匂いのマーケティング

最近、うちのカミさんから「臭い」と言われてしまいました。

「オヤジ臭」があると言うのです。(i_i)

私は、自分のことをオヤジだとはちっとも思ってませんから、
たとえ身内からでも、こんなことを言われるのはショックです。


でも、そんな私を救ってくれそうなお菓子がありました。

カネボウフーズの機能性菓子、「フワリンカ」です。


このお菓子(ガム、キャンディ)は食べると、
カラダの内側からほのかな香(ローズやシトラスなど)が
漂うらしいんですね。

試してみた方いらっしゃいますか。

デザインとかキャッチコピーを見ると、
女性がメインターゲットのようですが、ぜひ中年男性が
買いやすいデザインも欲しいです。


しかし、最近は「匂い」がブームですね。
アロマテラピーの人気も相変わらず持続しているようですし。

この背景には、
5感を刺激する経験価値マーケティングの効果が強調されている
こともあるんでしょう。


事務用品でも、スティックのり「ピットのり」に香りを
練りこんだ製品が登場しますね。

トンボ鉛筆から、

「ピットハイパワーTフレッシュ(キウイ・ミントの香り)」
「ピットハイパワーTリラックス(クラリセージの香り)」

の2種類。発売日は3月3日です。

これも女性ターゲットです。
会社でスティックのりを使用しているのは、
女性が半数を占めるそうですから、
匂いを付加することによってメインユーザーの女性を
心地よくさせ、リピート率を高めるのが狙いでしょう。


そういえば、JCBの女性専用カード「LINDA」にも
香り付きカード(限定2万枚)が登場してました。

さて、匂いを感じる私たちの鼻、つまり嗅覚器は、
目や耳といった他の感覚器と違う仕組みなんだそうです。

簡単に言うと、嗅覚器だけは脳と直接つながっているんです。

このため、理性的な判断をする前に感情を引き起こす脳
(大脳辺縁系)を刺激して、考えることを後回しにして
ただちに行動をしてしまうようになっているのです。

ヒトを含め、動物は、まず「匂い」によって食物が
食べられるものかどうかを判断してますよね。

もし判断を誤って、毒のある食物を食べてしまったら
命に関わります。だから、嗅覚は、
無意識に行動に影響を与えてしまう仕組みになってるんでしょう。

また、異性を呼び寄せたり、発情を刺激するフェロモンも
主に嗅覚に作用するもので、本能的な働きですね。


性能が優れてるとか、安いとか合理的・理性的な判断じゃなくて、
とにかくこの商品が「好き」と言わせたいマーケターなら、
嗅覚に訴えるのは、かなり有効な手段でしょう。

まもなく、パソコンのUSB対応の香り発生装置も実用化
されるようですし、「匂い」のマーケティングも
ますます盛んになるんじゃないでしょうか。


とりあえず、私は「フワリンカ」を買いに行きます。(笑)

投稿者 松尾 順 : 12:02 | コメント (0) | トラックバック

レモンイエローの消防車

先日お会いした広告会社の方とも意見が一致したことが
あります。

それは、クライアントが以前ほど、マーケティング理論的な話を
ありがたがらなくなってきているということです。

特に大手企業に顕著ですが、

「マーケティングの考え方とかは、こっちもよくわかってるよ」

というわけで、広告会社やコンサルタントが、
偉そうに理論をまくしたててもあまり喜ばれないんですよ。


それよりもクライアントが欲しいのは、

「ビッグアイディア」

「刺さるデザイン」

なんですね。


というわけで、いけてるマーケーターの方々は、
きっと「ビッグアイディア」を生み出す発想力を伸ばしたいと
もろもろ努力されているんじゃないでしょうか。

そんな方にぜひ見ていただきたいと思う本をひとつご紹介。
(すでにご存知の方はすいません)

「スウェーデン式アイディアブック」
(フレドリック・へーレン著、中妻美奈子監訳、鍋野和美訳、
 ダイヤモンド社)


90ページの薄い本ですが、
意外なアイディアの切り口がけっこう発見できますよ。


さてさて、斬新なアイディアを妨げているのは、
多くの場合、「固定観念」や「先入観」といった、
すでにできあがっている思考の枠組みです。

このことを気づかせてくれるエピソードがこの本に書かれています。
次のような話です。

ヨーロッパの救急車や消防車、パトカーなど、緊急出動車は
たいてい青いライトを使っています。それはなぜでしょうか?

第二次世界大戦中、ゲシュタポは連合軍の爆撃機を避けるため、
灯火管制されたドイツの街で目立たないよう、青いライトを
使い始めました。青い光は、暗闇で一番見えにくいからです。

それを、他国の警察機関が真似て採用し、
終戦後もそのまま残っているのだそうです。

つまり、本来目立たせるべき緊急出動車に、
最も目立たない青いライトを使っているのは、
単なる慣習によるものだったんですね。


消防車の色も同じです。なぜ車体は「赤」なのか。
昼間はともかく、夜間は「赤」はあまり目立ちません。

スウェーデンの消防車も赤色をしてました。
でも現在は、スウェーデンのいくつかの街では、
目の覚めるような「レモンイエロー」の消防車が走っている
そうです。

「レモンイエロー」なら、暗闇でもはっきり認識できますから、
赤よりも適した色であることは明らかですね。
でも、赤からレモンイエローに切り替えるまでに
何十年もかかったそうです。

おそらく、日本では切り替える気もないでしょうね。


何事も、

「それってほんとに意味があるのかな?」

といい意味で疑ってかかることが、
思考の枠を外す第一歩になりますよ。

投稿者 松尾 順 : 12:36 | コメント (0) | トラックバック

象を追い払う男

今日は、かなりメンタル寄りの話です。

「悪循環の現象学」(長谷正人著、ハーベスト社)という本の中に
こんな話が紹介されています。

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十秒毎に手をたたくのを繰り返す奇妙な男がいた。
なぜ、そんな変わった事をするのかと尋ねると、
彼は

「象を追い払うためさ」

と応えた。

「象をですか?でも、どこにもいないじゃないですか」

と聞き返すと、すぐさま彼は

「そのとおり。見たとおり僕が追い払っているから、
ここにはいないのさ。でも、象たちがここへ二度と戻らないように
するためには、こうやり続けなくちゃならないわけだ」

と答えた。

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この男のやっていることが変なことはすぐわかりますよね。

ただ、よく考えてみると、

「手をたたくことで象が現れない」

と考えているこの男にとって、

「手をたたく」

という行為にはなんらおかしいところはないのです。


上記の本では、この話を皮切りに

「行為の意図せざる結果」

ということについて議論が展開されています。


象を追い払う男の場合は、
「象がここに現れては困る」という恐怖に取りつかれた。

そこで、この恐怖を消すという「意図」の下に「手をたたく」という「行為」を
行ったのだが、いっこうに恐怖が消えてくれないという「結果」に終わったうえに、
彼はこの行為をやめるわけにはいかなくなった。

やめたとたん、象が出てくると信じているからです。

つまり、「行為の意図せざる結果」が招いた哀れな話なのです。


しかし、私たちは、この男のことを一笑に付すことはできないと
思いませんか。

なぜなら、この男がやっているようなことを普段の生活の中で
知らず知らずにやってしまっているからです。

たとえば、

「私はネクラだ。だから友達から嫌われるのだ」

と思いこんでいる人は、
心の中では友達がほしいという欲求を持っています。

しかし、自分はネクラだという思い込みが
この人を実際にネクラな人間にしてしまっており、
自分の思い込みどおりに、友達を遠ざけてしまういう結果をもたします。
(ちなみに、私の若いころにこんな思い込みを持っていました)

