じらして欲しい

「いいこと教えてあげようか?」

「え、なになに?」

「ひ・み・つ」

「なんだよ、ずるいよ、教えてよ・・・」


こんな微笑ましい会話、私は久しくしたことがありませんが、
じらされるとよけい知りたくなるものですよね。

かといって、簡単に教えられてもつまらない。

ちょっとは「じらして欲しい」という気持ちも
無意識に持ってるんじゃないでしょうか。


こんな人間心理を突くマーケティング・コミュニケーションが、
「ティーザー広告」(じらし広告)です。

この「ティーザー広告」、国内の具体事例が表に出ることは
それほど多くありません。

でも、先日の日経産業新聞にはかなり詳しく紹介されていました。
簡単にご紹介しますね。


東京三菱自動車販売 高井戸店では、
約1年間かけて潜在顧客をじらしにじらしました。

新型車アウトランダーの発売を三菱自動車が公表したのは、
昨年の1月28日。

ところが、高井戸店の全国顧客2600人には、
公表日前のお正月に「こんな新型車が出るみたいですよ」という
「ほのめかし」のDMを送りました。

まだ誰も知らない時点で、いち早く新車情報をばらしたんです。
基本的にルール違反ですが、こうした秘密情報の共有は、
お客さんとの親密感を高めますね。


それから発売開始の昨年10月まで、DMを合計5回送付しました。

「どうもアルミルーフを使っているらしい」

「オーディオがすごいらしい」

手の内をちょっとだけ見せることで
お客さんの期待感をあおりました。

アウトランダーの外観が発表されてからも、
写真には頼らず、言葉によるウワサ情報風の文面を
展開しました。

発売日直前のDMには購入アンケートを実施。

「アウトランダーに興味ありますか?」
「試乗したいですか?」
「買いたいですか?」

こんな直裁なアンケートには約50人が反応。
うち7、8人が購入に至ったそうです。

結果的に、同店では昨年末までに目標を上回る62台を販売し、
1店舗当たりでは全国トップとなりました。

既存客の買い替えが売上げのベースにはあるでしょうけど、
ティザー広告(DM)が明確な成果につながった身近な成功事例
として特筆に値すると思います。


ポストモダンマーケティング(ダイヤモンド社)の著者、
スティーブン・ブラウン氏は、次のようなことを
述べています。

“企業は、顧客を追いかけるのを止めて、
 その代わりに顧客に追いかけられるようにすべきだと
 主張します。

 顧客にペコペコ追従するよりも、顧客を困らせるように
 (あまりにも困って嬉しいくらいに)するべきだと
 断定します。

 顧客志向がどこにでも存在しているユビキタス状態に
 おいては、顧客から何かを奪うことが、競合優位に
 つながるという意見なのです”

顧客志向は大切だとは思いますが、
ただ単にお客さんの‘表面的な’望みの言いなりになるべきでは
ないということをブラウン氏は言いたいのでしょう。


「たまにはちょっといじわるして頂戴!」という
複雑な顧客心理を汲み取ることも必要ですよね。

投稿者 松尾 順 : 12:15 | コメント (0) | トラックバック

社長は会社の顔じゃなかったの?

直近のダメダメ社長の話。

不正改造で摘発された大手ホテルチェーン、
東横インの西田社長の記者会見の言動、ひどいですね。

まるで反省の色なし。

建築後に、1階の駐車場をつぶしてロビーを広げたり、
障害者用の客室を会議室に改造したりすることが条例違法
であることは知っていた。

しかし、そもそも、身障者はあまりホテルを使わないとか、
どこもやっていることだとか、開き直り発言。


“時速60キロ制限の道を67~68キロで走っても
まあいいかと思っていたのは事実。”

という言葉にはびっくりしますね。

「すみません」とあっさり非を認めたのは良かったのですが、
その後の人徳を感じさせない態度と言い訳を聞くと、

西田氏の

「コミュニケーションベタ」

ぶりにあきれますね。


収益を上げることに執着してきたはずの西田氏は、
あの自分の発言だけで

どれだけの顧客を失うことになるのか
どれだけの売上げを失うことになるのか

わからなかったんでしょうか。

元雪印社長の「ぼくは寝ていないんだ」発言から、
西田社長は何も学ばなかったんでしょうか。


いまさら指摘するまでもなく、社長は会社の顔であり、
もっと端的に言えば、「会社」そのものですよね。

社会的には、社長がどんな人間かで会社の良し悪しが
判断されてしまう。

内部にいる社員にとっても、
社長の考え方、行動が最大のよりどころ(行動指針)です。


東横インは、地元の主婦を支配人に任命し、
従業員もほぼ全員が女性。
女性ならではの細やかなサービスで高いリピート率を
誇るホテルです。

今回の西田氏の発言を聞いた社員の皆さんたちの
がっかりする顔が目に浮かぶようです。


おそらく、東横インのロイヤルなお客さんたちは、
支配人や従業員の方々との個人的なつながりを
感じているでしょうから、経営危機につながるような
大幅な客離れは避けられるかもしれません。

しかし、新規利用客は確実に減るでしょうし、
現場の社員さんたちのモラールダウンがサービス低下に
つながる可能性は高いでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 11:55 | コメント (2) | トラックバック

偶然を必然に変えるのはあなたしかいない

今日は趣向を変えて昔話を・・・

あれは、たぶん私が小学5年生のころでした。


私は小学校時代ずっと、大好きな女の子がいました。
もちろん、片思いです。

小学校ではほとんど同じクラスでしたが、
その子のことは、あまりに強烈に意識してしまって
一言も話せなかったのです。

でも大好きでした。

「この思いを伝えたい」と考えない日はありませんでした。
告白したい相手がいるなら、誰もが考えると思いますが、
偶然二人きりになる機会が来ないかと願っていました。


ある休日、私は自転車で学校の近くを走っていました。
すると、向こうから、やはり自転車にのった彼女が
走ってくるのが見えました。

私の胸は高鳴りました。どうしようと思いました。
お互い自転車に乗っていますから、あっというまに
彼女が近づいてきます。

彼女はにっこりと微笑んでいました。
確かに私に向けて微笑んでくれていた。

しかし、その瞬間、私は顔をそむけてしまったのです。

バカですね。本当にバカですね。
なぜ、あの時、「遊ぼうよ!」と言えなかったのか。

なんてったって、まだお互い小学生ですからね。
いいじゃないですか。そんな野暮な誘い文句でも。

まあ、実際には「イヤ」とか言われたかも
しれませんけどね。

彼女と二人だけで同じ時間、空間を共有できたのは
あれが最初で最後でした。

彼女とは中学も一緒でしたが、同じクラスになることはなく、
ついに告白できませんでした。

私は二人だけになる偶然を願っていました。
そして、神様は1度だけチャンスをくれた。

しかし、私はその偶然を必然に変えることができなかったのです。

現在、私は大人になってから出会ったすばらしい女性と
結婚し、とても幸せです。

伴侶との出会いも偶然ですが、
その偶然を必然に変えることができました。

自分が勇気を出して、その偶然をつかみにいったことで、
運命の出会いにすることができたのです。


生涯の伴侶との出会いに限らず、
人生を大きく変えてしまうような出来事のほとんどは
偶然にやってきます。

それをただ見逃していたら、偶然のままで終わってしまいます。
偶然を必然に変えたかったら、あなたが動くしかないのです。

あなたが動いてつかみにいけば、すべてが必然になります。
運命は自分でも変えることができると思うのです。

ところで、小学生のころの話、今まで誰にも話したことが
ありませんでした。小さいころの甘酸っぱい思い出として
私の胸の中にそっとしまったままにしておくつもりだったんですけどね。

別にネタに困ったわけではありませんが、思わず書いてしまいました。
おかげで浄化作用がありました。いま、とってもすっきりしています。(笑)

最後まで読んでくれてありがとう。

投稿者 松尾 順 : 09:54 | コメント (0) | トラックバック

街の電器屋さんの復活

日経MJ(2006.01.27)に、‘どっこい生きてる街の電器屋さん’という特集記事が
出てました。

量販店やディスカウントストアに押されて、衰退するばかりと見えていた
街の電器屋さんも、やり方次第で生き残っていけるということなんです。

いまさら言うまでもないことですが、大手小売業にはできない人手をかけた
手厚いサービスをやる方向に強みを伸ばせばいい。どう逆立ちしたって、
安さでは勝てないんですから。

また、電器屋だから家電品を売るという枠を外してくことによって、
たとえ狭い商圏でも売り上げを確保できる。

家庭の信頼できるコンシェルジュとして、
リフォームなどを引き受ければいいんです。

もちろん、自前で工事をやる必要はなく、リフォーム業者に
依頼すればいい。
大事なのは、業者の立場ではなく、
家庭の立場、お客さんの立場で責任を持って監督してあげること。

家庭で発生する様々な需要(主に衣食住でいえば「住」まわりでしょう)を
電器屋さんという、おそらくもっとも身近な存在になりうる有利なポジション
を活かしてどんどん吸い上げることによって、顧客単価を引き上げていく。

