が、

「かりんと」

ではなくてしきりに

「ドーナツ」

と言うことに気づき、

「冷やしドーナツ」

と名称を変更したところ、
急に売れ始めたのだそうです。


なぜ、ネーミングを

かりんと→ドーナツ

と変更したことが功を奏したかの理由について、
小阪氏は、次の2つの理由を挙げていました。

・ドーナツの方が、かりんとよりも食べている人が
 多いから、ドーナツという言葉にピンとくる人が
 多いのかもしれない

・あるいは、あたたかいイメージのあるドーナツが
 「冷やし」と形容されたことで「おや」と思った
 のかもしれない


どちらも理由としてはありそうですが、
やはりなんといっても、

「なじみ度合い」

の違いだと私は思います。


今の若い人は、

「かりんとう」

をあまり食べることがないため、
はピンとこないのです。

ちょっと古臭いイメージもありますね。


日本の伝統的なお菓子である

「かりんとう」

は、おそらく40代以上の方には、
小さい頃から慣れ親しんだ味でしょう。


しかし、次々と新商品が生まれ、
多種多様なお菓子にあふれた時代に育った
30代以下の人にとって、「かりんとう」は、
めったに食べる機会のないお菓子。

コンビニでもほとんど目立ちませんしね。


しかし、よけいな添加物がほとんど
含まれておらず、自然な味わいが楽しめる、

昔ながらのお菓子

が再評価されつつあるのが現代です。


ただし、昔ながらの味はさておき、
昔ながらの考え方、つまり

「職人的売り方(味がよければ売れる)」

からは、脱却する必要があります。

つまり、上述した

・かりんとうまんじゅう
・かりんとうドーナツ

のような斬新な新製品の投入や、
洗練されたネーミング、パッケージへの
変更によって、若年層を中心として新規客
を獲得する努力が求められているのです。


ちなみに、福岡空港では、

「キューブカステラ」(福砂屋)

とという製品も発見。

買って帰りました。


「キューブカステラ」は、
手にちょうど乗るくらいの大きさの
サイコロ状の紙製のパッケージ。

パッケージの色は5色あります。
見た目も楽しい。


パカっという感じで、
左右に開くとカステラが2切れ!

しっとりした食感が最高でした。


通常のカステラ一本だと、
ちょっとボリュームがありすぎ
ですよね。

自家用にしろ、贈答用にしろ、
買うのに躊躇しますが、

「キューブカステラ」

なら気楽に買えます。


長崎名産のカステラも、
とてもおいしいお菓子です。

しかし、なかなか食べる機会が
ないのが現実ですよね。


やはり、時代に合わせた

「イノベーション」

が伝統菓子にも必要なのだと、
改めて感じました。


*文中で引用した日経MJのコラム
「招客招福の法則」は、2009年8月5日掲載分です。


*オラクルひと・しくみ研究所
 http://www.kosakayuji.com/

*美味芋本舗
 http://www.umaimohonpo.com/

*キューブカステラ(岩田屋オンラインショップから)
 http://www.iwataya.co.jp/net/foods/miyage/07/

製造元、福砂屋のHPには当商品は未掲載です。
(なんで・・・?)

投稿者 松尾 順 : 10:55 | コメント (0) | トラックバック

地球交響曲 -GAIA SYMPHONY- (6)六番

当シリーズ映画の基本コンセプトは、

「“母なる星地球(ガイア)”は、それ自体が一つの大きな
 生命体であり、我々人類は、その大きな生命体の一部分として、
 他の全ての生命体と共に、今、ここに生かされている」

というもの。

世界の賢人たちへの取材を通じて、
ガイアの思想が決して妄想でないことを
実感させてくれます。


今回は、2006年に公開された「六番」をご紹介します。


第六番は「音楽家特集」と言える内容です。

メインの出演者は全員外国人ですが、
日本からは、

「虚空の音」

の演奏家として以下の人たちが、
心に染み入る演奏を聞かせてくれています。

・奈良裕之(弓、スピリット・キャッチャー)
・KNOB(ディジュリドゥ、天然空洞木)
・雲龍(笛)
・長屋和哉(打楽器・磬)


<ラヴィ・シャンカール>

シタール奏者として、
世界的に有名なラヴィ・シャンカール。

ビートルズ時代のジョージ・ハリスンが
シャンカール氏の音楽に魅せられて弟子入りし、
半年ほど彼の元で修行しています。


シャンカール氏によれば、
インドでは、

「音(ナーダ)」

には次の2種類があると、
言われているそうです。

・アーハタナーダ(私たちの耳に聞こえる通常の音)
・アナハタナーダ(私たちの耳には聞こえない虚空の音)


また、インドには

「ナーダ・ブラフマー」(音は神なり)

という言葉もあります。

この世を生み出し、動かしているのは、
耳に聞こえない音の波だと考えられているのです。

インドで言う「音」とは、
おそらくすべての「波動」を含む概念なのでしょう。

こうした考え方は、

「量子理論」

の考え方(量子は「粒」と「波」の両方の性質を備えている)

に通じるものがあります。


シャンカール氏は、
私たちの耳に聞こえない「波」を美しい音楽に変えて、
世界の人々と分かちあいたいと願っています。


<ケリー・ヨスト>

アイダホ州で生まれ育ち、
その美しい自然をこよなく愛する音楽家、
ケリー・ヨストは、ふるさとの自然環境保護活動
にも積極的に関わってきています。


彼女は一切ライブコンサートを行わず、
じっくりと時間をかけて磨き上げたクラシックの
名曲を収録したCDを自費出版してきました。

ヨスト氏の透明な音楽は、
口コミで世界に広がっていったのです。


彼女は一人っ子として育ちましたが、
山の中にいると孤独を感じません。

河原にある石ころの思いや山の心を
感じることができるから。

すべてのものが「命」だけでなく、
「意識」さえ持っている。

すべてが、しかるべき場所で、
しかるべき役割を持って存在している。

ヨスト氏は、
こうした感覚を音楽の中にも
感じるのだそうです。


演奏者の使命について
ヨスト氏は次のように考えています。

“音楽には、作曲家や演奏者を超えた、
「光」にも似た偉大な力が潜んでいる”

“演奏者は、その偉大な力を引き出し、
 溶け込み、自分を消し去る”

“私は、音楽の「通り道」になりたいのです。”


ヨスト氏は、音楽の「通り道」になるため、
常に自分を清め、波動を整えて透明になろうと
努めています。


<ロジャー・ペイン>

ペイン氏は、ザトウクジラの歌を
水中マイクを使って録音し、解析した結果、
人間と同じ方法で作曲し、歌っていることを
世界で始めて発見しました。

たとえば、基本の旋律を徐々に変化させながら
繰り返し、また基本の旋律に戻る

「ソナタ形式」

の歌をクジラは作ります。

また、しばしば「韻」を踏む曲さえ作ります。

ペイン氏によれば、韻を踏むのは、
長い歌を忘れないためだろうとのこと。

人間とほぼ同じ容積の脳と深いしわを持つクジラは、
私たちのような言葉は持ちませんが、独自の文化を
築いていることは確かです。


クジラの歌は、1977年に打ち上げられた
ボイジャー1号、2号に搭載されたレコードにも
収録されて、今も宇宙を旅しています。

ペイン氏は、このクジラの歌は
私たち自身に向けたメッセージでもあると
述べていました。


私たちは、今ようやく気づき始めているのです。

私たちはショーの主役ではないことに。

人類が、これからも「地球」という舞台の主役
であるかのように振る舞い続けるなら、
舞台そのものを破壊してしまうことになるということに。


*GAIA SYMPHONY official site of jin tatsumura
 http://www.gaiasymphony.com/

*「地球交響曲」公式ガイド 六番

*地球交響曲第六番 スペシャルエディション【DVD】

投稿者 松尾 順 : 16:08 | コメント (0) | トラックバック

地球交響曲 -GAIA SYMPHONY- (5)五番

当シリーズ映画の基本コンセプトは、

「“母なる星地球(ガイア)”は、それ自体が一つの大きな
 生命体であり、我々人類は、その大きな生命体の一部分として、
 他の全ての生命体と共に、今、ここに生かされている」

というもの。

世界の賢人たちへの取材を通じて、
ガイアの思想が決して妄想でないことを
実感させてくれます。


今回は、2004年に公開された「五番」をご紹介します。

実は、第四番までの出演者のうち、
第五番の撮影開始時点で次の3人の方が
既にこの世を去っていました。

・野澤重雄
・ジャック・マイヨール
・星野道夫

五番では、彼らの霊を弔うため、
3人の名を記した「精霊船」が流される様子が
含まれています。


また2003年には過去の出演者たちのうち、
以下の4人が次々と来日。

・スーザン・オズボーン(第二番、三番の主題歌を歌った)
・ラッセル・シュワイカート(元宇宙飛行士)
・ジェームス・ラブロック(ガイア理論提唱者)、
・14世ダライ・ラマ
・ジェーン・グドール(霊長類学者)

彼らの来日の模様も収録されています。


さて、第五番のメインの出演者は、
石垣昭子氏とアーヴィン・ラズロ氏の2人です。


<石垣昭子>

草木染織作家、石垣氏は、
一度は廃れてしまっていた沖縄の伝統的な

「草木染織」

を復活した方です。

五番では、「芭蕉」という多年草から、
手作業で繊維を取り出して割き、
糸を生み出す根気のいる工程が紹介されています。


沖縄では、
「魂」のことを「マブヤー」と呼ぶそうです。

石垣氏は、糸づくり・布づくりを手間をかけ、
丹念に行うことで、芭蕉の中に元々あった

「マブヤー」

を糸や布にも残していくことが大事だと考えています。


石垣氏が染色に使う草木は

赤 → 紅露(クウル)、イモ科の自生植物
黄 → 福木(ふくぎ)の表皮
青 → 藍

などです。

山の急な斜面にしか生えない紅露を探し、
取ってくるのは石垣さんの旦那さんの役割。

必要な分だけ取り、根は残します。
新しい実がつくように。


また、樹齢数百年にもなる「福木」から、
表皮の一部を剥ぎ取る際には、次のように祈ります。

“木の神さま、私の分を分けてください”

削りとられた福木の表皮は、
数年のうちに、すっかり再生してしまいます。


石垣氏によれば、化学繊維は、
自然な草木の色には決して染まらない
のだそうです。

だからこそ、「糸」づくりにこだわる。


芭蕉を植えるところから始まり、
ようやく最後に「糸」として目に見える形に
なるまでの膨大な年月と単調な作業の連続は、
実に大変で厳しいものです。

しかし、糸になる以前の

「見えない仕事」

に手を抜かないことが、

「マブヤー」

のある優れた染織作品につながると、
石垣氏は考えているのです。


<アーヴィン・ラズロ>

幼少の頃、天才ピアニストとして
名をはせたラズロ氏。

彼は、芸術的な感性を磨いたおかげで、

「世の中を全体のつながりの中でみる」

という思考をずっとしてきました。


これは、通常の科学の思考法、すなわち
要素に分解していくことでものごとを
理解しようとする

「還元主義的な世界観」

とは異なる見方です。


ラズロ氏は、

“自然界にはなにひとつ偶然はない”

と言います。

すべてがつながっており、
全ての命が共に働き、変化し、進化し、
響き合っている。

ですから、ある場所で起きた微細な変化でさえ
遠く離れた場所に何らかの変化を着実に与えて
います。


さて、最新の量子物理学の研究成果によれば、
私たちは、とてつもないエネルギーに満たされた

「量子エネルギー場」

の中にいます。

そして、世の中のあらゆる出来事は、
この量子エネルギー場に何らかの痕跡を
「情報」として残すのだそうです。

この情報は、量子エネルギー場に
ずっと記憶され続けるのです。


ラズロ氏は、

“宇宙は記憶を持っている、だから
 過去は今も生きています。”

と述べています。


ダーウィンは、生命は偶然(の変異)によって
進化したと考えましたが、偶然で進化する
確率は極めて低いのです。

むしろ、生命は、量子エネルギー場を通じ、
現在・過去の情報をお互いに交換しあうことで
効率的に進化を果たした。

ラズロ氏はこのように考えています。


*GAIA SYMPHONY official site of jin tatsumura
 http://www.gaiasymphony.com/

*「地球交響曲」公式ガイド 五番

*地球交響曲第五番 スペシャルエディション【DVD】

投稿者 松尾 順 : 14:49 | コメント (0) | トラックバック

地球交響曲 -GAIA SYMPHONY- (4)四番

当シリーズ映画の基本コンセプトは、

「“母なる星地球(ガイア)”は、それ自体が一つの大きな
 生命体であり、我々人類は、その大きな生命体の一部分として、
 他の全ての生命体と共に、今、ここに生かされている」

というもの。

世界の賢人たちへの取材を通じて、
ガイアの思想が決して妄想でないことを
実感させてくれます。


今回は、2001年に公開された「四番」をご紹介します。


<ジェームズ・ラブロック>

ラブロック氏は、「ガイア理論」の提唱者です。

彼は、地球がひとつの生命体である根拠として
映画の中で2つの現象を示しています。

ひとつは、地球の平均気温が、
おおむね一定に保たれてきたことです。

もちろん、地域によって寒暖差がありますが、
おおむね生命が耐えられる温度の幅に維持されている。

実は、数十億年前と比較して、
現在の太陽の温度は30%も高くなっていることが
わかっています。

それでも気温が高くなりすぎないように、
地球はうまく自己調節してきているということなのです。


また、大気中の酸素濃度も過去8億年間、
ずっと21%に保たれてきています。

あと1%酸素濃度が高かったら、
山火事が消えることができず、
地球の森林は消滅してしまうと考えられています。

つまり、酸素濃度は、
極めて微妙なレベルに維持されてきています。


生命にとって「地球環境」は、
外部にある所与のものではありません。

生命もまた地球環境の形成・維持に
さまざまな形で寄与しているというのが真実。


ラブロック氏は、
観念的・抽象的な「神」の存在を
否定はしませんが、むしろ、
目に見え、感じ、理解することができる

「地球」

そのものを敬うことを勧めます。

そうすれば、私たちが何をすべきか、
また何をすべきでないかという道徳的な判断も
可能になると主張しています。


<ジェリー・ロペス>

ハワイ生まれの伝説的なサーファー。

彼の母親は日系3世で、

“イタクラ・ケン”

という日本名も持っています。


彼にとってサーフィンはダンスのようなもの。

サーフボードがパートナー。波が音楽。
波に乗ってダンスが始まるのです。


ロペス氏は、長年、
海という強大な大自然と共に過ごしてきた体験から、

“大自然には対抗できない。
 対抗しようとすれば悲惨な結果を招く。
 我々ができるのはともに歩むことだけだ”

と考えています。


<ジェーン・グドール>

ジェーン・グドール氏は、
チンパンジーが道具を使うことを
初めて発見した世界的に有名な霊長類学者です。

彼女は、実は1歳半の頃、
父親からチンパンジーのぬいぐるみをもらい、

ジュビリー(Jubilee)

と名づけて、肌身離さず大切にしてきました。

後にチンパンジー研究の道に入ることになるとは、
ジュビリーはまさに「予兆」だったと、
グドール氏は述べています。


彼女は、チンパンジーの生態観察のため、
最初、タンザニア・ゴンベの森に入り、
母親と共にテント生活をしていました。

森にずっと暮らしたおかげで、
彼女が気づいたことがあります。

それは、

森には「死」というものがない

ということです。

あるのは生命の循環だけ。


一本の木が倒れると、
そこから新しい命が育まれる。

「死」が次の「生」をもたらしてくれる
ということがはっきりわかるのです。


<名嘉睦稔(なかぼくねん)>

沖縄県・伊是名島生まれの版画家。

彼の作品のほとんどには、
伊是名島で毎日触れ合った、

豊かな色彩や奇妙な形

を持つ生物たちの独特のイメージが
刷り込まれています。


睦稔氏は、
子どもたちへのメッセージとして
沖縄に昔から伝わる、ある格言を
紹介しています。

それは、

「生(う)まりれぇー 同歳(ちゅとぅし)ん人(ちゅ)」

というものです。

この言葉は、この世に生を受けた者は、
子どもも、90歳のお年寄りも全て同じ年だと考えよ
という意味です。

なぜなら、いつ死ぬかは、
現在の年齢とは関係ないからです。

だからこそ、生きている今、この瞬間を
おろそかにしてはいけないのだということを
教えているのだそうです。

“この世界は本当にすばらしい、
 世界の子どもたち皆が幸せになったとしても、
 決して幸せが減ることはない”

睦念氏はこう信じています。


*GAIA SYMPHONY official site of jin tatsumura
 http://www.gaiasymphony.com/

*「地球交響曲」公式ガイド 四番

*地球交響曲第四番 スペシャルエディション【DVD】

投稿者 松尾 順 : 16:15 | コメント (0) | トラックバック

地球交響曲 -GAIA SYMPHONY- (3)三番

当シリーズ映画の基本コンセプトは、

「“母なる星地球(ガイア)”は、それ自体が一つの大きな
 生命体であり、我々人類は、その大きな生命体の一部分として、
 他の全ての生命体と共に、今、ここに生かされている」

というもの。

世界の賢人たちへの取材を通じて、
ガイアの思想が決して妄想でないことを
実感させてくれます。


今回は、1997年に公開された「三番」をご紹介します。


<星野道夫>

アラスカの大自然や人をモチーフに
私たちの目をひきつけて離さない写真を
数多く残した星野道夫氏。


彼は、1996年8月8日、
ロシアのカムチャツカでヒグマに襲われ、
この世を去ります。

同年9月から、第三番の出演者として、
取材が始まる直前のことでした。

したがって、第三番は、
星野氏と親しくしていたアラスカの友人たちによる、
星野氏の回顧録的な内容になっています。


実は彼は、アラスカの少数民族、
クリンキット族から、

「カーツ」

という名前をもらっていました。

「カーツ」は、クマの父親、
人間の母親を持つ伝説上の存在です。

クリンキット族はクマを崇める一族であり、
星野氏は、その一族として認められたのでした。

皮肉なことに、
星野氏はクマに襲われて命を落とします。

友人たちはこの悲劇について、

“道夫は自らの命をクマに捧げたのだ”
“道夫は、クマのことを悪くは思っていない”

と考えることで、
かけがえのない友を失った気持ちの整理を
しています。


でも実際、星野氏自身は、
次のように語っているのです。

“一撃で人を倒せるクマの力を知ると、
 そんな自然がまだこの地球にあると
 わかって、ちょっとほっとしますね・・・”


<フリーマン・ダイソン>

天才物理学者。

弱冠24歳で、相対性理論と量子力学を統合する方程式、

「ダイソン方程式」

を発見します。

ダイソン氏は、地球は、
月の表面のように単調ではなく、
多様な命で満ち溢れているからこそ
美しいのだと述べています。


そして、ダイソン氏は、
この美しい地球を今のままで残すためには、
人類は宇宙に移住すべきであると考えています。

彼によれば、この宇宙移住は、
数千年以内に実現するだろうとのこと。
(それまで地球がもつでしょうか・・・?
 私個人としてはそれでは手遅れのような気がしますが)


<ナイノア・トンプソン>

トンプソン氏は、ハワイの先住民族です。

彼が最初に学んだ言葉はハワイ語です。
そして、小さい頃は先住民族の文化に
囲まれて育ちました。

ところが、学校に入ったとたん、
ハワイ語を話したり、フラダンスを踊ると
ムチで叩かれ、止めさせられるという経験を
しています。


さて、ハワイの先住民族の祖先は、
南方のミクロネシアから、数千年前、
太平洋5千キロをはるばる航海して
やってきたと考えられていました。

しかし、そんな昔の素朴な航海技術では、
5千キロも離れた島からやってこれるわけが
ないと、この可能性は否定されていたのです。


そこで、トンプソン氏は、
太陽や月、星、風、波などの自然の様子だけで
船の位置や方角を推測し、進路を決定する
ナビゲーション技術を学びます。

そして、1980年、500年ぶりに復興した
遠洋航海カヌー「ホクレア号」のナビゲーター
として、海図や磁石、羅針盤等を一切使うことなく、
ハワイ=タヒチ間の往復航海に成功したのでした。


彼は、心の中に目的地である島をはっきりと
イメージすることの重要性を説きます。

月も星も隠された曇天の夜、
風も吹かず、波も見えない漆黒の闇の中を
漂う船上でどうやって進むべき方向を知るのか?

それは、目で見ようとすることではなく、
自分の内面に気を集め、外界の自然を感じること
によって、見えない島をビジョンとして描き出す
ことによってです。

心の中の島の存在を本気で信じることができれば、
道を失うことはありません。


トンプソン氏は、子どもたちにも、
見えない島への航海に出て欲しいと願っています。

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*「地球交響曲」公式ガイド 三番

*地球交響曲第三番 スペシャルエディション【DVD】

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地球交響曲 -GAIA SYMPHONY- (2)二番

当シリーズ映画の基本コンセプトは、

「“母なる星地球(ガイア)”は、それ自体が一つの大きな
 生命体であり、我々人類は、その大きな生命体の一部分として、
 他の全ての生命体と共に、今、ここに生かされている」

というもの。

世界の賢人たちへの取材を通じて、
ガイアの思想が決して妄想でないことを
実感させてくれます。


今回は、1995年に公開された「二番」をご紹介します。


<佐藤初女(はつめ)>

厳格な士族の娘として生まれた佐藤さんは、
若い頃、結核に苦しみました。

ある時、「薬」では自分の病気は治らないと
悟った佐藤さんは、地元で取れる自然の食材を
使った食事を通じて健康を回復するのです。


佐藤さんが、
青森県の岩木山のふもとに開設した

「森のイスキア」

には、全国から、
苦しみや悲しみを抱えた人がやってきます。


佐藤さんは、素朴な、しかし、
自然の恵みにあふれた食事を彼らにふるまい、
ただそばに寄り添うだけです。

ところが不思議なことに、
彼らは生きる勇気をもらい元気に帰っていきます。


佐藤さんは「めんどくさい」というのが嫌いです。

何事も、ある程度の線まではみんなやる。
しかし、そこで「めんどくさい」とやめてしまう。

佐藤さんはめんどくさがらず、
その線を超えるまでがんばるのです。

また、「今日」と「明日」が同じなのもいやです。

ちょっとでもいいから違っていたい。

そのために佐藤さんは日々の生活の
細かいことにも、決して手を抜くことがありません。


この映画で紹介される
青森県・弘前の四季の移ろいは本当に美しいです。


<ジャック・マイヨール>

1983年、56歳の時、ジャック・マイヨールは、
素潜り(フリーダイビング)で

105m

という世界記録を樹立します。

ちなみに、同等の競技(コンスタント・ウェイト)
の現在の世界記録(男)は122m。日本記録は105m。


マイヨール氏は子どもの頃、
佐賀・唐津の海で海女の子どもたちと
泳いでいました。

ある日、近くに寄ってきたイルカと
マイヨール氏の目が合った瞬間、彼は閃きます。

「将来、自分はイルカと一緒になにかやることになる」

と・・・


さて、マイヨール氏は、

「生」と「死」

は、「表」と「裏」の関係だと考えています。

例えば、赤ちゃんは、
生まれる時、「死」を通過してくるのです。

すなわち、母親とつながっていた

「へその緒」

を切られます(これが死)。

しかし今度は、

「呼吸」

によって母なる大宇宙とつながる。
大宇宙という子宮に戻るようなものだと、
語っています。


彼の夢は、

「イルカの老人ホーム」

を作ることでした。

すなわち、水族館で長年人間に
奉仕させられてきたイルカたちが、
余生をゆっくりと送れる場所を提供すること。


残念ながらマイヨール氏は2001年に
自らの命を絶ち、イルカの老人ホームが
実現することはありませんでした。


<フランク・ドレイク>

ドレイク氏は、

ET(地球外生命体)

の存在の可能性を示した

「ドレイク方程式」

で有名です。


ドレイク方程式によれば、
私たちが交信可能な宇宙人(宇宙文明)の数は、

最低20万~最大200万

と考えられます。

ただ、過去半世紀にわたて続けられてきたものの、
宇宙人の存在を立証できるデータは、
まだ入手できていないようです。

ひょっとしたら、米国政府が
隠しているのかもしれませんが・・・

余談ですが、米国人が、米国政府に
開示を求める資料のトップに来るのは、
宇宙人についての極秘資料です。


ドレイク氏は、宇宙人に会いたい理由を
次のように語っています。


“自分が何者であるかを知りたいのです。
 そして、これから人間はどうなっていくのか
 また、地球に人間が登場した理由を教えてほしい。
 彼らは我々よりもはるかに進化しているはずですから”


<14世 ダライ・ラマ>

14世ダライ・ラマは、
13世の生まれ変わりとして2歳の時発見され、
4歳で法王に即位。

法王は、自分の小さい頃を振り返り、
ダライ・ラマとしての修行は厳しいものだったが、
いつもいたずらをしたり冗談ばかり言う子ども、
つまり、

「ふまじめダライ・ラマ」

だったと自らを茶化しています。


法王は、チベット人の典型的な気質として、

穏やか、ほがらか、友好的、平和的

といった点を挙げます。

こうした気質が育まれる背景には、
仏陀の教え、特に、

「全ての生きとし生けるものに尽くす」

という大乗仏教の教えがあります。


法王の夢は、

「チベットを世界の人のための平和と癒しの地にすること」

です。

このためには、チベット人一人ひとりが
平和な心を持つ必要があります。ですから、
教育に最も力を入れているのだそうです。


法王は、
地球の未来に対してとても楽観的です。

私たち人類の知性によって、
問題は解決できると確信しています。


ただし、全ての人たちの

地球的規模での気づき

が必要だと法王は強調します。
この世界は全てがつながりあっているからです。


法王自身も、

自分にできることを精一杯やるだけ

だと語っています。


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*「地球交響曲」公式ガイド 二番

*地球交響曲第二番 スペシャルエディション【DVD】

投稿者 松尾 順 : 11:15 | コメント (0) | トラックバック

地球交響曲 -GAIA SYMPHONY- (1)一番

当シリーズ映画の基本コンセプトは、

「“母なる星地球(ガイア)”は、それ自体が一つの大きな
 生命体であり、我々人類は、その大きな生命体の一部分として、
 他の全ての生命体と共に、今、ここに生かされている」

というもの。

世界の賢人たちへの取材を通じて、
ガイアの思想が決して妄想でないことを
実感させてくれます。


今回は、1992年に公開された「一番」の中から、
印象深いところを抜粋してご紹介します。


<野澤重雄氏>
野澤氏は、たった一個のトマトの種を
巨木のように大きくし、1本のトマトの木から、
13,000個以上の実をつけることを実現した植物学者。
(普通に育てたトマトになる実は、
 1本あたり60個くらいだそうです。)

トマトの巨木を育てるのに、
野澤氏は、農薬も遺伝子操作も行いません。

水耕栽培によって、
最初からたっぷりと水分と養分を与える。

すると、トマト自身がそのような環境に
あることを把握し、その生命力を大きく
発揮するのだそうです。

大事なのは、まだものごころがつかない
小さな芽のうちから、

「大きく育っていいんだ!」

ということをトマトに感じさせることなのです。

あらゆる生物は、
周囲の環境を明確にキャッチし、
その環境に適応しようとします。

小さな鉢に植えられた盆栽が、
庭に植え替えられたとたん大きく育つのは、
外部環境の「許容度」みたいなものを
ちゃんと感じていることの証拠でしょう。


野澤氏によれば、現在の科学ではまだ、
1本のトマトが13,000個もの実をつけることを
うまく説明できないのだそうです。

科学は絶対ではありません。

自然の高度なメカニズムは、
現代の科学の枠を超えたところにあります。

野澤氏は、科学者と一般人が一緒になって、
このかけがえのない地球の自然環境を守っていく
べきだと考えています。


<ラッセル・シュワイカート>

シュワイカート氏は、
アポロ9号に乗った元宇宙飛行士。

宇宙飛行士になる前は、
原子爆弾を積んだ戦闘機のパイロットでした。

当時、彼は東南アジアの有事に
備えていたのですが、
もし原子爆弾の投下命令を受けたら、

・自分は投下するだろうか
・何を基準に投下するのか

をいつも考えていました。

ただ、考えた結論は、いつも

「投下する」

ということになったのだそうですが。
(シュワイカート氏は、広島に何度か訪れて、
 日本の原爆被害者に追悼を捧げています)

さて、シュワイカート氏は、
宇宙からみた地球の美しさに驚嘆し、
人生観が変わってしまいました。

彼は、宇宙で彼が感じた気持ちを説明するのに、
スペースシャトルに搭乗したサウジアラビアの
サウド王子の言葉を引用しています。

“宇宙に行って1日目、まず自分の国を探す。
 3日目には、自分の大陸を指差す。
 5日目、私たちはただひとつの地球を見るようになる”


シュワイカート氏は、人類が宇宙に飛び出すのは、
母なる地球という子宮から生まれ出るようなもの
と考えており、

「宇宙的誕生(Cosmic Birth)」

と言う言葉を使っています。


<ラインホルト・メスナー>

メスナー氏は、世界の8,000m級の高山すべてを
単独・無酸素での登頂に成功したスーパー登山家。

高度8,000mは、
およそ生命の存在を許さない死の世界。

なぜ、メスナー氏は、
そんな死の世界に無酸素で挑戦したのでしょうか?