こうした思い込みというのは、端的にいえば「とらわれの心」です。
ものごとをありのままに、あるいは様々な側面から眺めることが
できなくなっている状態です。

人はしばしばさまざまな「とらわれの心」を持ちますよね。
そして、本当は望んでいない不幸な結果を招いていることが
多いのです。

自分が困った状態にある時、

「自分は何かにとらわれすぎてやしないか?」

と自問自答することが必要でしょうね。

投稿者 松尾 順 : 09:32 | コメント (0) | トラックバック

「いい汚れ」と「悪い汚れ」

小中学生の頃に学校で使ってた学習机、
どんなだったか覚えてますか。

思い出すだけでなんとなくなつかしくなりませんか。
天板にいろいろ落書きしたり、彫刻刀で傷をつけたり
しましたよね。


そんな使い古しの学習机の天板から作られた
フォトフレーム(写真立て)があります。

セレクトショップ‘D&Department’の

「re-school PHOTO FRAME」

という商品です。

このフォトフレーム、当然ながら引っかき傷や、
テープをはがした跡、落書きなどがあちこち残っています。

新品なら不良品扱いです。

しかし、廃材として処分される運命だった学習机から再生された
「フォトフレーム」の傷は、価値を下げるどころか、
むしろ新たな価値を付加しています。

それは、自分の子供の頃を思い出させてくれる
ノスタルジーあるれる情緒的な価値であり、また
同じものが2つとないオンリーワンの価値なんですね。


D&Departmentの経営者、ナガオカケンメイ氏は、

“汚れの中には「いい汚れ」と「悪い汚れ」があり、
 いい汚れには「汚れていてありがとう」と
 感謝されるくらいの需要がある”

と言っています。(日経デザイン、March 2006)


これは、新品にわざわざ穴を空けたり、石と一緒に洗濯して
傷をつけるストーンウオッシュ加工のジーンズに価値を
感じる消費者心理が生み出す需要と同じですね。


高齢化が進む日本では、自分自身については

「アンチエイジング」(抗老化)

の商品がもてはやされているのに、

身の回りのものには、むしろ

「エイジング・ビューティ」(経年美)

がありがたがられるのは不思議な感じですね。

なぜなんででしょうか・・・?

投稿者 松尾 順 : 11:30 | コメント (0) | トラックバック

戦略的マーケターに必要な5つの能力

先日の日経産業新聞のコラム「部長講座」で、

「これから求められる戦略的マーケターの条件」

について書かれていました。

シナプス・マーケティング・カレッジの講師の一人として、
若手マーケターの育成に取り組んでいる私には
とても興味深い内容でした。


このコラムによると、通常のマーケターが備えているべき
条件は次の4つです。

---------------------------------------------------

1 マーケティングのスキル、センス
2 クリエイティブ能力
3 マネジメント能力(時間とコストを考えた実現力)
4 価値創出への情熱

----------------------------------------------------

そして、「戦略的マーケター」であるためには、
上記4つに加えて次の5つの能力が求められるそうです。

----------------------------------------------------

1 市場洞察力
  市場の実態や変化の兆しを探り出す能力

2 ユーザー理解力
  ユーザーの行動変化を深く理解する力

3 仮説創造力
  市場と顧客の実態から仮説を生み出す力

4 部門統合力
  事業遂行に必要な経営資源を統合する力

5 事業連結力
  経営陣とともに他事業との相乗効果を生む力

-----------------------------------------------------

どれも、一朝一夕で身につく能力ではないですね。

日々、高い「問題意識」や「当事者意識」を持って行動する
ことを通じて少しずつ培われていくものでしょう。

しかし、4の部門統合力や5の事業連結力は、
マーケターというより、もはや

起業家(アントレプレナー)

の条件です。


社会的に新たな価値を生み出すという点では
マーケターも起業家も同じだからでしょう。

逆に、起業家は優れた戦略的マーケターでなければならない
ということも言えるんじゃないでしょうか。


ちなみに、「マインドリーディング」は、

2 ユーザー理解力

3 仮説創造力

に焦点を当てています。

といいつつ、膨大な知見をなかなか体系化できずにいますが。
あきらめずにがんばります。

投稿者 松尾 順 : 12:12 | コメント (0) | トラックバック

やっぱり閉じたものは開かれたものに負けてしまう?

今頃の時期、皆さんの事務所・家庭にタウンページが
届けられますよね。もう来ましたか。

ところで、

過去1年間で、1回でもタウンページを開いた記憶ありますか?

私はもう何年も開いたことがありませんでした。
この拙文を書くために数年ぶりに開きました。(笑)


手にとると、実にでかくてぶ厚いタウンページ、
私の事務所には「東京23区版」と「豊島・文京区版」の2冊が
配布されますが結構場所取ります。正直邪魔です。

使わないのだから、「いらないよ」と断ろうかとも思うのですが、
「タダ」なのでついつい受け取ってしまいます・・・(⌒o⌒;


もはや、タウンページもその役割を終えつつありますよね。
欲しい商品やサービスを探す媒体としての役割です。

企業名や店名だけで探して、それから詳細情報を問い合わせて
なんて、かったるくてやってられない。

今は、「企業・店名+詳細情報」とセットになっているのが
当たり前。そうしたら、すぐに比較検討に入れますから。


マーケティングコンサルタントの石原明さんは、

「情報は先出し」(しかも、できるだけ詳しく)しないと

顧客は寄ってこないとおっしゃってますが、
紙のタウンページはそれができないわけです。


タウンページは、広告媒体として
まだまだかなりの収益を上げていると思います。

でも、実際の問い合わせにつながる反応率など、
費用対効果はおそらく以前より下がっているだろうし、
だんだんと広告を取りづらくなっているに違いありません。

そう遠くない将来、紙のタウンページが廃止される日が
やってくるんでしょうね。


もちろん、紙のタウンページがどのような運命を辿るのか、
とっくの昔にわかっていたはずのNTTさんは、
インターネット上のサービス、

「iタウンページ」
に力をいれています。


でも、なぜか存在感が薄い・・・

「iタウンページ」利用してみると、飲食店情報などは
かなり充実しています。お得な割引クーポンもついている。

しかし、おそらく「ぐるなび」には負けていると思います。
情報量ではそれほど大差ないと思いますが。


「iタウンページ」がネット上での存在感を増せない理由、
それは、検索エンジンに引っかからないからでしょう。

「iタウンページ」は、完全に閉じたシステムのようです。
GoogleやYahooの情報収集ロボットの侵入を許さない。

したがって、検索結果に「iタウンページ」の情報が
表示されることはありません。


昨日も書きましたが、ユーザーとしては、

「検索されないものは、存在しない」

と考える傾向が高まっているわけですから、

「iタウンページ」の存在はすっかり忘れ、
検索結果の上位に表示される「ぐるなび」や
「ホットペッパー」のサイトを利用してしまうわけです。


NTTさんとしては、タウンページの情報は大切な財産であるから、
しっかり鍵を掛けて外部にはもらさないようにしようと
お考えのようですが、

オンラインでは、

「クローズド」(閉じたもの)より「オープン」(開かれたもの)