これができるかできないかが、街の電器屋さんの生き残りの鍵なんでしょう。

街の電器屋さんの成功企業のひとつ、「でんかのヤマグチ」の
山口勉社長は、こんなことを言ってますね。(日経MJのインタビュー記事より)

「ウチは経営安定のために粗利益率35%を確保するから、
量販店で23万円の薄型テレビが28万円だったりする。・・・
お客さんにすれば『あちこちに安い店が』はあいさつ代わり。
実は『お前の言い値で買うんだからわがままを聞いて』という
人が大半です。」

「ウチの営業スタイルは、医者や弁護士などのお金持ちには
向いていないらしく、百万円くらいする65型テレビを買ってくれるのも
普通の人です。それも『中年になればテレビが友達。
いい友達を持たなきゃ』『いいテレビを見とかなきゃあの世に
みやげ話がないよ』なんて言える関係があってこそ。
松下というより『ヤマグチ』の文ランドを買ってもらいます。」

でんかのヤマグチは、まさに「顧客関係性」で売ってるんですね。
同社は、10年前に、顧客リストを3万4千人から1万4千人に
減らしています。アクティブな顧客だけに絞り込んだのです。

その発想は「ヤマグチがお客さんを選ぼう」ということ

この見切り方もすごいですね。

投稿者 松尾 順 : 11:11 | コメント (0) | トラックバック

ブログで予測できるかもしれないあなたの寿命

以前読んだ心理学のテキストにこんな研究が紹介されていました。
珍しい研究なのでいまだに覚えています。
ただ、うろ覚えですので内容はざっくりです。ご容赦ください。


ヨーロッパで行われた研究でした。対象は修道女の方々。

修道女の方々は、日記をつけていることが多いようですね。
それで、この方々が天に召された後、日記を他人が閲覧してもよい
という許可を与えていた方のものを研究者が分析したのです。

研究者は、修道女の方々の日記の文章に、

・「うれしい」といった前向きな言葉、
・逆に「むなしい」といった後ろ向きの言葉

がどのくらい登場するかを調べました。
そして、彼らの寿命との関係を見たのです。

すると、明らかに、前向きな言葉を多く書いていた修道女の方が、
後ろ向きの言葉が多かった修道女より平均寿命が長いことが
わかりました。

この結果を端的に解釈すると、

「楽観的に生きてる人の方が長生きする」

ということが検証されたということです。


それで、この研究を見てすぐに連想したのが、ブログでした。
ブログで同じような研究ができるんじゃないか?

今、たくさんの個人の方が、毎日の出来事や気持ちを
ブログ日記に記していますよね。しかも公開されている。

そこで、一定の規模の調査対象者の日記をデータとして収集し、
テキストマイニングするのです。同時に、その方の寿命、
あるいはどの程度幸福になっているかを追跡します。
(長期にわたる研究になりますね)

そうすれば、日記の言葉がどれだけ、書いた人の
人生や寿命に影響を与えているのかがわかるかもしれません。

ある程度データがたまってくれば、ブログの内容で
あなたの寿命が予測できるようになるかも・・・
逆に、書く言葉を変えることで
寿命をどの程度伸ばせるかもわかるということにもなります。

「言霊」といいますが、言葉、特に書かれた言葉は
書いた当人を動かす力を持っているというのが、
成功哲学などでよく言われることです。

実現したい夢は、紙に書いていつも見るようにすれば
叶うと言いますよね。


ブログのテキストマイニングでこのことが
実証できるんじゃないでしょうか。

えー、今日は突拍子もない妄想でした。(⌒o⌒;

投稿者 松尾 順 : 14:56 | コメント (0) | トラックバック

実体化するオンラインゲーム

ネットを通じて多数の参加者が共同して敵と戦ったり、
街づくりを行う、多人数参加型のオンラインゲームを
やったことありますか。

私は、まだ未体験です。(始めたらはまりそう)


今日の日経産業新聞(06.01.26)記事には、
オンラインゲームの実体化が進んでいることが伝えられています。

特にゲーム内の取引によって動くお金が莫大になりつつある
という点に驚きました。

つまり、

「オンラインゲーム・エコノミー」

が立ち上がりつつあるんです。


ゲーム内の金銭取引は、敵をやっつけると獲得できる武器を
手っ取り早く、「お金」で手に入れるというところから
スタートしたようです。

おそらく当初はゲームマニア同士の取引だったんでしょうけど、
そのうち、人気のある武器(アイテム)を販売することを目的に
ビジネスとしてアルバイトを雇い、組織的に敵をやっつけ、
武器を手に入れるハンター的集団が登場します。
(象牙のために象狩りをするやつらを連想しますね。)


最近では、「ディベロッパー型」が誕生しています。
ゲーム内の架空の不動産をゲーム運営者が販売し、
購入者がその土地を開発し、付加価値をつけて販売するのです。

例えば、10万ドルで架空の島を購入した人は、
次のような事業モデルを構想しています。

「魅力的な音楽や、戦いがいのあるモンスターを提供して
 プレーヤーをひきつけ、参加するプレーヤーから
 税金を徴収する」

年間売り上げ予測は、少なくとも168万ドルとか。

こうしたオンラインゲーム・エコノミーの市場規模は、
2億ドル~10億ドルと推定されています。


さて、オンラインゲーム内の経済・社会活動は、
より現実の社会に近づいているわけですが、
そもそもなにをもって「実体化」と呼ぶんでしょうね。

オンラインで取引されるのは、まさに、物理的には存在しない
架空のモノゴトです。しかし、現実(オフライン)の社会も
IT化の進展によって、実体を伴わない情報だけのやりとりが
増えています。

オンラインとオフライン、どっちがリアルでどっちがヴァーチャル
なのかだんだん区別がつかなくなってきましたね。

おそらく、将来はオンライン・オフラインの区別をすることなど
意味がなくなるほど、完全に一体化するんじゃないでしょうか。


気になるのは、人間心理・行動はどのような変化を受けるのか
ということ。

オンラインエコノミー、オンライン・ソサエティという、
これまで経験したことのない新たな世界に
足を踏み入れてしまった人類は、
どのような新たな心理・行動様式を身につけていくのでしょうね?

投稿者 松尾 順 : 10:32 | コメント (0) | トラックバック

「もてないパターン」を回避する

「失敗学」で知られる畑村洋太郎氏(東京大学名誉教授)は、
本来は、新しいアイディアを生み出す「創造の方法」を
追求してきました。

失敗学はその過程でうまれてきた副産物だったようです。

さて、畑村氏によれば、創造であれ、失敗であれ、
何かを考えようとするなら、まずモノゴトをしっかりと
理解すべきだそうです。つまり「本質」をつかむということです。


畑村氏は、本質をつかむための発想法をいくつか挙げていますが、
私が、これは使えるなと思ったのが「逆演算の思考」です。

企画、設計、計画などは、通常「順演算」で進められます。
まず目標を決めて、それを分析し、一つひとつ
やらなければいけない課題に落とし込んでいきます。

つまり、「順演算」とは、定められた定式やシナリオどおりに
ものを考えて答えを出す思考法です。

ただ、順演算だけの思考法だと必ず「想定漏れ」が発生します。
そして、この想定漏れが、後々事故や失敗の原因に
なるのだそうです。

そこで、「逆演算」の思考を組み合わせます。

「逆演算」は、最初に起こりうる事故や失敗を想定して、
そこからだんだんとさかのぼり、最後に設計、企画の中に
生かすという考え方です。


実際、これはWebサイト設計などに応用できます。

Webサイト設計では、例えば

「目的のコンテンツに最短で到達できる使いやすいサイト」

といった目標を置いて設計するのは常識です。

ですが、さらに逆演算の思考法で、

「サイト訪問者が、もし迷ってしまったら?」
「注文途中で停電してしまったら?」

といった、サイトで起こりうる問題を最初に検討し、
そうした問題を回避するところまで踏み込めば、
さらに完成度の高いWebサイトが設計できるでしょうね。


いかがでしょう。
順演算だけでなく、逆演算の思考を組み合わせることの
重要性がご理解いただけたでしょうか。

実は、上記の思考法は、なかなか説明が難しいなあと
思っていたんですが、とてもわかりやすい説明を発見しました。

ワイキューブという人材コンサルティング会社の社長、
安田佳生氏のメルマガ「さるならわかる経営の真実」にあったのです。

ここで当該箇所を引用させていただきます。


“女性にモテたいと思う男性は多く、みな一様に
「どうすれば女性にモテるか」ということを一生懸命考えます。

 しかし、パターンが多く、誰にでも当てはまるわけではない
「モテるパターン」を考えるよりも、ある程度共通している
「モテないパターン」を考えて、その「モテないパターン」
 を回避するほうが簡単なのです。

 「ケチ」「下品」「フケツ」などが代表的な要素として
 あげられそうです。”


まさに、これこそ逆演算思考ですね。(^-^)

投稿者 松尾 順 : 10:59 | コメント (0) | トラックバック

地球儀の未来

小さい頃、ライトが内蔵されている地球儀が実家にありました。
たしか、訪問販売の人にうまく言いくるめられて買ったものです。

暗いところでライトをつけると、
ポッと地球儀全体が白く浮かび上がる機能です。
結構値が張ったんじゃないかと思います。

しかし、あまり勉強に役立てた記憶はありません。
親には申し訳ないことをしました。(笑)