山を征服したかったのではありません。
自分が登れるということを証明したかった
わけでもない。

一言でいえば、自分を知りたかった。

自分という有限の肉体、ハダカの肉体を試し、
どれだけ命の可能性を拡げられるかを
確認したかったのです。

メスナー氏もまた
極限への挑戦を通じて、
自分が大自然の一部であることを
強く実感しています。


そして彼は、人間にとって

・スピリット(霊的な魂)
・マインド(理知的な心)
・ボディ(物理的な肉体)

の3つの要素の調和が大切だと感じています。

もし、病気などボディに問題があれば、
スピリットやマインドも影響を受けます。

結局のところ、人は3つの要素のうち、
一番弱いところを基準に生きるしかないと
メスナー氏は考えているのです。


<ダフニー・シェルドリック>

シェルドリック氏は、
密猟者によって母象を殺され孤児となった
「小象」を引き取って育てる

「動物孤児院」

を数十年にわたって運営してきました。


シェルドリック氏によれば、
象の一生は人間ととてもよく似ています。

20歳くらいで成年に達し、
60-70歳くらいまで生きます。

象は、その長い敏感な鼻と大きな耳で、
人間には感知できない匂いや音を聞き分け、
また遠方の仲間たちと交信(テレパシー)を
行うことができます。

しかし、アフリカの厳しい自然で
生きていくためには、オトナの象から多くのこと
を学ばなければなりません。

象の群れを率いているのは、
面白いことに年寄りのメスの象だそうです。

長老的存在のそのメス象は、
いつ乾季がやってくるのか、
乾季の時どこに行けば水にありつけるかと
いったことを知っていて自分の群れを安全に
率いるのです。

シェルドリックが育てた小象は、
最終的には野生に戻すします。

その手伝いをしてくれるのが、
やはり2歳の頃に引き取り育てたメスの象、

「エレナ」

です。

エレナは既に30数歳となっていますが、
ひときわ母性愛が強く、シェルドリック氏の
ところで育てられ、乳離れをした2歳過ぎの
小象を預かり、大人になるまで野生の中で
彼女が育て上げてくれるのだそうです。

エレナを深く愛しているシェルドリック氏の願い、
それは、彼女が自分の赤ちゃんを産むことだと
語っています。


<エンヤ>

アイルランド出身の歌手、エンヤは、
自分自身を

“現代に「ケルトの魂」を伝える音楽家”

だと自覚しています。

ケルト人は、
ヒマラヤのふもとからヨーロッパに
移り住んだといわれる民族。

後に、アングロサクソン、ゲルマン民族などに終われ、
主にアイルランドの地でその文化を守り伝えてきています。

ケルト人は、
全ての自然現象の中に神が宿ると考え、
自然との調和を重視しました。

(日本の「八百万の神」と似ていますね)

エンヤの音楽を聞くと、
そんな自然との一体感が感じられます。

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投稿者 松尾 順 : 14:30 | コメント (2) | トラックバック

地球交響曲 -GAIA SYMPHONY- (0)イントロダクション

『地球交響曲 -GAIA SYMPHONY-』

は、現在6本(第6番)まで制作されたドキュメンタリー映画。
(最近、7本目の撮影がクランプアップしてます)


このシリーズ映画を貫いている

「メインテーマ」

は、監督の龍村仁氏によれば、

「地球の中の私、私の中の地球」

です。

様々な分野で偉業を成し遂げ、
あるいは活躍している人々への丹念な取材を通じて、
地球はひとつの生命体であると考える

「ガイア理論」

の視点から、地球の未来、今後の人類の歩むべき道について
多くの示唆を与えてくれる内容となっています。


当映画は一般の映画館で公開されたことはありません。

今も全国各地で開かれている自主上映会によって、
人々の目に触れ、多くの共感者を獲得してきています。


私も5年ほど前に自主上映会で見て感銘を受け、
後にDVD化された6本の作品を自宅で繰り返し見ています。

見るたびに新たな発見があります。

またなんともいえない不思議な感慨が、
私の胸を満たします。

おおげさな言い方になりますが、
一個人としてではなく、「ガイア」のちっぽけな
ひとつの構成員に過ぎない「人類」としての覚醒が
もたらされられるといったところでしょうか・・・


どなたでも一度は見る価値のある映画だと、
私は感じています。

そこで、今日からしばらく、
1992年に公開された第1番から最新の第6番まで、
毎日1本ずつ、その内容を簡単にご紹介していきます。

目先のビジネスには役立ちませんが、
まあ、お盆の時期くらい、仕事とは直接関係ないけれど、
私たちの未来に深い関係のあるテーマについて考えて
みるのもいいんじゃないでしょうか?


今回は、これまでのシリーズに登場した主な著名人を
紹介して終わりにします。


<第一番>

・野澤重雄(植物学者)
・ラッセル・シュワイカート(元宇宙飛行士)
・ラインホルト・メスナー(登山家)
・ダフニー・シェルドリック(動物保護活動家)
・エンヤ(ミュージシャン)
・鶴岡真弓(美術史学者)

<第二番>

・佐藤初女(森のイスキア主宰)
・ジャック・マイヨール(海洋冒険家)
・フランク・ドレイク(天文学者)
・14世ダライ・ラマ方法(チベット仏教最高指導者)

<第三番>

・星野道夫(写真家)
・フリーマン・ダイソン(宇宙物理学者)
・ナイノア・トンプソン(外洋カヌー航海者)

<第四番>

・ジェームズ・ラブロック(生物物理学者)
・ジェリー・ロペス(レジェンド・サーファー)
・ジェーン・グドール(野生チンパンジー研究家)
・名嘉睦稔(木版画家)

<第五番>

・大野明子(産科医)
・石垣昭子(草木染織作家)
・アーヴィン・ラズロ(哲学者、物理学者、音楽家)

<第六番>

・ラヴィ・シャンカール(インド音楽家)
・ケリーヨスト(ピアニスト)
・ロジャーペイン(鯨の歌を解析した研究者)


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投稿者 松尾 順 : 13:02 | コメント (0) | トラックバック

買物難民を救え!

落語家の桂ざこば師匠が、
今年10月、免許証が切れるのを契機に、
「運転免許」を返上するつもりだそうです。
(桂ざこばのざっこばらん、日経MJ、2008/08/07)


ざこば師匠はまもなく62歳。

年のせいか、運転能力の低下を
感じるようになったのが返上理由です。

まだ60歳そこらなのに、
もう運転免許を返上するとは、
ずいぶん気が早いなあ・・・と思います。


でもまあ、ざこば師匠は毎日のように
酒を飲んでますし、いざとなれば、
弟子たちなどに送り迎えさせることも
できるので、自分で車を運転できなくなっても、
それほど困らないのでしょう。


しかし、地方にすむ高齢者にとって、
自分の車がない、また、自分で運転できないことは、
まさに死活問題に近いものがあります。

これは、日常の「買い物」が「おおごと」に
なってしまうという意味です。


たとえば、私の両親が住む福岡の実家は、
田園地帯の集落にあります。

近くに商店街は存在しません。

幸い、徒歩3分ほどのところに、
私が生まれる前からやってる「よろずや」的
個人商店があるものの、最寄りのスーパーまでは、
車でないととても行けません。

もし、父(75歳)が将来運転免許を返上してしまったら、
佐賀に住む弟に来てもらうか、タクシーを呼ばないと、
かさ張る系の買い物はできなくなってしまいます。


帯広大学畜産大学教授、杉田聡氏は、
歩いていける距離に商店がなく、また車を自分で
運転できないことが原因で、買い物に困っている
高齢者の実態を足かけ7年かけて調査しました。
(日経新聞夕刊、2009/08/06)


杉田氏は、買い物に困っている高齢者を

「買物(かいもの)難民」

と名づけています。


買物難民が発生した背景には、
自動車の普及によって郊外に大型店が展開したため、
客を奪われた地元の個人商店や商店街が衰退・消滅して
しまったことがあります。


全国13市町村、65歳以上の1人暮らし、または夫婦だけの
高齢者を対象に行った、杉田氏のアンケート調査結果によれば、

・買い物の行き来に苦労を感じていると答えた人が5割、
 75歳以上になるとこれが6割にアップ

・車が運転できるなど、現在買物難民でない人も、
 4人のうち3人が今後の買い物に不安を抱いている

といった現状が明らかになっています。


さて、以上の話を聞いて、
さまざまなビジネスチャンスの存在を
感じられた方が多いのではないでしょうか?

高齢者の買い物をサポートすることは、
社会的にも意義のあることですし、
相応の対価もいただけるでしょうから、
事業として成立する可能性も高いですからね。


大手スーパーなどが、
インターネットで注文を受け、
戸口まで配送する

「ネットスーパー」

に続々と乗り出してきているのは、
社会的要請と事業としての魅力の両方が
高まってきたからだといえます。


ただ、高齢者の場合、
ネット・リテラシーが高い人は少数派ですね。

そこで、PC経由だけではなく、
電話で注文を受けたオペレーターが、
高齢者の代りにWebサイトを操作して
注文を完了するサービスを提供している
ところもあります。


また、個人宅に商品を届けるのではなく、
自宅近くからお店まで格安料金(片道100円など)で
送迎バスを毎日運行している大型店もありますね。


「買い物付き添いタクシー」の展開もありでしょう。
(以前からやってる会社ありますが・・・)

ただ、現行の料金システムでは割高になるため、
利用が進まないと思われます。

しかし、福岡で営業している

「遠賀タクシー」

のように、独自の料金システムを持ち、
乗客がこの仕組みを理解してうまく使いこなせば
従来よりもはるかに安い料金で乗れるような
タクシー会社が増えれば、買物難民にとって
救世主になるかもしれませんね。


遠賀タクシー(Wikipedia)

投稿者 松尾 順 : 14:56 | コメント (1) | トラックバック

祝福を受けた不安

先日、長期宇宙滞在から帰還した若田光一さんは、

“人類は進化できる。1カ月も経過したら宇宙の過酷な
 環境にも適応できた”

とコメントしていました。


若田さんは、人類が永遠に生存するために、

「宇宙開発」

はリスクはあっても取り組む価値のある
重要な仕事だと考えています。


私の個人的な解釈ですが、
人類を含む「地球」というひとつの生命体を
存続させるためには、

「人類の一部が宇宙に移住するしかない」

という考えが若田さんにもあるのではないでしょうか?


以前と違って、もはや地球は、
過剰に増加し、また資源をムダに消費するばかりの
人類を支えきれないからです。

地球をサスティナブル(持続可能)な状態にしておくためには、
生態系として完全に循環可能なレベルまで社会・経済活動を
抑える必要があります。

もし、それが難しければ、地球外の未開拓の資源を求めて、
私たちは宇宙に新たな生息地を見つけるしかないのかも
しれません。


とはいえ、まだ希望は残されています。

現在の地球が抱える様々な問題に立ち向かっている、
草の根的な活動が世界のあちこちで活発化しつつある
からです。

こうした活動は、生命体が備えている

「免疫システム」

のようなものだと指摘するのは、
環境活動家、起業家、ジャーナリストの

ポール・ホーケン氏

です。


ホーケン氏は、著書

『祝福を受けた不安』

の中で次のように書いています。

“数十万もの非営利組織で行われている活動は、
 政治腐敗、経済的困窮、環境悪化という
 「外部からやってくる毒」への免疫反応として
 見ることが可能だ”

“免疫システムが組織の長年にわたる永続性を
 保つために内的防御を行うのと同じく、サステナビリティ
 (持続可能性)の思想は人間にとって長きにわたって
 存在しつづけるための戦略なのである”


天然資源破壊や、ゴミ廃棄物の増加、文化の根絶、
労働者搾取といった私たちが抱える問題は、
人体にとっての肝炎やガンのようなものなのです。

病気に対して人体は、
体内のあちこちに分散している免疫システムが
ネットワークで連携しながら対抗します。

同様に、環境運動を始めとする世界各地の社会活動は、
インターネットや携帯電話など、デジタル革命のおかげで、
実に容易に連携可能になりました。

ひとつひとつの組織は多くは小規模で、
けっして強くありませんが、お互いに連携しあうことで、
地球・人類が苦しんでいる病気に立ち向かう力を得つつ
ある、と言えそうです。


先日、邦訳が出たばかりのホーケン氏の
『祝福を受けた不安』は、ひとことで言えば、

「着実に進行している各種社会活動の最新報告書」

です。

同書で取り上げられている様々な社会活動は、
もちろんメインストリームではなく、まだ周辺部で
うごめいているだけの目立たないものがほとんど。

しかし、じわじわとその勢力を強めていることが、
同書を読むと実感できます。


『祝福を受けた不安』は、
内容自体は確かに難しいのですが、
とても読みやすく書かれています。

あまり環境活動等に興味のなかった方も
面白く読めるのではないかと思います。


今後の社会の進化の方向性を「読む」上で、
アーヴィン・ラズロ氏の著作と並んで
必読書のひとつといえるかと思います。


『祝福を受けた不安』
(ポール・ホーケン著、阪本啓一訳、バジリコ)

投稿者 松尾 順 : 13:15 | コメント (0) | トラックバック

「ロゴス文明」から「ホロス文明」への社会進化

「地球は、“ひとつの生命体”であり、
 地球に存在するすべての物質や生命は、
 相互に結びつき、関係し合っている」


ジェームズ・ラブロック氏の「ガイア理論」では、
上記のような考え方を提唱。

当初は多くの学者たちから強烈な批判を受けましたが、
現在は、ほぼ「定説」となりました。


そしてまた、

「物質も生命もすべてが結びつき合っている」

ということ、言い換えるなら、

「天地同根万物一体」

であるという点は、
最新の量子物理学の枠組みにおいて、
説明可能であることがわかってきています。


ですから、私たちが時折感じることのできる、
気の合う仲間たちとの一体感、あるいは、
大自然に囲まれたときに沸々と湧いてくる
動植物たちとのつながり感は、

「スピリチュアルな幻想」

に過ぎないのではなく、
科学的に説明できるリアルな現象と言えます。


さて、この一体であるはずの地球を、
その構成員でありながら、崩壊させつつあるのが、
私たち「人類」ですね。

こうした警鐘もまた、つい最近までは、

“極端なエコロジー思想にとりつかれた人々の
「たわ言」に過ぎない”

と無視したり、バカにする人がほとんどでした。


しかし、もはや、市井の一般人でさえ、

「なんか地球、まずいことになってきてるぞ・・・!」

という実感を禁じえないほどの状況にまで
来てしまったように思います。

そして、従来の考え方、生き方を続けるわけに
はいかなさそうだと、誰もが明確に自覚しつつあります。

「包括的進化論(GET)」の紹介記事で
述べたように、現在、私たちは、

「社会」や「精神」の新たな進化

が求められる「岐路」に立っているわけです。


アヴィーン・ラズロ氏によれば、
現在の私たちは、

「進化か絶滅か」

という地球規模の転換点=マクロシフトに
近づきつつあると述べています。

そこで、ラズロ氏は、
望ましい社会の進化の方向性として

・現在の権力と征服を重視する「ロゴス文明」(理性重視文明)

から、

・個人の成長と、人間のコミュニティと生物圏の持続可能性
 を核とした「ホロス文明」(全一性重視文明)

への移行を提唱しています。


ホロス文明は、
既にその芽が大きく成長しつつあります。

そして、この文明をリードしているのが、
例えば、社会学者のポール・レイ氏が消費者調査に
基づいて提唱した

「文化的創造性を持つ人々」(Cultural Creatives)

であり、日本なら、
消費社会研究家の三浦展氏が命名した

「シンプル族」

だと言えるでしょう。


ホロス文明の主役になるであろう彼らは、
現在は依然として周辺部にいる人々であり、
決して主流派ではありません。

しかし、消費動向において、
明確な徴候を捕捉できるくらいの規模まで
じわじわと増えてきています。

ですから、ビジネスの視点で言えば、
企業が、ロゴス文明からホロス文明へと、
その基本思想を切り替えることができない限り、
これからの消費者の心を動かす商品開発や
コミュニケーションはできないということが
言えるのではないでしょうか?


『グローバルブレイン 未来への鍵‐地球崩壊を止めるために
 よりよい世界へ向かう世界頭脳のクォンタムシフト』
(アーヴィン・ラズロ著、吉田三知世訳、バベル・プレス)

『シンプル族の反乱 モノを買わない消費者の登場』
(三浦展著、KKベストセラーズ)

投稿者 松尾 順 : 13:39 | コメント (2) | トラックバック

包括的進化論 - GET( General Evolution Theory) - 後編

ダーウィンが提唱した「進化論」では当初、
自然淘汰を通じて、生命の種の進化は段階的に起こる、
つまり‘少しずつ’変化していくと考えられていました。

このことについて、ダーウィンは、
植物学者のリンネに倣って、

“自然は跳躍しない”

と断言しています。


しかし、研究が進むにつれ、

「進化は跳躍的である」

という説の方が有力となってきています。


既存の種は存続している間、
ほとんど変化(=進化)しないのです。

そして、外部環境の変化に伴い、
それまで優勢だった既存の種が適応困難となり、
絶滅の危機へと追いやられます。

一方、周辺部で偶然に出現した新種や亜種が、
新しい環境で優勢となっていくのです。

こうして、既存種から新種・亜種へと

「進化の跳躍」

が起こるというわけです。


では、社会全体の進化について考えてみましょう。

社会の場合も、生命と同様、
次のような進化のプロセスが観察されるのです。

中心部に居座り、優勢な大多数を占める

「変化しない人間」

が大きな環境変化に直面して不安定な状況になります。
(しかしなかなか変わろうとはしない)

一方で、周辺部に孤立させられていた

「少数の人間」(おそらく奇人・変人と呼ばれた人たち)

が、環境変化に乗じて多数派に挑戦し、
中心部へと侵入して、ついに多数派を追い出して
しまうのです。


これは企業の栄枯盛衰をイメージすると
わかりやすいでしょうね。

以前、日経ビジネスが、

「会社の寿命30年説」

を提唱しましたが、実際、ひとつの企業が
その時々の環境変化に柔軟に対応し、
段階的な進化を長期的に続けるケースは、
あまり多くありません。

ほとんどの場合、既存の企業は滅び、
新しい時代に適応可能な新興企業が取って
代わります。


アーヴィン・ラズロ氏は、
社会の変化もこのように跳躍的であり、
稀にしか起こらないこと、
そして、進化を引き起こす

「きっかけ」(誘引)

としては、大きくは以下の3種類がある
と述べています。

*新しい種の誕生をもたらすという意味で
 「分岐」という言葉をラズロ氏は用いています。


1 T分岐

新しい技術の登場によって、
既存の社会が不安定となります。

そして、新しい技術を積極的に導入した
人間たちが形成した新しい社会が古い社会
を呑み込んでしまうものです。

いわゆる産業革命が典型的なもの。

20世紀末から始まったデジタル・インターネット革命
もまた、私たちの社会を根底から作り変えつつあります。


2 C分岐

様々な紛争によって誘引された進化。

いわゆる政治的な革命です。
国際的な戦争や内戦が伴う場合もあります。

「革命」は、

「旧体制」

を不安定化させた脅威や難問に対応できるような、
制度、行動、価値観を作り出すという機能を
担っているようだ、とラズロ氏は指摘しています。


3 E分岐

経済危機や社会危機によって誘引される進化。

まさに今、私たちが経験している経済危機も
そのひとつかもしれません。

しかし、目先の「経済危機」以上に深刻であり、
適切な「社会の進化」(さらに言えば「精神の進化」)
が求められる誘引があります。

それが

「地球環境問題」

です。


地球は、ひとつの生命体であり、
自己調節機能を持っているという考え方があります。

これは「ガイア理論」と呼ばれるもので、
地球の環境(空気の組成や気温など)を

生命に適した一定のレベルに維持する力

を地球全体として持っているというものです。


ところが、人間は、社会の進化の過程において、
まるで、地球は人間の占有物であるかのように扱った結果、
地球が持っていた自己調整機能を破壊しつつあります。

その悲観的な末路はもちろん人類滅亡ですね・・・


私たちは、自らがもたらしたものですが、
人類史上最大の危機といえるE分岐上にいます。

周辺部にいた地球環境保護を重視する人たちが
中心部へと勢力を拡げ、利己的な利益を重視し、
むやみな経済発展を推進してきた多数派の人々を
蹴散らしつつある。

私たちは、E分岐による跳躍的な社会進化を
今体験し、また目撃しているのだと言えるのかもしれません!


(参考書籍)

『進化の総合真理』
(アーヴィン・ラズロ著、吉田三知世訳、バベル・プレス

『ガイアの復讐』
(ジェームズ・ラブロック著、竹村健一訳、中央公論新社)

投稿者 松尾 順 : 13:35 | コメント (0) | トラックバック

包括的進化論 - GET( General Evolution Theory) - 前編

私たちが

「進化」

という言葉を聞いた時、ほとんどの方は

「生物の進化」

をイメージするかと思います。


まあ、最近は、

「ウェブ進化論」
「プロフェッショナル進化論」
「ブランド進化論」
「読書進化論」

といったように、
比ゆ的に使われるケースも多いので、
人によってずいぶん違ったイメージが
湧くかもしれませんね。


さて、「進化」という言葉が表す

「変化のパターン(の共通性)」

に着目し、宇宙全体のあらゆる事象に適用可能な、
拡張された概念としての、新しい「進化理論」が
提唱されているのをご存知でしょうか?


これは

包括的進化論 - GET( General Evolution Theory) -

と呼ばれています。(以下「GET」)

当理論の創始者は、ピアニストかつ哲学者の
アーヴィン・ラズロ氏。


ラズロ氏は、

「進化の総合真理」(バベルプレス)

の中で、次のように述べています。

“この新しい「進化」の概念が意味するのは、
 生物の進化だけではなく、我々が知っているものと
 しての宇宙のなかで、出現し、存続し、変化し、
 また消滅する、すべてのものの進化である”


そして、GETについては、

“ある学問が科学と呼ばれるに必要な、
 基本的な規範を満たしており、日々経験する無秩序と
 思える様々な出来事の根底にある、包括的・網羅的
 かつ一貫性のある意味を見出すことを目指している”

のだそうです。


ラズロ氏は前掲書において、
以下の4つの領域の進化プロセスについて
詳述しています。

1 物質

 宇宙の誕生から始まる物質の形成プロセス

2 生命

 生命の誕生以来、今日に至るまでの生物の進化プロセス

3 社会(歴史)

 特定の関係にある人間の集合からなるシステム(系)
 である社会の存続、発展、消滅のプロセス
 
4 精神(mind)

 端的には、知覚や思考、感情、想像、価値観などの経験
 を意味する「精神」の進化プロセス


さて、私が、
「GET」に対して興味を抱いた理由は2つあります。

ひとつは、今後の社会や個人の大きな変化の方向性を
予測するのに役立つだろうということ。

(それは、最終的には日々の人々の消費行動・社会行動
 にも反映されてきます)

もうひとつは、「地球温暖化」、「人口爆発」など、
人間を含む生命圏全体の絶滅につながりかねない

危機的状況(人間自らが招いたものですが)

において、まさに大きな

社会的進化・精神的進化

が求められている今、
どのような進化が求められるのかという

理想像

を描くために活用可能であることです。


ラズロー氏も、

“今日わたしたちに与えられた課題は、
 「いかに進化するべきかを知れ」である”

と述べています。


GETは、まだ十分に確立された理論とは言えず、
また、私自身、理解が追いついていません・・・

したがって、現時点では、

「こんな考え方がありますよ」

という紹介しかできませんが、
今後のビジネス展開においても使える理論
ではないかと思っています。


後編では、社会の進化における
3つの典型的パターンについてご紹介したいと
思います。


『進化の総合真理』
(アーヴィン・ラズロ著、吉田三知世訳、バベル・プレス)

投稿者 松尾 順 : 12:31 | コメント (0) | トラックバック

飛ぶコンピュータ!

数年前、ISIS編集学校(松岡正剛校長)が主催した

「アイディアコンテスト」

がありました。

これは、某家電メーカーとのタイアップで行われたもの。


テーマは、

「超リモコン」

です。


テレビやエアコンなどに欠かせないリモコンですが、
現在のリモコンを

‘超える’

斬新なデザインや機能を持つリモコンのアイディアを
出すのが当コンテストの狙いでした。


そこで、私が当時提出したアイディアは、
ひとことで言うと、

「鳥(ちょう)リモコン」

でした。

「ダジャレ!」ありきではないのですが、
自分で空を飛べるリモコンなのです。

外見は、オウムくらいの大きさの小鳥。

人と自然文で対話しながら、
人とマシンの仲立ちをしてくれます。

好きな名前をつけて
ペットのように付き合える関係。


既存のリモコンは、
どこに置いたかすぐにわからなくなって
探すのが面倒ですよね。

でも、鳥リモコンは、

“リモちゃん、どこいるの?”