が優勢です。

そのベースにあるのは「協調+競争」、すなわち「協争」の原理。


iタウンページも、
思考のパラダイムを変えた方がいいんじゃないでしょうか。

投稿者 松尾 順 : 10:53 | コメント (0) | トラックバック

検索結果集合

私が参加している「おじさんバンド」で、
この春、音楽合宿をやることが決まりました。

旅行会社に勤めていた(といっても20年近く前のこと)から
というわけではありませんが、
私が合宿先を探す役目をおおせつかりました。

メンバーはみんな働いていますし、ドラマーは関西在住です。
そこで、集まりやすさなどを考慮して、
場所は「小田原周辺」にしようということになりました。


こういう時はネット検索が便利ですよね。
GoogleやYahooを利用して早速、小田原、音楽、合宿、練習
などいくつかのキーワードで探してみたのですが、
なかなか適当な宿がありません。

実は、ネット系の仕事をやっていながら、検索技術はあまり
高くないんですよね・・・お恥ずかしい。


しかし、このままでは合宿ができないぞと必死で探し回り、
ようやく見つけました。

小田原から近く、温泉もある宿。
私たちのバンドの音楽合宿にぴったりの条件です。


この宿がちゃんとSEO(サーチエンジン対策)を
やってくれていればすぐに探し出せたのにと、
ちょっと逆恨み。(⌒o⌒;

もしこの宿が見つからなかったら、
合宿取り止めか、妥協して不便な宿に決めていたところでした。

ネット検索以外にも探す方法はあったのかも知れませんが、
そこまでやる気力は残ってません。

こんな気持ちは、皆さん同じだと思います。

要するに、

「ネットで検索されない情報は、存在しない」

とみなすのが今の消費者でしょう。

だからこそ

「SEO対策」

がますます重要性を増してるわけですが。


さて、消費者が、なんらかの商品購入に当たって
購入対象と考える商品の集まりのことを

「想起集合」

と呼びますよね。

この「想起集合」の中から、
さらに購入の条件(予算とか、品質基準など)で
絞り込まれた商品の集まりが

「考慮集合」

です。

そして、最終的に購入される商品は「考慮集合」の中から
選ばれることになります。

したがって、売り手としては、自社商品がまず「想起集合」
に入ることが重要だと言われてきました。

ここで「想起集合」に入るのは、消費者が
思い出す、覚えている商品・ブランド名です。


ただ、ネットの登場によって、「想起集合」という
考え方があまり通用しなくなってきたように思います。

コンピュータやインターネットは、
人間の脳を補完してくれる強力な外部記憶装置です。
しかも、高い検索機能を持っています。

したがって、様々な情報を自分の脳で記憶する必要が
薄れてきました。なんたって、検索しさえすれば、
膨大な情報が端末からいくらでも出てきますから。


ですから、何か買おうと思った時に、

「どんな商品があったけな?」

とか考える前に、いきなり検索ボタンを叩く。

購入対象となるのは、検索結果のせいぜい1-2ページに
表示された商品だけでしょう。

つまり、ネット社会において、
消費者の購入対象となる商品の集まりは、
もはや「想起集合」ではなくて、

「検索結果集合」

になってしまっています。

この消費者行動の変化は、今後さらに加速するでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 11:12 | コメント (6) | トラックバック

ホテル・ルワンダと総表現社会の三層構造

水曜日(15日)に有楽町シネカノンで話題の映画、

「ホテル・ルワンダ」

を観てきました。

午後9時過ぎのナイトショー上映でしたが、
客席は7分の入りといったところ。

「ホテル・ルワンダ」は、
94年に同国で起きた民族虐殺が背景です。

実話に基づいています。
映画の舞台となったホテルの支配人は、
虐殺から逃れてきた民族をかくまい、彼らの命を救います。

演出は抑え気味です。派手な流血もありません。
主人公の人物像についても、いたずらにヒーロー的な描き方を
していません。

逆に、だからこそ心にじわじわと迫ってくるものがあります。
なかなかの名画です。一見の価値があります。


さてこの映画、海外では評価が高く、
アカデミー賞にもノミネートされたほどでした。

しかし、そのおかげで配給権が高騰したこと、
また「民族虐殺」という背景の重さが女性には受けないだろう
という判断で、当初、日本では公開が見送られていたんですね。


しかし、日本での上映が実現されないことを残念に思った
26歳の青年、ミズキユウタさんは、2005年6月8日、
mixi内で「ルワンダ・コミュニティ」を立ち上げ、
日本上映を働きかける活動を開始します。

さらに、『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会」
ホームページを6月24日に開設、署名運動を開始しました。

署名運動では、全国から4595名の署名が集まりました。
この数自体は決して多いものではないですね。


しかし、署名運動以外にも「ほぼ日刊イトイ新聞」で
紹介されるなど話題が広がったおかげで、
mixiに「ルワンダ・コミュニティ」を立ち上げてから
わずか4ヵ月後の10月頭には、日本公開が決定しました。

配給を決めたメディアスーツの村田敦子取締役は、

“・・・その(署名運動の)数字で動いたわけではない。
 テーマや主演俳優で話題になる要素は少ないのに、
 mixiを起点にこれだけ話題になっていることで、
 見過ごしていた作品の魅力に気づかされた”

と日経ビジネス(2006.02.20号)の記事で述べています。


こうして、ホテル・ルワンダは今年1月14日、
渋谷のミニシアターでの単館での上映が開始されたのですが、
当初から立ち見が出るほどの人気で上映館が増加、
2月20日時点で全国50館に拡大する見込みだそうです。


たった一人の無名の青年の思いが、
ネットを活用することで大きく増幅され、
莫大なお金の動く映画配給に影響を与えたのはすごいですね。

そして、おそらく公開後のヒットには、ネットを通じた口コミが
大きな効果を挙げているに違いありません。


今までは、マスメディアに登場するごく一握りの人々が
発信した情報が、その情報の受け手たる「大衆」を動かし、
大きなムーブメントに仕立て上げてきました。

しかし、だれもがその気になれば自分の意見・考えを公開できる
ネット社会(ブログ社会というべきでしょうか)では、
マスコミには登場しないものの、
ネット上で積極的に発言する人々が急激に増殖しています。


ITコンサルタントの梅田望夫氏は、近著「ウェブ進化論」
おいて、誰もが表現できるようになった現代社会を

「総表現社会」

と規定します。

そして、これまでマスメディアに登場するような、
表現者として認められた少数の「エリート層」と、彼らに
扇動される側の「大衆」との2層の間に

「総表現社会参加者」

という層をイメージすべきだと書いています。

つまり、

総表現社会は、3層(エリート、総表現社会参加者、大衆)構造
として考えるべきだと主張しているのです。


主としてブログを駆使して情報発信を行う「総表現社会参加者」
の一人ひとりは、マスメディアを駆使できるエリート層ほどの
情報伝達力を持ちえませんが、SNSやトラックバックなどで
つながるネットワークを通じて、マスメディアと同等の、
あるいはそれ以上のパワーを持ち始めています。


ホテル・ルワンダの公開に至る経緯、また公開後のヒットは、
「総表現社会参加者」の台頭を裏付けていると言えるのでは
ないでしょうか。


*『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会は、
 現在、『ホテル・ルワンダ』日本公開を応援する会に
 改称されています。

投稿者 松尾 順 : 12:48 | コメント (0) | トラックバック

協争するバー

東横線のある駅の近くに友人が引っ越したそうです。
(あえて駅名は伏せます・・・)

酒好きの友人は、なにはともあれ地元のバーを開拓しようと
出かけました。酒なくて何が人生楽しかろうでしょう。


さて、ここでクイズです。


最初に行ったバーの壁には、あるものが貼ってありました。
それは何でしょう?