少子化が進む今、子供向け学習教材としての「地球儀」市場に
未来はないですよね。
地球儀=学習教材という固定観念にこだわっている限りは・・・

しかし、地球儀をさまざまな意味に言い換えてみると
様々な未来の可能性が開けてきます。

・立体の地図(これが基本ですかね)
・地球の地理を学ぶもの
・飾るもの
・遊ぶもの
・丸いもの
・ぐるぐる回せるもの
・地球という星について知るもの
・中が空洞になっているもの
・世界の国がかかれたもの
・世界の海が描かれたもの

などなど・・・

こうした、言葉の言い換え、意味の拡張は発想法のトレーニング
のひとつです。(以前もご紹介しましたね)


さて、地球儀の製造・販売メーカーの「渡辺教具製作所」の方が
上記のような発想法をやったかどうかはわかりませんが、
同社では、これまでの地球儀らしくない新商品を
次々と生み出しています。

地球という「星」の立体地図を作っているのなら、
他の星のものも作れば面白いよねということでしょうか、

・月球儀(アポロ宇宙船の着陸地を記載してあります)
・火星儀

を日本では初めて製作。
火星儀は、2003年の火星の大接近の際には大ヒットしたそうです。


あるいはインテリアとしての地球儀を追求して「夜の地球儀」
を開発。これは単にライトが内蔵してあるだけではなくて、
海の部分は真っ暗、都市の部分だけが光を放つようになって
います。その幻想的な雰囲気が、インテリアとして受けている
ようです。

また、「緑の地球儀」は、飢餓、エネルギー問題、武力紛争
などが起きている地域を地球儀に記載。
地理だけでなく、国際問題を学ぶことができます。

他にも、国境のない地球儀や、海の深さが記された地球儀
なども開発しています。

渡辺教具製作所は、こうし新たな地球儀を開発することによって、
市場が縮小する中、売り上げを伸ばしているのです。

これは、私からの同社への提案ですが、
ゴム製の地球儀バスケットボールとかどうでしょうね。
地球儀サッカーボールでもいいのですが。(笑)

遊びと学びの一石二鳥の教材になると思うんですが。

えーと、このアイディアは平凡ですよね。(⌒o⌒;

でも、モノゴトについての固定観念、先入観をなくし、
既存の思考の枠からいったん外にでると
新商品のネタはいくらでもころがっていると思いませんか。

*渡辺教具製作所については、日経ビジネス(2006年1月9日号)
の記事を元にしました。

投稿者 松尾 順 : 10:03 | コメント (2) | トラックバック

何となくアマダナ

家電品の正式名称は「家庭電化製品」。
なんか正式名称って古臭いイメージありますね・・・

家電品は、要するに「電力」を使って家庭生活を便利にする
機械ですが、もちろんまず重要なのは、機能や使い勝手です。

でも、実際には機能や使い勝手で大きな差が出せないので
価格の安さで勝負しているのが現状。

ただ、市場で売れる価格、つまり「マーケットプライス」
(市場競争価格)で利益が出ることを前提に設計を行うと、
どうしても平凡な商品になりますね。

量販店の家電品コーナーを回ってもあまり楽しくないのは、
どれも似たようなものが並んでいるせいでしょう。


さて、

「美しいカデンを世の中に出す」

をコンセプトとする新しい家電品ブランド

「amadama(アマダナ)」

はご存知でしょうか。

ディスカウントストアでは2-3千円で買える
オーブントースターは、アマダナ製になると1万5千円。

熱を出す家電品ではご法度の天然木を使った取っ手が
特長的な家具のようなデザイン。

インナーイヤー型のヘッドホンは、本体のところに
天然の竹を使っています。使い込むと本体があめ色に
なじんでくるんでしょうか。1万2千円です。

LOHASに代表されるナチュラル志向のおしゃれな生活に
しっくりなじむアマダナブランドは、じわじわと人気を
広げているようです。


先週書いた「大衆化に逆戻りする消費者行動」では、
機能、性能などで差がよくわからないから、
他人の意見や行動に「右にならえ」してしまうトレンドを
指摘しました。

しかし、アマダナのような「美しさ」を
売りにするブランドの場合、
他人の意見や行動はあまり重要ではありません。

「美しい」と感じるかどうか、は各自の主観的評価。
美しさを測る尺度はあまり明確でないだけに、

「私がいいと思ったらいい」
「好きだから好き」

といった根拠なき理由を押し通すことができます。

したがって、実用面ではほとんど価値のない、
製品の「美的要素」ににおいて、自分らしさを表現する余地が
残されているアマダナのようなブランドこそが、
これからの市場を引っ張っていく存在になるように思います。
(アップルの製品もまた、その典型的・古典的例で、
いまさら引き合いに出すのははばかられますが)


ところで、「アマダナ」は、2003年に設立された家電メーカー、
「リアルフリート」社の基幹ブランドですが、
同社内で交わされる、アマダナを展開するに当たってのキーワード
が面白いのです。

それは、

「何となくアマダナ」


客に「何となく買ってしまった」と言わせたい。
商品の魅力が明確にわからないようにして「何となく」
のオーラを出す。

ブランド選択時に、
頭で考えてロジカルな比較検討を行うのではなく、
無意識にわかってしまう、
感覚的・情緒的価値を高めようとしているのが
「アマダナ」なんですね。

投稿者 松尾 順 : 12:16 | コメント (4)

いつでもどこでもできる経営シミュレーション

ナルミヤインターナショナルの社長、成宮雄三氏には、
こんな習慣があるそうです。

“私はよく街を歩くのですが、その時に、

「そこの魚屋さんの売り上げを上げることはできるか」

「あの八百屋さんを儲かる店にするために、自分ならどうするか」

といったことを考えて歩くのです。
言ってみればこれは、経営シミュレーションであり、経営感覚を
磨くためのトレーニングです”

(「チャンスは6時の方向にある」、カンキ出版より)

おお、これはグッドウィルグループ会長、折口雅弘氏が言われる
「当事者意識を持つ」ということだ。

やはり、名経営者は、常日頃から

「当事者意識を持つ」

ことによって経営シミュレーションをやってきている。
だから、自分の会社の経営判断も的確にできるんですね。

確かに、「当事者意識を持つ」ことによって、

物事の本質を見抜き
問題点をあぶりだし
解決策を発想する

というとても高度な思考を働かせる必要があるわけですから。

しかし、経営シミュレーションって、いつでもどこでもできるものなんですね。
いまさらながら気づきました。

投稿者 松尾 順 : 11:18 | コメント (0) | トラックバック

自宅に帰れなくなっちゃいました・・・でもとりあえずキットカット

関東も、ついにすごい大雪が来襲しましたね。

事務所でこもって仕事していたのですが、
松戸の自宅近辺はすでに相当積もっているらしい。

自宅に帰るつもりでしたが、とても帰れそうにないです。
(結構田舎なもので)


いちおう、事務所も快適に泊まれる設備が完備してある
んですけど・・・

しかし、実は、今日は私の誕生日。
ちょいと情けない。

なんて愚痴ってもしょうがないですね。


そうそう、今日は大学入試センター試験。
事務所のある本郷三丁目駅では、
やはりキットカットを配布してました。

東大本郷キャンパスに向かう受験生対象。

残念ながらおじさんには渡してくれませでした。

投稿者 松尾 順 : 17:44 | コメント (4) | トラックバック

大衆化に逆戻りする消費者行動

日経MJの最新の消費者調査の分析結果では、
消費者を次の4つのタイプにセグメントしています。
(カッコ内は構成比)

・先端自称層(31.1%)
 情報収集に積極的。消費活動はライフスタイルやブランドにも
 自覚的。消費金額が比較的高い

・勝ち馬乗り層(31.3%)
 消費では自身のライフスタイルより流行やトレンドに反応。
 流行を追い、消費自体を楽しむ。消費金額は高め

・こだわり層(23.0%)
 流行には左右されず自分の価値観に合ったモノ・コトだけに
 お金を使う。消費金額は平均的

・無関心層(14.6%)
 こだわりがなく、流行やトレンド情報にうとい
 買い物に対してめんどう感が強く、消費金額も低い。
 価格重視

世の中の流行を追う「先端自称層」と「勝ち馬乗り層」の合計で、
全体の60%を超えている点が注目すべき点でしょう。


消費者の商品購入に対する態度の違いによるセグメントとしては、
60年代に提唱されたロジャースの「イノベーター理論」と
いうものがありますが、上記「先端自称層」と「勝ち馬乗り層」
に相当するセグメントは、

・イノベーター(2.5%)
・オピニオンリーダー(13.5%)
・アーリーマジョリティ(34%)

で合計50%となります。
(実際には、「イノベーター」は、流行の源となる人たちで、
流行を追う人々ではありません。したがって、厳密には
「先端自称層」「勝ち馬乗り層」とは異なると考えるべき
でしょうけど)

日経MJのセグメントと単純比較するのは安易かもしれませんが、
イノベーター理論が提唱された数十年前よりも、近年は流行に
どんどん乗っていこうとする人々が増加しているということが
明確になったと言えるんじゃないでしょうか。