と呼びかければ、

“ハーイ、今行きます、ご主人さま!”

などと答えてすぐに飛んできてくれます。


さて、私の考えた「鳥リモコン」は、
ほぼ実現不可能な

「夢物語的アイディア」

のつもりでしたが、
類似のアイディアの実現にむけて
研究している方がいらっしゃるんですね。

つい最近知りました。


一日中、ウェアラブルコンピュータを身に付け、
頭にはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を
装着しているちょっと変わった先生、ご存知ですか?

時折、テレビなどにも登場されるこの先生は、

塚本昌彦氏(神戸大学工学部電気電子工学科教授)

です。


塚本氏は、見た目はいかにも

マッドサイエンティスト風(ほめ言葉)

ですね。なかなかクール!

そして、塚本氏が推進している

「飛ぶコンピュータ」

の研究も、塚本氏同様、実にユニークです。


同研究には、
ラジコンヘリで知られるメーカー、

「ヒロボー」

も協力しているそうです。


残念ながら、塚本教授の研究室等の
Webサイトでは、当研究の詳細や進捗状況に
ついての情報は少なめです。

しかし、ソフトバンクビジネス+ITでは、
詳しい記事が掲載されていますので
興味のある方はそちらをぜひご覧ください。
文末URL参照)


同記事によれば、現在開発中のものは、

“オリジナルの小型コンピュータに自立飛行用のシステムが
 搭載され、地上のマークを探し出してのホバーリングが可能。
 2メートル司法のスペースがあれば空中に浮遊することができる”

とのこと。

イメージとしては、

“飛ぶコンピュータは、まさしくドラえもんの出す小道具のひとつだ。
 ストーリーの中で、のび太がスネ夫やジャイアンの行動を監視する
 ために飛ばしている「目玉にアンテナが付いているロボット」”

だそうです。

ただし、他人を監視するのではありません。

上空をホバリングしながら付いて来て、
自分自身のための

“第三の目”

になってくれるのが、
塚本氏の考える飛ぶコンピュータです。

具体的な用途ですが、
例えば災害に遭って、生き埋めになった時、
自分の分身である飛ぶコンピュータが、
救助隊にご主人さまの場所を的確に伝えることができます。
(飛ぶコンピュータも巻き添えになってなければ・・・ですが)


あるいは、客観的な立場で。
あれこれ助言してくれる便利なアドバイザー機能を活用。

例えば、朝の身支度時には・・・

「そのスーツなら、ネクタイは赤が似合いますね」
「鼻毛が見えてますよ。切りましょう!」

また、ジョギング中には・・・

「そろそろ止めたいと考えてますね。ダメです。」
「もう少しがんばれば、目標体重クリアですよ!」

などと叱咤激励してくれるでしょう。

ちょっと「うざい」と感じるかもしれませんが、
自分のためでもありますし、特に単身者の方は、
ズバリ直言してくれる配偶者・パートナーが
いませんから、ありがたい存在になるのではないでしょうか。

ヒマで退屈な時には、

「かくれんぼ」

など、遊びにも付き合ってくれます。


塚本氏は次のように語っています。

“(飛ぶコンピュータは)ピーターパンに出てくるフック船長
 の肩に乗っているオウムのような役割を果たすことになる
 でしょう。 ただ、ハードウェアとしての便利さをもたらす
 だけでなく、時には毒舌をはき、時には慰めたり、励ましたり。 
 なくてはならない、かけがえのないパートナーになると思いますね。”


私は、オウムよりむしろ、

ど根性ガエルの「ピョン吉」

を連想しましたけどね。
(わかる人がどのくらいいるかな・・・?)


私は、よりよい人生を生きるために、
私たちがマスターすべき‘最も重要なスキル’は、

「自分を客観視できる力

だと考えています。

これは、しばしば

「メタ認知力」や「幽体離脱力」

とも呼ばれますが、
現実にはなかなかできないものですよね。

ですから私は、

「飛ぶコンピュータ」

の実用化に大いに期待しているのです。


*参考記事

『関西流ベタベタIT商法の挑戦』
(合同会社関西商魂代表、中森勇人氏、
 ソフトバンクビジネス+IT)

夢を実現するナニワのエジソン(前編)
夢を実現するナニワのエジソン(後編)


*飛ぶコンピュータ PROJECT


*塚本昌彦氏関連サイト

Tsukamoto lab.
チームつかもと


*ヒロボーグループ Webサイト


*ISIS編集学校

*関連記事

『メタ認知力を磨け!』

投稿者 松尾 順 : 15:46 | コメント (0) | トラックバック

ブルーオーシャン戦略の要諦

このところ注目を集めている新しい経営戦略、

「ブルーオーシャン戦略」

はどんなものか、ご存知ですか?


関連書籍を読んでみたけど、
けっこう難しくて、あまり理解できた気がしない
という人もいらっしゃるでしょう。


そこで、ブルーオーシャン戦略(以下「BO戦略」とします)
についての理解を深める上で役に立ちそうなポイントを
私なりにまとめて、ご紹介したいと思います。

なお、参考にしたのは、末尾に示した参考図書2冊と、
池上重輔氏(早稲田大学大学院商学研究科 准教授)
の夕学五十講での講演内容です。

---------------------------------

(1)BO戦略は、「戦略理論」である。

BO戦略は、30を超える業界で過去20年の間で見られた
150以上の戦略の打ち手を調査・研究した中から抽出された

「新たな市場創造ための基本的な成功パターン」

です。すなわち、「抽象化された理論」であり、
決して「必勝」を約束するものではありません。

しかし、この成功パターンを自分の業界・業種に適用し、
再現する確率を高めることを可能にする各種ツールが
用意されています。

---------------------------------

(2)BO戦略は、「市場創造戦略」である。

私たちがこれまでなじんできた戦略は、
マイケル・ポーターが確立した「競争戦略」です。

競争戦略は、既存の市場の中で、
他社と同じ競争の軸で戦うための理論ですね。

競争戦略の枠組みでは、
企業は血みどろの戦いを続けるため、
ブルーオーシャンと対比して、

「レッドオーシャン」

呼んでいます。

一方、BO戦略では、新たに市場の線を引き直し、
競争のない市場を創造することを狙います。

競争戦略の理論は既に確立されていますし、
ツールは既に豊富に存在していますよね。

しかし、市場創造のための戦略理論やツールは
ほとんど存在していませんでした。

しかし、BO戦略は、経営史上初めて、
市場創造のための明快な理論とツール群を
提供しているといえるものです。

---------------------------------

(3)BO戦略では、価値向上とコストダウンの両立を実現する

BO戦略では、競合他社が提供していない、
独自の価値を生み出そうとします。つまり、
新たな付加価値創造を狙うのです。

これは、競争戦略の枠組みで言う「差別化戦略」と同じです。

しかし、差別化戦略では、価値を高めることによって、
必然的にコストが上昇するため、販売価格が上昇することを
前提としています。

したがって、「高くてもいいものを買う」と考える限定された
顧客が対象となります。場合によっては、「ニッチ戦略」と
呼ばれることもあるでしょう。

ところが、BO戦略では、付加価値を生み出すと同時に、
なくてもいい価値、よけいな価値を除去したり、
減らしたりする取り組みを行うのです。

こうすることによって、顧客に取っての価値を上げつつ、
トータルでのコストダウンを実現していく。

BO戦略で、これを「バリューイノベーション」と呼んでいます。

バリューイノベーションは、
基本的に、競争戦略ではありえない考え方です。

---------------------------------

(4)BO戦略は、マス(広大な需要)を狙う

BO戦略では、新たな付加価値を生み出すことによって、
それまで逃していた新しい顧客を獲得しようとします。

つまり、市場の線を引き直すというのは、
これまでターゲットとしていなかった層(ノンカスタマー)
を狙うということなんですね。

ただ、前述したように、
並行してコストダウンを図ることで、
新規顧客の多くが魅力的と感じる価格を設定します。

留意して欲しいのは、
最安値を提示するわけではない点です。

他社にはない新しい価値を示しつつ、
最大限に利益を確保できる適切な価格設定を行う。

これにより、売上げ拡大と同時に、
利益率向上も実現できるというわけです。

---------------------------------

(5)BO戦略は、「共通点」(コモナリティ)に着目する

BO戦略では、マスを狙うため、

「セグメンテーション」(市場分割)

という考え方をしません。

新規顧客の多くが共通して抱える問題やニーズを
敏感に嗅ぎ取って、それらを解決・充足できるものを
新たな付加価値として提示するのがBO戦略です。

---------------------------------

(6)BO戦略は、「オルタナティブ」を考慮する

BO戦略においても、
もちろん競合の存在を意識します。

ただし、直接に競合する「代替品」(サブスティチュート)
ではなく、「オルタナティブ」(他の選択肢)を考慮します。

例えば、「レストラン」の代替品(直接競合)は
他の飲食店ということになります。

しかし、単に食欲を充たすのではなく、
「楽しい時間を過ごす」という目的であるなら、
映画館や演劇も競合しますね。

これらが「オルタナティブ」です。

オルタナティブは、形態も機能も違うけれど、
顧客の目的(=充足したいニーズ)は同じというものです。

オルタナティブを考慮することによって、
既存の市場の枠組みにとらわれない発想が可能になります。

--------------------------------

BO戦略のポイントは他にもいろいろとありますが、
だいたい以上のことで基本はおさえられるのではないか
と思います。


さて、結果的に、つまり後付け的に分析してですが、
ブルーオーシャン戦略で成功した事例として、
最もわかりやすいのは、任天堂のゲーム機「Wii」でしょう。

「Wii」は、従来のゲーム機がマニア層をターゲットとして
どんどん高品質化、高機能化、高価格化をしていったのに対し、
ゲームをしなくなった社会人、ファミリー層、またそもそも
ゲームをしないシニア層にも受け入れられる、わかりやすさ、
簡単さ、楽しさを提供する一方、スペック的にはあえて
低品質化することによって手頃な値段を実現しましたよね。


また、ビジネスホテルの「スーパーホテル」も
まさにブルーオーシャン戦略の成功例と言えるでしょう。

広々としたベッドと6種類から選べる枕で、
従来にない快適な寝心地や、無料セルフの朝食、
天然温泉といった付加価値をビジネスパーソンに
提供する一方、自動チェックインの仕組みを始め、
客室電話を廃止するなどによって大幅なコストダウン
を実現。1泊5千円弱の手頃な価格設定を可能にしています。


最後に、池上先生による、
BO戦略の簡潔な定義をご紹介しておきましょう。


「ブルーオーシャン戦略」は、“広大な需要”を
 主体的かつシスティマチックに創造する戦略理論

*参考図書

『ブルーオーシャン戦略 競争のない世界を創造する』
(W・チャン・キム、レネ・モボルニュ著、有賀裕子訳、
ランダムハウス講談社)

『日本のブルー・オーシャン戦略 10年続く優位性を築く』
(安部義彦、池上重輔著、ファーストプレス)


*関連記事

・意外!Wiiの真のライバルは○○だった!
(All About よくわかるマーケティング)

・スーパーホテル 顧客満足の秘密 「選択と集中」編
(Kanamori Marketing Office)

投稿者 松尾 順 : 14:40 | コメント (5) | トラックバック

雑食系男子を目指そう!

「婚活」がブームですね。

でも、4月20日に始まったばかりの、
SMAP中居くん主演の月9ドラマ『婚カツ!』は、
視聴率低迷にあえいでいるとか。

どうやら脚本がもうひとつのようです。
まあ、話題性だけで視聴率を引っ張るのは、
無理がありますよね。


さて、ネットでは、

「草食系男子、肉食系男子、どちらがモテる?」

なんてアンケート(アメーバニュース掲載)も
行われています。

-----------------------------

*言葉の定義

・草食系男子:
 協調性が高く、家庭的で優しいが、恋愛に積極的でないタイプ

・肉食系男子:
 恋愛の行動時、女性に対して果敢に攻めるタイプ

------------------------------

アンケート結果を見ると、

「草食系、肉食系で、モテるのはどちら」

という設問に対しては、

女性の回答:肉食系・・・60% 草食系・・・40%
男性の回答:肉食系・・・73% 草食系・・・27%

となっていて、
基本、肉食系の方がモテるということが確認できています。


また、女性に聞いた、

「草食系、肉食系、どちらと付き合いたいか?」

という設問に対する答えは以下の通り。

・草食系男子・・・5%
・草食系よりの男子・・・42%
・肉食系よりの男子・・・44%
・肉食系男子・・・7%
・その他・・・2%


純粋な草食系や肉食系男子ではなく、
両方のミックス、いわば

「雑食系男子」

が女性に選ばれやすいことが表れていますね。

また、アメーバニュースの記事では
このアンケート結果に対する考察として、
以下の2点が示されています。

1 “ガツガツしている男”は人気がないが、
  “男の積極性”は支持されている

2 恋愛相手には肉食系男子、結婚相手には
  草食系男子が支持されている


このうち、特に2点目については、
この考察を実証するような実験もあるんですよ。
(同実験は、90年代に行われたもののようです)


この実験では、平均年齢22歳の日本人女性40人に対し、
日本人や白人の男性の顔写真を見せて、
魅力的と感じる顔を選んでもらいました。

写真の男性は、同一人物の「素のまま」のものと、
ちょっと加工して、優しい顔立ち(女性化)の度合いを
20%、40%にしたもの、また逆に精悍な顔立ち(男性化)
の度合いを20%、40%にしたものの5種類が用意されました。

これは、肉食系男子と草食系男子の顔立ちを比べて、
どちらが好きですかという実験だと言えますよね。

(もちろん、顔立ちが女性的か男性的かということと、
 草食系、肉食系を単純に結びつけていいのかという
 議論があるかもしれませんが)


なお、実験は、

・女性が妊娠しやすい時期(妊娠ハイリスク時期)
・妊娠しにくい時期(妊娠ローリスク時期

のそれぞれの時期に行われました。

この2つの時期に、
女性は同一の作業をやっています。


この実験結果を簡単にまとめると、

・妊娠ハイリスク時期には、より男性化した顔が好まれる
・妊娠ローリスク時期には、より女性化した顔が好まれる

というものでした。

おそらく、子どもができそうな時期の女性は、
繁殖力が強く、強い子どもができる遺伝子を
持っていそうな男性を無意識に求めてしまうと
いうことなんでしょう。

逆に、子どもができる可能性が低い時期の女性は、
協力的で優しい男性の方がつきあって楽しいから・・・
ということで女性的な顔つきの男性を好むのでしょうね。


というわけで、婚活中の草食系男子へのアドバイス。

・結婚後の家庭生活・育児生活において、
 草食系男子の優しさはプラスです。
 多いにアピールしましょう。

・でも、やはり恋愛中は積極的に。
 努力して肉食系男子的行動を取りましょう。


雑食系男子を目指そう!


「草食系男子」、「肉食系男子」結局モテるのはどっち!?
(アメーバニュース)


*男性の写真を見せる実験の出所:

 『恋愛遺伝子』(山元大輔著、光文社)

投稿者 松尾 順 : 10:23 | コメント (3) | トラックバック

マズローの「自己実現欲求」の先にあるもの

このメルマガ・ブログをお読みの方なら、

「マズローの欲求階層説」

はよくご存知でしょう。
(これまでも、何度か簡単にご紹介しましたし)

マズローは、人の欲求は以下の5段階からなるという
考え方を示しました。

------------------------------------

1.生存の欲求(食欲、性欲など根源的な欲求が満たされたい)
2.安全の欲求(生命が脅かされない、安全に暮らしたい)
3.社会的欲求(所属や愛が欲しい)
4.自我(自尊)の欲求(社会の中で承認、尊敬を得たい)
5.自己実現の欲求(自分らしさを発揮したい)

------------------------------------

このうち最高次の欲求が、5段階目の

「自己実現欲求」

ですが、これは、

「自分らしさを発揮したい」

という欲求ですから、

「個性化欲求」

と言い換えることもできます。


さて、特にこの数年、
世の中のヒット商品やトレンドを眺めていると、
この5つの欲求ではうまく説明できない消費者行動が
顕著になってきているように思います。


実は、マズロー自身も晩年に提唱していたのですが、
「自己実現欲求」の先に知られざる別の欲求が
いくつかあるのです。

それは、自己超越、つまり他人への奉仕や、
知識欲の充足、美の追求といったもの。

私は、これらをわかりやすく説明するキーワード
として、何か適切なものがないかなと考えていたところ、
ふとある言葉が浮かんできました。

それは、

「真・善・美」

です。


「真・善・美」は、
主に哲学の世界で用いられてきた言葉です。

しかし、私は大胆ながら、
現代の消費行動を説明しやすい欲求として

「真・善・美の欲求」

という考え方を提示してみたいと思います。


「真・善・美の欲求」は、
マズローの自己実現欲求の先にある
新たな3つの欲求のこと。

そして、これは現代日本のような
成熟社会に顕著になってくる欲求です。


簡単に説明します。


・「真」の欲求

物事の真理を追究したいという欲求。
知りたい、学びたいという行動の源泉になります。

現在一線を退いたシニアの方々が、
最も熱中しているのが「学び」ですよね。

すでに人生の目標はなんらかの形で
達成された方たちですから、
「成功したい」とかそんな明確な目標は
もはや必要ありません。

純粋に学ぶことが楽しいのです。

脳科学者の茂木健一郎氏の言葉を借りれば、

学びは最高のエンターテイメント。
いくら学んでもおなか一杯にならない。

(つまりいくらでも楽しめる)

ということなのです。

実は、私の父も70歳を過ぎてから、
サイバー大学に入学しITを学んでいます。

地元NPOのホームページを作ってあげたりと
いった役にも立っているようですが、
やはり学ぶこと自体が楽しいようです。

もちろん、シニア層に限らず、
主婦を含むあらゆる階層が「学び」に
貪欲になりつつありますよね。


・「善」の欲求

人のために役立ちたい、
善いことをしたいという欲求。

先日の記事でご説明した、

「フィールグッド・マーケティング」

の根底にあるのがこの善の欲求です。

マズローが、トランスパーソナル=自己を超える、
すなわち自己超越欲求と呼んだものがこれに
該当します。

自己実現を果たした、つまり「個」としての自分が
確立できた時、多くの人が次に向かうのが社会貢献
ですよね。


・「美」の欲求

美しいものを愛でるというのは、
人の最も根源的な欲求の一つなのかも知れません。

アウシュビッツの収容所から生還を果たした心理学者、
ヴィクトール・フランクルは、明日はガス室送りかも
しれないという極限状態にある人々さえ、収容所から
見る夕日の美しさを讃えていた風景に感銘を受けたこと
を手記に書いています。

さて、「美」は、大量生産・大量消費型商品においては、
これまでかなり軽視されてきた要素です。

美しさにこだわると、コスト高、ひいては
高価格の原因になるからですね。

しかし、近年のデザイン家電の隆盛や、
また、優れたデザイン力を発揮してきたアップル
の飛躍的成長を見ると、消費者はますます、

「デザインの美しさ」

を選好要因の一つとして重視するようになっています。

結局のところ、人の感性に訴えかけ、
人を感動させるパワーを持っているのは、

「美」

ですよね。


以上、真・善・美の欲求について
簡単にご説明しました。


これからの商品開発においては、

「真・善・美の欲求」

をいかにくすぐることができるかが、
ヒットするかどうかの分かれ目だと思うのですが、
いかがでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 13:34 | コメント (4) | トラックバック

甘えてない円盤

1970年代後半、空前の「超常現象ブーム」が起きました。

「UFO(空飛ぶ円盤)」「超能力」「心霊現象」

といった人知を超えた謎・不思議への関心が高まったのです。


ユリゲラーが、日本中の家庭の止まった時計を
動かしたこと覚えてますか。

ピンクレディーが「UFO」を歌ったのも、
そんなブームのさなかの1977年でした。


現在40代以降の方は、懐かしく思い出されることでしょう。

私もご他聞に漏れずハマりました。

特に「UFO」が大好きで(というのもなんか変ですが)、
小6の頃、1万円弱もする「UFO探知機」を買ったほど!
(当時、どうやって1万円を工面したのか思い出せません)


さて、ゲームセンターに「UFOキャッチャー」が登場したのは
1985年でしたが、その頃から肝心のUFO自体に対する関心は
下火となり、90年代以降はほぼ忘れられた存在となっています。

UFOにとって、
90年代は「失われた時代」と言えるんじゃないでしょうか(笑)


70-80年代の有名なディスコナンバーに、
日本語の替え歌を乗せて歌う「ダンス☆マン」は、
2000年に発表した「ミラボーリズム3」で、

「甘えてる円盤」
(原曲:A Night to Remember by Shalamar)

の中で、次のようにUFOを偲んで歌っています。
(一部のみ引用)

------------------------------

子どもの頃はよく出てきたね
テレビでもよく特集やってたよ

 (中略)

最近あんまり聞かないよ UFO
そんなんじゃ 信じるのやめちゃうぞ~

全然 出ない この頃少し甘えてる円盤

(中略)

今はもっと情報が多いのに
なぜかあんまり聞かないんだよなぁ UFO
ほんとに 信じるのやめるぞ~

全然 出ない この頃少し甘えてる円盤

(以下略)

-------------------------------


しかし、UFOにとって受難の時代がようやく
終わりつつあるようです。

救世主はなんだかわかりますか?

それは、ひとことで言えば、

「デジタル革命・インターネット革命」

ですね。

安価なデジカメ・ビデオの普及に加えて、
2005年の「Youtube」の登場が決定的でした。

今、「Youtube」で検索すると、
世界各国で撮影されたUFOの目撃最新動画が
数え切れないほどヒットします。

すでに過去のものだったずのUFOですが、
インターネットのおかげで、
ひそかに復活を遂げていたわけです・・・
(オオゲサ?)


もちろん、昔のような大ブームになることは
まずないでしょう。

70年代のUFOブームはマスメディア、
特に大衆に大きな影響力を持っていたテレビが
主導したもの。

要するに、当時の人気番組「木曜スペシャル」です。


しかし、もはや、インターネットが日常となった今、
テレビを初めとするマスメディアは以前ほどの力が
ありません。


大衆側もまた、

「みんな一緒に同じことに関心を持つ」

という時代を過ぎて、今では
異なる関心ごとに分かれたグループ内で
ひそかに楽しむようになっています。

こうした活動を容易にしたのも、
インターネットですね。


考えてみれば、現在マスメディアでカバーされる
様々なイベント(直近でいえばWBCなど)も、
一見盛り上がっているように見えますが、
必死で盛り上げようとしているマスメディアに
応えて本当に盛り上がっている人々は、実のところ
全体のほんの一握りに過ぎないはず。

他の人々はそれぞれの関心事に埋没し、
マスメディアに踊らされている人たちを冷ややかに
見ているというのが現実ですよね。


70年代に青春を送った私にとって、
みんな一緒にUFOに夢中になれた当時が懐かしい。

でもとりあえず、「Youtube」のおかげで、
UFOは再び活発に我々の前に姿を現すように
なっています。

「このごろは、あまり甘えてない円盤♪」

という曲、歌ってよダンス☆マン!


*ダンス☆マン 
 ミラーボール星オフィシャルサイト
http://danceman.jp/index.html

投稿者 松尾 順 : 12:28 | コメント (0) | トラックバック

フィールグッド・マーケティング

企業の「社会的責任」が
ますます重視されるようになってきた昨今、
メインの事業活動である、

「マーケティング活動」(商品開発~広告宣伝~販売)

の中に「社会的意義の高い要素」を組み込む動きが
増えていますね。


最近大きな関心を集めたものとしては、
ミネラルウォーターのボルヴィックが日本では
2008年に実施した

『1L for 10Lプログラム』

が挙げられます。

これは、飲料水不足に苦しむアフリカの人々の救援と、
アフリカの水と衛生に関する問題に対する関心と理解を
高めることを目的としていました。

具体的には、
消費者が購入したボルヴィック1リットル当たり、
10リットル相当の安全な飲料水を生み出せるように、
井戸掘りなどの現地活動を支援するというもの。


ボルヴィックのWebサイトを見ると、
2008年の同プログラムによって
アフリカのマリ共和国に生まれる飲料水は
11億リットル強。

これにより、マリ共和国の子どもたちとコミュニティ、
20,000人以上へ、清潔で安全な水が10年間にわたり
供給されるのだそうです。


ミネラルウォーターにも、
たくさんの競合製品がありますよね。

もし、特にこだわりがなければ、安全な水が飲めずに
苦しんでいるアフリカの人たち助けることにいくばくか
貢献できる

「ボルヴィック」

を積極的に選んだ消費者が多かったのではないかと
思います。


なぜ、積極的に選んだのでしょうか?

それは、端的に言えば、
そうすることが

「気持ちよい」(Feel Good)

からですね。

言い換えると、

「いいことしてる感」

があるからです。


さて、ボルヴィックの場合、いわゆる

「途上国支援」

をマーケティングに組み込んだわけですが、
それ以外にも、

・環境保護(リサイクリング、カーボンオフセット等)
・絶滅危惧種保護
・フェアトレード(公平貿易)
・里山再生 

など、さまざまな社会貢献の方法が、
企業のマーケティング活動に組み込まれるように
なっています。


こうした施策は以前から、

CRM:Cause-Related Marketing
~コーズ・リレーテッド・マーケティング~
(大義名分を掲げたマーケティング)

と呼ばれてきましたが、もはや誰でも知ってる

CRM:Customer Relationship Management)

と違って、このもうひとつの「CRM」は、
あまり認知されていない状況だと言えます。

おそらくその理由は、

‘Cause’

という英単語になじみがなく、
日本語に訳しにくかったことがあるでしょうね。

また、そもそも社会貢献活動を一体化させた
マーケティングが大きなトレンドとなってきたのは
この数年だということもあるかと思います。


先ほど、消費者がボルヴィックを
積極的に選択したのは、そうすることが

「気持ちよい」(Feel Good)

からであると申し上げましたが、
リサイクルやカーボンオフセットのような
環境保護につながる商品を購入する背景にも、
やはり単に自分のニーズを満たすだけでなく、

「気持ちよい」「いいことしてる感」

があるから。


自動車業界では最近、
ハイブリッド車が売れてますよね。

これは、もちろん燃費が良くて経済的ということ
だけでなく、二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないため、
それだけ「環境保護」にも役に立ってるという

「気持ちよさ」

が得られるからではないでしょうか。


そこで私は

CRM(Cause-Related Marketing)

に変わる言葉として、
社会貢献につながる要素を組み込んだ
マーケティングのことを

「フィールグッド・マーケティング」

と呼んでみたいと思います。


既に、欧米では「社会貢献的要素」のことを

「フィールグッド・ファクター」
(Feel-good factor)

と呼ぶ向きもあり、
それをどうマーケティングに組み込むか、
いろいろと実践&研究が盛んです。


「フィールグッド・マーケティング」

という言葉が果たして定着するかどうかはさておき、
上述したような動きが、今後ますます盛り上がるのは
間違いないでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 12:47 | コメント (0) | トラックバック

ユニバーサルカーブと草食系男子

1匹(頭)のメスを巡って、
2匹(頭)のオスが激しく争う。

発情期を迎えた動物たちが、
何十万年も前から繰り返してきた行為ですね。


他のオスと戦い、勝利を収めることによって、
オスは自分のたくましさ、生命力をメスに示す。

メスもその魅力に惹かれて、オスを受け入れる。


私たち人間のオス(男)も同様に、
好みのメス(女)を獲得し、またメスから選ばれるために
オス同士での「強さ」を競い合ってきました。


昔の西部劇などでは、
1人の女性を巡って決闘をするという場面が
ありましたよね。

まあ、さすがに現代では、
恋人を巡って殴り合うという人は少ないと思いますが、
変わりに様々な方法で男性は競い合ってます。

例えば、スポーツ選手が持つような行動な身体能力や、
学歴などで示される高い知性だけでなく、お金であったり、
地位・権力であったり、車などの所有物などによってです。


さて、女性を獲得するための男性同士の戦いは、
自分の血を後世に伝えるために遺伝子に組み込まれた
プログラムと言えます。

このため、基本的に、
男性は思春期を迎えると攻撃的になります。

そして、他の男性に負けたくないというプライドのために、
すぐに揉め事を起こしがち。

時にやり過ぎて、
相手を殺してしまうことにもなります。


ですから、横軸に年齢を取ったグラフで、
年齢別の殺人率(他人を殺めてしまう率)を描くと、
男性の20歳前半のそれがぐんと高くなるカーブに
なります。

つまり、右側(20代前半)にグラフのピーク(頂点)
があり、ガクンとさがって、そのあとは年齢が高く
なってもほぼ横這いが続くので、近年ネット業界で
流行った

「ロングテール」

のような形をしています。


このグラフの形は、
世界のどの国でもほぼ同じであることが
わかっているため、

「ユニバーサルカーブ」

と呼ばれています。

国は変われど、
男性の気質は変わらないということですね。


ところが、近年、日本では

「ユニバーサルカーブ」

が消滅してしまいました。

若い男性が以前よりも攻撃的でなくなり、
殺人を犯さなくなったのです。
(凶悪さは増加しているかもしれませんが)


年齢別殺人率のグラフを見ると、
ほぼ平坦な線が続きます。

そして、若年男性よりも、
むしろ中年男性の殺人率のほうが
若干高いくらいなのが最近の傾向なのです。


なぜ、日本の若い男性は
以前ほど殺人を犯さなくなったのでしょうか?