クイズなんかするなという声が聞こえてきましたので
すぐに答えを書いてしまうと、「地元のバーマップ」です。

その周辺のバーの店名や場所が記載された地図です。
これを見ると、特に大きい駅でもないのに、
かなりの数のバーが点在していることがわかったそうです。

そのバーマップを見て他の店に行くとそちらにも、
バーマップが貼ってあります。

本来地元客を取り合うライバル同士のバーが、
お互いの立地情報を教えあっているんですね。


繁華街じゃない地元のバーが成功するためには、
常連さんをどれだけ獲得できるかが鍵ですよね。

ただ、お客さんは、2軒3軒とハシゴしたくなる時もあるし、
たまには浮気もしたい。
最後は正妻に戻ってくるにしても、愛人の2人や3人は
囲っておきたい。

下品な喩えになりましたが、
こうした消費者のニーズを読んで、どうせバーに行くのなら、
渋谷や自由が丘とかに行かず、地元で回遊してくださいという
メッセージが「バーマップ」でしょう。

要するに、お店単位ではなく、
エリア単位で顧客を囲い込もうということ。


この地域のバーの経営者たちは、競争関係にありながら、
エリアに対する集客においては協調しあっています。

こうした戦略を「協争」(Coopetition)と呼びますね。

‘Cooporation(協調)’

‘Competition(競争)’

の合成語です。


協争戦略は、様々な業種・業界で行われていますが、
そもそもライバル同士の間では「協力」のベースとなる信頼関係が
ないので交渉には苦労します。

このため、協争戦略を推進する強力なリーダーが必要なんですね。
上記「バーマップ」の作成の影にも、熱い情熱を持ったリーダーが
いるんじゃないでしょうか。

投稿者 松尾 順 : 12:04 | コメント (0) | トラックバック

成田空港泊

今年の1月、関東に大雪が降った日。
1月21日(土)でしたね。

忘れもしません、この日は私の誕生日です。
本郷の事務所で仕事をしていた私は、
雪に包囲された自宅に帰れなくなってしまったのでした。
(私のことはどうでもいいですね。)


さて同日、私が長年レッスンを受けているコンガの先生は、
キューバに出発するため成田に向かいました。

オルケスタ・デラ・ルスのメンバーで、超一流のパーカッション
奏者である先生は、毎年1月にサルサの本場でラテンを堪能する
「キューバツアー」に引率者として同行しています。


先生の話によると、
午後3時ごろの出発でしたのでお昼には成田に到着。
約20名のツアー参加者とともにチェックイン、
出国手続きも済ませて出発を待ったそうです。

ところがやはり大雪のため出発が遅れ、
6時間近く待たされた挙句、「欠航」が決定しました。

搭乗ゲートにいて後は出発するばかりだったのでがっかりです。
いったん出国したことになってますから、再入国手続きを
しなきゃいけない。預けた荷物も受け取らなきゃいけない。
チケットのキャンセル手続きもしなきゃいけない。

何十便も同時に欠航になってますから、どの手続きも長い行列。
結局すべてが終わった時には夜中で、自宅には帰れない時間に
なってました。

ホテルに空きはなし。タクシーも2時間半待ちだったそうです。
結局、成田空港泊。正確に言うと成田空港ロビーの床でした。


先生の話を聞いて驚いたのは、利用する航空会社によって、
顧客対応が全然違っていたことです。

例えば、JAL便利用の方に対しては、
立派な寝袋が貸し出されたそうです。

ところが、キューバツアーの利用便は
外国の航空会社だったこともあるのでしょう、何の準備もない。
そこで、提携している日本の航空会社が毛布を用意したそうです。
しかし、渡されたものは、機内で貸し出すあの薄いやつが
一人1枚。硬い床の上で寝るには全然間に合いませんよね。

空港にいた航空会社の担当者の対応も最悪で、
乗客の人たちは相当いらだっていたそうです。
「あの航空会社には二度と乗るもんか」と思った人を
多数生み出したんじゃないでしょうか。


非常の時に人間の本性がわかるとよく言いますが、
会社もやっぱり同じですね。

悪天候などの不可抗力による欠航に対して、
本来、航空会社はなんら責任がありません。

となると、あとは、顧客に対する基本姿勢や経営理念の
問題になります。非常事態にこそ、どのような顧客対応が
ふさわしいのか、万全の準備をしておく必要があるんでしょうね。


ところで、当日は約1万人の旅行客が
成田空港泊を余儀なくされたそうです。みんなお腹が空きました。
ところが、空港内のレストランは夜には閉まっており、
何か食べようと思ったら、営業しているのは「マクドナルド」
くらいだったそうです。

ただ、マクドナルドさんはその夜、
ハンバーガー1個とかの単品売りを断り、バリューセットなどの
「セット販売」しか受け付けなくなったそうです。

不可解ですね。

セット販売しかしないことについて
何か正当な理由はあったんでしょうか。

もしあったのなら、それをちゃんと説明すべきでしたね。

人の弱みに付け込んで、顧客単価を引き上げることが
狙いだったとするなら、あまりに強欲ですね。

どうなんでしょう、マクドナルドさん?

投稿者 松尾 順 : 11:53 | コメント (0) | トラックバック

「星のや」に行ってみたい


昨年7月に開業したリゾート施設、「星のや 軽井沢」は
ご存知ですか。

老舗温泉ホテルの「星野温泉」の本館と周辺施設を
全面改装したものです。
開業以来、高い稼働率を維持しており、閑散期の冬期においても
週末はいつも満室という人気を博しています。

経営は、「アルファリゾート・トマム」など
破綻したリゾート施設の再生にも取り組む「星野リゾート」。
同社社長は、先日NHKの‘プロフェショナル 仕事の流儀’
に出演した星野佳路氏です。


実は、「星のや」開業直前の昨年6月、星野社長のご講演を聞く
機会がありました。

星野社長のお話は極めて論理的で明快。
なぜなら、ホテル、リゾート運営において
調査やデータを重視されているからです。

「星のや」の場合も、首都圏で1万人規模の、
旅行に対するアンケート調査を実施したそうです。

その調査結果から明らかになったのは、
既存の温泉旅館の自由度の低いサービスに対する
旅行者の不満の数々でした。

・歓迎されない遅いチェック・イン
・1泊2食が前提で、選択の余地のない夕食
・早々と布団をたたみに現れ、朝食にせきたてられる余裕の
 もてない朝。

などなど、皆さんも実感ありますよね。


そこで、星野社長はこうした不満をすべて解消するサービスを
目指しました。

「星のや」は24時間チェックイン可能。
ですから、例えば金曜日の夜、仕事後に最終の新幹線で
軽井沢入りできます。

夕食がついていないから、軽井沢の様々なレストランから
自由に選ぶことができる。

朝食の時間も自由。いくらでも朝寝坊できます。


なんだか、「星のや」を売り込んでいるうみたいに
なってしまいましたが、要するに、従来型温泉旅館の
固定観念(ステレオタイプ)を打ち破ったわけです。

伝統のある業界や業種・業態ほど、過去から繰り返されてきた
仕組みや行動に縛られていて、顧客不在となりそっぽを
向かれているケースが多いようです。

今の真実・事実を見るのではなく、過去の伝統やしきたり
にしか目が向いていない。

きちんと調査を行い、データを集めることで、
客観的な今の真実・事実を直視し、変革を起こすきっかけと
することができる。

星野社長はそのことがわかっているのでしょう。


「調査は役に立たない」と軽々しくおっしゃる方がいます。

しかし、

調査が役に立たないのではなく、
調査を役立てられない「あなた」が役に立たないのでは?