この流行に乗る人たちの増加の背景には、ITの普及によって
情報の入手が容易になり、多様な商品の比較検討が可能に
なったこと、

しかし、

比較検討の評価方法(軸)が、機能や性能といった目に見える、
わかりやすいものではなく、イメージやデザインのような、
良し悪しが即座に判断できない、わかりにくいものになっている
こと

があるでしょう。

したがって、的確な評価が自分では下せず、識者の意見や
よく売れている商品を受動的に受け入れてしまうということ
でしょうね。


また、世代的に、和田秀樹氏のいう「シゾフレ人間」が
消費の主力層になってきたこともあると思います。

シゾフレ人間は、1955年頃以降に生まれた人々から
増加し始め、65年以降になると主流になってきた人々。
すなわち、現在50歳以下の人たちです。

シゾフレ人間は、テレビやマスコミ、周囲の意見に簡単に
染まってしまい、自分の意見や趣向を持たない。
つまり、主体性やアイデンティティ意識が弱い傾向があります。

また、シゾフレ人間は「今」がすべてです。

過去がどうであったかにこだわらない。
現時点で周囲と調和がとれていることが重要。
つまり、変わり行く「今」に自分を合わせ続けることを
選択する人です。

消費の多様化傾向が、過去数十年間言われてきましたが、
実は、むしろ消費行動は、再び大衆化が進んでいるのかも
知れません。

そして、消費者タイプとしては「こだわり層」に含まれる
「オタク」たちが、一種嘲笑を持って注目されるのは、
彼らの行動が反大衆的で際立って目立つからなのでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 10:59 | コメント (0) | トラックバック

情報を知識に変えるためのフィルターを持つ

「マインドリーディング」では、
お客様(消費者)の心理をどうしたら的確に読めるのかを
追求しています。つまり、

「顧客心理の解読力」

を磨くことが目的のひとつです。

ただ、これだけでは、お客様のことをより深く理解できるように
なるに過ぎません。


マーケターとしては、新規のお客さまを獲得したり、
既存のお客様とより親しく、強固な信頼関係を築くために、
お客様の琴線に触れる商品やサービス開発や、
コミュニケーション戦略を展開したいですよね。

「マインドリーディング」では、この適用部分というか、
具体戦略への展開方法も視野に入れているのですが、
ここで必要とされるのは、言うまでもなく

「発想力」

でしょう。


では、「発想力」とは何でしょうか?

発想力は、最近特に注目されているビジネススキルですので、
ご存知の方も多いと思いますが、

「異質な知識の新たな組み合わせ」

のことですね。

つまり、発想力とは

「異質な知識量」x「組み合わせ力」

で表されると考えて良いでしょう。


上記の式のうち、「異質な知識量」は、
新たな発想を生み出すためのの原材料と言えます。
どんなに組み合わせ力が高くても、「異質な知識量」が
乏しければいい発想は生まれてきません。

そこで今回は、「異質な知識量」に焦点を絞ってお話します。

ポイントは、「異質な‘情報’量」ではなく、「異質な‘知識’量」
と表現している点です。

発想は、人の頭の中から生まれてくるものです。

したがって、単に日々流れていく情報をウオッチしているだけ
ではなく、脳内に「知識」として蓄積しておく必要があります。

そして、脳内に蓄積された様々な知識が組み合わさり融合する中で、
いわゆる「ひらめき」が出てくるわけです。

逆に言えば、どんなにたくさんの情報に触れているつもりでも、
「知識」として蓄積されなければ、新たな発想の原材料には
ならないのです。


さて、先日読んだ雑誌である著名人が、

「最近は、人の話を聞いていてもろくにメモを取らない人が多い。
インターネットで調べればわかると考えているのだろう」

というコメントをしていました。

こうした、後で調べればわかるといった受身の姿勢だと、
人の話、つまり情報は単にあなたの耳を素通りしていくだけです。
まず記憶に残らない。つまり、「知識」として蓄積されない。


そこで、情報を素通りさせず、自分の脳内に留めておく工夫が
必要となります。

もちろん、五感で取り入れたすべての情報を記憶することは
できません。脳みそがパンクしてしまいます。

ですから、情報を濾し取るための特定のフィルターを
意識的にアタマの中に置くのです。

私の場合は、心理学や社会学、人類学といった「フィルター」で
様々な情報をろ過しています。引っかかったものは「知識」として
脳内にしまいこまれます。
(無理に覚えようとしなくても、勝手に覚えます)

一方、引っかからなかった、自分にとっては価値の低い情報は
思い切って捨ててしまう。
(そうしないと、情報に追われてしまう(⌒o⌒;)


このような、情報を知識として蓄積するための類似の工夫として、
経営コンサルタントの泉田豊彦氏は、シンプルに

「知りたいことリスト」

作成しましょうと勧めています。

また、作詞家の秋元康氏は、無理に情報を蓄積しようとしなくても、
気になっていることがあれば、自然とたまっていくものだと
述べています。

大切なのは、「何に関心があるのか」を
自分で明確に認識していることでしょう。

これがフィルターを置くということであり、言い換えると
「情報を見る視点」を持つことを意味します。


「見るとは、二度見ることである」

という言葉があります。

人の目という感覚器官は、たくさんの情報を見ています。
しかし、それは「見えている」だけです。

しっかりと意識して「見る」ことによって、
初めて脳細胞が活性化し、記憶にとどめることができるんですね。

投稿者 松尾 順 : 11:59 | コメント (0) | トラックバック

自動ドアを廃止して得られるもの?

高級ホテルに行くと、ドアマンがエントランスのドアを
うやうやしく開けてくれますよね。

あれはなんだかいい気分です。(^-^)

偉くもない自分が偉くなったような、一種の優越感。
実にいい。

しかし、

「ドアマンの費用対効果はどうなんだろ?」

などど野暮なことを考え出したら、夜も眠れなくなるでしょう。


ドアマンはホテルの顔であり、お客さまの第一印象を形成する
最も重要な役割を果たしているのは確かです。

ただその効果を定量的には図れませんね。

したがって、「ドアマンは収益に間違いなく貢献する」
という経営者の「信念」が、彼らの存在を支えているのです。


さて、訪問営業をしない高収益ディーラーとして有名な
「ホンダクリオ新神奈川」では、同社のショールームから
自動ドアを撤去しました。

手で開けるドアに戻したのです。
効率優先の自動化時代に逆行してますね。

改装費用は1店200万円以上。
自動ドアの減価償却が終わっていない店舗もありました。

私は自宅が千葉・松戸ですので、同社店舗に行く機会は
ないのですが、おそらく、お客さんが来店すると、
お店のスタッフがすぐにドアを開けて出迎えるのでしょう。

帰り際も当然、ドアを開けてお見送りします。
すると、お客さんも

「ありがとう」

と声をかけてくれるそうです。


自動ドアをなくす改装費用は高額でしたが、
お客さんの大切にされたいという気持ち、つまり「自己尊重感」
をくすぐり、優越感を与えているだけでなく、
ドアを開けるだけで、「借り」(恩)まで作らせています。

ただドアを開けてあげるだけのさりげないことですが、
あからさまに恩を売るより、はるかに無意識に溶け込むでしょう。

そして後になって、なぜだかわからないけれど、
「あの店で車買ってあげなきゃ悪いなあ」という気持ちに
お客さんはなっているでしょうね。


この時代に逆行する投資がどれだけのリターンを生み出すのか、
定量的な評価は無理でしょう。しかし、同社の相沢賢二会長は、
確実にペイするという「信念」を持っているに違いありません。
相沢氏は、人の心理がよくわかっているマインドリーダーの
マスターと言えるんじゃないでしょうか。


似た事例としてこんなのがあります。

都内観光の「はとバス」では、
バスの座席を5cmだけ高くする改装を1台あたり約200万円
かけて行っています。

これは、たとえ5cmでも高いところから周囲を見下ろすことが、
お客さんに心地よい優越感を与えるからという判断です。

これも、やはり経営者の「信念」によって行われていること。


経営者は、優れたマインドリーダーであり、かつ信念を持って
たとえ検証が難しくても、必要な投資を行う胆力が
必要なんだと思います。

*ホンダクリオ新神奈川の事例は日経産業新聞(2006.01.13)より

投稿者 松尾 順 : 10:30 | コメント (0) | トラックバック

きっと勝つ 受験生がんばれ!