ひとつには、豊かな社会となった日本では、
殺人を犯すことによって失うものがあまりに
大きいから、自制するようになったという点
が挙げられます。

多くの若者が貧困にあえぐ国では、
失うものが少ない上に、その貧困さからくる絶望が
攻撃性をより高めているのと対照的ですね。


ただ、もう一つ大きな理由があると思います。

それは、好みの女性を獲得するために、
また自分を選んでもらうために、

強さ、たくましさ

を女性に示す価値が低下してきたという点です。


現代の女性も、
地位、名誉、金、容姿を兼ね備えた

「白馬の王子さま」

が自分を迎えに来てほしいという願望は
持っていますよね。

しかし、現実を振り返ると、
「白馬の王子さま」と呼べる男性はほんの一握り。


実際には、それほど稼ぎも良くない男性と結ばれ、
共働きで生きていかねばならない可能性が高いこと
を自覚しています。

であるなら、いたずらに男性に

3高(高学歴・高年収・高身長

を期待するよりも、むしろ

3低(低姿勢、低リスク、低依存)

の男性を選ぶことを志向するようになってきたのです。


3低の男性なら、
家事・育児も喜んでやってくれるだろうし、
上から目線の物言いをせず、他愛のない会話
にもつきあってくれるからですね。

つまり、端的に言えば、
現代の女性が求めているのは

強さ、たくましさ

よりも

かわいさ

なんですね。


こうした女性の男性を選ぶ基準の変化が
生み出したのが、このところ注目を集めている

「草食系男子」

でしょう。


「草食系男子」を

‘お嬢マン’

と呼ぶ牛窪恵さんによれば、
草食系男子とはおおよそ次のような人。

・おっとりとしてマイペース
 「まあなんとかなる」とのんびり構えている

・多くはキレイ系
 スリムで少食。ファッション、コスメへの関心高い

・女の子との食事も基本ワリカン
 堅実で消費にしっかりメリハリをつける

・親・家族と仲良く、女友達にも紳士的
 同じ部屋に泊まっても安全。基本、狼に変身しない


こんな穏やかな草食系男子(年齢的には20-35歳が多い)
が増殖した結果、若年男性の殺人率が低下し、

ユニバーサルカーブの消滅

という現象としても現れてきたというところでは
ないでしょうか。


それにしても草食系男子の増殖は、
日本の消費行動や文化に大きな影響を
与えつつありますよね。


ちょっと腰を入れて、

「草食系男子」

の生態を研究してみる必要が
ありそうです。


(参考文献)

『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』
(牛窪恵著、講談社プラスアルファ新書)

投稿者 松尾 順 : 10:52 | コメント (0) | トラックバック

マグロ船のゲーム理論

マグロ船は、一度出航すると40日位、
一度も港に立ち寄ることなく漁を続けます。

その間、マグロを求めて漁場を移動し続けるのですね。


このマグロ船で一番偉いのは、船のオーナーである

「親方」

です。親方は、マグロのいそうな海域を予想します。

そして、親方が予想した海域に船を動かすのが

「船長」

の役割だそうです。


さて、親方は、マグロのいそうな海域を
どのようにして予想するのでしょうか?

近くの船と無線による情報交換を
通じて行うのです。

つまり、
+

「お互いの船ではどのくらいマグロが
 取れているか」

ということをお互いに教えあうわけです。


詳細はよくわかりませんが、おそらく、
それぞれの船が漁を行っている場所での
マグロの取れ具合から、マグロの群れの大きさや
移動する方向を読むのでしょうね。


マグロ船は、このように
お互いに助け合って漁をしているのですが、
強欲な親方になると、他の船にウソの情報を
流すことがあるそうです。

こうして、
マグロが取れる漁場を独り占めするのです。

仲間に対する裏切り行為ですよね。


最初は儲かるかもしれません。

しかし、これを繰り返していると、
他の船からの信用を失い、
有効な情報がもらえなくなるため、
長期的には売上が低迷することになるそうです。


一方、正直にマグロ情報を共有しあうマグロ船は、
結果的に同じ海域で共に漁をすることになるため、
1隻あたりの水揚げは減ることになります。

しかし、マグロが全く取れないというリスクを
減らすことができるため、情報共有をしない船よりは
売上げがよい傾向があるとのこと。


ご存知の方も多いと思いますが、
ゲーム理論の枠組みで紹介される有名な戦略に

「しっぺ返し戦略」

と呼ばれるものがあります。


これは、相手が協調してきたら、
こちらも協調する。

逆に、相手が対立(裏切り)してきたら、
こちらも同様に対立する

という戦略です。

この戦略を採用するのが、
最も「利得」が多くなることが、
コンピュータ・シミュレーションの結果から
実証されているのです。


マグロ船同士の情報共有は、この

「しっぺ返し戦略」

が現実においても有効な戦略であったことを
わかりやすく説明できる面白いケースではないか
と思います。


以上、マグロ船の話は、

『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』
(齊藤正明著、マイコミ新書)

を参考にしました。

本書は、齊藤氏のマグロ船乗船記ですが、
読み物として面白いだけでなく、
ビジネス、キャリアについての学びも大きい内容です。

一読をオススメします。


『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』
(齊藤正明著、マイコミ新書)

投稿者 松尾 順 : 11:23 | コメント (0) | トラックバック

キリン・ザ・ゴールドの終焉

キリンさんが本格ビールとしては17年ぶり、
社運をかけて07年3月に発売した

「キリン・ザ・ゴールド」

ですが、今年(09年)2月で製造終了となりました。


私は、発売当初から

「このビールは厳しいのではないか・・・?」

という見方をしておりましたが、
予想通り定番化できませんでしたね。


不発に終わった最大の理由は、やはり

・味が平凡だった
・パッケージデザインのインパクトが弱い

の2点かと思います。


発売当初の立ち上がりはまずますだったものの、
売上が失速するのも早かったゴールドは、
途中、パッケージデザインをハデハデなものに変えるなど、
劣勢挽回の努力はしていました。


しかし、味自体の個性の弱さは
どうしようもありません。

要するに、

「ブランドポジションが不明確」

であったため、
十分な数の固定客をつかむまでには
いかなかったのでしょう。


しかも、レギュラービールなのに、
「ゴールド」という豪勢なネーミングや
上品なデザインが与える印象から

「プレミアムビール」

と勘違いされ「高い」というイメージを
持たれてしまったのも痛かったようです。


ところで、私は普段はサントリーの

「ザ・プレミアム・モルツ」

を愛飲しておりますが、
なぜかと言えばやはり、このビールの

「個性の強い味」

が好きだから。

一番最初に飲んだ時こそ、

花の香り

を思わせる味わいが気になりましたが、
飲み続けるとそれが際立つ個性として感じられ、
クセになりました。


そういえば、
いまだレギュラービールの王者として君臨する

「アサヒ スーパードライ」

も、それまでのビールになかった、

コク・キレのある爽快な味わい

が人々の心を掴んだのですよね。


私は思うのですが、結局のところ、
製品はその基本的な価値、ビールで言えば

「味そのもの」

が他のブランドとは明確に異なる
優れた特徴を持っていなければ、
どんなにデザインやマーケティングに力を入れても、
固定客を確保することはできないのです。


「キリン・ザ・ゴールド」の終焉は、
このことを教えてくれているように思います。


余談ながら、
今年5月にアサヒビールから発売予定の

「アサヒ ザ・マスター」

に期待しています。

「味わいビールの傑作」

と自ら謡っているくらいですから、
独特の味わいを提供してくれるんでしょうね?


これまで、一部の例外を除き、

ブラインドテスト(ブランド名を伏せた試飲)

をしても、
各社競合ビールの違いがほとんど区別できなかった

同質的な日本のビール市場

も少しずつ変わりつつあると言えますかね?


(関連記事)

*「キリン・ザ・ゴールド」は定番化するか?

*(続編)「キリン・ザ・ゴールド」は定番化するか?

*「キリン・ザ・ゴールド」の不発

投稿者 松尾 順 : 14:27 | コメント (5) | トラックバック

電話帳広告の今とこれから

あー、また勝手に置いてかれちゃったよ・・・


毎年今の時期になると、
事務所のドアの前に分厚いハローページとタウンページが
黙って置かれていきます。

以前は、直接手渡してくれたように記憶してますが。


黙って置いていくようになったのは、

「使わないから電話帳持って帰ってよ・・・!」

と、受取拒否する人がいるからかもしれませんね。


実際、私も、
電話帳はここ5年くらい1度もめくってません。
インターネットで調べることに慣れちゃいましたから。


だから、

電話帳も必要な人にだけ配布してくれたらいいのに!

と思います。


もちろん、NTTさんとしては、
こうすることはなかなか難しい決断でしょう。

配布部数が減少すれば、
広告媒体としての価値が落ちてしまいますから。

タウンページNETを見ると、

・タウンページの発行部数は5,600万部(全国285版)
・ハローページは同5,500万部(全国788版)

 (どちらも2008年3月現在)

と、いちおう日本の全世帯をカバーする数が
発行されているのです。


さて、電通発表による2008年日本の広告費を見ると、
電話帳に掲載されている広告費合計は今でも

892億円

もありました。

これは、CATV、CS、BS放送などの衛星メディア関連広告費、

676億円

より多いのです。


ただし、電話帳広告費の推移を見ると、

・2006年→1154億円
・2007年→1014億円
・2008年→ 892億円

ですから、過去3年だけでみると
毎年100億円を超える減収傾向が続いています。


電話帳は、インターネットが不便な、
あるいは使いこなせない地域や年代の人々にとって、
まだまだ重要な情報源であり、電話帳広告の効果も
それなりに高いとは言われてきていますね。

ただ実際、どの程度の費用対効果(ROI)があるのか
私が探してみたところでは公開されていないようです。

そもそも、広告料金も複雑すぎるのか、
公開されておらず、お問合せベースとなっています。

ざっくり調べてみたところでは、
1枠数千円から数百万円まで広告予算に応じて
選択肢は豊富のようですね。


インターネットは今後もさらに浸透し、
電話帳を利用しない人が増えていくでしょうから、
電話帳広告の存在意義も、他のマス媒体と同様、
今後も低下していくのは間違いありません。


NTTとしてはインターネット版の電話帳である

iタウンページ

に力を入れてきていますが、
Yahoo、Googleなどの検索エンジンから情報を探す場合の
存在感が薄いですよね。

iタウンページの
検索エンジン対策が不十分な点は
早急に改善すべき点ではないでしょうか?

*電通 日本の広告費(平成21年2月23日発表)
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2009/pdf/2009013-0223.pdf

投稿者 松尾 順 : 08:45 | コメント (7) | トラックバック

ビジョナリーハンドブック(5):時間のパラドックス

時間のパラドックスは、端的には次の一文で表せます。


“短期的に成功を収めるためには、
 長期的な視点で考える必要がある”

- To succeed in the short term,
   you need to think long term.


そして、その逆もまた真なりです。


“現代において長期的に成功するためには、
 今過ぎ去っていく毎分毎分を細かくマネージする必要がある”

- To succeed in the long term today,
  you need to micromanage every passing minute.


第2回のビジョナリーのパラドックスでご説明したように、
現在と未来は、しばしばお互いに相容れません。

例えば、未来のための新商品開発は、
現在の既存商品の顧客を奪うことにつながりやすく、
事業の収益基盤を不安定にする可能性が高いですよね。

一方、現在の事業にのみに経営資源を投下し続けると、
未来の収益源を育てることに出遅れてしまい、
将来において淘汰されてしまう可能性が高くなります。


したがって、事業を未来にわたって継続するためには、
短期的な視点と長期的な視点を併せ持つこと、すなわち

「2元性」(Durality)

が必要なのです。


ただ、1人の人間が、

「現在」と「未来」

という2つの時制の中で、
同時並行的に生きるのは簡単ではありません。


ビジョナリーハンドブックでは触れられていませんが、
脳科学や心理学の研究によれば、人は本来的には

「短期志向」

なのだそうです。

動物はおしなべて短期志向です。

なぜなら、今、飢えないためには、
目先の獲物をつかまえることが最優先だからです。

人間もまた、太古の狩猟時代に経験した飢えに対する
恐怖から、「短期志向」がDNAに刻み込まれています。

ダイエットが続かないのは、
「体重減」という長期的な目標よりも、
目の前のケーキ1個を食べたいという短期的な欲求に、
私たちが屈しやすいからですね。

したがって、ビジネスにおいても、
長期的な視点で考え、また行動することは、
相当意識的に行う必要があります。


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

・ハードカバー


*ペーパーバックもあります。
*現在は、出品者からしか手に入らないようです。

投稿者 松尾 順 : 13:31 | コメント (0) | トラックバック

ビジョナリーハンドブック(4):規模のパラドックス

“蝶のように舞い、蜂のように刺す”
 - Float like a butterfly, sting like a bee -


これは、米国ヘビー級プロボクシングにおける
往年のチャンピオン、

モハメド・アリ

の言葉として有名ですよね。


モハメド・アリは、
ヘビー級の相手をKOできる強烈なパワーと同時に、
華麗なフットワークを持っていました。

従来の力任せに殴りかかるだけの他のヘビー級ボクサー
とは一線を画した、このボクシングスタイルによって、
彼は19度もの王座防衛に成功したわけです。


ビジョナリーハンドブックでは、
現代の企業経営の理想的な在り方として、
冒頭のモハメド・アリの比喩ほど適切なものはない
と述べています。


企業は大きくなればなるほど、
できるだけ小さくなるべきであるのです。

ここで「小さくなる」というのは、
そうすることで、環境変化に対してより敏感になり、
また俊敏な動きが可能になるということを意味しています。

特に、マスマーケットが細分化され、いわゆる

「マイクロマーケット」

が多数出現している現代において、
全体としての規模は大きくとも、活動単位としての組織の
大きさは可能な限り小さく構成されるべきでしょう。


この点について、同書では別の面白い比喩を示しています。

それは、大企業の組織は、

「チキンナゲットモデル」

を採用すべきであるということです。

チキンナゲットのような一口サイズまで、
組織を細分化せよということですね。

もし、チキンナゲットモデルの採用が難しい場合、
大企業は鈍重な恐竜のまま止まり、環境の急激な変化に
あっけなく滅びてしまう可能性が高くなるからです。


一方、規模の小さい企業は、
対外的にはより大きく見える必要があります。

ここで大きく見えるというのは、
たとえ小さくとも、業務を最初から終わりまできちんと
完結できるという仕組みを確立しており、顧客として
信頼を寄せることができるということを意味しています。


ですから、小企業の運営は、

「ローストチキンモデル」

を採用しなければなりません。

丸ごと1体の企業として見えるということですね。

このため、組織運営としては、

「万能」

に近いものを求められます。

起業したての会社を想像してもらえればいいのですが、
多くの場合、生産、マーケティング、財務、物流等、
多岐にわたる企業の機能をしばしば一つの組織や人で
こなさなければならないのです。

また、小企業はより外部の環境変化の影響を
受けやすいため、保守的になることは許されません。

積極的に変化を受け止めると同時に、
こちらからも大胆な挑戦をしかけていくことも
必要となります。


このことはとても厳しい試練ですが、
この状況を乗り越えられるかどうかが、
成長の鍵を握っていますよね。


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

・ハードカバー


*ペーパーバックもあります。
*現在は、出品者からしか手に入らないようです。

投稿者 松尾 順 : 10:45 | コメント (0) | トラックバック

ビジョナリーハンドブック(3):価値のパラドックス

ビジョナリーハンドブックでは、

「価値のパラドックス」

を説明するために、

「ホットドッグ」

が例として取り上げられています。


販売者にとってのホットドッグの「価値」、端的に言えば

「価格」

は、ホットドッグ用のパンや、
中に入れるソーセージ、レタス等の仕入価格の合計ですよね。


販売者は、
これに自社の費用(店舗賃貸料、人件費など)や
利益分を上乗せした

「販売価格」

を設定して消費者に売るわけですが、
ホットドッグに限らず、同じ製品なのに場所や時間に
よって価格が高い場合があります。

例えば、空港、ホテル、百貨店、観光地などです。


なぜ高い価格設定が可能になるかというと、

・時間がない時にすばやくおなかを満たしたい
・豪華な雰囲気も味わいたい

など、購入者側のニーズが、
製品にもともと備わっている基本的な価値以外にも
あるからですね。


本書の中では議論されていませんが、
マーケティング理論として私も以前紹介したことのある

「価値の構造」

を考えてみれば当然のことではあります。


価値の構造は、一般に以下の4つです。

・基本価値
 当該製品が有する基本的な品質や機能

・便益価値(ベネフィット)
 当該製品の使用や消費によって得られる便益

・感覚価値(情緒価値)
 当該製品を使用・消費するに当たっての感覚的な楽しさ、
 形態的な魅力

・観念価値
 企業の経営方針や製品コンセプト(環境保護など)が
 生み出す価値


大事なことは、販売者ではなく、

「顧客」

こそが、製品の最終的な価値=購入価格を決めるのであり、
それには基本価値以外の要素が考慮されるということです。


ただ、本書で述べられている最も重要な指摘は、
製品の基本価値や購入時の状況(場所、時間など)
だけでなく、

「情報の(量、質)」

によって価値=価格が変化することです。


これは、インターネットが浸透し、
一消費者が手軽に情報収集が行えるようになった現在、
より顕著な傾向になっていると言えるでしょう。


わかりやすい例を挙げましょう。

つい先日、私は近くの家電量販店で、
外付けハードディスクを購入しました。

いつもならネットで調べてから行くところですが、
お正月特価だから安いはずだと勝手に思い込み、
よく調べずに購入しました。

ところが、家に戻り、
インターネットで調べてみると、
もっと安く買えるところがいくらでもありました。

つまり、ネットを活用して情報を集めれば、
同じ製品を安く手に入れることが可能だったわけです。


このことは、売り手、すなわち企業側の立場で言えば、
自社が考える価値にふさわしい価格で売ることが
容易ではないということを意味しますよね。

これが、「価値のパラドックス」です。


では、売り手として、
このパラドックスにどう対処すればいいのでしょうか?

ひとつには、以前から行われてきたことですが、
原材料調達コストや生産コストを削減し、
低価格での販売でも利益を確保できるようにすることが
あります。

しかしコスト削減には限界がありますね。


売り手としてより重要なことは、

消費者の購入サイクル(Buying Cycles of Consumers)

をより深く理解することです。


そうすれば、消費者の

ショッピングのリズム(The rhythm of their shopping)

に応じた価格設定がより適切に行えるようになります。


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

・ハードカバー


*ペーパーバックもあります。
*現在は、出品者からしか手に入らないようです。

投稿者 松尾 順 : 08:43 | コメント (0) | トラックバック

ビジョナリーハンドブック(2):毎日のパラドックス

ビジョナリーハンドブックの著者は言います。

“私たちは、複数の現実(multiple realities)が、
 同時に真実であり、また信頼できる世界で生きることを
 学ばなければならない。”

これは、前回の冒頭に述べたこと、つまり、

「この世の中に、絶対的な真理や正解はない」

を受け入れましょうということですね。


具体的な例を挙げましょう。組織の規模についてです。

・組織は大きいほうがよい
・組織は小さいほうがよい

どちらが真理でしょうか、あるいは正解でしょうか?

答えは、どちらも真理であり、正解といえます。

組織は大きいほうが、
簡単には外界の変化の影響を受けにくく、
安定しています。

一方、組織は小さいほうが、
外界の変化に対して機敏に対応できます。

どちらにも優れた点(同時に弱点も)があるので
どちらが正しい、間違っているということは言えません。

もちろん、時と場所、場合によって、
どちらがより最適かというのはありますけどね。


さて、ビジョナリーハンドブックでは、

日々直面する矛盾=
毎日のパラドックス(Paradoxes of The Everyday)

として以下の7つのパラドックスを挙げています。

-------------------------------------

1 価値のパラドックス
- The Paradox of Value -

2 規模のパラドックス
- The Paradox of Size -

3 時間のパラドックス
- The Paradox of Time -

4 競争のパラドックス
- The Paradox of Competition -

5 行動のパラドックス
- The Paradox of Action -

6 リーダーシップのパラドックス
- The Paradox of Leadership -

7 レジャーのパラドックス
- The Paradox of Leisure -

-------------------------------------

今回は、この7つのパラドックスそれぞれについて
ポイントを簡単にご紹介しておきます。


1 価値のパラドックス

商品が本来の持っている固有の価値は、
ますます低下している。

商品の価値は、
ニーズの有無やニーズのタイミングで決まる。


2 規模のパラドックス

あなた(会社)が大きければ大きいほど、
小さくならなければならない。

一方、あなた(会社)が小さければ
小さいほど、大きく見えなければならない。


3 時間のパラドックス

光の速さでは何も起こらない。

短期的な成功のためには、
長期的に考える必要がある。

現在は未来に抵抗する。
したがって、現在と未来の両方を
同時に考慮しなければならない。


4 競争のパラドックス

あなたの最大の競合は、
あなた自身の未来に対する見方である。

敵は、外側だけでなく内側にもいる。


5 行動のパラドックス

あなたは、手に入らないとわかっているものを
目指さなければならない。

未来は、現在思い描いたとおりにはならない。
しかし、自らが描いた未来像への到達を目指して
行動を起こさない限り、未来は創造できない。


6 リーダーシップのパラドックス

先頭に立って率いるためには、
物語の中にいなければならない。

リーダーは、将来のあるべき姿=ビジョンを
追うと同時に、日々の矛盾だらけの現実に
対処しなければならない。


7 レジャーのパラドックス

いい仕事をするためにはよく遊べ。
よく遊ぶためには、よく働け。

仕事と遊びは不可分になりつつある。


次回は、「価値のパラドックス」を掘り下げます。

余談ですが、
私たちは社会に出るまで基本的に

「真理探し」「正解探し」

のトレーニングしか受けませんよね。

ところが、いったん社会にでると、
そこは、矛盾だらけの混沌とした不合理な場所。

多くの若者が、適応に苦労するのも当然ですよね。
(私も、大変な思いをした1人でした・・・)


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

・ハードカバー

・ペーパーバック1
・ペーパーバック2

*現在は、出品者からしか手に入らないようです。

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ビジョナリーハンドブック(1):ビジョナリーのパラドックス

ビジョナリーハンドブック(The Visionary's Handbook)は、

「そもそも世の中は矛盾だらけである」

ということを大前提に置いています。

言い換えると、

「この世の中に、絶対的な真理や正解はない」

ということです。


もちろん、「特定の瞬間」や「特定の場所」といった
限定条件付きであれば、

一時的な真理や正解

がありえるかもしれません。

しかし、常に状況・環境が変化し続けているため、
いつでもどこでも、常に通用する真理や正解といったものは
存在しえないのが現実の世界でしょう。


だからこそ、
自分(自社)はこうした前提を踏まえた上で、

状況・環境の変化に応じて最善の選択をし続けること

が必要になってくるわけですね。


さて、ビジョナリーハンドブックが示す

9つのパラドックス(矛盾)

のうち、最初に説明されているのが

「ビジョナリーのパラドックス」

です。


ちなみに、「ビジョナリー」は、日本語では

「先見の人」あるいは「予見の人」

と訳せるでしょうか。


ビジョナリーのパラドックスの第1番目、
それは次のようなものです。

“あなたが描くビジョン(未来像)が、
 より確かな真実(Truth)になればなるほど、
 それは、単に現実の延長で未来を語っているに
 すぎない。”


同書の著者らは、
未来について書かれた本の多くは、

「想像力の失敗作」(failure of imagination)

とこきおろしています。


なぜなら、現在すでに起こりつつある変化を踏まえただけの
ビジョンを語っているに過ぎないことが多いからです。

例えば、世界がネットワークでつながり、
リアルタイムの情報交換ができるようになるというビジョンは、
今日のインターネットの原型である

「ARPANET」

が30年以上も前に構築された瞬間から始まった変化を
敷衍すれば、簡単に予見できたことでした。

こんなビジョンは、未来における変化を見越すという
本来の意味での

「予見」

としてはそれほど価値のあるものではありません。
(私としては、こうしたビジョンも十分に役に立つと
 思いますが・・)


現在の延長線をはみだす多様な未来像を描けてこそ、
真のビジョナリー(先見の人)と呼ぶことができるでしょう。

しかし、これは言うは易し、実際には極めて難しい・・・


もしあなたの予見が確実なものになりつつあったとしたら、
それはもはや予見ではなく、現実に起こりつつある変化を
語っているにすぎないという認識が必要でしょう。


では、2つめのビジョナリーのパラドックスを紹介しましょう。

これは、「イノベーション」への取り組みの難しさを
説明しているものだと言えます。


“あなたが未来をより正しく予測できるようになればなるほど、
 さまざまな面で、現在(の経営)を不安定にさせていく”


例えば近年、コダックや富士フィルムなどのフィルムメーカーは、
デジタルカメラの普及によって、従来の「銀塩フィルム」は、
ごく一部の利用者にのみ必要とされるだけの

「過去の製品」

になってしまうという予測が確実になればなるほど、
未来の技術であるデジタルイメージング関連の技術の
開発と製品化に力を入れざるを得なくなりました。

これは、当然ながらこれまで会社を支えてきた
銀塩フィルム関連製品、関連部門の縮小や人員の配置転換
といった経営・組織の不安定化に対処せざるを得ませんでした。


このように、様々な企業(個人)において、

・将来の収益製品・部門

と、

・現在の収益製品・部門

との間でさまざまな点において利害の対立が
しばしば発生します。

もし、現在の収益製品・部門の力が強すぎると、
次世代製品への移行が遅れてしまい、未来においては
淘汰されてしまうわけです。

こうして消滅してしまった企業はたくさんありますね。

ですから、ビジョナリーとしては、
こうした将来と現在の間で発生するパラドックスを
見逃してはいけないわけです。


ビジョナリーハンドブックでは、
前述した2つ以外にも、いくつかの

「ビジョナリーのパラドックス」

が示されていますが、
最後にあと1つだけ紹介しておきたいのが
次のパラドックスです。

“自分(自社)の将来像がどのようなものであれ、
 その通りになることはないと予想しなければならない”

要するに、

「自分が描いたとおりの未来になることはないと
 最初から覚悟しておけ!」

ということですね。

これは、前回も書いたように、
周囲の環境変化に応じて

「予見」

そのものをしばしば見直すことの重要性を示唆するものであり、
また、予見に依存しすぎることを戒めるパラドックスだと
言えそうです。


そもそも、未来を予見することは、
未来がどうなるかを的中させることが
最大の目的ではありません。

極端な話、予見が外れてもいいのです。


『未来学』の著者、根本昌彦氏が主張しているように、
未来を予見することは、

“現在の条件を元に、未来のあらゆる可能性を考えること”

であり、

“将来の危機を回避するためや、未来を創造するためのもの”

だと言えるでしょう。


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

・ハードカバー

・ペーパーバック1
・ペーパーバック2


*現在は、出品者からしか手に入らないようです。


『未来学』(根本昌彦著、WAVE出版)

投稿者 松尾 順 : 16:12 | コメント (2) | トラックバック

ビジョナリーハンドブック(0):イントロダクション

今年の正月休み、
私はあえてインターネット、パソコンから遠ざかり、
以下に示したタイトルの本を読み返していました。

『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes
 That Will Shape The Future of Your Business』


この本は、企業として、また個人として、
不確実な未来に対してどのように行動すべきかについて
有益な示唆を与えてくれるガイドブックです。


変化が激しく、一歩先さえ見えない、
そんな混沌とした今、こんな本が必要とされているのでは
ないでしょうか?