という批判を受ける覚悟が必要でしょう。(^-^)

などと偉そうなこといいつつ、

実は、まだ私自身は「星のや」に行ったことがありません。
今年はぜひ行きたいと思っております。


余談ながら、星野社長の奥さんは元調査会社の方で、
現在は大手自動車メーカーの調査部門の責任者です。
身近な方がリサーチのプロというのは、星野社長にとっても
大変心強いでしょうね。


なお、星野社長の昨年の講演の様子は、
「夕学五十講」の左メニュー「受講者レポート」の中にありますよ。

投稿者 松尾 順 : 12:46 | コメント (2) | トラックバック

ケガの功名広告

「ナショナルでは古い年式のFF式石油暖房機を探しています。
万一の場合、死亡事故に至る恐れがあります。」

年末に放映されたコマーシャル、おぼえてらっしゃいますよね。

動きのない画面、感情を抑えた女性のナレーターの声が、
大変に‘印象的’でした。


普通のコマーシャルでは絶対に使わない「死亡事故」という言葉。
ちょっとおどろおどろしいナレーションは、
意図せざるものとはいえ、「怖い」という声も上がっていました。

他のコマーシャルとあまりにも異質な存在なので、
思わず、耳をそばだててしまいましたよね。


この告知広告、合計で1万6500回以上繰り返し流されました。
ひたすら低姿勢にお詫びと協力をお願いする姿勢を伝えることが
狙いです。

FF式石油暖房機による死亡事件発生に対する初動の対応がまずく、
松下電器さんに対する批判が高まったための緊急措置でした。


ところが、CM総合研究所の調査によると、
昨年12月では、上記告知広告の到達度(どれだけ見られたか)は
1位、好感度で2位という結果。

消費者の声としては「企業姿勢にウソがない」というコメントが
圧倒的に多かったそうです。

お詫びと協力を依頼する本来はマイナスの広告が、
企業ブランドイメージの中核をなす「信頼性」や「誠実さ」を
高めることに寄与したわけです。


おかげで、松下さんの2005年10~12月の業績は
増収増益。営業利益にいたっては、前年同期比47%の伸びです。

このところ、プラズマテレビなどの競争力のある商品が
相次いで発売されていたことも業績好調の背景にあるでしょう。

しかし、個別製品のプロモーションを一切ストップ、
事故対応の告知コマーシャルに切り替えるいさぎよい姿勢が、
消費者の支持を得ることにつながりました。

まさに、「ケガの功名」ですね。


昔、ジョンソン&ジョンソンが、
頭痛薬の「タイレノール」への毒物混入事件への対応として、
一斉に在庫を回収したというケースがあります。
かかった費用は1億ドルと言われています。

これは、企業の真摯な姿勢を見せることに成功した
企業危機管理の典型的事例としてよく取り上げられますが、
今回の松下さんの対応も、今後、
成功事例として語り継がれていくことになるでしょうね。


*日経ビジネス(2006年2月13日号)の記事を
 参考にしました。

投稿者 松尾 順 : 05:31 | コメント (3) | トラックバック

差別化の決め手は・・・

作家、冷泉彰彦氏は、JMM(Japan Mail Media)の記事の中で、
GM、フォードの業績不振に触れ、

“ついにクルマ作り」は
 アメリカ社会の不得意科目になってしまいました。”

と述べています。

米自動車メーカーは、米国アメリカで負けてしまったのです。
今後は、トヨタが米国自動車産業の最大の雇用主になると
言われています。


冷泉氏は、米自動車メーカー、いわゆるビッグスリーの
衰退の理由について次のように説明します。

“恐らく、アメリカ文化の中に「目に見えるもの」、
 「感覚に訴えるもの」を軽視する特質があり、
 それがこの自動車の開発というビジネスを停滞させている
 のではないでしょうか。”

製品の持つ機能価値だけでなく、情緒価値が重視される今、
逆に見れば、繊細な感受性を尊ぶ文化を持つ日本が
モノづくりにおける強みを発揮しているのです。


車だけではありません・・・

世界中で日本食のブームが起きています。
日本食に感じられる、きめ細やかな心配りや微妙な味が
喜ばれているのです。


文化は、数千年の歴史の中で、各地域、民族で引き継がれてきた
もの。表面的には真似することはできますが、本質的な部分で
まったく同じことはできません。

とすれば、これからのモノづくりにおいて差別化の決め手は
「文化」です。


グローバリゼーションの浸透で機能面での標準化は進みました。
しかし、T型モデルのような画一的な製品を人は求めていません。
感性に響くプラスアルファが欲しい。

そのプラスアルファを生み出すものは人の感性であり、
人の感性を育むのはその人が育った文化です。


これまで、マーケティングの文脈で「文化」が語られることは
ほとんどありませんでしたが、これからは要注目ですよ。

投稿者 松尾 順 : 10:58 | コメント (0) | トラックバック

逆ブランド力

実は私はちょっとだけ旅行会社にいたんですが・・・
添乗員でハワイ、西海岸、中国などに行きました。

(以下日経MJ、2006.02.10より)

それはさておき、旅行業界最大手のJTBさんは、
学生向け海外パック旅行商品の販売は弱かったんです。

それは、他社と比較して価格が高かったから。
やっぱ、学生の場合、安さ最優先ですから、
格安ツアーに目が行きます。

だからといって、

学生があまり必要としないサービスをなくしたり、
ホテルのグレードを下げたりしてコストを切りつめ、
価格を安くすれば解決、

ではないんですよね。


ナンバーワンのブランド力をもつ「JTB」という記号は、
学生にとっては「高い」というネガティブイメージを
連想させるものになっているという点が問題だったわけです。

これはJTBの担当者に言わせると、

「学生にはJTBが『逆ブランド力』になっていた」
(JTBワールドバケーションズ、常盤省吾企画推進部長)

ということだったわけです。


そこで、新たに打ち出した商品ブランドが「ガクタビ」では、

「価格の安さをどう分かりやすく伝えるか」

というコミュニケーションを工夫しました。

パンフレットには、すべて「学生応援価格」と記載。
紙面もあえて、カラーではなくモノクロにして安っぽく。

紙面づくりも学生の感覚をまだ失っていない入社まもない
社員を選抜してあたらせました。

結果、集客人員は目標の1万四千人を
1割以上上回る見込みです。


この記事を見て再認識したのは、ブランド力というのは
プラスにもマイナスにも働くという事実です。

あるブランドから連想されるイメージ(活動的、先進的・・・)
というのはある人によっては好ましいものですが、
別の人にとっては好ましくないものになる。

とすると、ブランド構築もターゲット顧客明確化しておくことが
必要だということです。

投稿者 松尾 順 : 11:17 | コメント (0) | トラックバック

スポーツ縁

トリノ五輪がいよいよ始まりますね。

リアルタイムで見ようと思ったら寝不足必至ですから、
ほどほどにしとかないといけません。

特に、私のように、

[私のボスはわたしです]

の労働環境だと、仕事そっちのけになってしまう
可能性ありますし。(⌒o⌒;


さて、オリンピックに限らず、「スポーツ」は、
これから最も有望なエンタテイメントですよね。

「最も有望なエンタテイメント」というのは、
消費者視点で言い換えると、

「消費者が一番求める商品(サービス)」

だということです。

なぜなら、人と人のつながりを回復させてくれる力が
あるから。


以前は、同じ地域、場所に住んでいるという「地縁」や、
親兄弟親戚といった、「血縁」というもので、
お互いの「つながり」を感じることができました。

また、地縁の場合は、お祭りのような行事、
血縁の場合は、お盆やお正月に親戚みんなが集まる
といった機会を通じて、
「つながり」を再確認しあうことができましたよね。