そろそろ受験シーズン。

事務所の最寄駅「本郷三丁目」では、
かなり大規模なプロモーションが進められています。

最近、受験生の間で、ネスレの「キットカット」が人気なのは
ご存知ですよね。

キットカットの語感が「きっと勝つ」に近いので、
要するに「ゲン担ぎ」で買っているわけです。

もともとは、博多弁の「きっと勝つと!」に掛けたのが始まり
とのこと。


でまあ、受験といえば「東大」。
TVドラマにもなった漫画「ドラゴン桜」で東大受験が注目を
集めました。

そこで、東大赤門のある本郷三丁目駅周辺がキットカットの
プロモーションの展開エリアとして選ばれたようです。


本郷三丁目駅は、東京ドームが近いためか天井はドーム風の
スタイルなんですが、そのドームが桜のデザインに。


tenjo.jpeg


そして、キットカットのロゴマークとこんなキャッチコピー。


up.jpg

きっと、サクラサクよ。
がんばれ、受験生。 本郷三丁目駅員一同


自動発券機の上や案内地図の上なども桜で埋め尽くされていて、
なかなかに鮮やかです。自動改札機にもやはりご丁寧に桜。


kaisatsu.jpg


さらに、駅から本郷通りに通じる細い路地のアスファルトには
桜の道が敷かれました。


sakuraroad.jpg


これから試験が行われる時期には、キャンペーンガールが
登場する、キットカットのワゴン即売セールとかも予定されている
かも知れませんね。


さて、キットカットのような、お守り的効用を持つお菓子を
「縁起菓子」と呼びますが、他の縁起菓子の代表例としては
明治の「カール」がありますね。

カールを食べると、‘受’(う)カールというわけです。


受験生だってわかってることでしょうけど、
100%絶対に合格なんてありえない。

どんなに努力しても、勝負は時の運。
試験の結果は、ふたを開けてみないとわかりません。

人事を尽くして天命を待つ。
やるだけやったら、神に祈るしかない。
つまり縁起を担ぐことしかできることはないのです。

くだらないダジャレだとどこかアタマの隅で感じていたとしても、
受験前の不安を解消したい、そして「心の平安」を得たい。

しかし、受験生全員がキットカットを食べるとしたら、
いったい、誰が勝つんでしょうね?


そういえば、節分に、その年の恵方に向かって
無言で太巻きを食べると無病息災で過ごせると言われる
「恵方巻き」も年を経るごとに盛り上がってきましたね。

これだけ情報化が進んだ文明社会の日本で、
こうした‘非合理的’‘非科学的’な縁起物が盛り上がる理由に
ついて深く洞察する必要がありそうです。

投稿者 松尾 順 : 10:13 | コメント (2) | トラックバック

男のアンチエイジング消費

ジャズの演奏に合わせて、手足がチョコチョコと動くミニチュアの
人形たち、バンダイの「リトルジャマー」

がおじさんたちに大人気です。

1セット約2万円もする高額な「おもちゃ」ですが、
累計販売台数5万台を超えたそうです。

おじさんで音楽好きの私も、とても欲しいです。(笑)

しかし、やはり2万円は高い、というわけで、
姉妹製品の「プラグビート」(こちらはロックバンド人形)を
買いました。ギター、ベース、ドラム3体で約1万円。

こちらも十分高額おもちゃですから、
「オトナ買い」じゃないと売れない製品でしょう。

最近、おじさんバンドや音楽教室が盛んになってきたことも
ご存知ですよね。

楽器店では、数十万~数百万のビンテージギターを40-50代の
おじさんが即決で買っていきます。

音楽だけじゃありません。

家庭で本格的なプラネタリウムが楽しめるセガトイズの「ホームスター」

もバカ売れしています。

上記製品の価格も約2万円です。おそらく主力購買層は
昔、天文少年だったおじさんであるのは間違いありません。
(私もやはり欲しい・・・)


さて、おじさんが上記のような製品を購入する現象は、
いわゆる「ノスタルジック消費」と呼ばれますね。

少年のころ果たせなかった夢に対する郷愁が、
購買意欲を刺激しているのだと。

ですが、もっと深いところには、老いていくことへの抵抗が
あるように思います。

つまり、端的に言えば「若返りたい!」

そうした気持ちが、少年的な遊びへと向かわせている。
男性にとっての「アンチエイジング消費」と言えるんじゃない
でしょうか。


女性の場合、アンチエイジングとは、しわを減らすとか、
お肌の張りを取り戻すといった、外面的な対策の製品が
メインです。

女性にとっては、「外面の若返り」が最大関心事なんですね。

ところが、男性の場合は、外面的にはあまり老いを否定せず、
むしろ成熟した大人としての魅力を打ち出す一方、
「内面の若返り」に関心が高いということが言えます。

おじさん向け市場は、シニア向け市場と重複するところが
ありますが、男性にとってのアンチエイジングとは何か、
ということを理解しておく必要があるんじゃないでしょうか。


ところで、おじさんの心理をなんだかとても代弁してくれて
いると感じる歌があります。一部を引用します。

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遊ぶこと忘れてたら老いて枯れんだ
ここんとこは、仕事オンリー、笑えなくなっている

