毎日がリサーチ

以前も書きましたが、
私は、社会人向けのマーケティング関連講座を主催する
「シナプス・マーケティング・カレッジ」で、

「マーケティングリサーチ・エッセンス」

という講座を担当させていただいています。

「エッセンス」というタイトル通り、
リサーチの基本中の基本をお伝えする初心者向けの内容です。

パンフレットにも「初心者向け」と記載してあるのですが、
意外に「応用的なこと」を期待して受講される方が多いのに
当惑しています。


でも、よく考えてみれば、マーケティングリサーチの講座で
一般マーケター向けの応用編的なコースって
ほとんどないんですよね。

仮にそんなコースがあったとしても、「統計解析ツール」
の使い方を覚えることもセットにしないと
なかなか実践的なノウハウは学べません。

これは、必ずしも自分で統計解析ツールを動かす必要のない
大多数のマーケターにとっては、ちょっと「違う」セミナーに
なりますよね。


ですので、一般マーケター向けの

「マーケティングリサーチ・アドバンス」

という応用編講座を
シナプス・マーケティング・カレッジで
開設させてもらえばいいのかもしれません。

ただ、講座を開設する立場としては、
マーケティングリサーチの応用編的セミナーに対する
十分な需要があるのか、悩ましいところですけど。


一方で、マーケティングリサーチと銘打った講座とは別に、
地味なタイトルですが、

「ビジネス情報の収集と整理、解釈のノウハウ」

といった講座も必要じゃないかと思ってます。

「マーケティングリサーチ」というと、どうしても、
アンケート調査やグループインタビュー調査といった、
大掛かりでそれなりにコストをかけるフォーマルな調査を
イメージしてしまいますよね。

逆に、こうしたイメージが固定観念になって、なにか知りたいことが
出てきたらすぐ「お金かけてちゃんとしたリサーチやらなきゃ
有益な情報は集まらない」という、短絡的な発想を招いてしまう
可能性があるかも知れません。

しかし、実のところ、私たちは普段の生活でもリサーチを行い、
その結果に基づいて判断し、行動してるということを
わかっておく必要があると思います。


例えば、あなたは、朝寝坊してしまい、
慌てて外に飛び出した。

でもふっと、天候のことが気になりました。
空の様子がおかしい。

「ひょっとして傘を持参すべきかな」という解決すべき課題が
発生しました。(おおげさですが(^-^))

そこで、「これからの天気を知りたい」というリサーチ目的が
出てきます。漠然とした感覚では、「雨になりそうだ」
という仮説が浮かんでいます。

まず、あなたはどうしますか。
自分の目で空を見上げて、雲の状態をしっかり観察しますね。

灰色の雲が覆っていました。
観察(調査)に基づく、イメージ情報の収集です。

また、肌で気温や湿度を感じてみます。
ジメジメして生暖かい感じでした。
肌感覚(調査)による、温度・湿度情報の収集です。

周りに歩く人たちに目を向けました。
傘を持っている人がいます。
やはり観察(調査)に基づく、イメージ情報の収集です。


あなたは、こうした徴候の時にはたいてい雨が降るという
経験に基づく因果関係と、学校の理科で学んだ天気についての
知識をベースに、

空の模様、気温湿度の状況、周りの人たちの行動など
収集した情報を総合的に整理・分析し、

「低気圧の接近による雨が近いようだ」

という解釈を与えます。

そして、「やっぱ家に戻って、傘とってこよう」

という意思決定を行うわけです。


以上のプロセスでは、アンケートもグルインもやりませんが、
調査の本質的な手順である、

調査課題の設定→調査目的の設定→仮説の設定→
情報の収集→情報の整理・分析→情報の解釈→(意思決定)

という流れに沿っています。


こうしたプロセスは、働く現場ではもっと日常的でしょう。
実際、私たちは四六時中リサーチやっているといっても過言では
ありません。

いわゆる「マーケティングリサーチ」はこの延長上にあります。
どうしても手間とお金と専門的なノウハウをかけないと収集・分析
できない情報がある時に必要となるのが、
いわゆる「マーケティングリサーチ」です。

ですから、「リサーチすること」をあまりオオゲサに捉えない方が
いいのです。


また、前述したように、「マーケティングリサーチ」に
安易に依存しすぎてはいけないと感じています。

ある意味、お金さえ払って専門家に任せておけば、
いくらでも情報が集まるので、
5感を研ぎ澄ませて、自ら情報を収集しようとする意欲が
低下してしまう危険性があるんじゃないでしょうか。


ま、こんなわけで、普段のビジネスシーンでの活用を目指した

「ビジネス情報の収集と整理、解釈のノウハウ」

という講座が有益じゃないかと考えている次第です。

このタイトルは、再考の余地オオアリですが。

投稿者 松尾 順 : 10:58 | コメント (0) | トラックバック

巨大コンビニ?