今でも地方では、地縁、血縁が強いところ
がたくさん残っていると思います。

しかし、都市を中心に人はどんどん孤立化しつつあります。

いちおう住んでいる地域で町内会は作られているけれど、
実際にはほとんど顔を合わせることもない。
祭りも開かれることが減っています。

家族内でも、それぞれが個室を持ち、ばらばらに行動するのが
当たり前。食事時間もみんな違う。無理に時間を合わせない。

携帯電話という個人メディアの普及によって、
隣の部屋の親兄弟より、遠方の友人との間の方が、
よほどたくさん言葉を交わしている。

こんな風に、単に同じ地域、家にいるだけで、
実際には、「心はつながっていない」状態です。

でも、みんなそれでいいとは全然思っていない。

なんたって、人間の三大本能は、食欲、性欲に加えて、
「集団欲」です。

やはり、みんな群れていたいんです。
できればバーチャルじゃなくてリアルに。
お互いに触れ合える関係の人たちと・・・


というわけで、期待の星が「スポーツ」となります。
特に地域に根ざしたスポーツ、典型的には「Jリーグ」です。

先日、アルビレックス新潟の代表、池田弘氏の話を聞く機会が
ありましたが、アルビレックスのおかげで多くの新潟の家族が
救われています。

家族共通の話題があるので家族団らんが生まれる。

家族みんなで新潟スタジアムに行き、アルビレックスの活躍で
父親と高校生の娘が抱き合って喜ぶ。

こんな信じられない、私のように長女に無視されて悲しい思いを
している者には、なんともうらやましい現象をあちこちで
見ることができるそうです。

新潟スタジアムには、毎試合4万人以上が来場し、
超満員の観衆と選手たちがみなファミリーだという一体感に
包まれる。

地域人々のつながりも確実に強まっています。


「地縁」「血縁」に変わって、これから人と人とつながり
を回復させてくれるのは「スポーツ縁」なんですね。

投稿者 松尾 順 : 12:11 | コメント (0) | トラックバック

詐欺免疫の作り方

先日、フィッシング詐欺で逮捕された男性の報道がありました。
フィッシング詐欺が摘発されたのは初めてだったんですね。

「フィッシング」とは、メールを送り付け、
偽造したホームページ(HP)に誘導、ID、パスワードなどの
個人情報を盗み取ることです。

逮捕された男性は、ネットオークションの参加者にヤフーを装って
メールを送り、ヤフーのHPに似せた偽HPで
ヤフーオークションのID、パスワードを入力させて
不正入手したようです。


興味深いのは、この男性は、偽メールを約5500件送信し、
結果として約500件のID、パスワードを入手していた点です。

これは、いわゆる「回答率」では9%で、ダイレクトマーケター
にとっては夢のような高いレスポンスなんです!

フィッシングではありませんが、いわゆる典型的なスパムメールで、
アダルトサイトへの入会を促すやつがありますね。
どこかで読んだ話では、あれも10%近くの反応があったと思います。

それで、1スパム(数万~数十万通の迷惑メール一斉送信)
当りの売上は、500万円とかあるらしいです。

メールを大量に送るだけ、楽してこれだけ儲かるのなら、
迷惑メールが一向に減らないはずですよね。


さて、オンラインでも、次々と詐欺の新手が登場するとはいえ、
そうした情報がネットによって伝達されやすくなっています。

それにも関わらず、フィッシング詐欺で言えば9%もの人が
だまされてしまうのは驚きです。

「誰かがこんな風にだまされた」とかという話が流れていても、
普段は他人事のように聞き流してしまって、腑に落ちていない。

つまり、詐欺に対する免疫ができていないってことでしょう。

ちなみに、私は若くてもっとウブだったころに、
いろいろとリアルな場面でだまされました。(⌒o⌒;
幸い、被害は小額でした・・・

ただ、おかげで強力な「詐欺免疫」ができていて、
今はまずだまされることがありません。


皆さんの中にも、オンラインの巧妙な詐欺でうっかり
騙されてしまったという方がいらっしゃるかもしれませんが、
被害がたいしたことがなかったのなら、
いい詐欺免疫ができたとお考えになったらいかがでしょうか。


ただ、被害にあわないで免疫を作る方法はないのでしょうか。
つまり、オンライン、オフラインに関わらず、
相手の言うことを簡単に信じてしまわない方法ということです。

もちろん、「人を見たら泥棒と思え」じゃないですよ。(笑)


こうしたことを研究した心理学者のMcGuireさんの考えを
ご紹介すると、


・日ごろから自分の信念や態度を自明のものとせず、
 一度疑問を持ってみる・・・端的には「常識を疑ってみる」

・人の話に対して、一度疑問を投げかけたり他者と意見を
 交換して、多様な考え方があることを理解しておく。


のが免疫づくりになるのだそうです。

大事なのは、相手の言うことに疑問を持つだけじゃなくて、
自分自身が今持っている考えや信念、価値観など客観的に
考えてみることですね。

盲目的に作り上げられた自分の信念や態度は、
相手が巧妙な手口を使ってくると簡単に覆されてしまうからです。

投稿者 松尾 順 : 13:15 | コメント (0) | トラックバック

一般人の感覚

東横インの西田社長、
今週月曜日の記者会見では、先日の軽率な態度から一転して、
しおらしい態度に終始しました。

今頃になって、ようやく広報コンサルタントの指導でも
受けたんでしょうか。(笑)

ただ、最初の態度があれでは、
今回のは単なるポーズにすぎないとしか思えない。
「初動」を間違うと、
取り返しがつかないこともあるんですね。


西田氏は、「内観」を実践していたようです。

「内観」は、素直な心で自らと対話し、
自分を客観的に見れるようになることが狙いです。

ところが、西田氏自身によると、

「自分は上等な人間だ」

と自分を自分で祭り上げていたようです。

これは「内観」ではありません。
ワンマン社長の単なる思い上がりです。

なぜ、ここまで自分を見失うことになるのか、
どうしても理解できないですよね。


ところで、再建の神様で、やはりワンマン社長の日本電産、
永守重信氏は、ライブドア事件に関連して、
こんなコメントをしています。

「一般の人の感覚というのは経営の上で参考になる。
 当社も過去に様々な失敗をしてきたが、振り返ると
 常識に立って判断していれば避けられた問題も多い。
 妻や妻の友人の意見にはっとさせられることも多い」

このコメントを見る限り、永守社長もかなり一般人の
感覚からずれてしまっているようです。


どうやら、

「自分は一般人とは違う、特別な人間だ」

という思い込みが感覚を鈍らせてしまうのでしょう。

そして、こうした思い込みを生み出しているのは
おそらく、これまでの成功体験ということでしょうね。


この一般人の感覚を失ってしまうという傾向は、
個人だけでなく、成功した企業全体が陥りがちな罠でもあります。

ただ、この傾向を避けようと思っても、
当事者にはなかなか難しいことです。

平凡ながら最もよい対応策は、
苦言を呈してくれるよき友、妻(恐妻?)、夫を
持つことでしょうか。(^-^)

投稿者 松尾 順 : 09:37 | コメント (0) | トラックバック

持ち上げといて落とさないで

昨年のことです。
某専門誌主催のセミナーに申し込みました。

すると、数日後に

「今回のセミナー参加料は結構(不要)です」

とのメールが送られてきました。

なぜ、私だけに・・・??