ガラクタの中に輝いてたものがいっぱいあったろう?
“大切なもの”すべて埋もれてしまう前に

~~~

積み上げたものぶっ壊して 身に着けたもの取っ払って
幾重にも重なり合う描いた夢への放物線
紛れもなく僕らずっと全力で少年なんだ

      from 「全力少年」by スキマスイッチ

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投稿者 松尾 順 : 10:41 | コメント (4) | トラックバック

スキマスイッチの「全力少年」

「スキマスイッチ」という名称の男性デュオ、ご存知ですかねぇ・・・

最近、バンド仲間から教えてもらって、聴いております。
どのくらい人気があって、売れているのか知りませんがなかなか良いです。

しかしなんでまた、こんな変な名前なのか。
一回聞いただけで絶対忘れない、秀逸なネーミングではあります。

なんか由来があるんでしょうね。知りたいとはあまり思いませんが。(⌒o⌒;


で、スキマスイッチの最近のヒット曲(らしい)は

「全力少年」

というタイトル。
これも、相当怪しい。

スキマスイッチの「全力少年」

と書いちゃうと、ほんと理解不能な言語ですよね、
特におじさんたちにとっては。

このタイトルを見ただけなら、普通は絶対聴かないと思います。
しかし、実はとてもすばらしい曲でした。メロディーも歌詞も
大好きです。


そういえば、男性デュオで、「コブクロ」という方々もいるらしい。
名称だけは聞いたことがあったけれど、わけわからんので、
気に留めていませんでした。

とりあえず聴いてみます。

投稿者 松尾 順 : 15:28 | コメント (0) | トラックバック

努力だけでは超えられない壁を知ることはいいこと

今朝は、所用で母校早大へ。
商学部事務所のある11号館に入ったのは、実に約20年ぶりでした。

大学キャンパス内に入ると、自然に学生当時のことが思い出されますよね。
ただ、、私は正直なところ、とても悲しい気持ちになります。

というのも、当時は精神的にどん底でしたし、堕落した生活を送っていたから。
いい思い出がない。

社会人になってから、あまり自分の出身校のことを語りたくなかったり、
あまりキャンパスに行きたいと思わないのは、学生時代のことを思い出して
落ち込んでしまうからなんだろうなと、今日初めて気づきました。

ところで、早稲田ラグビー、先日の試合で関東学院大を圧倒し、
見事学生日本一の座を取りましたね。

現在のチームは「最強」の呼び声高いですが、日本選手権で
見事社会人ラグビーを粉砕できるでしょうか。

前回、ラグビー日本一の栄光を手にしたのは1987年。
私は、早大を卒業したばかりの社会人一年生でした。

私は、日本一になった東芝府中との試合をテレビで見てたんですが、
まだ1年生だった堀越さんや今泉さんの活躍が目に浮かびます。

でも、この優勝の裏には、ちょっと悲しいドラマがあったんですね。
当時、ラグビー部に4年生として在籍されていた方から聞いた話です。
この方は、レギュラーではなかったそうですが。

4年生でレギュラーだった某選手は、すごい努力家でした。
全員練習が終わった後も、一人で黙々とパスの練習をやっていました。

そこに、天才スクラムハーフと言われた堀越さんが入部してきます。
4年生の選手としては、レギュラーの座を奪われるかも知れないという
強い危機感を感じたでしょうね。

実は、堀越さんには、まだひとつだけうまくできないパスがあったそうです。

4年生の先輩としては、後輩に技術を教え育てることは義務です。
そこで、彼は堀越さんにそのパスのやり方を徹底して教え込みました。

そして、堀越さんがそのパスをできるようになった時、
夏合宿3日目だったそうですが、彼のレギュラーの座は、
自らが技術を伝えた堀越さんに奪われてしまいました。

努力だけでは超えられない壁があるんです。
これはとても悲しいことです。

でも、このことを知るのはいいことだとも言えます。

単に好きだから、やりたいからというがむしゃらな気持ちも
大切ですが、自分が勝てる領域、才能が活かせる領域を
冷静に見極めることも同時に大事なのです。

投稿者 松尾 順 : 11:00 | コメント (0) | トラックバック

見なけりゃ欲しくならなかったのに!

富山の置き薬方式お菓子販売と言えば・・・?

そうです、「オフィスグリコ」!

事務所の片隅に、グリコのお菓子が入った小さなボックスを
置いてもらいます。お菓子は100円均一。
社員が自分で好きなお菓子を取り、カエルの口を模した投入口に
代金を入れるセルフサービス式です。

サービスを開始した1999年当初は、「成功するかなあ・・・」
と思ってましたが、2006年3月期は、前年比6割増しの18億円
の売り上げを見込んでいます。
ボックス設置数は6万6千個。

1個100円のお菓子であることを考えると、
当事業は大成功と言えそうですね。

さて、お菓子が嫌いな人ってまずいないと思うんですが、
大人になるとそれほど食べなくなりますよね。

もちろん、毎日お菓子は欠かしたことがない!
という人もいるでしょうけど。

ともあれ、お菓子を食べないと禁断症状が起きるような人は
少数派でしょう。
要するに、大人にとって、お菓子は、なければ無いで困らないもの。
コンビニに行っても、弁当・パンのコーナーには立ち寄っても
お菓子のコーナーは、だいたい素通りしますよね・・・

でもね、小さいころからお菓子を食べてきて、おいしかった
という「快」の感情は強く刻み込まれているわけです。

で、夕方頃とか、仕事の疲れを感じた時、ふとオフィスグリコ
のボックスが目に入ると、たちまち、「快」の感情が
よみがえり、食欲に結びついてしまうのです。

「そういえば、お腹がすいていたんだな」

こうやって毎日、ついついおオフィスグリコに手を伸ばして
しまう・・・


お菓子のような商品は、本能的欲求を刺激する外的誘因に
なり得るわけですから、消費者の目に触れさせたら
「勝ち」なんですね。

「オフィスグリコ」は、商品の補充業務が労働集約的ですし、
利益率はあまり高くないでしょうけど、
ビジネスシーンでのお菓子の潜在ニーズにうまく応えた事業
であったわけです。

しかし、オフィスグリコのおかげで、
ボックスの置いてある事務所の社員の平均体重は
確実に増加しているんじゃないでしょうか。(笑)

「ボックスを見るとつい欲しくなるんだよね、
見なきゃ食べなくてすむのなあ」

と感じる方が多いでしょう。
(かといって、決して撤去は求めないと思います・・・)


ちなみに、冒頭で書いたように、お金は社員が自分で支払って
もらうのですが、代金の回収率はほぼ100%だそうです。
さすがに100円を誤魔化すほど、せこい人はあまりいなかった。


また、子供向けビスケット菓子「ビスコ」がよく売れるそうです。

コンビニなどではあまり置いていないこともあるのでしょうけど、
セルフサービス式だからこそ売れるんでしょうね。

ビスコは、オトナが食べてもやはりとてもおいしい!

でもあの幼児の絵の描かれたパッケージを持って、
お店のレジに並ぶのは恥ずかしいですから。

最近は大人を意識した、小麦胚芽入り「白ビスコ」も発売
されていますけど、せっかくですから、

「オトナのビスコ」

を発売して欲しいです。
もちろん、パッケージデザインはさわやかな青年の笑顔で。

投稿者 松尾 順 : 13:02 | コメント (1) | トラックバック

消費者ロールプレイ

消費者の心を的確に読む一番の方法は、
自分が消費者になりきること。

つまり、当事者の立場に自分を置くことです。

これは、何度でも繰り返し強調する価値のあることだと
思っています。

昨年12月にこのメルマガで取り上げた「ローソン100」の
担当者は、ターゲットの主婦になりきるため、実際に自分で
スーパーで買い物をし、料理をしてみることで、
主婦の心を読めるようになりました。

>該当記事のブログ「一生懸命生活しましょう」


この当事者になりきることを新商品開発のための「仕組み」と
して取り入れたのが、日本コカ・コーラです。
(日経情報ストラテジー、2006年2月号より)

この仕組みとは、「ロールプレイング」と呼ばれるもの。
生活者のある役割を演じてみることで
気づきや実感を得ることが目的です。

日本コカ・コーラでは、2005年1月のアイディア合宿で
この手法を初めて試してみました。

このときのテーマは「睡眠」。

参加者の中には、マットレスを持ち込んで寝る場面を再現したり、
横になりながら自分の考えを整理したりする人もいました。

この新たな手法に基づいて生まれた新商品のひとつが、
2005年9月発売の「翌朝ぷるるん」です。

同社の杉山繁和氏(経営戦略本部経営情報部統括部長)は、

「断片的な机上のアイデアを生活者の動きや目線に合わせて
結びつけるのに適した手法」

と評価しています。


すでに食傷気味のコメントで恐縮ですが、
現代の顧客は、新製品としてどんなものが欲しいか聞かれても、
もはや答えることはできません。
顕在ニーズはもはや充足されすぎているからです。

もちろん、潜在ニーズはまだまだたくさんあるでしょう。
しかし、文字通り、潜在ニーズは消費者の無意識の奥深い
ところに沈殿しています。簡単には取り出せない。

したがって、沈殿した潜在ニーズを引っ張り出してもらおうと
消費者にアンケート調査を求めるのは、マーケターとしては
あまりに怠惰ですし、たいした成果は期待できません。

まずは、自分自身が一消費者の立場をロールプレイし、
無意識の奥底まで潜り、潜在ニーズらしきもの、つまり仮説
を取り出してくる必要があります。

アンケート調査は、あくまでその仮説の検証に用いるための
ものです。

まずは、消費者のロールプレイから。
コカ・コーラさんみたいに、フォーマルなやり方をわざわざ
取り入れなくても、今日今からできますね。
自分の生活、消費行動をターゲットにできるだけ近づけ、
同時に一歩引いて自分の心理を観察すればいいのです。

そういえば、極端な例として挙げられるものとして、
ユニチャームの高原会長(男性)は、生理用品の開発に当たって、
みずから着用して生活してみたという話が有名ですね。
幼児用紙おむつも試してみたかどうかは知りませんが。(笑)

投稿者 松尾 順 : 10:42 | コメント (0) | トラックバック

意味の拡張

神戸大の石井淳蔵教授は、

「経験価値マーケティング」

という新しい手法の特徴として、
「情緒的価値」の重要性を指摘しています。
(週刊プレジデント、2006.1.30号)


「情緒的価値」とは、ブランドに対する

‘自分のモノ感’や‘愛着’

のことで、個々のユーザーによって異なる意味・意義をもつ
固有の価値です。


なぜ、「情緒的価値」が重要なのでしょうか。

それは、従来重視されてきたブランドの価値、例えば

「安心」「親しみ」「信頼」

といった万人に通じる価値だけでは、
競合ブランドと十分な差異性を打ち出すことが難しいからです。