というわけで、ずいぶん前から本書の内容をご紹介したいと
考えていましたが、いかんせん翻訳版がありません。

残念ながら、洋書を読み、その内容をすらすらと
要約することは私の能力を超えています・・・

そこで、この正月にじっくり読み直して十分に準備し、
ようやく年明けからご紹介できるというわけです。

ちょっと難しい内容ではあります。

でも、理解しにくい点があったとしたら私の責任です。
どうかご指摘くださいね!


“Welcome to the Age of Possibility”
   -可能性の時代へようこそ-

Visionary's Handbookの第一章の冒頭は、
この文で始まっています。


現在でも、
自分が生まれた場所・家、育った環境などに基づく
様々な制約があります。

それでも、以前に比べると私たちははるかに自由な
生き方ができますよね。すなわち、

・自分(自社)は将来どうなりたいか
・何をしたいか
・何を知りたいか
・どこに行きたいか

といったことについて多くの選択肢があります。


ただ、自分(自社)の可能性が拡がった分、
自分の進むべき方向を自ら決めなければならなくなりました。

自由だからこそ、可能性が大きいからこそ、
むしろ不確実な未来に立ち向かわなければならない
というのはある意味皮肉なことです・・・


でも、生まれ持っての宿命や運命に従うしかなかった
時代はとうに過ぎ去っています。

次々と生まれる新たな思想や技術、体制によって、
これまでの古い思想や技術、体制が破壊(更新)され続ける今、
周囲の環境変化に対して、

「受身」

でいるだけではただ翻弄されるばかりです。

自分(自社)は、自らの運命の管理人となり、
周囲の変化を能動的に乗り切ることが求められているのです。


Visionary's Handbookでは、
未来を予測する方法を教えてくれるわけではありません。

そもそも、未来を正確に予測することは不可能です。
とりわけ変化が加速している現代においては・・・

しかし、将来を予測することを止めてしまうのでは
ありません。

物事が変化し続けることを「常態」として受け入れ、
将来の変化についての予測を頻繁に見直しつつ、
柔軟に自分(自社)の行動も変化させていくのです。


以前のように、例えば10年先の未来を予測したら、
それを固定的なものとしてみなし、現在にさかのぼって
今後10年間の活動計画を立てるという方法は、
もはや役に立たないということですね。


さて、Visionary's Handbookでは、
混沌とした現代を生き抜く上で理解しておくべき9つの

「パラドックス」(矛盾)

が取り上げられています。

次回以降、各パラドックスのポイントを
ご紹介していきますね。お楽しみに!


『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

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・ペーパーバック1
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*現在は、出品者からしか手に入らないようです。

投稿者 松尾 順 : 10:26 | コメント (0) | トラックバック

マーケティングメトリックス:Web分析の新しい方法

まず、前回の記事の簡単な復習です。

マーケティングメトリックスにおいて
最も重要なのは、

「評価指標」

の取り扱いでした。


この評価指標は、
大きくは次の2つに分けて考えます。

・ゴール指標
・中間指標


ゴール指標は、

マーケティング施策全体

を総合的に評価するものです。

ですから、

・施策のどこが良かったのか?

逆に、

・どこに問題があったのか?

についての推察を行い、仮説を立て、
施策内容を改善するためにはあまり役立ちません。


そこで、ゴール指標に到達するまでの前段階で、
顧客が起こした行動や心理の変化を把握する指標が必要です。

これが

「中間指標」

です。

マーケティングメトリックスを実施するに当たっては、
多数存在する最終指標や中間指標の中から、前述したように、

マーケティング施策の目的や内容に即した指標

を選択し、指標相互の関係性を把握して、
体系化しておく必要があります。


さて、先日届いたばかりの

月刊『アイ・エム・プレス』最新号(2008.12 Vol.151)

の中の連載記事

「米国におけるeコマースの最新事情」

では、評価指標の選択に関する内容が
取り上げられていました。


今回は、その記事のポイントを簡単にご紹介します。

上記連載の今回のタイトルは、

“Web分析の新しい方法”

です。


米国のECサイト(記事中では「eテーラー」)では、
売上げと利益を伸ばし続けるためのカギは、
ビジターの行動の分析、その継続的なベンチマーキング、
トレンドの追跡だという点を理解しています。


ただ、やりかたは以前と大きく異なっているそうです。

ECサイトが従来重視していた

評価指標(記事中では「測定項目」)

は、以下の2項目でした。

-----------------------

1.コンバージョン率
 
サイト訪問者数に対する注文者数の割合

2.買い物の中断

商品をショッピングカートに入れたのに、
チェックアウト(注文完了)には至らなかった
買い物客の数

------------------------

しかし、最近のECサイトは、
もっと精密な測定を行うべきであることを
認識しています。

そのひとつの理由は、

コンバージョンや中断にいたる途中の経過

を知る必要があるからです。

すなわち、私の言葉で言えば、

「中間指標」

をもっと測定しないと、
具体的な改善施策を打てないからです。


そこで、最近注目されている測定項目として
以下のようなものがあります。

これらは、ECサイト向けの各種ソリューションを
提供している‘MarketLive’社が集計している

「MarketLive Performance Index」

で把握可能な項目です。

--------------------------

・「ワン・アンド・アウト」ビジター

1ページだけ見てサイトを離れるビジターの数。
日本では、一般に「直帰率」と呼んでいますね。

直帰率は低いほうがもちろんいい。

同記事によれば、
ホームぺージ(トップページ)に異なる商品が8つあるサイトが
最も低い「ワン・アンド・アウト率」を達成しており、
コンバージョン率はほかのサイトの3倍以上だそうです。


・検索toカート率

どの検索キーワードが、
カートに最も結びついたかを示す。

販売促進の指針として役立ちます。


・製品ページ訪問toカート率

どのページが強力にコンバージョン率に貢献しているか
を示すもの。あるページにおいてこの率が低い場合には、
コピーやグラフィックを改善すべきです。

--------------------------

同記事では、ご紹介した上記項目以外の項目についても
いくつか説明されていますが、長くなりますので割愛します。
(詳細はアイ・エム・プレス本誌を参照ください)


最近注目されている指標は、
行動の結果(すなわち「ゴール指標」)ではなく、
おおむね、なぜその行動を起こしたかという動機や、
きっかけを推測できるなものだという点に
お気づきでしょうか。


*月刊『アイ・エム・プレス』
 http://www.im-press.jp/

投稿者 松尾 順 : 11:25 | コメント (0) | トラックバック

マーケティングメトリックス:評価指標とは?

「マーケティングメトリックス」とは、
マーケティング施策の効果や効率を定量的に、
すなわち「数字」で把握するための仕組みです。


マーケティングメトリックスの運用は基本的には、

・マーケティング施策の目的や内容に基づき、
・最適な「評価指標」を選択し、
・その「評価指標」の算出に必要なデータを収集し、
・収集したデータを元に「評価指標」を算出、
・施策の効果・効率の検証を行う

という手順を踏みます。


さて、マーケティングメトリックスにおいて
最も重要なのは、

「評価指標」

の取り扱いです。


評価指標は、英語では

“Performance Indicator(s)”

と表します。

確実に把握しておくべき重要な評価指標のことを

“KPI”- Key Performance Indicator(s)-

と呼ぶのはご存知の方も多いと思いいます。


この評価指標ですが、
大きくは次の2つに分けて考えます。

・ゴール指標
・中間指標


「ゴール指標」は、「最終指標」とも言います。

マーケティング施策の最終(究極)の目的・目標
への到達度合いを評価するための指標です。


マーケティング施策の最終(究極)の目的は、
結局のところ、売上や利益ですよね。

したがって、ゴール指標は、多くの場合、

販売数、利益額、顧客獲得数、ROI(Return On Investment)

といった

「金銭的な成果」

に直結するものが選ばれます。


ゴール指標は、

マーケティング施策全体

を総合的に評価するものです。


ですから、

・施策のどこが良かったのか?

逆に、

・どこに問題があったのか?

についての推察を行って仮説を立て、
施策内容を改善するためにはあまり役立ちません。

なぜなら、文字通り施策の

「最終結果」

しか把握していないからです。


そこで、ゴール指標に到達するまでの前段階で、
顧客が起こした行動や心理の変化を把握する指標が
必要です。

それが

「中間指標」

です。

ゴール指標に‘先行’する指標であるため、

「先行指標」

と呼ぶこともあります。


ECサイトの例でゴール指標と中間指標をご説明しましょう。


・最終指標

以下のような数値が最終指標として選択されることが
多いでしょう。

 -販売額
 -利益額
 -販売数
 -新規購入者数
 -再購入者数
 -コンバージョン率(購入者数/サイト訪問者数)


・中間指標

顧客が当該ECサイトで購入する前段階の行動を把握します。
例えば次のようなものです。

 -購入中断率(カートに入れたのに購入に至らなかった割合)
 -滞在時間(商品に対する関心度や理解度を表すと考える)
 -サイト訪問者数
 -ネット広告閲覧数
 -ネット広告クリック数
 -検索エンジンからの来訪者数


マーケティングメトリックスを実施するに当たっては、
多数存在する最終指標や中間指標の中から、前述したように、

マーケティング施策の目的や内容に即した指標

を適切に選択し、指標相互の関係性を把握し、
体系化しておく必要があります。


(関連記事)
『マーケティングメトリックスとは?』

投稿者 松尾 順 : 13:18 | コメント (0) | トラックバック

ハイブリッドの時代

香港で一番有名な日本語はなんだか知ってますか?


それは、ひらがなの

「の」

なんだそうです。


街中を歩くと、

「新の城」「優の良品」「日の船」

など、「の」を使った店名の看板があちこちにあります。


なぜ「の」が香港で好まれるかの理由について、
最も有力な説は、

「高品質な商品を提供できる日本を連想させるから

ということらしいです。

また、

「丸っこい形が、記号としてかわいらしいから」

ということもあるようですね。


すなわち、具体的な意味を伝えるのではなく、
高品質とか可愛いといった感覚的なイメージを伝える

「デザイン」

としてひらがなの「の」が使用されているというわけです。


類似の理由で、
ユニクロのニューヨークSOHO店のロゴは、
アルファベットの「UNIQLO」に加えて、

カタカナの「ユニクロ」

が採用されているのはご存知かと思います。


SOHO店を訪れる大半の外国人にとって、
店頭に掲げられた旗やショッピングバックなどに
印刷された

「ユニクロ」

というカタカナは意味不明の単なる記号にしか見えません。

しかし、見慣れない文字だけにインパクトがありますし、
少なくとも

「ユニクロは日本発のブランドである」

というアイデンティティを感じることができますね。


さて、日本人は、

漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット

の4種類を駆使する世界でも稀な民族です。


ユニクロSOHO店のデザインを行った、
アートディレクターの佐藤可士和氏によれば、
外国人は、日本人デザイナーが取り組んでいるパンフレット
などの各種制作物の上に、上記の4つの異なるスタイルの文字
がバランスよく並んでいるのをみて驚くのだそうです。

基本的に「アルファベット」しか使わない外国人としては、

「なんと器用なことができるのだ」

という感嘆の声を上げるのです。


佐藤氏は、日本人は古来から、
外部から様々なものを取り込んで、
従来のものと上手に融合させる

「ハイブリッド」

が得意だと先日の講演で指摘していました。

確かに、私たちは、

「和洋折衷」

という言葉があるほど、
様々な分野でのハイブリッド化を実に
柔軟にやっていますよね。

そういえば、
世界的に評価の高いトヨタの

「プリウス」

も文字通りハイブリッド。


現代は、以前よりもさらに、
多種多様なモノの自由な組み合わせによって
イノベーションを起こすことが重要だと
考えられています。

佐藤氏も強調していましたが、

「ハイブリッド」

が現代のキーワードなのです。


日本人が様々な分野で世界をリードできる時代
なのかもしれませんね。

投稿者 松尾 順 : 12:07 | コメント (0) | トラックバック

性能破壊型ノートPCに日本メーカーはついていけるか?

日経産業地域研究所がまとめた

「2008年第三四半期の新製品ランキング」

で、台湾アスーステックコンピュータ

「EeePC(イーピーシー)」

が総合1位に選ばれていますね。
(日経産業新聞、2008/10/23)


「EeePC」はパソコンに求められる性能・機能を絞り込み、
小型化と低価格化を実現。

「5万円パソコン」

の新市場を開拓した製品です。


さて、この製品は、イノベーションのタイプとしては、

「パラダイム持続型―性能破壊型」

に分類できます。


「パラダイム持続型」というのは、
EeePCは、PCとしての基本的な枠組みは既存のものと
変わらないという意味です。

一方、「性能破壊型」というのは、
意図的に性能を引き下げることによって別のベネフィット
(EeePCの場合、「携帯性」と「安さ」)を高めたという
意味です。

「パラダイム持続型―性能破壊型」

に分類される他のIT関連製品としては、
以前紹介したように、

ハードディスクやフロッピーディスク

などがあります。

ハードディスクについて言えば、
14インチから始まり、8インチ、5インチ、3.5インチ
へと小型化が進みました。

こうした小型化は、当初は記憶容量が減るため、
実質的な性能低下になるわけです。


しかし、「記憶容量」ではなく「小サイズ」という
ベネフィットを評価するユーザーによって受け入れられ
普及が進んだ結果、旧製品を淘汰してしまいました。

注目すべきは、
上記のような性能破壊型イノベーションの場合、
従来製品でトップを走っていたメーカーの多くが、
小型化の流れについていけず、新興メーカーに道を
譲ったことです。


現在売れている製品を売れなくするような新製品を
出すことは社内的な抵抗が大きいからですね。

また、あえて性能を低下させるような製品を設計するのは
技術者としては面白みがないという点もあるでしょう。

いわゆる「イノベーションのジレンマ」です。


「EeePC」によって開拓された5万円パソコン市場の拡大に
よって、従来のノートPC市場はかなりの影響を受けています。

さすがに静観していられなくなった
日本の大手PCメーカーも追随しつつありますが、
おおむね価格設定が高めですよね。

同じ土俵で勝負できる製品をまだ出せていません。


やはり、

「イノベーションのジレンマ」

に直面しているのではないかと想定されます。


一方、PC最大手のHPは動きが速い。
イノベーションのジレンマを乗り越えることに
成功してます。

本日の日経本紙に15段全面広告で、
4万円台まで価格を引き下げたノートPCの発売を
告知していました。

これはかなり衝撃的・・・

デルなども近々、
同じ水準のノートPCを投入するのは
間違いないでしょうね。


ハードディスクドライブやフロッピーディスクのように
5万円パソコンが従来パソコンを完全に代替してしまう
ことはないと思われます。


しかし、既存ノートPC市場の縮小、
あるいは縮小はしないまでも成長が鈍化することは必至です。


「イノベーションのジレンマ」

を乗り越えて、低価格ノートPC市場で勝負できない
日本メーカーは、今後窮地に追い込まれることになるでしょうね。


*技術イノベーションの4類型

投稿者 松尾 順 : 17:38 | コメント (0) | トラックバック

観念価値の時代

「製品が提供できる価値にどのような種類があるのか」

については様々な考え方や理論があります。


私の場合、
最近は以下の3階層で製品価値の構造を捉えています。

(1)便益価値(最下層)
(2)感情価値(中階層)
(3)観念価値(最上層)


------------------------------

(1)便益価値

製品がどんな具体的な欲求を充足してくれるのか、
ということです。

「その製品は、どんな問題を解決してくれるのか」
「その製品は、どんな役に立つのか」

といった質問の答えが「便益価値」になります。


先日のドリルの話で言えば、

「ドリル」という製品は、

「ねじ穴」

を開けるのに役立つという

「便益価値」

を持っています。

-----------------------------

(2)感情価値

その製品を利用することによってユーザーが感じる

「心地よさ」「たのしさ」、「うれしさ」

など、感情に作用する価値のことです。
(「情緒価値」ということもあります)


これはブランドイメージとも強く結びついています。

たとえ割高(最近はそうでもありませんが)でも
アップル製品を積極的に購入したいと考えるユーザーが
いるのは、アップル製品を所有することの喜びや楽しさが、
他のメーカーよりも大きいからですね。 

また、以前ご紹介した、花王のハンディモップ、

「クイックルワイパーハンディ」

では、小さいほこりを除去して部屋がきれいになるという

「便益価値」

に加えて、思わずなでなでしたくなる、
ネコじゃらしのようなふわふわした形状にモップ部分を
したことで、「楽しい」「かわいい」といった

「感情的価値」

をユーザーに提供しています。

------------------------------

(3)観念価値

これは「コンセプト価値」と言うこともありますが、

「製品」

そのものが持つ価値というよりも、
むしろ、その製品を提供する企業が打ち出している

経営理念や方針、企業文化

などがもたらす価値です。


具体的には、

「誠実な経営に徹する」

といった経営自体についての方針や、

「原材料には天然ものしか利用しない」

といった品質についての考え方であったり、

「環境保護」「動物愛護」

といった、社会的な意義の高い問題に対する
貢献意識の強さです。(いわゆる「CSR」)

人々は、上記のような、
製品の背後にある企業のこだわりや考え方、
社会的な貢献意識の高さに共感して、
あえてその製品を選択するという行動を取ります。

------------------------------

さて、従来は「便益価値」の大きさが、
特定の製品が選ばれる最大の理由でした。

近年は、便益価値での差別化が困難になったため、

「感情的価値」

がより重視されるようになってきましたね。

しかし、これからは、なによりも

「観念価値」

が購入に当たってますます重視されるように
なってくるでしょう。

どんな製品かということ以上に、
どんな会社がそれを提供しているのか、
そしてその会社はどんな考え方を持っているのか
を知った上で購入を判断したいと考える消費者が
増えていきます。

これは、情報化が進んだことにより、
企業の実態が次々と明るみにでるようになった今、
公正で誠実な会社があまりに少ないことに消費者が
気付いたことの反映でもありますね。


*情緒価値重視の製品開発:花王のケーススタディ

投稿者 松尾 順 : 07:44 | コメント (1) | トラックバック

大相撲の経済学(6)「八百長」の経済学

「週刊現代」の八百長疑惑を報じた記事を巡る

「大相撲八百長訴訟」

の弁論(08/10/03)において、
講談社側の証人として出廷した元小結の板井圭介氏は、
次のように証言しています。

『現役時代、八百長に関与した。横綱、大関なら当時で
 70~80万円を払って下位の力士に頼んでいた』

『下位の力士同士であれば、1回勝ったら、次は負ける。
 それが相撲界のルール』


板井氏の発言の真偽はさておき、

『大相撲の経済学』

では、八百長を行うインセンティブ(動機)、メリットが、
どのような場合において発生する可能性があるかを検討しています。
(八百長が実際に行われているどうかを検討したものではありません)


同書では、数式を用いて説明してあるのですが、
難しくなるので詳細は本を読んでいただくとして、
ここではポイントのみ紹介しておきます。


そもそも、「経済学の基本理論」にしたがえば、
八百長の取引が成立するためには、その取引によって

正味の利益増加分(純利益)

が発生しなければなりません。


八百長が生み出す利益とは、
ひとつには、負けることによって失うはずの地位や所得を
維持できることです。

また、勝ち負けを確実にすることで、
ガチンコ(真剣)勝負のリスクを回避できることです。


さて、八百長を実際に行うとしたら
取引の方法には坂井氏が証言したように次の2つの方法があります。

1.金銭の授受を行う
2.星を交換する(現在と将来の勝ち星を交換)


金銭の授受が行われる場合について詳しく説明しましょう。

『大相撲の経済学』では、
八百長をもちかけ、金銭を渡す力士を「渡川」、
もらう側を「受取山」と名づけて八百長の成立条件を
具体的に検討しています。

なお、前提として、渡川、受取山の両者は巡業などを通じて
お互いの実力を熟知していて、ガチンコ勝負した際にどの位の割合で
渡川が受取山に勝つかもわかっていることにします。


この前提において、渡川が受取山に八百長を持ちかけるためには、
ガチンコで勝った場合の利益よりも、八百長で確実な勝ち星を得る方
が利益が多くなければなりません。(まあ、当然のことですけど)

一方、受取山が八百長話をOKする条件は、
負けることによって失う損失よりも、
渡川からもらうお金が多くなければなりませんよね。


ですから、八百長が成立しやすくなるのは、
渡川にとってこの一番で勝つことの利益が十分に大きく、
一方、受取山にとって負けることの損失が小さい場合です。

例えば千秋楽において、十両最下位の渡川は、

7勝7敗

で勝ち越しがかかっているとします。


一方、十両十枚目の受取山は、

8勝6敗

で既に勝ち越しを決めています。


このような状況での渡川と受取山の一番で、
もし渡川が負けると幕下に転落。

約100万円の月給がゼロになります。


しかし、受取山の場合は、
勝ち越しているので、この一番に負けても、
それによって被る損失は、勝った場合に得られる勝ち点分
(1円分、実質1場所当たり4000円の力士褒賞金)だけです。


そこで、もし両者のリスク(勝敗率)評価や実力、交渉力が
ほぼ同じだと仮定すれば、この一番における渡川の勝ち星の
取引額はおよそ

25万円

当たりになるだろうと同書では推定しています。


「星の交換」による八百長の場合も、
基本的な成立条件は同じです。

つまり、

八百長の利得がガチンコの利得を上回る場合

に、八百長を行うインセンティブ、メリットが生まれてきます。


逆に、八百長が成立しにくい状況としては、
次のような点が挙げられます。

ひとつは、両者の実力が離れている場合です。

先ほどの例で言えば、渡川が受取山よりも圧倒的に強いと
わかっていれば、ガチンコでも勝てる可能性が高いわけですから、
渡川としては、金銭を渡してまで勝ちを確実にしようとは
思わないでしょう。


もう一つは、両者の現在の一番の重要度が近い場合です。

同じく先ほどの例で言えば、
受取山も、渡川と同様に十両最下位にいて7勝7敗、
千秋楽で負ければ幕下転落の崖っぷちにいるということであれば、
渡川も受取山もどちらも絶対に負けたくない状況です。

この場合、まずガチンコ勝負しかありえませんね。


相撲協会では、八百長を防ぐことを狙いとして、
一番の取組の重要性がほぼ同じ力士同士の取組を増やしています。

千秋楽で、共に7勝7敗の取組が多いのは、
八百長をしたくなるインセンティブを低下させるためなのです。


また、幕内力士と十両力士、
および、十両力士と幕下力士の対戦が多く組まれます。

下位に陥落して給料を減らしたくない力士と、
上位に這い上がって給料を増やしたい力士の対戦であれば、
お互いの損得の和が近いため、八百長をすることによる
純利益がほとんど発生しません。

ですから、やはり八百長をするインセンティブが低くなります。


なお、八百長が起きないようにするためには、
実力がかけ離れた力士同士を組ませるという方法もあります。

ガチンコ勝負でも、
どちらが勝つかお互いほぼわかっているため、
八百長する必要がないからです。


しかし、観客にとっては、
勝ち負けが明白な一番はまったく面白くありません。

(こんな取組ばかりだとファン離れが起きるでしょうね)

どっちが勝つかわからない実力伯仲の力士同士が
闘うからこそ面白いわけです。

したがって、大相撲という興行(娯楽スポーツ)の
運営主体である相撲協会としては、現実にはこのような
取組は避けなければなりません。


ところで、
冒頭の訴訟に出廷した板井氏の証言によると、
八百長をやる理由として、

『お金がほしいというよりも、いま自分がいる地位を保ちたいからだ』

と述べています。

八百長が行われる背景には、
単に経済的なメリットだけでなく、
プライドというか、見栄というか、心理的な要素も
絡んでくるようです。

板井氏のコメントは、
人間が100%合理的な判断に基づく行動するとは限らない点を
示していると言えますね。


今回で『大相撲の経済学』の内容紹介は終わりです。

一連の記事でご紹介できなかったテーマもまだたくさん
ありますので、興味のある方はぜひ本書読んでみてください!


八百長疑惑は残念なことですが、
大相撲界の今後のさらなる隆盛を1相撲ファンとして
応援したいと思っています。


『大相撲の経済学』
(中島隆信著、東洋経済新報社)

→単行本
→文庫本


(その他関連本)

『力士はなぜ四股を踏むのか』

『大相撲界の真相』

『力士の世界』

投稿者 松尾 順 : 15:29 | コメント (7) | トラックバック

親父さん、娘には避けられて正常です!

