並存する欲求

人間の欲求にはどんなものがあるんでしょうか・・・?

どんな欲求があるのかわかれば、それをうまく刺激する
ことで、購買意欲を喚起することに役立てることができる
はずですね。

さて、マーケティングで必ずといっていいほど紹介されるのが、
「マズローの欲求五段階仮説」です。

これは、人間の欲求は、

1 生理的欲求(食べたい、やりたい・・・)
2 安全と安定の欲求(危険にさらされたくない)
3 所属と愛情の欲求(仲間が欲しい、愛されたい)
4 尊敬の欲求(尊敬されたい、大切にされたい)
5 自己実現の欲求(自分らしさを発揮したい)

という5段階があり、1段階が満たされて初めて2段階、
2段階が満たされて3段階目へと欲求が高度化していく
というものです。

まあ、けっこう納得できるし、妥当性のある理論ではあります。
しかし、いいかげん耳タコ状態ですね。

また、本当にそうなんだろうか、という違和感があります。
自己実現欲求」と言う言葉の意味もどうもピンとこない。
(正直に告白しますが・・・(^^;;)

マズローの理論に違和感を強く感じるようになったきっかけは、
心理学者、フランクル氏の「夜と霧」という本を読んだこと
でした。

この本は、第二次世界大戦中のアウシュビッツ収容所に
ユダヤ人であったがために収容された彼の体験記です。
アウシュビッツの地獄からかろうじて生還したフランクル氏は
後に、「フランクル心理学」という領域を打ち立てます。

それはさておき、アウシュビッツでは毎日過酷な重労働を
やらされます。ぎりぎり死なない程度のわずかな食事
が与えられ、ガス室に送られる順番を待つだけの毎日です。

マズローの仮説で言えば、第一段階の生理的欲求でさえ
満たされていません。しかし、彼は驚きとともにこんな
出来事を観たことを記しているのです。

重労働に向かう道をとぼとぼと歩いている人々が、
道端に咲く花を決して踏み潰さず、大切に愛でていること。

あるいは、夕日の美しさに皆が集まり立ちつくしたこと。

つまり、死を待つだけの絶望的な状況であっても、
最低限の欲求さえ満たされいなくても、
より高次の欲求を求めることがあるということです。

実際、人は「愛」のために死ねるじゃないですか・・・

そこで、マズローほど知られていない理論をご紹介します。
アルダファという心理学者が提唱する「ERG理論」です。
ERG理論では、人の欲求を3つに分けています。

               (マズロー論との関係)
1 生存の欲求 Exsistence  =生理的、安全、安定欲求
2 関係欲求  Relatedness =所属、愛情、尊敬欲求
3 成長欲求  Growth    =自己実現欲求

これらの欲求は、右側に対比させたようにマズローの5段階
とも内容においてはほぼ同じなのですが、ERG理論における
ポイントは、この3つの欲求が並存するということです。

どれが低次の欲求、高次の欲求ということでなくて、
この3つの欲求が同時に存在しており、人によって、
また状況によってそれぞれの欲求の強さが異なってくる
ということです。

人間の行動を見ていると、ERG理論の方がマズロー
よりもより妥当性があるように思いませんか。


*本日の内容は、人材コンサルティング会社、ワトソン
ワイアットのコンサルタント、川上真史氏のお話を元に
しました。この場を借りてお礼申し上げます。
(川上氏は早稲田大で心理学の講師もやられています)

投稿者 松尾 順 : 2005年10月24日 05:47

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