したがって、固有性の高い「情緒的価値」を持たせることが、
これからのマーケティングの課題であるというわけです。

ただ、注意すべき点は、情緒的価値は、
商品・ブランドの機能・効能で構成されるものではないこと。
むしろ、消費者の生活や経験に深く入り込んだものです。


では、情緒的価値を生み出すために、
マーケターがやるべきことは何でしょうか。

それは、商品・ブランドの「意味の領域」を問い、
従来の「製品カテゴリー」概念を捨て去ることだと、
石井教授は主張しています。

一般常識であるが故に、固定的になってしまっている従来の
「業界」「業種」「商品」といった標準分類・カテゴリーを
打ち破るべきだということですね。

なるほど、それはわかった、

「じゃあ、具体的に、どうやって製品カテゴリーを打ち破り、
意味の領域を問うの?」

という声が聞こえてきました。(笑)


では、簡単にお教えしましょう。

ISIS編集学校の課題には「言葉の言い替え」というのが
あります。例えば、「コップ」を様々に言い替えていく。

・ガラス製品
・容器
・食器
・花瓶
・手に持つもの
・さいころばくち用
・ブラジャー
・・・

などなど。ブレスト的に、どんどん出していきます。
ばかげたもの、笑われてしまうようなものでもなんでもOK。

こうした言い替えを通じて、たかが「コップ」でも、
その意味は実に多様であることがわかります。


同様に、ソフトシステムズ方法論という分野では、
「意味づけの拡張」という作業をやります。

面白い事例では、「刑務所の意味づけ」を拡張があります。

・刑に服するところ
・3食付のホテル
・技能を身につけるところ
・規則正しい生活態度を習得するところ
・健康的になるところ
・・・

など、本来の目的以外の様々な意味合いを洗い出していく中で、
刑務所の持つ以外な価値が見えてきます。

このように、自社の製品やブランドを「意味」の視点で
拡張してみることが、差異性につながる情緒的価値を発見する
ためにとても有効な方法なんですよ。

ぜひ、実践なさってみてください。

投稿者 松尾 順 : 11:53 | コメント (2) | トラックバック

なぜ、人はブログを書くのか?

マインドリーディングのブログを開始する前は、
楽天日記で個人的な内容のブログを書いていました。

でも実は、楽天日記を書いている時は若干の迷いがありました。

それは、私的なできごとや思いをまさに「日記」として書き、
それを公衆の目にさらしてしまうということって、
一体、何なんだろう?という疑問が頭から離れなかったからです。

しかし、最近、これに対する答えのようなものが見えてきました。

私が私淑する編集者、村松恒平氏は、
人が文章を書く動機を次のように述べています。

「自分が何者か知りたい」
「自分が何者であるか証明したい」
「他人に自分のことを理解してもらいたい」

この村松氏の考えに基づけば、ブログはまさにうってつけの
ツールであることが確かですね。

端的に言えば、ブログは、自分らしさ(=アイデンティティ)に
対する理解を深めることができるということです。

人は、頭の中で漠然として考えていることを言葉にすることに
よって、「自分が何者か」を明確に知ることができます。

自分に対する正確で客観的な知識を心理学では、
「私的自己意識」と呼びますが、
従来の紙の日記は、私的自己意識を深める「自己探求」のツール
として有効でした。

しかし、自分で書いて、自分だけのものとしておくだけでは
自分らしさに対する理解を深めるには不十分なのです。

周囲の人間に「自己開示」を行い、理解してもらうこと、
さらに、フィードバックをもらって、相手が自分をどのように
見ているかを知る必要があります。

この、相手が自分をどのように見ているかについての知識を
「公的自己意識」と呼びます。

人は、この2つの意識「私的自己意識」「公的自己意識」
の両方を深めていくことにより、内面的、外面的に整合
の取れた「自分らしさ」を発見していくのです。

ブログは、個人的内容を書くことにより、私的自己意識を
深めることができると同時に、その内容に対して、

「君がそんな柔軟な考えを持っていたとは知らなかった。
 僕は、君はもっと強情だと思っていたよ・・・」

といったコメントをもらうことによって、相手が自分を
どう見ている、感じているか、という「公的自己意識」
をも深めることができます。

こうしたことは、ブログ登場まではなかなかできなかったのです。

したがって、これからもブログを書く人はますます増加していく
ということは間違いないでしょう。

投稿者 松尾 順 : 06:03 | コメント (2) | トラックバック

思い出す手がかりが弱くなっちゃった

今日は休日出勤。

電車の中で、着物姿の女性をちらほら見かけました。
そうそう、成人の日でした。

おじさんの私にははなから関係のない行事ですが、
以前に比べると、ずいぶん華やかな感じが薄れたような印象を
受けます。

たぶんこの印象は、連休を増やす目的で2000年に施行された
「ハッピーマンデー法」のせいじゃないかと思うのです。

同法施行前は、成人の日と言えば1月15日。
開催日が明確でしたから、近づくにつれて社会全体で
なんとなくの高揚感があったんじゃないかと思います。

でも今は、成人式は、1月の第2月曜日と決められているので、

「えっと、今年の成人式はいつだっけ・・・?」

なんて感じになっちゃって、だんだん関心が薄れていった。

体育の日もそうでしょう。10月10日。
実に思い出しやすかったですよね。

でも、今は、えっと・・・やっぱり10月の第二月曜日でしたっけ。
こんなんじゃ、盛り上がり感を作っていきづらいように思います。

連休が増えるのは結構ですが、
毎年の祝日の日付が流動的になったということは、
思い出す手がかりが弱くなったということですし、
それだけ関心も薄れていくといえるんじゃないでしょうか。
(単なる仮説ですけど)

投稿者 松尾 順 : 13:11 | コメント (0) | トラックバック

塩素入り温泉

年に数回、南房総に旅行に行きますが、その際、
通り道からちょっと脇にそれるだけなのでよく立ち寄るのが、
養老渓谷の温泉です。

温泉宿は10軒ほどあり、日帰り入浴で600円~1000円位でしょうか。

先日も、新しくできたばかりの温泉専用施設に行きました。
新しくてきれい。白木の木造にこだわった、なかなか風情のある施設でした。

さて、お風呂から出て体を拭いていて、
脱衣場の壁の「温泉の効能表」にふと目が留まりました。

あの白骨温泉の入浴剤事件以来でしょう、
効能表の表記が非常に詳細になっています。
たとえば、加温しているかどうか、加水しているかどうか、
かけ流しか、それとも循環かどうかなど・・・。

その温泉は、加温、加水なし、循環型。
かけ流しでなかったのはちょっと残念でした・・・

気になったのが、衛生管理のため、

「塩素」

を加えてあると書いてあったことです。

「塩素」といえば、いわゆる消毒剤として、
水道やプールには必ず入っていますよね。

もちろん、体には良くない薬剤ですから、
家庭では浄水器で除去するのが普通になってきています。
あるいは、食用にはミネラルウォーターを購入する。
塩素を除去するシャワーヘッドもあります。

しかし、温泉に塩素が入っているというのは
通常行われていることなんでしょうか。

まあ、私たちは、塩素が入っているということを知りつつ、
水道水を利用しているわけで、たいしたことじゃあないとは
思えるのですが、なんだかちょっと幻滅しますね。

「塩素入り温泉」なんて。

なんにせよ、情報公開は必要だとは思いますが、
こうした情報は、知りたいけれど、あまり知りたくなかった
情報のひとつでしょう。

投稿者 松尾 順 : 14:38 | コメント (0) | トラックバック

自分の視野の枠を取り払うこと

日経産業新聞に掲載されていた
防災に関する囲み記事に目が留まりました。

ある防災専門家は、
風水害を含め被災地の首長や防災責任者に会うたびに
がくぜんとするそうです。

「私はこの土地の生まれだが、災害に遭ったことはなく、
避難勧告を出すことは考えも及ばなかった」

と多くの人が口を揃えるからです。

しかし、上記のようなコメントは当事者の思い込みに過ぎず、
郷土史をひもとけば災害常襲地であることが
すぐにわかるというのです。

ご存知のように、大地震や火山噴火などの発生周期は
数十年から数百年間隔です。したがって、
人によっては生存中に大災害に出会わないことがあります。
ですから、ついこの土地は災害とは無縁だと思い込んでしまう。

つまり、災害に遭ったことはないという自分の体験は
たかだか人生60年かそこらの時間枠での話であることを
自分でわかっていない。

時間軸での視野が、
自分の人生という狭い枠までしか届いていないわけです。

時間軸に限らず、自分の身近な、目の届く範囲が全世界で
あるかのように思い込んでしまいがちなのが人間です。

また、地理軸で世界に視野を広げてみると、自分たちの世界とは
まるで違う部分が多々あることに驚かされますよね。

例えば、インドでは、自動車のドアミラーは、運転席のある
右側だけしかついておらず、左側のドアミラーがない車が
たくさん走っていることをご存知でしょうか。

左側のドアミラーがないと、左折の時の安全確認が不十分に
なるのでなんとも危険だと思いますが、
インドの法律では左側ミラーは義務付けられていないのです。
あくまで別売りオプションの扱いです。

ですので、インドの消費者としては、
たとえドアミラー一個でもオプションから外して
安く購入したいということのようです。

つまり、日本の常識が外国では通用しない。
諸外国には、他にも驚愕する事実がたくさんありますよね。

時間軸、地理軸、あるいは常識軸で視野が限定されてしまうのは、
その方があまり頭を使わずに、楽に毎日が送れるからですね。

しかし、斬新なアイディア、発想、創造性を求められる
事業家やマーケターなら、
意識的に自分の視野の枠がどの程度の大きさなのかを見極め、
あえて、その枠を取り払って思考の目線を3次元に大きく
広げてみることが必要だと思います。

投稿者 松尾 順 : 06:53 | コメント (4) | トラックバック

ダイエットの心理学

ダイエット中の方にとって年末年始は悩ましい時期ですね。

せっかくの「ハレ」の時期です。
朝からガンガン飲み食いし、一日中ごろごろ‘トド’していても
許される唯一の機会なのに、ダイエット中だからといって
禁欲的な生活を送るのはとてもつらい。

おいしい料理を目の前にして、
カロリー制限をするのはむなしすぎます・・・

「正月くらいはダイエットお休みでいいや」

と、長期ダイエット中の私もバクバクいきました。(笑)
おかげで体重計は乗るのも見るのも怖い、というのが今です。


さて、いわゆるダイエット(減量)は、肥満を解消して理想体重