九州のドラッグストア、「コスモス薬品」の
経営・マーケティング戦略は、なかなか興味深いものがあります。
(日経MJ、2006.05.29)


まず出店戦略です。

人口2万人程度の小商圏に、売場面積2千平方メートルの大型店舗。
サミット、ライフ、いなげやといった食品スーパーの場合、
売場面積はおおむね5百平方メートルですから、その約4倍、
標準的なホームセンターと肩を並べる大きさです。

人口2万人というのは、「市」ではなく「町」レベル。
いかに商圏としては小さいかわかりますよね。


そこにホームセンター並みのドラッグストアがでんと構えている。
しかも、この「横綱クラス」の店舗を中心に、
売場面積約半分の大きさの「大関クラス」の店舗が周囲を固めて、
「スキマ」を埋めてしまう店舗展開をしています。

商圏内の全需要を丸呑みするようなお店の規模に、ライバル企業は
はなから「こりゃ、勝てん!」とあきらめてしまうことを
狙っているんです。


次に品揃え戦略。

日用雑貨、医薬品などに加えて、食品に力を入れています。
以前は、顧客の来店頻度は、月1-2回でしたが、
食品を充実させるようになってから、来店頻度は週2-3回に
増加したそうです。

購入頻度の高い食品の強化は、同社にとって非常に重要な戦略
だったでしょう。

商圏が限られているため、その商圏内の市場シェアを高める
のではなく、取り扱い商品を広げて顧客(財布)シェアを高める
必要がありますから。

来店頻度が増えると親近感が醸成され、
顧客ロイヤルティも高くなりますしね。
つまり、同店への来店が習慣化するということです。


さて、価格戦略は、EDLP(Every Day Low Price)。
毎日安売り。特売はしません。

面白いのは価格設定の方法です。
いくらにするか、店のパートさんに聞くのだそうです。

「この商品はいくらなら買いますか、と聞くと
 バイヤーより的確な価格を出す」

とコスモス薬品社長の宇野正光氏は答えています。

メインユーザーの主婦層と同じ感覚を持つパートさんの
最高の活用法でしょう。


そしてプロモーション。
特売もしないし、
以前導入していたポイントカードは2003年に廃止。

宇野氏は、

「ポイントや日替わり特売などの販促は
あの手この手でお客をだます手品」

と言い、お店自体の魅力、つまり、
近くて便利、清潔な店舗と鮮度の高い品揃えで勝負しています。


コスモス薬品のWebサイト

には、上記のような企業戦略が明快に語られていますが、
コスモス薬品の店舗は、

巨大なコンビニ

を連想させますね。

さすがにコンビニのような定価販売ではありませんが、
安いなりにいつでも同じ価格だし、利便性を重視していること、
特売を基本的にしないことなど、まさにコンビニスタイルです。


「コスモス薬品」は、日本一ディスカウンターが多いと言われる
九州で、安売りを「ウリ」にしない戦略が可能なことを
同社の業績が実証しています。

過去5年間の増収率は30-80%です。

今度福岡に里帰りした時に寄ってみるかな・・・

投稿者 松尾 順 : 10:58 | コメント (0) | トラックバック

Web2.0早分かり

最近ネット関連の情報を収集していると、
やたらと「Web2.0」という言葉にぶつかります。

メディア的には、今まさに「旬」の言葉ですからガンガン
使われてしまうわけですが、以前も書いたように、
「Web2.0」という言葉がすっかり消費されつくして、
メディアから消えた頃、「Web2.0」的なものが本格的な成長期、
展開期に入る時期です。

逆に言えば、今は導入期に過ぎず、まだまだ試行錯誤が続く時期
ということです。だから話題にもなる。

しかし、これだけあちこちで目にすると気になります。
正体がはっきりしない、よくわからないだけに、
なおさらもやもやした気持ちが残ります。

皆さんはどうですか。


でも、見つけました。「Web2.0」の早分かりができそうなやつ。
とりあえず、これだけ抑えてけば「Web2.0」の輪郭が
見えてくるものです。

それは、マイネット・ジャパンの上原仁氏が、Tim O'Reilly氏の
「What is Web2.0」に掲載された「Web2.0 meme Map」を元に、
日本のインターネット業界的解釈を加えてローカライズした
「Web2.0の要素マップ」です。