私は若い頃、

フィールド調査員

の仕事を2年ほどしていた時期があります。

関東の様々な小売店(GMS、スーパー、コンビニ、
ドラッグストア、化粧品店、タバコ店など)を訪問して
消費財の売れ行きを調べるのです。


この仕事をしているフィールド調査員は、
全国に配置されていましたが、私は

「リリーフ要員」

という役割。

つまり、人手が足りないところに派遣される
お助け部隊でした。


業務遂行には、
高度な調査技術や豊富な商品知識が必要で、
一人前にこなせるようになるまで結構大変でしたが、
ひとつ、おいしい点がありました。


それは、現場での作業時間はおおむね

朝9時過ぎから夕方4時くらい

まで。

残務処理があるとはいえ、
毎日ほとんど残業がなかったのです。

なぜ作業時間が短いのかというと、
お店のオープン前後から調査を開始して、
夕方、お客さんで混み始めるまえに終了する
必要があったからです。

しかも、毎日オフィスに行く義務がなく直行・直帰。
オフの時間がたっぷりありました。
(地方在住の調査員は、そもそも東京の事務所に
 通勤できませんから)


さて、以上は実は前振りです。
長くてすいません。


当時私は独身でしたが、
結婚されている調査員の方の中には、
毎日欠かさず夕食を家族で囲むという方がいました。

仕事が終わってまっすぐ帰れば、
5時、6時には自宅に戻れますからね。


そんなわけで、家族みんなと
とても仲が良かったその調査員のおじさんは、

中学生の娘といまだに一緒にお風呂に入っている

という話をしていたのを覚えています。

当時独身の私にはよくわかりませんでしたが、
現在中3の娘を持つ身となってみると、
一緒にお風呂に入るなんてとても考えられません。

年頃の娘は基本、親父を避けるものですからね。
ちょっと悲しいですが・・・


そもそも、年頃の娘は、
なぜ父親を避けるのでしょうか?

特に「親父のにおい」を毛嫌いしますよね。


次の実験にそのヒントがありそうです。

スイスのベルン大学、米国シカゴ大学などが
行った実験です。

まず何人もの男性に、
同じTシャツを数日間続けてもらいます。
(男性のにおいがたっぷり染み付きますね)

そして、そのTシャツを複数の女性にかいでもらい、
好ましいと感じたものを選んでもらうのです。
(被験者の女性にとっては、あまり楽しい実験では
 なさそう・・・)


個々人の体臭は、

「HLA遺伝子(MHC遺伝子)」

で決まることがわかっているそうですが、
実験結果によると、女性は、

自分と近い遺伝子を持つ男性のにおい

を避ける傾向にあることが確かめられたそうです。

これは、近親婚を回避し、
遺伝的多様性を保つための本能的な働きと
考えられています。


この実験を踏まえると、
血のつながった親父のにおいを娘が嫌い、
接触を避けようとするのは正常なことだと言えます。

中学生にもなった娘が、
親父のにおいを嫌わないのは逆に好ましくないわけです。

ちょっとほっとしました。


上記実験内容については以下の書籍を参考にしました。

『ここまで解明された最新の脳科学 脳のしくみ』
(ニュートンムック)

投稿者 松尾 順 : 10:24 | コメント (2) | トラックバック

ディズニーランドより楽しい?「キッザニア東京」

2006年10月に開業した

「キッザニア東京」(以下「キッザニア」)

に行かれたことありますか?


「キッザニア」は、
子供たちのための「職業体験型テーマパーク」です。

この施設では、

・働いてお金を稼ぐ
・稼いだお金を銀行に預ける
・稼いだお金を店で使う

といった、大人にとっては「日常的なこと」ですが、
子供たちにとっては「非日常なこと」を体験できます。


キッザニアでは、
楽しみながら社会勉強ができる(仮想の)街ということで、

「エデュテイメントタウン」

と自らを呼んでいます。


なお、「エデュテイメント(Edutainment)」は、

・エデュケーション(Education)
・エンターテイメント(Entertainment)

の2つの要素が融合しているという意味を持つ造語ですね。


キッザニアのメインターゲットは、
小学校低中学年、つまり7-9歳の子供たち。

ただ、実際には中高生の社会科見学や修学旅行先として
利用されることも多いため、7-9歳を頂点として
顧客層の裾野は意外に広いようです。


ご存知の方も多いと思いますが、
キッザニアが生まれたのはメキシコ。

メキシコの子供たちに大人気だったキッザニアを
日本に持ってくる際には、日本のスポンサー企業の理解・賛同
を得るのに苦労したとのこと。

従来にない施設だったからです。


また、果たして日本ではうまくいくかどうか、
懐疑的な人もいましたが、フタを開けてみれば大成功!

昨年07年度は、延べ97万人の来場者数を記録。

「ディズニーランドより楽しい!」

と繰り返しリピートする、
熱狂的な子供たちのファンも生まれています。

実は、私の長男(小6)も、
昨年初めてキッザニアを体験しましたが、
今もディズニーランドよりキッザニアに行きたい
と申しております・・・


さて、キッザニアとディズニーランドは、どちらも

「非日常」

を演出している点は同じながら、
それぞれのコンセプトや仕組みを比較してみると、
ある意味対極的な位置づけにあることがわかります。


それは、まず第1に

・ディズニーランド=ファンタジー
・キッザニア=リアリティ

という対比です。


ディズニーランドは、
来園者を夢の世界に連れて行くため、

「日常生活」

を思い出させないための細かい工夫がしてあります。

とことん

「ファンタジー」

を追求しているのがディズニーランドです。


一方、キッザニアは、
「リアリティ」にこだわっています。

子供たちはスポンサー企業のパビリオンで、
様々な仕事、職種を体験できます。

例えば、大和運輸のパビリオンでは宅急便で荷物を配達し、
ピザーラのそれでは、実際に食べられる本物のピザを焼き上げる。


キッザニアでは、スポンサー企業の出展に当たって、
自社事業に関連のある仕事であり、かつ各事業の独自ノウハウに
基づいた職業体験ができることを求めたそうです。

ですから、100%全く同じとはいかないまでにしても、
大人が実際に行っている宅急便やピザーラなどの仕事を
子供たちも同じ業務で行うことができるようになっています。


また、キッザニアでは、
様々な企画を立てるに当たって、

「子供だましはしない」

ということをいつも言っているそうです。

相手が子供だからといって、
リアリティに欠けた

「ままごと遊び」

に過ぎない内容にしてしまうと、
子供たちはすぐにふざけ始めてしまうからです。


さて、ディズニーランドとキッザニアの
もう1つの大きな違いは、

・ディズニー=受動的体験
・キッザニア=能動的体験

です。


ディズニーのアトラクションは
基本的に見て楽しんだり、決められたレールの上を走る
ライドに乗って楽しむ。

客側のアクションはほとんどありませんよね。


しかし、キッザニアでは、1部2部総入れ替え制、
1度に最大1500人の子供たちを入場させ、
5時間にわたって、70種類を超える職種の中から
好きな職種を選んで、子供自身が体験できる仕組み。
(1回の入場で体験できるのは、5職種前後だそうです)


例えば、テレビ局(BSフジ)のパビリオンでは、
子供たちが、アナウンサー、音響エンジニア、ディレクター、
スタイリストなどになりきって番組を作っていく。

運営方のスタッフは結構大変でしょうけど、
いろいろとハプニングも起きたりして、子供たちは
臨場感あふれるリアルな仕事現場の一員になれるわけです。

すなわち、キッザニアが提供しているのは、

能動的な娯楽

なのです。


同じテーマパークでも、ディズニーとキッザニアでは、
ずいぶんと楽しみ方が異なることがおわかりでしょうか。


なお、子供たちの中には

「キッザニアよりもやっぱりディズニーが好き!」

という子もいるでしょうし、
どちらがより優れているかという話をしたいわけではありません。


ただ、ハード面でも多大な投資が必要なディズニーランド型
のテーマパークと違い、「職業体験」というソフト面の充実
でリピート客を生み出しているキッザニアからは、
大人も学べる点が多いように思います。


当記事は、以下の講演の内容を参考にしました。

*日本マーケティング協会 月例会(2008/09/28)

「職業体験テーマパーク『キッザニア』の開発について

 講師:株式会社キッズシティージャパン
    マーケティング部部長 関口陽介氏


*キッザニア東京
http://www.kidzania.jp/index.html

投稿者 松尾 順 : 17:37 | コメント (0) | トラックバック

大相撲の経済学(4)相撲界の終身雇用制度

近年、力士の大型化が急速に進んだのは、
体の大きな外国人力士の影響だと言われています。

現在はタレントとして活躍しているKONISHIKI、
つまり、ハワイ出身の「小錦」は新入幕時から200キロを越す
体躯で活躍し、無差別級の相撲における

「体格」

の優位性をまざまざと見せつけましたよね。


しかし、最高体重283キロまで増えてしまった小錦は、
タクシーに乗ればタイヤがパンクし、飛行機のトイレには
体が大きすぎて入らないため用が足せないなど、日常生活
にはいろいろと不便があったそうです。


前回説明したように、
相撲という特殊なスポーツで上位を目指すために、
多くは中卒で相撲界に入り、「相撲部屋」という一般社会とは
全く環境の異なる世界で暮らして体を巨大化させる力士は、
引退後のキャリアチェンジが容易ではありません。

このため、一定以上の成績を上げ、
大相撲の隆盛に貢献した力士に対しては、
引退後も手厚い生活保障が提供される仕組みになっています。


それは

「年寄制度」

です。

これは、「年寄株」を取得することにより、
引退後も日本相撲協会に「親方」として残ることが
できる仕組みです。


「年寄株」は正確には、

「年寄名跡(みょうせき)」

と呼ばれています。定年は65歳です。

したがって、力士が30代前半で現役を引退して
年寄株を取得すれば、65歳の定年までの約30年間に
わたって給料をもらい続けることができます。
(幕内力士の平均引退年齢はおよそ32歳だそうです)


年寄にもランクがあります。

相撲協会内でがんばって働けば、

平年寄→主任→委員→監事→理事

と出世していくことができます。

年収は、平年寄では1千万円強ですが、
理事になると2千万円を超えます。


『大相撲の経済学』では、
上記の「役職」はおおむね年齢とリンクしていることが
指摘されており、出世の条件としては、

「年功」

の占める要素が大きいようです。


さて、年寄たちに与えられる十分な報酬は、
言うまでもなく、相撲興行から得られる収益から
分配されるもの。

つまり、大相撲界全体としてみれば、
現役力士たちが、引退した年寄たちの生活を支える
構図です。

「年金」を連想しますね。


もちろん、年寄たちは年金生活をしているわけではなく、
自分の相撲部屋を持って若い力士を育成するなど、
日本相撲協会の一員として様々な業務を遂行していますから、
いわば一般企業における

「終身雇用制度」

と同様の仕組みが確立されていると言えるわけです。
(終身雇用制度の枠組みには入れるのは、ごく一握りの
 力士に限られる点がプロスポーツの厳しい現実ですが)


一般企業における終身雇用制度は崩壊しつつありますよね。

しかし、キャリアチェンジが容易でない大相撲の世界では、
大相撲の隆盛に貢献できる有望な新力士を呼び入れるためにも、
生涯にわたる生活保障を維持する必要があります。


「年寄株」は105しかなく、
需要が供給を上回っているのが現状です。

つまり、引退して年寄株を取得できる資格があるにも関わらず、
空きがないため年寄になれない元力士もいます。
(ただし、四股名のまま相撲協会にしばらく残れる措置があります。
 いわゆるウエイティング状態ですね!)


年寄株の取引の実態は明らかではありません。

高値で取引されることもあるなど、さまざまな問題が
指摘されてきていますが、

「年寄制度」

もまた、大相撲界全体としての存続という目的に照らすと、
十分な経済合理性を持っていると考えられます。


『大相撲の経済学』
(中島隆信著、東洋経済新報社)

→単行本
→文庫本


(その他関連本)

『力士はなぜ四股を踏むのか』

『大相撲界の真相』

『力士の世界』

投稿者 松尾 順 : 09:42 | コメント (1) | トラックバック

大相撲の経済学(3)現役力士の報酬制度

大相撲界の報酬制度もまた、経済合理性の観点から見ると、
実に巧妙に練り上げられたものだと言えます。


現在の現役力士に対する報酬制度の特徴は、

「一定以上の実力を持つ力士が上位の座を目指すこと、
 そして長く現役で活躍することを動機付けるもの」

です。


ここで、

「一定以上の実力」

と言うのは具体的には

「10両以上」

のランクのことです。


力士は、10両以上になると

「関取」

と言われるようになり、
給料がもらえるようになります。


逆に言えば、10両未満の力士は給料が出ません。

10両未満のランクは、
総称して「幕下」と呼ばれています。

幕下ランクにいる力士は、通称

「取的」

と言われますが、正確には

「力士養成員」

という名称の立場です。

彼らは、所属する相撲部屋の

住み込み賄い人

として、相撲部屋の炊事や掃除・洗濯、
10両以上の力士の世話などをして働きつつ、
一人前の力士になるべく日々稽古に励んでいるのです。


給料は出ませんが、
部屋住み込み、食事付きですから生活には困りません。

年6回開催される本場所ごとに、
彼らにもランクに応じて10万円前後の手当てがでますが、
2ヶ月に1回で10万円程度ですから「お小遣い」ですね。


要するに、幕下力士は

「見習い修行中」

なのです。花街で言えば、

舞妓さん

と同じ立場にあるわけです。


さて、10両以上になった力士がもらえる報酬は、
2段階構造になっています。

報酬のベースとなるのが、いわゆる「月給」。

これは、

・横綱:282万円
・大関:235万円
・関脇・小結:131万円

といったようにランクに応じて決まっています。
年収だと、横綱で3400万円程度ですね。

ランクに応じた固定報酬です。


もうひとつは「力士褒賞金」。
これは、上記月給に上乗せされる成果報酬となります。

「力士褒賞金」は、

・勝ち越しの数・・・0.5円(一つにつき)
・金星(平幕力士が横綱に勝った場合)の数・・・10円
・全勝した場合・・・50円

など、本場所での「成果」に応じて与えられます。
(実際の報奨金は、この金額を4,000倍した額)


興味深いのは、
10両以上に止まっている限り、
力士褒賞金はどんどん積みあがっていくだけで
減額されることがない点です。

ある場所で負け越したからといって、
褒賞金は増えないにせよ、減ることはありません。

また、たとえ幕下に陥落しても、
積み上げた褒賞金はキープされますが、
再び10両以上に上がらない限り、褒賞金はもらえません。

したがって、長く10両以上にとどまり、
現役を続けているほど褒賞金は多くなっていきます。


『大相撲の経済学』によれば、
昭和54年に初土俵を踏み、以来幕内に93場所在位し、
平成14年秋場所後に引退した「寺尾」の場合、
引退時の褒賞金は

230円

でした。

これは、現在の倍率(4,000倍)で換算すると

92万円

ですね。

長年幕内に在位していた寺尾は、
引退する頃には、本場所ごとに90万円程度の褒賞金
を月給にプラスしてもらっていたわけです。


一方、『大相撲の経済学』が出版された2003年の時点
での横綱「朝青龍」の褒賞金は、

180円

程度でした。

当時はまだ、角界入りしてから日が浅かったため、
褒賞金の積み立てが少なかったのですね。


これは、実質報酬額(x4,000)としては

72万円

であり、寺尾よりも20万円低い!


すなわち、朝青龍は当時、月給は横綱ですから当然トップ、
ところが、上乗せ分の「力士褒賞金」については、
長年現役を務めることで大相撲界に貢献してきた寺尾の方が
多かったのです。


このように、

「月額給与」

は、ランクに応じて増減しますので、
より上位のランクを目指すインセンティブとして
働いきますが、

「力士褒賞金」

は、10両以上の力士として現役に長くとどまることを
動機付けていると言えるわけです。

なお、上記の基本的な報酬以外に、
場所ごとの成果に応じてもらえる特別手当(優勝賞金など)や、
企業などが広告宣伝目的で出す「懸賞金」などの報酬もあります。


以上の仕組み、給料の出ない幕下以下の力士にとっては
厳しいものですが、10両以上になれる資質を持ち、かつ
不断の努力を続けることのできる力士にとっては、
とてもありがたいものです。


というのも、力士の多くは中卒で相撲部屋に入ります。

最近は高卒、大卒の力士の割合も増えてきているそうですが、
学歴というか基礎的な学力を考慮すると、相撲界から一般企業
に転進するのはなかなか大変です。

また、相撲部屋という特殊な環境の中で鍛えられ、
相撲という特殊なスポーツ競技で勝てるようになるために
一般人とはかけ離れた

「巨大な体躯」

を意図的に作り上げます。

この点でも、相撲界を離れた後の職業選択の幅が、
どうしても狭いものになってしまうわけです。

要するにつぶしがあまりきかない。

そこで、短期的な成果に基づく純粋な成果報酬ではなく、
一定以上の実力を保って現役を続けることがプラスになるような、
現在の年功的要素の強い報酬制度に落ち着いたと考えられます。


なお、現役時代に活躍し、相応の成績を収めた力士は、
引退後も「年寄」になることで安定した収入(1千万円以上!)
を65歳の定年まで得ることができます。

このあたりについては次回で!


『大相撲の経済学』
(中島隆信著、東洋経済新報社)

→単行本
→文庫本


(その他関連本)

『力士はなぜ四股を踏むのか』

『大相撲界の真相』

『力士の世界』

投稿者 松尾 順 : 19:24 | コメント (0) | トラックバック

大相撲の経済学(2)競争制限的な仕組み

大相撲界は、一つの大きな会社組織のようなもの。
別の言い方をすれば、「運命共同体」です。


現役の力士たちは、
より高い番付や、場所優勝を目指して、
お互いに競い合っているものの、

「真の敵」

ではありません。

むしろ、大相撲という

「興行」(=娯楽サービス)

を共に盛り上げる仲間。だから、
同じ会社の「社員」という見方ができるわけですね。


さて、大相撲界では、力士や部屋単位ではなく、
全体の繁栄・存続を大前提とする

「巧妙な仕組み」

が長い年月を経てできあがっています。


この点は、同じ「興行」でありながら、
特定の球団の繁栄が優先され、業界全体の地盤沈下が著しい
プロ野球界がぜひ学んで欲しいところです・・・


おっと脱線しましたが、
前述の「巧妙な仕組み」に戻りましょう。

巧妙な仕組みの多くは、

‘競争制限的’

なものです。


例えば、相撲は「個人競技」ですが、
全力士が、他の全力士と戦うことができる

「個人総当り制」

ではありません。


同じ部屋に属する力士同士は、
本場所の土俵上では戦わない決まりです。
(優勝決定戦を除いて)

つまり、本場所の取組は、
他の部屋の力士の間でしか組まれないのです。

これは、

「部屋別総当り制」

と呼ばれ、昭和40年から続いているそうです。


当然ながら、

「部屋別総当り制」

だと、

「個人総当り制」

よりも「取組」の多様性が低くなります。


例えば、同じ高砂部屋の

‘朝青龍’(西横綱)と‘朝赤龍’(西小結)

の取組が見たいと願っても、

「優勝決定戦」

にならない限り実現することはありません。


ですから、以前より「個人総当り制」を
望むファンの根強い声があります。

しかし、今後も「個人総当り制」に
変更される可能性はほとんどないでしょう。


なぜなら、より多くの白星を取れたり、
優勝を狙える力士をたくさん抱えている部屋ほど、
相撲協会からの補助金がたくさんもらえるためです。


ですから、もし「個人総当り制」になってしまうと、
強い力士をたくさん育成することよりも、むしろ、
同じ部屋の力士同士の取組の場合に、どちらを勝たせるべきか
といった所属力士の白星・黒星の配分に気をつかうことになる
でしょう。

仮に、個人総当り制となったとして、
もし自分の部屋のある力士があと1勝で優勝するという取組で、
同じ部屋の他の力士と戦うことになったとします。

この場合、親方としては、当然ながら優勝しそうな力士を
勝たせたいでしょう。(そのほうが補助金が多くなる)

そうすると裏取引、
すなわち「八百長」が行われるかもしれませんよね。


結局のところ、大相撲は、
「個人別競技」でありながらその実体は、

「部屋同士の戦い」

なのです。


ですから、強い力士の数に応じて
相撲部屋にインセンティブが与えられる現状においては、

「部屋別総当り制」

が最も合理的な仕組みと言えるわけです。


なお、強い力士を育てることは相撲部屋の仕事であり、
相撲協会自体は育成にはかかわりません。

したがって、相撲協会が、
強い力士の数に応じて部屋にインセンティブを
与えることも経済合理性に適っています。


さて、もうひとつ競争制限的な仕組みを説明しましょう。

力士は、入門する相撲部屋は選べますが、
その後は自分の意思で他の部屋に移籍することはできません。

つまり、

「フリーエージェント」

の権利を現役力士は持っていないのです。


なぜ、移籍の自由が認められないのでしょうか。

それは、もし移籍が自由化されれば、
相撲部屋の親方は、有望な弟子を手間暇かけて
育てるよりも、番付の高い人気力士を金の力で
スカウトしようとする可能性が高いからです。

そうなると、資金力に勝る部屋にばかり強い力士が
偏ることになりますよね。
(現在も、現役時代に人気が高かった力士が親方と
 なっている部屋に有望な力士が集まる傾向はありますが)


前述したように強い力士がいる部屋ほど、
相撲協会から多くの補助金が入るため、
移籍自由の世界では、特定の部屋がますます
強大化していくことになります。

こうなると、1強○弱みたいになってしまい、

「部屋別総当り制」

における取組はまるで面白みのないものになるでしょう。
(強い力士同士の迫力ある取組が減少するから)


このあたりの弊害がもろに顕在化しているのが
現在のプロ野球ですよね。


以上述べたように、大相撲界の場合、
伝統文化の名の下に力士本人の自由度が
かなり限定されているのですが、

大相撲界全体

の繁栄・存続のためには、
実に合理的な仕組みではあるのです。


ただ、親方の性格や、
それぞれの相撲部屋が持つ固有のルールや社風(部屋風?)と、
所属する力士との間の「合う・合わない」、つまり

「相性」

の問題が、一般の会社と社員との間と同様、
発生するでしょう。

ですから、他の部屋に移籍できないことが、
有望な力士の成長をつぶしてしまったり、
不祥事の種になる可能性を秘めていますよね。


『大相撲の経済学』
(中島隆信著、東洋経済新報社)

→単行本
→文庫本

投稿者 松尾 順 : 14:21 | コメント (1) | トラックバック

大相撲の経済学(1)大相撲界ってどんなところ?

さて今回から、

『大相撲の経済学』

の内容を私なりに咀嚼した上でご紹介していきます。


まずは、大枠を押えましょう!

すなわち、

「大相撲界ってどんなところなのか」

ということです。


ひとことで言えば、大相撲界とは、

「大相撲会社(グループ)」

とでも形容できる、
一般企業に似た大きなひとつの組織なのです。


なぜ、

「会社組織」

に類似していると言えるのでしょうか?


まず、力士を始め、各部屋の親方、行司、床山、世話人、
また日本相撲協会の理事、監事、役員など、関係者全員が

「日本相撲協会」

の構成員として属していることがひとつ。


次に、「番付」や「取組」は、
全て日本相撲協会の運営を行う

「年寄」

たちによって決められる点があります。
(「年寄」とは、相応の功績のあった力士が、
  現役引退後に取得できるポジション)


『大相撲の経済学』によれば、

「年寄」たちは‘(トップレベルの)管理者’

であり、

現役の力士たちは‘(一般)社員’

にあてはめると納得がいくと書いてあります。
(カッコ部分は松尾補記)


力士たちにとって、「番付」とは、
一般の会社が行う「人事」と等しいものです。

すべての番付は、
審判部に属する親方を中心に構成される

「番付編成会議」

によって決められ、
力士は人事に口をはさむことはできません。
(一般企業でも、基本的に「人事」に社員が
 異を唱えるのは難しいですよね)


また、各場所において、
どの力士とどの力士が対戦するかという、

「取組」

は、会社側が力士に下す「業務命令」と
みなせますね。


なお、力士、行司、床山など「(一般)社員」たちは、
日本相撲協会の構成員であると同時に、どこかの相撲部屋に
それぞれ所属しています。

そして、各相撲部屋に対しては、
弟子の数や弟子の活躍に応じて下記のような補助金、

・部屋維持費
・稽古場経費
・力士養成費

が日本相撲協会から支給されています。


先ほど、「大相撲会社(グループ)」と書きましたが、
日本相撲協会がいわば全体を束ねる

「持ち株会社」

のような形で存在しており、
各相撲部屋は、相撲協会からの出資を受けながら、
それぞれの部屋を運営している

「子会社」

のようなものだからです。

つまり、全体としては同じ「相撲事業」に関わっている
会社グループだとみなせるわけです。


さて、力士に払われる給与(基本給)ですが、
横綱、大関、関脇・小結など番付=職階に応じて
決まっています。

明快な賃金テーブルがあるわけです。


つまり、大相撲界では、
プロ野球やJリーグのように、
各スポーツ選手と球団側との個別交渉に基づく
契約ベースの報酬ではないのです。


このあたりの仕組みを見ても、大相撲界とは、

「大相撲会社(グループ)」

という大きな会社組織であり、
また、大相撲界にいる人々は、管理者、
あるいは社員であるという見方がしっくりきますよね。


『大相撲の経済学』
(中島隆信著、東洋経済新報社)

→単行本
→文庫本

投稿者 松尾 順 : 15:14 | コメント (2) | トラックバック

大相撲の経済学(0)イントロダクション

近年、大相撲界の不祥事が相次いでますね・・・

特に、このところの麻薬汚染問題は大相撲にとって
深刻なイメージダウンにつながっています。


実は、私事ながら9月14日から始まる

「大相撲九月場所」

の両国国技館のチケットを購入していたのです。
(イス席ですけどね・・・)


相撲好きだった祖父の影響で、
大相撲のテレビ中継は小さい頃から毎日のように
観ていた私ですが、生の大相撲を観るのは生まれて初めて!

もし万が一、同場所が中止にでもなったら
どうしようと心配してました。

さすがに中止はなさそうですが。


さて、大相撲は日本が誇る

「伝統文化」

のひとつであることは言うまでもありません。

ただ、その封建的、閉鎖的な制度が、
現代においてはややそぐわなくなっている点は
否めないでしょう。

とはいえ、大相撲界が、伝統文化であると同時に、
興行を始めとする経済活動を通じて存続してきた以上、
その仕組みには、確かな

「経済合理性」

があります。


こうした経済合理性の観点から、
大相撲界の仕組みを分析した本があります。

『大相撲の経済学』
(中島隆信著、東洋経済新報社)

です。

この本はとても面白い本で、
以前からご紹介したいと思っていたのですが、
ネガティブな意味で現在最も注目されている今こそが
ベストタイミングでしょう。


例によって何回かに分けたシリーズで、
内容をご紹介していきたいと思いますのでお楽しみに!