ちょっといぶかしく思いましたが、
長年読んでる愛読者だからかな、とか自分に都合のいい解釈をして
「ラッキー!」と思いながら、そのまま当日会場に行きました。

ところが受付では、何事もなかったかのように、
参加料を払わされました。

確認すると、メールの送信先ミス。
別の方に送るつもりのメールを私に送ってしまっていたようです。

参加費は3千円程度でしたから、まあいいかと思ってます。
でも、持ち上げといてがっかりさせられた時の気持ちは
いまだに忘れられません。
(先方からは、後日お詫び状と共にQUOカードを送ってきました)


さて、同じようなミスを大規模にやってしまいました。

日本航空さんです。

先週4日、関西地区限定で実施していたプレゼントキャンペーンで、
応募者全員を含む22,673名に「当選メール」
を送信してしまいました。

本来は補欠当選者1名に送るはずだったメールでした。
担当者の操作ミスです。

当選賞品は何かは公表されてませんが、
高級宿泊券か有名レストランの食事券のようです。
最低でも1万円以上の価値があるものでしょう。

JALさんはすぐに間違いに気づいて、
すぐに訂正メール、お詫びメールを送ったそうですが、
応募者は全員、JAL便に2回以上搭乗したお客さんです。

自分がJALのユーザーであるという意識があるだけに、
当選メールを受け取って大喜びした後で、

「当選は間違いでした」

というメールを受け取った時の落胆と怒りは
私の小さなトラブルの何倍も大きいでしょうね。

大きく持ち上げられて、がんと落とされた感じ。

しかし、実損をしたわけではないので、
一部の過激な人を除いては、怒りをまともにJALさんに
ぶつけるのはなかなかできないと思います。

結局、不愉快な思いがJALの名前とともに刻み込まれて
しまうことになるのです。

その不愉快な感情は、今後航空便の予約をするたびに
思い出され、おそらくJAL便を意識的、あるいは無意識的
に避けることにつながることになるでしょうね。


そんなブランドイメージの危機的な事態を改善するために
JALさんが、今後、どのような顧客フォローをされるのか
とても興味があります。

JALさんのプレスリリースを見ると、
お詫びの文章だけで、詳細がまったく記述されていません。
事件をいたずらに大きくしたくないという気持ちが
感じられますです・・・。


*日本航空グループ関西地区限定キャンペーンにおける
 当選メールの誤送信につきまして

http://www.jal.co.jp/other/info2006_0204.html


ビジネス・生活を便利にさせてくれるITやインターネットは、
一歩使い方を誤ると、大変な損害につながるんですよね。

ホント、注意しないと!

投稿者 松尾 順 : 11:29 | コメント (0) | トラックバック

答えは、奥深いところに隠れている

先週土曜日は、‘シナプス・マーケティング・カレッジ’で
開講している「マーケティング・リサーチ・エッセンス」の
講師を務めさせていただきました。

この講義は全3回(週1回x3)です。先週は2回目の講義、
「調査企画の立て方とアンケート調査票の作成」がテーマでした。

受講されているのは、一般企業のマーケティング部門などに
在籍されている方々です。

アンケート調査票作成では、質問の言い回しのコツなど、
一昔前なら、調査専門会社の社員相手じゃないと
話さなかったような深いところまで説明しています。

こんな専門的な講義に一般企業の方が集まるようになったのも、
インターネット調査が普及して、安価に手軽にリサーチが
できるようになったからでしょうね。


調査も本格的に実施しようとすると相当な予算が必要です。

しかし、これまで経験やカンだけでやってきたため、
調査に基づいてマーケティングの意思決定をすることに
慣れていない、したがって、
なかなか調査の意義が認められなくて、
予算がつかないという会社が結構多いものです。

ところが、インターネット調査なら、
社内である程度、調査企画や設計ができれば、
実質的な外注費用は数万円~数十万円で済むこともあります。

「その程度の予算で済むのならやってみようか」

というわけで、今は自社内で調査に取り組む会社の裾野が
相当広がっているんじゃないでしょうか。


ただ、私がひとつ危惧していることがあります。

それは、簡単に聞けるようになったからというだけで、
調査対象者に直接「答え」を求めてしまう安易な姿勢も
広まってしまうんじゃないかということです。


「あなたはどんな商品がほしいですか?」

さすがにこんな質問をすることはないでしょうけど、

顧客ニーズは直接聞けばいい、聞けば「答え」を教えてくれる

とは考えるべきではないということです。

そもそもそんなに簡単に聞ける答えなら、
わざわざ聞かなくても、自分でちょっと考えれば
思いつく程度のものでしょう。

顧客は、こんな商品・サービスがあったらいいな、
なんて、普段は考えていません。

ですから、調査で聞くべきことは、ありのままの行動や、
その製品を使っている時の状況や気持ちとかを中心に聞いていく。

そして、マーケターがやるべきことは、
回答者の言葉の表面ではなく、
奥のほうにある深い意味を読み取ることです。


元リクルートの創刊男、くらたまなぶさんは、
新しい情報誌のアイディアを得るためのニーズ調査として、
一対一の対面インタビューを得意としていました。

くらたさんによると、最初はなかなか相手の口から
有効な答えが返ってこないものだそうです。

たとえば、

「旅行について不便に感じていることって
 ありますか?」

とか聞いても、

「そうですね・・・特にはないですね。。。」

というのが当初の典型的な反応です。

ですから、時間をかけて相手と向き合い、
すぐに聞き出そうとしない。
焦ってしまうと、相手のど元まで出掛かっていたものが
引っ込んでしまうのだそうです。

しかし、焦らずにじっくり待っていると、
だんだんと奥深いところに隠れていた相手の本音や答え
らしきものが、表面に浮かびあがってくる。

くらたさんはそれを的確に読み取って、
今もリクルートの収益を支えている、
数々のドル箱情報誌を創刊することができたのです。


調査が手頃にやれるようになったことは
とてもすばらしいことなのですが、
どんな調査手法を採用するにしろ、

「顧客のニーズ、本当の答えは、奥深いところに隠れていて
 なかなか言葉としては浮かんでこないものだ」

ということを肝に銘じて、調査はやるべきです。

投稿者 松尾 順 : 13:49 | コメント (0) | トラックバック

「価値ハンター」に照準を定めよ

高い品質を求めるのであれば、相応の金額を払う必要がある。
逆に安さを求めるのであれば、品質には妥協しなければならない。

これは、ごく一般的な考え方でしょう。
つまり、基本的に、品質と価格はトレードオフの関係
(両方同時には成立しない)にありますよね。


ところが、高い品質を求めつつ、同時にお手ごろ価格を求める
欲ばりな消費者層が存在します。

彼らは、

「価値ハンター」(価値追求型消費者)

です。


価値ハンターは、自分たちにとっての価値、すなわち
「顧客価値」(製品便益-ライフサイクル費用)を
最大化しようと行動する人たちです。

そして現在の日本においては、価値ハンターが
消費者の過半数を占めている一大勢力となってきたのです。

つまり、マス市場として登場しているのが価格ハンター層です。


したがって、企業が大きな売上げを狙うのなら、
「価値ハンター」の心理や行動特性を的確に把握し、
正しく照準を定める必要があります。


価値ハンターの特性としていくつかご紹介すると、
まず、商品知識が豊富であることがあります。

安くいい物を手に入れようとするわけですから、
そうした「お買得品」を見極めるだけの知識が
必要だからです。

そして、事前に十分に購入商品を検討しますから、
お店ではほとんど指名買いです。
ですから、商品について詳しい店員はありがた迷惑で、
むしろ、心のこもったサービスを歓迎します。