を維持するのが目的ですよね。リバウンドしては意味がない。

では、最も効果的なダイエットプログラムはどんなものでしょう?

以前行われた、こんな実験をご紹介します。

肥満の人を対象に、6ヶ月のダイエットプログラムが
提供されました。プログラムは3種類あります。

1 食事(カロリー制限)と運動習慣を指導される「行動変容法」
2 食欲抑止薬を服用する「薬物療法」
3 「行動変容法」と「薬物療法」の組み合わせ

各プログラムに参加した人の体重減少を6ヵ月後、および
1年後に測定したところ興味深い結果になりました。

実験が終了した6ヵ月後に最も減量できたのは
3の「行動変容と薬物療法の組み合わせ」のプログラム、そして
2の「薬物療法のみ」のプログラムです。

ところが、1年目に再測定したら、
最も減量していたのは、1の「行動変容法」の人たちでした。

薬物に頼っていた人たちも、当初の体重より減量した状態を
維持してはいましたが、体重の減少量の大きさでは、
行動変容法の人たちが逆転してしまったのです。

この結果について心理学者は、

行動変容法をやった人々は、減量は自分の努力の結果である、
やればできるという自信・確信(「自己効力感」と言います)と
自分の行動を制御できるという「自己制御感」が生じたために、
1年後も減量を続けることができた、

と解釈しています。

一方、薬物に頼ったプログラムの人たちは、減量できたのは
自分の努力の結果ではないことをわかっていますから、
ダイエットを続ける自信も、うまく自分の行動を制御できるという
感覚も持てなかったんですね。

そして、ずるずると以前のライフスタイルに戻ってしまった。

要するに、ダイエットに王道なし、ということです!

自分で努力して、食事制限と運動をするのが
効果的なダイエット法なんです。

ちょっと当然すぎてがっかりしますが・・・(^^;;

あと、努力が続けられない意思が弱い私はどうしてくれるんだ、
という声が聞こえてくるようです。


世の中には、飲むだけとか、貼るだけ、ブルブル振動させるだけ、
ゴロンと横になって施術してもらうだけ、なんて売り文句の
お手軽ダイエット法が氾濫していますよね。

どれもそれなりに効果があるのかも知れませんが、
上記実験の知見を踏まえると、自分の努力が入らないので、
止めたらもとに戻ってしまうのは自明の理ですね。

つまり、お手軽であればあるほど、そのダイエット法を
利用し続けなければならないということです。

ダイエットビジネスが儲かるのは、ここに秘密があったんですね。


(出所)ヒルガードの心理学 第14版、ブレーン出版

投稿者 松尾 順 : 12:19 | コメント (2) | トラックバック

照れ笑いのメッセージ

先日、事務所に若い男性2人連れがやってきました。

「こんにちは、雑貨屋のウエンディと申します。
 雑貨の訪問販売で、このあたりを回っているんですが。
 いかがですかあ? えへっ・・・(照れ笑い)」

訪問販売で「雑貨」を売るのは珍しいのですが、
年に1、2回はこうした人たちがやってきます。

おそらく、販促品か何かの在庫処分が目的でしょうね。
マルチドライバーセットとか、ラジオ付非常用ライトとか、
一見便利そうなもの。あれこれつけて千円、というのが
お決まりのパターン。

実は、私は以前1回だけ、つい買ってしまったことがあります。
販売員のお兄さんの説明のノリが良く、
うまく乗せられてしまいました。

その時、何を買ったのかもはや覚えていませんが、
どんなモノであったにせよ、役に立っていないことは確かです。
(笑)


さて、今回の2人。
スーツを着ていたものの、学生アルバイトのような印象。

彼らのセールストークの語尾の

「いかがですかあ?えへっ・・・」

という照れ笑いがポイントでした。

言葉で表現しづらいのですが、この「えへっ」は明確な
メッセージを発信していました。

この照れ笑いの表情を見た瞬間、私は、
彼らに次のような心情があるのが読めてしまったのです。

(すいません、仕事の邪魔しちゃって。
ろくでもないものを売りに来ました。
私たちも、仕事の命令で仕方なくこうやって回ってるのです。
買ってくれなくてもいいんですよ・・・)

ですので、私も間髪入れずに、にっこり笑って返しました。

「いえ、結構ですよ!」

彼らもほっとした表情で、

「あ、そうですか、失礼しました!」

とあっさり引き下がりました。

彼らと私の心が通じ合った瞬間でした。(笑)

売り手は売る気がなく、買い手も買う気がない。
お互いにそんな心を見透かしつつ、
トラブルに発展しないよう、穏便な社交的会話を行った。


彼らが帰った後、
私は、ノンバーバル、つまり言葉以外の態度や表情、
といったものが持つコミュニケーション力は
すごいなと思ったものでした。

相手の気持ちを言葉や非言語など、あらゆるものを
手がかりに推量しようとするのが「心の理論」と
呼ばれるものです。

ただ、「心の理論」といってもとっつきにくいので、
私は、あえて超能力、第六感と誤解されてしまうことを
承知の上で、「マインドリーディング」(心を読む能力)
と呼ぶことにしています。

上記のやる気のない販売員との会話でもわかるように、
私たちは小さいころから他人との交流を通じて相手の
気持ちを読む力を高めていきます。

人の心が的確に読めるようになればなるほど、
社会生活も円滑になるからですね。
(たまに、大人になってもこの能力のない、
 天上天下唯我独尊の人もいますけどね)

さて、この先日の出来事のおかげで、
「マインドリーディング」、つまり相手の心を的確に読む力を
高めるための理論や方法論をきちんと体系化することは
やはり皆さん、特にマーケターの方々に有益だという思いを
強くしました。

今年は、よりいっそう、「マインドリーディング」に
力を注いでいきたいと思っています。

投稿者 松尾 順 : 08:03 | コメント (0) | トラックバック

健康ランド、またはスーパー銭湯

温浴施設に、休憩スペースや飲食施設、マッサージなど
各種健康関連サービスを提供する場所が
健康ランド、またはスーパー銭湯ですね。

健康ランドというのは古臭い言い方で、気取った言い方だと
クアハウスですが、入浴料を含む入場料金が2-3千円かかります。

一方、スーパー銭湯は、温浴施設以外のスペースが少ないですが、
入場料金は取りません。500円程度の入浴料で済みます。

私は、こういったところが大好きで、健康ランド系だと事務所に近い
「ラクーア」に行きますし、自宅の松戸周辺のスーパー銭湯もあちこち
行きます。

ただ、最初はあちこち行ってみるのですが、しばらくすると行く場所が
決まってきて、他の場所にはあまり行かなくなります。

結局、なぜ特定の健康ランド、スーパー銭湯しか行かなくなるのか、
振り返って考えてみると、「食事」なんですね。核商品の温浴施設
じゃないんですね。

ああした施設は、大量の顧客にすばやく提供しなければならないので、
冷凍品+電子レンジを多用してます。要するに「チン」して出すものが
多いのです。働いている人も、入れ替わりの激しいパートでしょうから、
あまり手のこんだ食事は作れないということも背景にあるでしょう。

そうすると、味の良し悪しがはっきり出るんですね。
もっと端的に言うと、経営者の食事内容に対する姿勢や考え方が
現れています。

で、従来からある健康ランドでは、本当にがっかりする味のことが
多いですね。新しくできたスーパー銭湯でも、温浴施設は立派だけど
食事はがっかりというところがあり、そうしたところからは自然に
足が遠のいてしまいます。

私の好きなラクーアでは、食事もちゃんとしたレストラン(居酒屋、
焼肉など)が揃ってますので文句なし。

自宅の近くでよく行くスーパー銭湯の食事処では、例えば、
そばは、「信州そば」と「二八そば」の二種類が選べます。
他の食事もかなりおいしい。

温浴施設というのはまさにハードなものであまり大きな差は
つけにくい。でも、食事はソフトなもの。味の点で差別化を
するのは比較的簡単なはず。

健康ランド、スーパー銭湯に限りませんが、どこで他の施設と
競争優位性を確保すべきか、ちゃんとわかっている会社と
そうじゃない会社で業績に差が出てくるのはしごく当然ですね。

投稿者 松尾 順 : 08:00 | コメント (0) | トラックバック

年賀状か年賀メールか

個人宛の年賀状は、
いつもお正月になってからたらたら書いています。

一方、会社名義で出す年賀状は、
枚数も多いので早めに準備していましたが、今年はやめました。

手間とお金がかかるわりに、やはり形式的過ぎて気持ちが
伝わらないと思ったんです。

文面は印刷せざるを得ないというのが、
気持ちが伝わらない最大の理由。

末尾に手書きでの一言を必ず添えていましたけれど、
それも、「今年もよろしくお願いします」みたいな決まり文句に
なってしまうんですよね。

それだったら、お金をかけずに手間だけかけて、年賀メールを
個別に出すというのがいいと思いました。
まあ、文面を完全に個別にはできませんけれどね。

ただ、個人宛のメールは、まだまだ年賀状ですね。
手間と金を使うことに意味がありますから。

すでに亡くなった私の祖父は小学校の校長先生だったせいか、
年賀状も千枚とか出してましたが、
すべて毛筆で、宛名も文面も書いていました。
それこそ、1週間くらい時間がかかってましたね。

私なんかはとてもそこまでの手間はかけられないですが、
個と個のつながりを維持するために大切なことはちゃんと
やらないとねと思って年賀状書いています。
(だったら、もっと早く出せよ、という、もう一人の自分の声が
聞こえてくるんですけどね・・・)

投稿者 松尾 順 : 10:24 | コメント (0) | トラックバック

謹賀新年

明けましておめでとうございます。

まずは型どおりの挨拶から始めさせていただきました。

このブログも開始して2ヶ月半ほど。
ほぼ毎日更新しています。

連動するメルマガは、土日祝祭日を除く平日は毎日発行
なんですが、これまで順調に継続することができました。

実は、日刊メルマガは大変なことがわかっていたので、
開始するまでにずいぶん逡巡しました。

でも、すでに多くの方が日刊メルマガを発行されている。
先例はたくさんあるわけです。
やろうと思えばできるはずだということで、とにかく始めてみました。

不思議なことですが、心理学を基本的な切り口とするという
ルールを決めたら、ネタ探しにはあまり困らなくなりました。

ネタ切れを避けるには、「なんでもあり」の方がよさそうに思いますが、
そうではないんですね。
むしろ、明確なコンセプトを持っていた方がネタ探しには困らない。

人は世界を見ているようで実は漠然としか見ていないのです。

コンセプト、すなわち問題意識を持つことで初めて、
世界が見えてくると言えるのではないでしょうか。

では、今年もよろしくお願いします。
メルマガは4日より発行開始です。

投稿者 松尾 順 : 18:47 | コメント (0) | トラックバック