『大相撲の経済学』
(中島隆信著、東洋経済新報社)

→単行本
→文庫本

投稿者 松尾 順 : 11:31 | コメント (5) | トラックバック

臭いオトコはもてないよ!

先日参加したある懇親会で、
某ゲーム開発会社にお勤めの2人の女性と
話す機会がありました。


どんな流れでそんな話題になったのか、
酒の席だったのでよく覚えていないのですが、
彼女たちによれば、

「うちの会社は、くさいんですよ・・・」

とのこと。

エレベーターに会社の男性と乗り合わせると、
正直、息を止めたくなるほどいやな臭いを感じるのだそうです


開発担当の男性たちは、
連日会社に泊まりこんでゲーム開発に没頭しています。

風呂もろくに入らないし、
着替えもどのくらいマメにやっているのか不明。

会社の特性上、

「あまり好ましくないにおい」

が会社に充満しているのも、
やむを得ないのかなと思いました。


さて、近年、

「におい」

に対する関心が高まってますよね。


とりわけ、人が発する

「臭いにおい」

をどうやって抑えるかという

「防臭」

に対する関心が強まっています。


これは、高齢化社会の進展によって。
中高年特有の体臭、いわゆる

「加齢臭」

が注目されるようになったことも背景にあるでしょうね。


加齢臭は、男女問わず40歳代以降に増加するようですが、
自分のことは棚にあげて言うと、やはりオヤジのほうが臭い
わけです。

なぜなら、自分自身の臭いに鈍感であり、
そもそも気にしてもいない人が多いからでしょう。

前述したゲーム開発会社の若い男性たちも、
ゲームのことで頭が一杯、自分がどんなにひどい格好を
しているか、またどんなに臭いかなんて、まったく気に
していないそうです。


一方で、においを含む「外見」を磨くことの重要性に
目覚めた男性もいますし、体臭については、特に奥さんや彼女、
娘などから厳しい指摘を受けることから、なんらかの対策を
打つ必要性に迫られていますね。


こんな男性サイドの高まるニーズに応えたのが、
クラシエフーズ(旧カネボウフーズ)のガム、

『オトコ香る。』

です。

『オトコ香る。』は、食べて1-2時間すると、
体からほのかにバラの香りがするという画期的な商品。


香水などの強い香りで体臭をごまかすのは、
香水慣れしていない多くの男性にとって、
あまり気が進まないものです。

しかし、ガムを噛むだけで、
体の内側からよい香りがするようになるこの製品は、
とても魅力的だったのです。


『オトコ香る。』は、2006年7月の発売と同時に
爆発的に売れました。

店によっては、バラ1個売りではなく、

「ボックス売り」

するお店もあったとか。

このため、発売わずか2カ月ほどで出荷停止。

2007年3月に再発売されてからも、
コンスタントに売れ続け、現在はコンビニの定番商品
としての地位を確立していますね。


ご存知の方も多いと思いますが、
クラシエフーズでは、若い女性向けに同様の機能を持つ

『ふわりんか』

を2005年8月に発売。

この製品はヒットしただけでなく、
お客様センターに次のような声が寄せられたのだそうです。

「男性(夫)にプレゼントしたい」
「パッケージが女性ぽくって買いづらい」
「加齢臭に効きますか」


『ふわりんか』のような製品が、
中高年層、特に男性にも求められていたことに気付いた
同社商品開発部では、以前から

「男のモテガムを作りたい」

という発想があったことから、

ふわりんかの男性版の開発に着手したのだそうです。


興味深いのは、『ふわりんか』も『オトコ香る。』も、
経営陣の受けは悪く、当初の年間目標は4億円という
控えめなものにさせられたのだそうです。

しかし、フタを開けてみれば
どちらも年商10億円以上のヒット商品になりました。

現在、『オトコ香る。』の購入者の7割が男性、
一方、『ふわりんか』の場合、7割が女性ということで、
うまくすみわけもできています。


「体臭」は、目をそむければ済む見た目と違い、
鼻をずっとつまんでいない限り防ぐことができません・・・

しかも、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、肌感覚の5感のうち、
脳神経に直結していているのは嗅覚だけ。

それだけ、においは脳に直接的な刺激を与えるのです。


したがって、臭い男性(女性もですが)は、
それだけで異性の生理的不快感を与えてしまい、
引かれてしまう可能性が高いのです。

ですから、体臭を抑える機能を持つ商品に対するニーズは
今後もますます強まっていくのではないかと思います。


*『オトコ香る。』については、
 日経情報ストラテジー(OCTOBER 2008)の記事、
 『あのプロジェクトの舞台裏』を参考にしました。

投稿者 松尾 順 : 10:56 | コメント (0) | トラックバック

女は狩りに出よ!男は自分を磨け!・・・「婚活」時代

私は20代の頃から、勤め先の会社以外の
外部の様々な集まり(異業種交流会や趣味系サークルなど)
に顔を出してきました。


さて、こんな私が最近特に気になって仕方がないのが、
外で出会う人たちのうち、実に多くの魅力的で妙齢の女性、男性が

「独り身」

でいることです。


こうした独身の人たちの中には、

「私は結婚はしない」

という主義の人もいます。

でも、ほとんどの人は、

「いい人がいたら結婚したい」

と考えているのです。


『「婚活」時代』
(山田昌弘著、白河桃子著、ディスカヴァー携書 21)

は、そんなひとたちのために役立つ内容となっています。


「婚活」とは、‘結婚活動’の略です。
‘就職活動’を「就活」と略すことに倣っています。

この本では、就職活動と同様、現代においては
積極的な結婚活動を行わなければ結婚に至らないという
基本認識があります。


就職活動について言えば、
以前は、職業の選択の自由がほとんどなく、
だからこそ逆にほとんどの人がなんらかの仕事に
就いていました。

また、周囲(教授や親戚縁者など)の斡旋を通じて
就職することも一般的でした。

ところが、就職市場が自由化され、
選択の自由が与えられた結果、皮肉にも、
働く側と雇用する側のマッチング(すりあわせ)が
必要となり、就職活動の如何によって仕事を得る人、
得られない人が出てくるようになったのです。


結婚についてもほぼ同じことが言えます。

以前は、親が決めた相手(いいなずけ)と結婚することが
一般的でしたし、また世話好きの「仲人おばさん」などから、
半ば強制的に結婚相手とお見合いさせられるということも
あったわけです。

おかげで、ある程度受身でも、
ほとんどの人が結婚できていました。


しかし、近代においては、「恋愛」と「結婚」が分離し、
結婚の自由化が進んだことによって、やはり就職と同様、
男女双方が主体的に選択しあう関係となりました。

しかも、結婚をするに当たっては、
以前よりも価値観やライフスタイルが多様化したため、
「結婚」についての双方のすり合わせが重要になりました。


このため、

「結婚活動」(婚活)

をがんばって行わなければ、
なかなか結婚できなくなってしまったというのが
現状なのです。


『「婚活」時代』では、
具体的な婚活の方法が詳しく解説されていますが、
男女それぞれが取るべき基本方針(戦略)は次の通りです。
(私の個人的な解釈も含まれている点ご注意!)

-----------------------------------------

・女性は狩りに出よ!

 昨今の男性は「待ちの王子様」です。
 また、自分のプライドが傷つくのが怖い
 「ガラスの王子様」でもあります。

 待っていても、なかなか声をかけてくれません。
 気になる男性がいたら、自分から声をかけ、
 セッティングしましょう。

 そして、自分好みの「男性」へと教育しなさい。
 (最初から魅力的な男性を見つけようとするのではなく、
  恋愛ベタな男性の中に、あなたにとって最高の男性と
  なり得る原石が見つかるかもしれません)


・男性は自分を磨け!

 女性から選んでもらうために重要なのは、
 経済力とコミュニケーション能力。

 経済力、つまり「稼げる能力」を高める努力、
 そして、「外見」を含めて女性との適切な付き合い方
 を学ぶことが必要です。

 なお、最近は経済的に自立している女性が、
 あまり経済力のない男性を選択するということも
 増えてきているようです。

 したがって、男性にとって「経済力」が、
 結婚相手を見つける上で、なくてはならないものとは
 必ずしも言えないかもしれません。

 むしろ、不潔な格好をしているとか、
 NGワードを会話で連発するようなコミュニケーション
 能力のなさの方が問題だと思われます。

 ただ、経済力と異なり、
 コミュニケーション能力は比較的短期間で
 高めることができますので、男性はまずこちらから
 着手すべきかなと思います。

-----------------------------------------


現代社会の結婚状況や、
詳しい「婚活」の方法について関心のある方は、
ぜひこの本を読んでみてください。

構成もよく練られていて、
本としての完成度の高い内容ですよ。


『「婚活」時代』
(山田昌弘著、白河桃子著、ディスカヴァー携書 21)

投稿者 松尾 順 : 14:03 | コメント (2) | トラックバック

社交的なコンピュータオタク・・・マイクロトレンド

いわゆる「コンピュータオタク」は、
内向的で非社交的な人間というイメージがあります。

確かに以前は、他人との接触が苦手、友達もおらず、
ひとり黙々とコンピュータ操作に没頭する人が
多かったですよね。


しかし、今や、コンピュータや携帯端末などの
テクノロジーを使いこなしている人々は最も社交的で
たくさんの友人と交流している人です。


コンピュータとコンピュータをつなぐ

「インターネット」

の浸透によって、人と人の間のコミュニケーションが
安価かつ手軽になりました。

最新のテクノロジーは以前と異なり、
社交的な目的のために開発・利用されることが
多くなっています。

ですから、社交的な人ほど、
さらに人とのつきあいを広げたり深めるために
テクノロジーの活用に熱心に打ち込んでしまうと
いうことかもしれません。


米国で行われたある調査では、
最も熱心なテクノロジー愛好者のうち
60%が「外交的」なタイプだったそうです。

(一般米国人のそれは49%)


彼らは、家にとじこもってひたすらコンピュータなどを
いじっているだけではありません。

「夜遊び、街に繰り出す」といった遊びもする
と回答した人は、「テクノロジー嫌い」の人の倍もいます。

また、熱心なテクノロジー愛好者の41%が、
パーティを「積極的に楽しむ」と答えているのに対し、
消極的なテクノロジー利用者は同24%に止まっています。


テクノロジーの役割が変わってしまった現代、

「コンピュータオタク」

に対する認識を改める必要があるのではないでしょうか?


さて、上記でご紹介した「社交的なコンピュータオタク」は、

『マイクロトレンド-世の中を動かす1%の人びと』

の本で解説されている

「41の多様なグループ(層)」

のひとつです。


『マイクロトレンド』とは、
価値観やライフスタイルの多様化を背景として
たくさん生まれている

「小さな兆候」

のこと。

この小さな兆候は、
人口のわずか1%かそこらの規模しかないため
あまり目立ちません。

しかし、今後大きく成長する可能性を秘めた個性的な
グループであり、社会の変化に大きな影響を与えているのです。


本書で挙げられている事例は米国が中心になっていますが、
日本国内の動向については、消費社会研究家の三浦展氏の
コメントが随所に盛り込まれています。


未来を的確に読むために、一読をお勧めします。


『マイクロトレンド-世の中を動かす1%の人びと』
(マーク J. ペン with E キニー・ザレスン著、吉田晋治訳、
 三浦展監修)

投稿者 松尾 順 : 16:21 | コメント (0) | トラックバック

良循環の医療システム(後編)

歯医者さんの数は、
実はコンビニより多いのだそうです。

このため、過当競争に陥っており、
歯科医院の経営は大変厳しい状況です。

実際、年収が300万円程度の歯科医師が
5人に1人もいると言われており、マスコミでは、

「歯科医師のワーキングプア問題」

がしばしば取り上げられるほどですよね。


こんな厳しい経営環境の中で、千客万来、
全国から、またわざわざ海外からもお客さんが
押し寄せてくるため、次の予約が数週間先にならざるを
得ないという超人気の歯科医院があります。

それは、東京都・中央区、築地や月島に近い
聖路加ガーデン・セントルークスタワー1Fに開業している

「馬見塚(まみづか)デンタルクリニック」

です。


同クリニックの「経営理念」は、

「健康創造型歯科医療」

という言葉に集約されています。


これは、具体的に言えば、

「できる限り‘治療’をしない」

というもので、現在の歯科医療の真逆の考え方。

言い換えると、
治療が必要なムシ歯などにならないように

「予防」

のための医療に力を入れるということです。


ですから、当クリニックでは、
一般の歯科医院が提供する各種診療にも
すべて対応していますが、特に、

「PMTC」
(プロフェッショナル・メカニカル・
 トゥース・クリーニング)

と呼ばれる治療を前面に出しています。

これは、歯垢をきれいに取り去った上に、
フッ素を塗布するもの。

PMTCを受けると、

・歯周疾患の改善、進行防止
・ムシ歯予防
・歯質強化
・審美性の向上(タバコのヤニなどによる着色の除去)

などの効果があるそうです。


「PMTC」は正確には「治療」ではありません。

歯の病気を治すのではなく、
歯の病気を防ぐためのものだからです。

このため、保険診療の対象とならず、
患者さんの全額負担(自費診療)となります。


「PMTC」は、1-2ヶ月に1回程度、
定期的に受けることが原則です。

1回あたりの医療費は1万円超!

これを患者さんが全額負担するわけなのですが、
PMTCを受けている患者さんは、PMTCの意義・価値を
十分納得した上で、喜んでこの費用を負担しています。


病院の全診療費に占める「自費診療」の割合を

「自費率」

と呼び、これが高ければ高いほど
病院の収入も増えます。

歯科医院の場合は、自費率が50%を超えたら理想的
と言われているのに対し、当デンタルクリニックの
自費率はなんと

70%

だそうです。

つまり、患者さんの多くが、
同クリニックの技術力や、PMTCなどの予防医療の価値を
高く評価し、健康保険の対象とならない「保険外診療」を
望んで受けているということです。


馬見塚院長は、予防医療について言えば、

「もはや、‘患者さん’とは呼べない」

とおっしゃっていました。

PMTCの定期受診を通じて、当クリニックが
患者さんの歯の健康を守り続けることが理想だからです。

実際、小さい頃からPMTCを受けている人の中には、
小学6年生の時点でも全永久歯でムシ歯ゼロという子供さん
がいるとのこと。


実は、開業当初は、この「予防医療」の考え方を
患者さんに理解してもらうのにはとても苦労したそうです。

「とにかくこのムシ歯を治してくれればいいから」

といった患者さんがほとんど。


しかし、ムシ歯は普段の生活習慣に起因するものです。

仮に今のムシ歯を治療しても、
文字通り「対処療法」に過ぎません。

しばらくするとまた同じところや別のところが
病気になり、再び治療しなければならなくなるのです。


そこで、現在罹っている病気の治療だけでも、
また病気を早期発見することだけでもなく、
そもそも病気にならない

「予防」

の重要性を馬見塚院長は患者さんに説き続けました。

「患者さんにとって本当に良い医療とは何か」

を重視し、「治療してくれればいい」といった
お客さんの目先の治療ニーズに安易に迎合しなかったのです。


そして今や、当クリニックの来院者の8割は口コミ。

ほぼ全員が、当クリニックの「健康創造型歯科医療」の理念や、
PMTCについての基本知識をWebサイトで理解し、納得した上で
やってくるので、もはや「予防」の重要性を時間をかけて
説明する必要はほとんどないそうです。


当記事前編では、

「良循環の医療システム」

の基本的な方向性として

・「医師に会う時はすでに患者」という状況を抜け出し、
 医師と患者の対話を促進し、関係性を改善する

・開業医と勤務医のインフォーマルな連携プレーを促進し、
 医療の生産性向上と勤務医の時間の余裕を生み出す。

・「国民医療費」というコスト発想ではなく、
 「国民医療消費」という「価値」の消費へ発想転換する

の3点をご紹介しました。


歯科医院の場合、2点目の「開業医と勤務医の連携」に
ついてはあまり該当しないものの、

・医師と患者の対話促進、関係性改善

および

・「国民医療消費」という「価値」の消費への発想転換

については、
馬見塚クリニックでは現実のものとなっていることが、
以上の説明からご理解いただけたでしょうか?


*馬見塚デンタルクリニック


*本記事は、馬見塚デンタルクリニックのWebサイト、
 および、馬見塚デンタルクリニック院長、馬見塚賢一郎氏
 のご講演に基づいて作成しました。

投稿者 松尾 順 : 11:11 | コメント (2) | トラックバック

良循環の医療システム(前編)

元マッキンゼー東京支社長の横山禎徳氏(現社会システム
デザイン研究所 ディレクター・社会システムデザイナー)は、

「社会システムをデザインする」

というコンセプトを掲げています。


ここで、「社会システム」とは、端的には

「生活者・消費者への価値提供の仕組み」

と定義されます。

従来の‘産業(業界・業種)別’の縦割りの発想と異なり、

‘産業横断型’

でシステムを設計すべきだと提唱されているのです。


例えば、「金融」というと、これまでは、

銀行、証券、ノンバンク...

といった「金融業」に分類される企業しか念頭に置きません。


しかし、実際の「金融システム」の運用には、

通信、IT、小売業...

など、他の業界の企業が様々な形で参画していますよね。

ですから、

「理想的な金融システム」

を設計するためには、「業界本位」ではなく、

「消費者・生活者の視点」

から業界横串的に一貫性のある形でシステムを見直し、
設計することが必要となってくるというわけです。


さて、横山氏は現行の医療システムの問題点として
一言で言えば、

「自己規律」

が欠如していることを挙げています。

具体的には、

・医療機関は、患者に要求されるがまま、
 腰の引けた過剰医療に陥っており、
 超多忙な毎日で疲労感を蓄積している。

・患者は、医療行為に対する価格感覚がなく、
 過剰診療を要求しがちである。

・現行健康保険制度においては、
 「価格対価値」とあまり関係のない診療報酬が
 支払われてしまう。

といった周知の問題があります。

そして、こうした問題は、
医師・患者間の相互不信の増長や
医師の労働時間の増加といった

「悪循環の医療システム」

を生み出すことにつながっているのです。


では、良循環の理想的な医療システムへと、
システムをデザイン(設計)しなおすには
どうすればいいのでしょうか?

この質問に対する回答として、
横山氏は、次のような方向性を示しています。


・「医師に会う時はすでに患者」という状況を抜け出し、
 医師と患者の対話を促進し、関係性を改善する

・開業医と勤務医のインフォーマルな連携プレーを促進し、
 医療の生産性向上と勤務医の時間の余裕を生み出す。

・「国民医療費」というコスト発想ではなく、
 「国民医療消費」という「価値」の消費へ発想転換する


以上の点は、言うまでもなく、
日本の医療全体において実現されるべきですが、
1医療機関として、

良循環の「理想的な医療システム」

に限りなく近い医療を実現している病院があります。


それは、東京・築地の聖路加タワーにある歯医者さん、

「馬見塚デンタルクリニック」

です。

後編では、当病院を具体事例としてご紹介します。


*横山禎徳氏の話は、夕学五十講の講演内容に基づいています。

投稿者 松尾 順 : 16:08 | コメント (0) | トラックバック

小売店の競争マイオピア

小売店の「業態別」の成長(成熟)度合いを把握するため、

「製品ライフサイクル」

に当てはめてみます。


成長初期にあるのは「ネット通販」ですね。

一方、加速成長の時期にあるのが、
ユニクロ、無印良品、ヤマダ電機などの「大型専門店」です。

「コンビニエンスストア」は成熟期に入ってますね。


そして、成熟期から衰退期へと移りつつあるのが、

イトーヨーカー堂、ジャスコ、ダイエー

などの「総合量販店(総合スーパー」(GMS)。

「百貨店」や「中小商店」は衰退期です。


さて、今回は、「小売の雄」と言われたダイエーが
破綻したことに象徴されますが、消費者の支持が著しく低下し、
厳しい経営状況に追い込まれている

「総合量販店」

に焦点を当てます。


私自身、時々、自宅近くのダイエーやイトーヨーカー堂に
行きますが、テナントとして入っているファッションブランド
はさておき、品揃えにほとんど違いを感じません。

つまり、どの総合量販店も変わり映えがしないため、
あえて特定の店舗を選ぶ理由がほとんど見つからないですよね。
(距離的に近い以外は)

ただ、一時期、イトーヨーカ堂グループに在籍されていた
元伊勢丹バイヤーの藤巻幸夫氏によれば、同店の衣料品の品質
は価格的みて非常に優れているとおっしゃっていましたが。


総合量販店の品揃えが似通ってしまうのはなぜでしょうか?

それは、商圏内の競合他店との競争において、
違いを出そうとするのではなく、逆にお互いに模倣しあう結果
であるという研究があります。


なぜ模倣しあうのでしょうか?

それは、商圏内の消費者の衣食住にわたる幅広いニーズに、
大量仕入れで販売価格を引き下げ、大量販売を狙う総合量販店
としては、そうするしかないからです。


つまり、ひとりでも多くの消費者に商品を買っていただくためには、
あまりとんがった個性的な商品を並べるわけにはいきません。

どうしても、無難で平均的な品揃えになってしまうのです。

また、他店で売れ筋の商品があれば、
それを黙って指をくわえて見ているわけにはいきません。

消費者にも、

「あの店には置いてあったのに、
 どうしておたくには置いてないの?」

と言われてしまいますしね。

そこで、同じ、または類似商品を仕入れざるを得ない。


こうして、商圏内の同じ消費者を奪い合っているはずなのに、
競合店舗と差別化しようとするのではなく、逆にどんどん

「同質化」

していくということが起きるのですね。

田村正紀氏(同志社大学教授)は、この現象を

「競争マイオピア」

と読んでいます。
(マイオピアとは近視眼的行動の意味)


この同質化現象は「ゲーム理論」でも説明できるようです。

詳細な解説は末尾に示した参考記事をご覧いただきたいのですが、

「相手プレーヤーの戦略が変わらない時に、
 自分1人だけ戦略を変えても利得が増えないような状態」

と言える

「ナッシュ均衡」

をどの店舗も選んでしまうために同質化が起きるのです。


総合量販店は、前述したように、
基本的に商圏内の「最大公約数的ニーズ」に対応する
店づくりを目指しています。

端的に言えば、大量に売れそうな商品しか置かない。

ここで、ある店が差別化のために、
あえてユニークな商品を入れたらどうなるかというと、
好き嫌いが明確に分かれる商品ですから、
たくさんは売れませんし、競合店に客が流れてしまい、
売上が低下するのは明らかです。

したがって、お互いナッシュ均衡を選ぶしかないというわけ。


なお、このゲーム理論による説明は、
覇権を狙う大手政党(米国における共和党と民主党、
日本における自民党と民主党)の政策がどんどん
似通ってくることにも適用されています。


選挙で少しでも多くの支持者を得ようと思ったら、
過激な政策ではダメ。

むしろ、多くの支持者が拒否反応を示さないような、
中庸で無難な政策をお互い打ち出すしかないですし、
また競合政党の政策の中で支持率の高いものがあれば、
やはり競争上、類似の政策を掲げて支持率を高める行動を
取るしかないからですね。


*総合量販店の同質化についての研究

 「GMS激突競争における競争マイオピア」
  (田村正紀氏、同志社大学教授、)

*ゲーム理論による店舗同質化についての参考記事

 「経済学で斬るビジネス潮流 ゲーム理論」
 (文:広野彩子氏、監修:安田洋祐氏、政策研究大学院大学助教授)
  日経ビジネス マネジメント、Summer 2008

投稿者 松尾 順 : 12:48 | コメント (3) | トラックバック

拡大するリターン市場

リーダー(バンドマスター)曰く、

“俺たちはオヤジバンドじゃないから、
 オヤジバンドコンテストなんか出ないぜ!”


とは言え、傍目からはどう見ても

「オヤジバンド」

にしか見えないバンドのメンバーとして、
私はエレキベースを担当しております。

もちろん、メンバーは皆音楽が大好きで、
以前バンドをやっていたか、やりたかったかのどちらか。
(私がベースを再開したのは20年ぶりでした。)

ただ、ドラマーは関西在住ですし、
残りのメンバーは関東に住んでますが、
なかなか練習スケジュールが合わないのが悩みの種です。


さて、忙しいビジネスパーソンも、
30代後半から40代過ぎになると多少余裕がでてきますので、

「昔やっていたけど挫折してしまったこと」
「昔やりたかったけど、時間的・金銭的余裕がなくて
 やれなかったこと」

に向かう人が増えてきます。


私は、こうした中年以降の消費行動を

「肉体的・精神的な老化を防ぎたい」

という意識の反映だろうと解釈しており、

『アンチエイジング消費』

と呼んでいます。


一方、博報堂生活総合研究所エグゼグティブ・フェローの
関沢英彦氏は、上記のような消費行動の結果として、
拡大しつつある市場のことを

「リターン市場」

と呼んでいるようです。
(日経産業新聞、2008/06/13)


関沢氏は、「リターン」と、
類似した言葉である「リバイバル」の2つの言葉の違いを
上記記事の中で説明しています。


「リバイバル」とは、一度すたれた商品やトレンドが、
時代の一巡によって復活すること。

対して、「リターン」は、消費者が自分の意思で、

「昔やっていたこと」

に戻ることです。


例えば、最近、ハーレーを始めとする大形バイクが、
最近中高年に人気ですよね。

彼らは「リターンライダー」と呼ばれているそうですが、
おそらく、10代のころにナナハンに憧れていたり、
400ccくらいのバイクに乗っていた人たちが多いんじゃない
でしょうか。

若い頃は大型バイクは高くて、とても手が出せずにいた。

でも、子供たちも独立して家計に余裕ができた今なら、
買えないこともないといった人たちでしょう。


同様に、高級コンパクトデジタルカメラも、
以前一眼レフに凝っていた写真好きの中高年層が、
好んで買っているのだそうです。


また、私も子供のころ憧れたものの、
やっぱり高くて買えなかったNゲージ、HOゲージなどの

「鉄道模型」

も、今の中高年が、子供そっちのけで夢中に
なってるんですよね。


音楽系で言えば、ピアノやエレクトーンを始める中高年男性が
増えているようですが、最初からいきなり自分の好きな曲を弾く
練習ができるクラスが人気です。

プロを目指すわけじゃないので、
退屈な基礎練習をしてもつまらないし、続かないからですね。


さて、関沢氏によれば、リターン市場拡大の背景には、

「昔のことに再び取り組みたい」

という熱い思いがあるということですが、
市場活性化のための重要なポイントを示しています。


それは、新しい技術によって、

「ハードルを低くしてあげること」

だそうです。

大型バイクは今はマニュアルではなくオートマが主流。
つまり運転しやすくなっています。

このように、そんなに努力しなくても使いこなせる
操作性の高さや、それなりに楽しめる敷居の低さが
重要なのです。


ちなみに、40代以降の人生の後半生における、
人の心理的発達段階は、次の4つの段階に分かれることを
ジーン・コーエン氏(米ジョージワシントン大学の医学者)
が提唱しています。

-----------------------------------------------

1.再評価段階(40代前半から50代後半)

いつかは自分も死ぬという現実に初めて向き合う。

再評価、探求、移行が行動上の特徴で、探究心や危機感に
駆り立てられて計画を立てたり、行動を起こしたりする
傾向がしばしば見られる。


2.解放段階(50代後半~70代前半)

「いまやるしかない」という意識を持つことが多くなる。
これが、新たな「内なる解放」を呼び起こす。

「解放」「実験」「革新」が行動上の特徴で、
自分の要求に従い、自分の思いや個人の自由意識から
計画を立てたり、行動を起こしたりする傾向が
しばしば見られる。


3.まとめ段階(60代後半~80代)

自分の知恵をみんなと共有しようとする傾向が強まる。

「総括」「決意」「貢献」が行動上の特徴であり、
人生を振り返り、総括する中で、人生を意味を見つけたい
という欲求から計画を立てたり、行動を起こしたりすること
がしばしば見られる。

4.アンコール段階(70代後半~人生の最期)

「継続」「回想」「祝福」:が行動上の特徴である。

人生の大きなテーマについてもう一度、語りたい、
主張したいという思いや、そのテーマの変奏曲のように
新たな人生を探求したいという思いから、
計画を立てたり、行動を起こしたりする傾向が見られる。

*以上は『リタイア・モラトリアム』より一部引用。
---------------------------------------------------

これら4段階のうち、「リターン市場」は、
主に最初の2段階、すなわち

「再評価段階」と「解放段階」

にいる人たちがキープレーヤーだと考えられますね。


(参考文献)
『リタイア・モラトリアム』
(村田裕之著、日本経済出版社)

(関連記事)
『男のアンチエイジング消費』

投稿者 松尾 順 : 13:38 | コメント (3) | トラックバック

「歌」というコミュニケーション

元携帯電話のセールスマン。

英国のスター誕生番組でその才能を見い出され、
今は世界ツアーを敢行するほどの人気を
博している英国人の新人オペラ歌手。

その人の名は・・・?