また、価値ハンターは、気に入ったブランドに対しては
忠誠心が高く、長期的な取引を通じて
顧客価値を高めようとします。

単に、「いいものを(無理やり)安くしろ」と
ゴネる消費者ではないわけです。

例えば、ポイントカードをきっちり利用して、
将来における顧客価値を高めることを考えます。
(その場限りで安いというのは、実際には、
 品質が伴わないことがわかっているのでしょう)


90年代後半から、顧客との関係性構築に焦点を当てた
マーケティング・経営手法である「CRM」
(Customer Relatioship Management)が注目を集め、
徐々に浸透しつつありますが、

現代の消費者の主流となった

「価値ハンター」

に照準を定めるということは、
「CRM」の本格導入・定着が不可欠であることを
意味しているといえるのではないでしょうか。


*「価値ハンター」についての詳細は下記書籍を
 ご参照ください。

『バリュー消費-「欲ばりな消費集団」の行動原理』
 田村正紀著、日本経済新聞社

投稿者 松尾 順 : 10:47 | コメント (0) | トラックバック

ドコモダケ

「ドコモだけ、ドコモダケ、みたいな・・・」

なかなかいい企画が出てこない中で、

ドコモの担当者がつぶやいたこの一言が、

ドコモさんのオリジナルキャラクター

「ドコモダケ」

が生まれたきっかけだそうです。

新たな発想が生まれる瞬間って、
結構こんなくだらないことなんですよね。(笑)


私はこれまで、
様々な業界のマーケティングをお手伝いする機会がありましたが、

「その企業だけ、その製品・サービスならではの売り」

を打ち出すのが難しいのが、いわゆる形がない、かつ
人があまり介在しないサービスです。

たとえば、電話のような通信・インフラ系サービスや、
銀行・クレジットカードなどの金融系サービスです。

目に見えず、人があまり介在しないサービスは、
モノ以上に、競合製品の機能や品質レベルの差異が
感じにくいですよね。

したがって、ぶっちゃけ、

どの電話会社でも、どの銀行でもあまりこだわらない。
たまたま、近くにお店があったとか、そんなきっかけで
利用しているだけに過ぎない。

こんな方が多いんじゃないでしょうか。


ただ、携帯電話の場合、ドコモ、au、ボーダフォンの各社
独自の「携帯端末」というモノが付随しますので、
auさんの場合、近年は「デザイン性」を追求することで、
競合他社と明確な差異を打ち出すのに成功しましたね。

一方、ドコモさんの場合は、文字通りドコモだけ(唯一)の
擬人化されたキャラクター「ドコモダケ」によって、
情緒価値を高める戦略を採用したわけです。


サービスという無形のないものに、キャラクターという
有形のイメージをダブらせる。
サービス自体に愛着を感じることは難しいけれど、
愛らしいキャラクターなら、人は愛着や愛情を感じる対象に
しやすいものです。

「ドコモダケ」の人気は、まだそれほど盛り上がってませんが、
今後上手に育てれば、既存客のブランドスイッチを防止し、
新規客を獲得するために大活躍してくれることになるでしょうね。


そういえば、クレジットカード業界でも、
DCカードさんが、10年以上前から一貫して「カッパ・たぬき」
のキャラクターを使ってきていて、根強いファンがいます。

また、サービスではなく、モノですが、ダイキンのエアコンの
売上げを爆発的に伸ばした原動力が、「ぴちょんくん」

であることを考えると、

今後、

「オリジナル・キャラクター投入」

はますます検討する価値のある戦略のように思います。


*ドコモダケのWebサイト
http://docomodake.net/top.html

*カッパ・たぬきホームページ
http://kappatanuki.com/

*ぴちょんくん情報
http://www.daikin.co.jp/pichon/

投稿者 松尾 順 : 10:39 | コメント (3) | トラックバック

直感リサーチ

次の製品カテゴリーを聞いたとき、最初に思い浮かぶメーカーは
何ですか?


・薄型テレビ
・デジタルカメラ
・携帯用ゲーム機
・携帯オーディオプレーヤー
・携帯電話端末


インターネットコム(株)とGooリサーチが共同で行った
ハードウェアに関するイメージ調査(直感リサーチ)
の結果を見ると、上記製品カテゴリーのトップはそれぞれ
次の通りになっています。
(調査対象:全国の10~60代のインターネットユーザー1084人)

・薄型テレビ          >シャープ(72.05%)
・デジタルカメラ        >キャノン(55.17%)
・携帯用ゲーム機       >任天堂(58.30%)
・携帯オーディオプレーヤー >アップル(64.21%)
・携帯電話端末        >NEC(37.27%)


当然のことながら、この結果と各製品カテゴリー市場の
占有率(マーケットシェア)は相関が高くなります。


「○○○○○○と言えば、XXXXXXXXXXXだよね」
 (カテゴリ名)  (メーカー名/ブランド名)

というブランド連想が高ければ高いほど、
実際の購入につながる確率も高くなります。

実際、上記メーカーは、
それぞれのカテゴリーのシェア一位ですよね。


この最初に思い浮かぶメーカー/ブランド名のことを
専門的には、

「TOMA:Top of Mind Awareness」

日本語では、

「第一非助成想起」

という難しい表現で表します。


通常、メーカー/ブランド認知度の調査では、

・次のメーカーの中で知っているものに○をつけてください

とメーカー名を羅列して選ばせるやり方(助成想起)

と、上記「直感リサーチ」のように、

・製品カテゴリー名を示して、
 頭に思い浮かんだメーカーを書かせるやり方(非助成想起)

の2つの方法を採用します。

で、

TOMA(第一非助成想起)

とは、要するに、メーカー/ブランド名があらかじめ
リストアップされていない状態、つまり

「助けを借りないで思い浮かぶ最初の名前」

ということです。


さて、いわゆる「ブランディング」(ブランド構築)の最大の目的は
この「TOMA」のポジションを獲得することだと言えます。

もちろん、あるメーカー名、ブランド名を聞いた時に
「好意的なイメージや感情」が伴うことが必要です。

悪名がとどろいていてもしょうがないですから。(^-^)


ただ、ブランディングに成功してTOMAのポジションを獲得すれば
自動的にマーケットシェアトップになるわけではないのが
難しいところです。

いわゆるマーケティングの

4P(Product、Price、Place、Promotion)

全般における総合力を高めないと駄目なんですね。


例えば、「風邪薬と言えば・・・」

風邪薬カテゴリーの認知率トップは実は、三共の「ルル」。
(最近の調査によると)

老若男女、誰でも知ってる、

‘くしゃみ3回、ルル3錠’

名キャッチコピーのおかげでしょう。

しかし、売上げベースのシェアトップは大正の「パブロン」。
認知率ではルルの後塵を拝しているにも関わらず、売上では
ルルの3倍の規模です。

これは、端的には「流通チャネル(Place)施策」の差が
大きいようです。

ドラッグストアの店員が、お客さんにどの風邪薬を推奨するか、
というのが売上げを左右する鍵だと以前聞いたことがあります。


さて、直感リサーチの結果に戻ると、ソニーさんの名前が
一位にあがっている製品カテゴリーにないのが気になりますね。

インターネットコムさんの元記事を見ていただくとわかりますが、
だいたい、ソニーさんは2位か3位あたりです。

製品カテゴリーのうち、どれかひとつでもダントツトップの市場が
あると、それだけでソニーブランドのイメージがぐっと回復すると
思うのですが。

投稿者 松尾 順 : 11:55 | コメント (0) | トラックバック