ポール・ポッツ氏です。

彼の名前は覚えていなくても、上記番組

「Britan's Got Talent」(以下「BGT」)

に登場し、冴えない風貌と裏腹に、

「誰も寝てはならぬ(Nessun dorma)」
(プッチーニの歌劇、『トゥーランドット』から)

を高らかに歌い上げ、
聴衆を感動させた動画を「YouTube」で
ご覧になった方が多いでしょう。


彼は今週来日し、渋谷Bunkamuraの

オーチャードホール

での2日間にわたる公演を成功裡に終えました。


私は昨晩(4/30)の彼の公演に、
トレンドウォッチングを兼ねて行ってまいりました。


何がトレンドウォッチングかというと・・・

まったくの無名。しかも、デビューして
1年にもならないオペラ歌手が、いきなり

「オーチャードホール」(総客席数2,150)

でのライブを実現できたのは、

「ネットの力」

以外に考えられないからです。


昨日の公演でも入り口で来場者を観察していたのですが、
中学生だけのグループからお年寄りまでいろんなタイプ
の人たちがいて客層がバラバラ。


おそらく、ポール・ポッツ氏来日コンサートのチケットを
購入した人の共通点は、口コミなどを通じて彼のことを知り、
「YouTube」を見て感動し、

「ぜひ、自分の耳で直接聞いてみたい!」

と考えたことだけだと思います。

もしネットがなかったら、
決してこんなことは起こらないですよね。


さて、肝心の彼の歌ですが、
やや線は細いものの、繊細で伸びやかな高音がすばらしく、
心の奥底まで入り込んできます。

彼は小さい頃から歌が大好きで、6歳から地元の教会で
歌っていたそうです。しかし、オペラの英才教育を受けた
エリートではなく、ほぼ独学で今の歌唱力を身につけた雑草
のような人。

思わずプロ野球の現楽天監督、野村克也氏を連想しました。(笑)


彼が歌った曲の歌詞は英語やイタリア語なので
言葉として伝えたいことはほとんどりわかりませんでした。

しかし、彼の歌に対する「熱い思い」は
聴いているほうにも確実に伝わってきました。


たとえ歌詞がわからなくても、歌はまぎれもない

「コミュニケーション」

であることを改めて納得しました。


ついでながら、私の好きなラブコメ映画のひとつ、

「Music & Lyrics」(ラブソングができるまで)

では、ヒュー・グラント演じる元ポップスターのアレックスと、
ドリュー・バリモアが演じるソフィーの2人が
新曲を作り上げていく中で愛を育んでいくという話なんですが、
この中のある場面でソフィーが口にするセリフがちょっと
面白いです。ご紹介しておきましょう。(意訳してます)

“メロディーは人に初めて会うようなもの。
 身体的な魅力だとかセックスだとかに惹かれて。
 でもその後で、その人となりを理解するのが歌詞よ。
 相手のストーリーを知ることでね。
 メロディーと歌詞が組み合わさって魔法ができるの”


このソフィーの言葉に従うなら、
ポールポッツ氏が歌う歌詞の意味も理解できたなら、
さらに昨日のコンサートが楽しめたということになりますね。


どちらにせよあの歌声だけで十分堪能できましたけど!


*ポール・ポッツ情報
http://www.bmgjapan.com/paulpotts/
*こちらで「BGT」のコンテストの動画も見れます。

投稿者 松尾 順 : 13:20 | コメント (0) | トラックバック

ターゲティングのパラドックス

たくさんの人に買って欲しいと、
「幅広い顧客像」をイメージして作った商品が
まるで売れない。

逆に、たった「一人の顧客」のために作った商品が、
多くの人に支持されてヒット商品となる。


これは最近よく聞く話ですが、

「ターゲティングのパラドックス(矛盾)」

とでも呼べますかね。


さて、このパラドックスには、
優れた言語感覚を持つ歌手&作詞家の一青窈も
気づいているようです。

彼女は、

“よりたくさんの人に伝えようと思うと歌詞は狭くなる。
 対象を絞ったほうが言葉は普遍化する”

と先日放映されたテレビ番組の中で言っていました。


ふーむ、ちょっと抽象的な物言いですが、
彼女の言わんとすることはわかりますよね。

歌詞とは、

基本的に聴き手に自分の思いを伝えるためのもの

です。

もし歌詞の内容が

「相手に対する愛」

を伝えるためのものだとしても、
それが「万人」に向けて書かれたものであったなら、
その歌詞は、好きな人の心だけでなく、
誰の心もつかむことができないというのは
直感的にわかりますよね。


商品開発についても同じことが言えるのでしょう。

その商品は

「誰のためのものなのか?」

という点を

・商品特性(ネーミング、スペック、パッケージデザイン等)、

および

・マーケティングコミュニケーション

において、相手に明確に伝えることができるかどうかが、
ヒットする商品を生み出せるかどうかの分かれ目なのでは
ないでしょうか。


実際、ターゲットとした顧客が特定の1人だったとしても、
その1人と近い好みや感性を持つ人は必ず一定数以上いるわけです。

つまり、1人にターゲットを絞ることによって、
結果的に極めて明確な顧客セグメンテーションを
同時に設定できているということになります。

だからこそ、

「これは私のための商品だ!」

とターゲット顧客は感じ、喜んで買ってくれるのでしょう。
(しばしば想定外のターゲットに売れることがありますけど)


問題は、ターゲットに定める

「1人」

を誰にするかということです。

やはりそこそこ売れて欲しいマス商品の場合、
セグメントを狭くしすぎるのは収益に限界があるため
できません。

したがって、ちょっと矛盾した言い方に聞こえるかも
知れませんが、より多くの人を包含したセグメントを
代表するような1人を選びたいところです。


残念ながら、この点について
明快な答えを今の私は持っていません。


ただ、明治学院大学教授、清水聰氏が取り組んでいる

「目利き」

の研究が参考になりそうです。

清水氏の研究によれば、
新商品がヒットするかどうかを高い確率で予測できる人たち、
すなわち「目利き」がいることがわかっています。

彼らは、一般大衆の潜在ニーズを嗅ぎ取ることのできる、
優れた感性の持ち主ということでしょう。

ということは、「目利き」の人を対象顧客にして
商品を開発すればいいのでは。

そして、彼らが

「これなら売れる、買いたいと思う」

と太鼓判を押してくれた商品を世に出せば、
ヒットする可能性が高くなるのではないでしょうか?


*関連記事

『目利きと死に神の研究』

投稿者 松尾 順 : 08:08 | コメント (0) | トラックバック

魚ロッケ?・・・もったいない食堂

以前、リサイクルショップの生活創庫浜松本店では、

「野菜のリサイクル」

に取り組んでいるという話をご紹介しました。


規格よりも大きすぎたり、形が曲がっているなどの理由で、
味は変わらないのに市場には出せないため、
そのまま廃棄されてしまう野菜を生産者から引き取り、
店頭で「朝市」を開いて格安で販売しているのです。


さて、私たちの多くは野菜生産の実態を知りませんが、
安心して食べられる無農薬・有機野菜の場合には、
虫食いの跡もあったりしてさらに売りにくい。

このため、できた野菜の半分近くが
やむを得ず捨てられてしまうこともあるようです。
(もちろん自家用で消費しても使い切れない分です)

いやはや、もったいない話ですね。


こんな浮かばれない、
不揃いな野菜たちを使う家庭料理のレストランがあります。


その名もズバリ、

「もったいない食堂」

です。2005年に熊本に誕生しています。


運営会社は、97年から自然食レストランを運営してきた
地元企業の(株)ティア。

ちなみに「ティア」は、

「土と命と愛ありて」(Tuchi-Inochi-Ai)

から取っているそうです。


「もったいない食堂」の基本コンセプトは、

「日本の食を守る食堂」

です。

前述したように、
市場に出せない無農薬・有機野菜は見た目が規格外なだけ
ということで、ちぎってサラダに使うなどの工夫をしています。

これは

「もったいない野菜」

と呼んでいるそうです。


また、

「もったいない魚」

も使っています。


魚市場では「色箱」と呼ばれるものがあります。

この箱には、カレイやヒラメなどの高級魚も入っているのですが、
1種類で1箱に満たない様々な魚が寄せ集められているもの。

この「色箱」、1箱数百円の値しかつかないのだそうです。
びっくりですね。

もったいない食堂ではこうした魚たちも有効活用すべく
仕入れています。


さらに、ひと山いくらで安く売られている「豆アジ」。

10-15センチほどの真アジのことですが、
小さいため養殖用として利用されているものの、
人が普通に食べてももちろんおいしい。

そこで、もったいない食堂では、
これをたたき身にしてコロッケとしてメニュー化。

「魚ロッケ」(ギョロッケ)

です。


もったいない食堂は、
開店から2年間は赤字だったそうです。

しかし、今は健康的で安心して食べられる、
肩肘張らない家庭料理のお店として
地元の人たちの支持を受け繁盛しています。


規格から外れている、しかし安全で安心して
食べられる食材を使うレストランは、ティアに限らず
全国あちこちにありますよね。

最近の消費者の最大関心事の一つが、
食についての不安や懸念ですから、
こうしたLOHAS的な店は今後ますます増えるでしょうね。


蛇足ですが、「ティアの家族達」と呼ばれる店、
つまりティアの系列店は、九州を中心に10数店ありますが、
そのうち1店は、私が生まれ育った福岡の田舎(八女)の実家から
車で5分ほどのところにあることを知りました。

今度帰郷した際、立ち寄ってみようと思います。


*以上は「生活と自治」(2008年3月号)、
 およびインターネット上の各種情報を元に作成しました。

→ティア長崎銅座店

ティア本体のホームページはないようです。


『野菜のリサイクル』

投稿者 松尾 順 : 11:33 | コメント (1) | トラックバック

香りマーケティング

「香り」

をマーケティングに採用する動きが、
今後ますます強まりそうです。


今年(08年)6月、ニューヨークで、

「SCENT world CONFERENCE & EXPO 2008」

が開催されます。

「香り」をメインテーマに据えた
初めての大規模なコンファレンス&展示会だそうです。
(宣伝会議No.737、2008.3.15)

面白そうです。行ってみたいですよね。


さて、具体事例です。

マンハッタンのタイムワーナービル内にある
サムソンのショールーム、

「The Samsung Experience」

では、天井に設置されたポンプから、
店内に心地良い香りが放出されており、
訪問客をリラックスされているそうです。


この香りは、
おそらく全世界の同社のショールームや
オフィスなどでも流されるのでしょうね。

そして、ユーザーは、
この心地よい香りを嗅ぐたびに、
サムソンを思い出すことになるわけです。


こうしたブランド独自の「香り」を

「ブランド・セント」

と呼びます。


高級ホテルでも、顧客との

「感情的なエンゲージメント」

を築くために独自の「ブランド・セント」を
ホテルのロビーなどに放出しています。


日本では、昨年、
DNPメディアクリエイトと
早稲田大学の恩蔵直人氏が共同で、
香りのマーケティング実験を行っています。

百円ショップ「セリア」の八店を実験店舗と
して選び、店内で香りを発生させることで、
売上に影響を与えることができるかを調べたのです。
(日経MJ、2008/02/06)


香りは2種類。
気分を落ち着かせる「ジュニパーアロエ」。
気分を活性化させる「オレンジブラッサム」。

それぞれ3店で放出。
残り2店は比較のため香りを流しませんでした。

実験中と実験前後の売上の変化を見ると、
「ジュニパーアロエ」を流した店舗の場合、
インテリアや文具商品での伸びが顕著だったそうです。

ところが、衣料品、収納用品、レジャー用品では
売上が減少してしまいました。


一方、「オレンジブラッサム」の場合は、
文具用品で売上が伸び、インテリア用品で減少と、
インテリアについては「ジュニパーアロエ」と
逆の結果になっています。


客の店舗滞留時間を見ると、
「ジュニパーアロエ」では滞留時間が延び、
「オレンジブラッサム」では逆に時間が短縮しています。


こうした結果を見ると、
販売している商品カテゴリーによって適した香りが
あること、また、滞留時間を延ばしたい、逆に
客の回転を早めたいといった企業側の意図に応じて
選択すべき香りが異なることがうかがえますね。

このあたりは、BGMとして流される音楽と
同じような考え方でいけそうです。


今後、どの店舗に入っても独自の

「BGC」(Background Scent:環境香り?)

が流れている時代が来るかもしれませんね。


広告会社も、

「テレビCMは、自主的に視聴するのを飛ばせるが、
 嗅覚は自分で止めることができない」

ということで、様々なマーケティングに

「香り」

を採用することが増えてきそうです。


もちろん、消費者側にしてみれば、
好き・嫌いの関係なく、特定の香りを強制的に
嗅がされるわけですから、やりすぎは禁物ですけどね。

投稿者 松尾 順 : 06:48 | コメント (1) | トラックバック

「ホスピタリティ」が求められる理由

竹中平蔵氏(慶應義塾大学教授)は、

「サービス経済化」

を読み解くキーワードとして第一に

「ホスピタリティ」

を挙げます。


「ホスピタリティ」とは、端的に言えば、
一人ひとりの多様な欲求を深読み・先読みして、
かゆいところに手が届くような、

「心のこもったおもてなし」

を顧客に提供することです。


竹中氏によれば、「サービス経済化」、
すなわち経済活動の重点が、

製造業から非製造業に移行する社会

では、

「ウォンツ」と「ニーズ」

に着目することで、

「ホスピタリティ」

の重要性が明らかになると言います。


ここで、

「ニーズ」

とは、経済的に何を購入したいか、
という具体的な製品・サービスのこと。

一方、

「ウォンツ」

とは、ニーズに先立つ人々の欲求そのものです。


経済発展段階が低い社会であれば、
「ウォンツ」と「ニーズ」の結びつきは単純・明快です。

「お腹を満たしたい」という単純なウォンツは、

「とにかく食べれさえばよい」

というレベルですから、
対応する「ニーズ」も簡単なもので済みます。


ところが、サービス経済化が進む豊かな社会では、

「ウォンツ」

の幅が広がっていくのです。


「もっとおいしいものを食べたい」
「すばらしい環境で食事を楽しみたい」
「美しい器に入れて食べたい」

などなど。


こうしてウォンツの幅がどんどん広くなっていくと、
顧客本人でさえ、どんな商品・サービスが自分のウォンツを
充たせるニーズなのかわからなくなっていきます。

ウォンツが複雑であいまいになるため、

「どんなものが欲しいですか?」

と聞かれても、
具体的なニーズ(商品・サービス)に
置き換えて答えることができないわけですね。


この幅の広がっているウォンツを正確につかみ、
それを充たせるニーズに対応するサービスを提供することが

「ホスピタリティ」

なのです。


「ホスピタリティ」の優劣が、

「強み・弱み」

として明快に現れるのは、言うまでもなく、
ホテル・旅館、レストランなどのサービス業です。


しかし、製造業においても、

「ユニバーサルデザイン」

への注力や顧客サポート体制の充実は、

「ホスピタリティ」

に基づく動きと解釈すべきなんでしょうね。


竹中氏の話は、下記文献を元にしました。

『Works 82号』(リクルート、2007.06-07)

投稿者 松尾 順 : 10:18 | コメント (0) | トラックバック

泣き女とラビット

「泣き女」そして「ラビット」

「泣き女」は、葬儀のときに呼ばれる人。

「ラビット」は、
マラソンの「ペースメーカー」の俗称です。

どちらも立派な仕事なんですよね・・・


この2つの間に特に関連性はないんですが、
どちらも興味深い職業として一緒に取り上げます。


まず「泣き女」。

泣き女は、
葬儀の時に嘆きの言葉を上げながら泣き叫んだり、
哀愁いっぱいの歌や踊りを披露することが仕事です。

故人、遺族とのつながりはありません。


昔は日本にも「泣き女」がいたようですが、
今はさすがに聞きませんね。

しかし、中国では今でも風習として残っており、
葬儀会社の従業員として雇われるか、葬儀のたびに
アルバイトとして召集されるそうです。


「泣き女」の年齢は30代~50代。

採用条件がちゃんとあります。

1.まじめそうな外見
2.よく通る声
3.人生経験の豊かさ

さすがに重苦しい葬儀の場ですから、
軽い印象を与える女性は向いていないのも
当然でしょうね。


上記3つの条件のうち、
重要なのは「人生経験」だそうです。

なぜなら、苦い経験を積んだ人ほど
感情表現が豊かだからです。

流す涙にも説得力があるでしょうしね。


1出番当たりの報酬は200元ほど。
日本円で約3千円です。

現地では自転車が買えるほどの値段ですから、
安い金額ではないですね。


「泣き女」としてのプロ意識は高く、
喪服の手入れは怠らず、
亡くなった人の経歴や人柄を叩き込んだ上で
葬儀に臨みます。

高い評判を得ているある「泣き女」は、

「親族並みの尊敬と愛情を持って死者と向き合うのが泣き女」

と語っているそうです。


次に、マラソンの「ペースメーカー」。

俗称「ラビット」と言われるように、
マラソン序盤から中盤30キロくらいまで、
快調なペースで飛ばして先頭を走る人たちです。


彼らの仕事は、
選手同士がけん制しあって全体的にスローペースに
ならないようにすること。

また、一定のペースで走ることで選数の負担を減らし、
風よけの役割も果たします。

まさに「ペースメーカー」ですね。

世界新記録を破るような好タイムを出すためには、
ペースメーカーの存在が不可欠なのが現実です。


彼らの存在は、
日本では最近まで公然の秘密というか、
公式には認められることがありませんでした。

しかし04年のアテネオリンピックの男子選考会で
正式に「認知」されたことで、世間でも知られるように
なってきたというわけです。

先日の東京マラソンでは、
5人のペースメーカーが出走したそうです。


彼らは、普通に走ったら上位入賞も可能な実力の持ち主。

それでもペースメーカーの仕事を選ぶのは、
フルマラソンを走りきって消耗してしまうより、
中盤で切り上げて体力を温存し、数多くのマラソンに
出場したほうが稼げるからです。

ペースメーカーの報酬は明らかにされていませんが、
実績が認められた人になると、1レースで100万円以上
もらえるほどだそうです。


まあ、「仕事」として考えたら、

「マラソンからどれだけの売り上げが見込めるか」

という実利的な判断が行われても仕方がないでしょう。


さて「泣き女」と通称「ラビット」は、
お互い直接的には関係ないとはいえ、
ある場を盛り上げるための作為的な

「演出」

であるという点は同じですよね。


極論すれば、

「さくら」(やらせ)

です。

非難するつもりはまったくありません。

ただ、人間社会において、
こうした仕事が必要とされることが、
そもそも不思議ではありませんか?


ビジネス的な色合いの強いマラソンはともかく、

「葬儀」

になぜ「泣き女」が必要なんでしょうねぇ?


桜の季節に「さくら」の話題を提供させていただきました。


参考にした記事:

日経新聞夕刊(2008.3.3)、および「R25」(2008.3.19)

投稿者 松尾 順 : 09:06 | コメント (0) | トラックバック

愛されないかもしれないマスコット・キャラクター

平城京ができたのは西暦何年でしょう?

710年です。

学生の頃、

「なんと綺麗な平城京」「納豆食べて平城京」

といった語呂合わせで覚えましたよね。


さて、2年後の2010年は、
平城京誕生1300年を迎えるということで、

「平城遷都1300年祭」

の開催が計画されています。

「平城宮跡」を主会場に、奈良、関西各県で
さまざまな展示、イベントが行われる予定です。

事業規模は約100億円。


この平城遷都1300年祭に関連して、
このところ物議をかもしていることがあります。

それは、当事業のシンボル的存在となる

「マスコットキャラクター」

です。現在名称募集中!


まあとりあえず、ちょっと彼の姿を見てあげてください!
http://www.1300.jp/mascot.html


第一印象はいかがでしょう?

かわいい? かわいくない?


コンセプトシートを読むと、

奈良の守り神である「鹿」の角を生やした
「童子」のようないでたち

とありますね。


このキャラクターについて、
地元奈良では、

「かわいくない」

という批判が相次いでおり、
白紙撤回を求める署名運動が始まっているそうです。
(毎日新聞、2008/03/02)


元吉本興業常務で、
フリープロデューサーの木村政雄氏は、

「こんな写実的なデザインがなぜ選ばれたか理解に苦しむ」

とコメントしてます。

実際、愛嬌がないわけではないけれど、
ちょっとリアルすぎますかね・・・


愛されるキャラクターにはある程度共通点があります。

それは、「赤ちゃん」、もしくは
「動物」(特に動物の子供)を連想させるものです。

具体的な特徴としては、

・頭が大きい(全体的なバランスで見て)
・目が大きい
・丸顔
・2頭身などずんぐりむっくり

などがあります。

愛知万博のマスコットキャラクター、
森の精「モリゾー」「キッコロ」はこれらの条件を
満たしていました。

http://www.expo2005.or.jp/jp/A0/A1/A1.10/index.html


一方、平城遷都のキャラクターは、
これらの条件にほとんど当てはまってないですね。

残念ながら、
あまり愛着の持てるキャラクターには
なりえないことがわかります。

かわいそうですね。彼は何も悪くないのに!


さて、彼の行く末はどうなるのでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 07:29 | コメント (4) | トラックバック

セブンイレブンに感じた現場力

北海道や東北の一部では、
冬場にコンビニで「おにぎり」を買うと、

「おにぎりあたためますか?」

と店員に聞かれることがあるそうです。


コンビニのおにぎりは保冷されていますし、
寒い地域なので

「あたためて食べたい」

というニーズが多かったんでしょう。

自然に広まった慣行みたいですね。


ちなみに北海道テレビでは、

「おにぎりあたためますか」

というバラエティ番組がずいぶん前から制作・放送されてます。


東北以南の地域のコンビニでは、
どの程度この慣行が広まっているかよくわかりませんが、
少なくとも東京近辺では、

「おにぎりあたためますか?」

と聞かれることはありませんよね。


さて、先日の寒い夜、
セブンイレブンで久しぶりにおにぎりを2個買いました。

あたたかいおにぎりが食べたかったのですが、
当然ながら、店員さんは

「おにぎりあたためますか?」

とは聞いてくれません。


そこで、

「おにぎりをちょっとあたためてもらえますか?」

と私からお願いしました。

すると、店員さんは、
おにぎりをわざわざ1個ずつ別の電子レンジに
入れてタイマーをセットしてました。

私は、

「2個一緒に暖めれば手間が省けるのに・・・」

と不思議に思って、
レジのお兄さんに聞いてみたんですね。

するとお兄さんは、

「以前2個一緒にあたためたら店長に怒られたんですよ。
 1個ずつ別々にあたためるように言われてます。
 どうしてなのかわかりませんが・・・」

と返してきました。


‘どうしてなのかわかりませんが’
という一言は余計ですね。言わなくてもよろしい。

しかし、さすがセブンイレブンです。


おそらく、おにぎりを複数個一緒にレンジで
チンすると、

「あたためムラ」

ができるためだと思われますが、果たして、
セブンイレブン以外のコンビニチェーンで
こうした細かいオペレーションを徹底できるだろうか?
と、ふと感じました。


コンビニの日本1号店は、

セブンイレブンの豊洲店

だったというのは有名ですよね。


セブンイレブンは、

「コンビニエンスストア」

という新業態における先駆者であるわけです。

そして74年の1号店開店以来、
多くの追随企業の参入によって競合が激化する中、
現在に至るまで、ダントツの業績を残してきています。


セブンイレブンの高い業績の秘密は、
言うまでもなく「戦略の巧さ」ではありません。

各店舗の日々のきめ細かいオペレーション(戦術)、
すなわち

「現場力」

が強いからなのです。


コンビニ業界に詳しい方によれば、
競合他社と比較して、明らかに店舗の清掃の徹底度合いや
店員の接客水準の高さは群を抜いているそうです。

もちろん、セブンイレブンの店内に流れる、
一言では説明しにくい「心地よさ」は、
一消費者でも容易に感じることができますよね。
(他のチェーンも悪くはないのですけど)


セブンイレブンの強さを考えると、
重要な点は戦略をコピー(真似る)のは比較的簡単だが、
現場のオペレーションをコピーするのは、

人材の質や教育の質

といった人的要素が大きいため、
簡単ではないということがわかりますよね。


セブンイレブンが作り上げた、
緻密と言われる

「運営マニュアル」

を仮に入手したとしても、
それを日々の運営に定着させることは
やはり人の問題です。簡単には追いつけない。


以前も書いたように、

戦略、戦術

のどちらも、事業の成功のために重要ではあります。

しかし、最近は戦略のコピーは、
以前よりはるかにしやすくなっているのが現実でしょう。
(金さえあればたいてい解決しますから・・・)


となると、やはり最後は「戦術」の勝負です。

机上で語れる「戦略」をこねくり回すよりも

「現場力」

に磨きをかけるということが、
これからの最重要課題ではないかと思います。

投稿者 松尾 順 : 16:39 | コメント (2) | トラックバック

イノベーションとしての「カラー」

3月15日にデビュー予定。

小田急ロマンスカーの新型車両、

「MSE」

は、清涼感や透明感、豪華さを
感じさせる車体色のブルーが美しい!


この青色は、

「フェルメール・ブルー」

と名づけられています。

そう、17世紀オランダの画家、

「フェルメール」

が好んで用いた色が採用されているのです。
(日経デザイン、March 2008)


デザイ