「Web2.0の要素マップ」は、
Web2.0の主たる構成要素と代表的なサービスを7分類して
示したもので、とても分かりやすいですよ。

詳しくは、「ITセレクト2006.07号」をご覧になるか、
ネット検索など調べていただいきたいのですが、
ここで7分類の説明部分のみご紹介しますね。

--------------------------------------------------------

1 Rich User Experiences

  ・Gmail, GoogleMap, Goo地図
  ・AJAX,DHTML、Graeasmonkey等と駆使し、
   ページ上で直感的操作

2 Folksonomy

  ・Flicker, はてなブックマーク
  ・Tagづけ、階層分類学でなく、
   ユーザーの手で自由に分類する思想

3 User as Contributor

  ・PageRank, eBayのユーザー評価, Amazonのレビュー
  ・ユーザー体験の蓄積をサービスに転化

4 Participation

  ・ブログ, mixi
  ・ユーザー参加方開発、ユーザー生成コンテンツ

5 Long tail

  ・Google Adsense
  ・ユーザー・セルフサービスの提供で
   ロングテールを取り込む

6 Radical Decentralization

  ・Winny, BitTrrent
  ・進歩的分散志向、ネットワークの外部性

7 Radical Trust

  ・Wikipedia, はてなダイアリーキーワード
  ・進歩的性善説、知のオープンソース
  
---------------------------------------------------------  

要するに、この7つが「Web2.0」という大きなコンセプトに
含まれるサブコンセプトということです。

これらのコンセプトを眺めているだけでも、
いろいろアイディアが湧いてくるような気がしますね・・・

ほかにも、「Web2.0」の理解に役立ついい情報源とかあったら
ぜひ教えてください!!

投稿者 松尾 順 : 06:00 | コメント (4) | トラックバック

キャリアとは・・・?

週末なのでテーマ、ちょこっとずらします。

以前、あるキャリア論の講座の最終課題として「私の考えるキャリアの定義」というものを
書きました。今まで公表したことがないので、ここで公表させていただきます。
(知恵市場にも掲載)

「である調」で書いた、ちょっと固めの文章でですがご勘弁ください。

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● 関係性視点でのキャリア

 トム・ハンクス主演の映画「キャスト・アウェイ」は、FEDEXの社員である主人公が、
輸送機の事故によって無人島にたどり着き、それから約4年もの間、
たった一人だけの生活を送る姿を描いた、現代版ロビンソン・クルーソーである。

彼は、遭難するまでは、FEDEXという優良企業の中で順調なキャリアを歩んでいた。
残念ながら、運命のいたずらで、それまでのFEDEXでのキャリアは断ち切られたのだが、
では、無人島での生活の4年間というものを振り返るとき、そこには「キャリア」という
意味合いを与えることはできるだろうか?

 私は、また大半の人が同意すると思うが、無人島の生活に「キャリア」という言葉を
あてはめることはできないと思う。なぜなら、無人島で彼は、ただ生きるためにだけの
毎日を送った。雨水をためたり、魚を釣ったりしたが、それは自分が生きる目的だけ
のための行為であり、「仕事」ではない。したがって、彼は、無人島の生活では、
「生きる」という以上の意味を見出すことができなかった。

彼はそのことに絶望し、自殺を図ろうとしたこともある。(結局、自殺できなかったが)
また、彼はまったくの孤独が耐えられず、遭難時に流れ着いたバスケットボールに
自分の血で顔を書き、'ウイルソン'と名づけて、まるで友人同様に扱った。

 「キャスト・アウェイ」はフィクションだが、私には「キャリア」、あるいは「人間」と
いうものについて深い洞察を与えてくれた。それは、人間は、人との関係、
もっと抽象的な概念でいえば「社会」との関係で自分の存在を確かめる、という点
である。

「キャリア」についても同様である。社会、会社、家族、地域、といった、
なんらかのコミュニティ(共同体)における自分の立場・役割という関係性視点に
おいて、初めてキャリアとう概念が意味を持つ。

 ところで、「キャリア」を形成する中核要素である、「仕事」の本質を考えると、
それは、他者(社会)に対して何らかの価値を提供することによって、
その対価を得る行動である。「対価」は通常金銭だが、よく考えると金銭は
交換手段に過ぎず、生活を送るための衣食住娯楽などが、何らかの形で相応に
満たされればよく、必ずしも金銭である必要はない。

つまり、「仕事」とは、「社会」という人の人との関係性の中で、存在を許される
(生かされる)ための価値の創出行動である。もし、周囲の誰に対しても一切の
価値を与えていないにも関わらず、人並みの生活を送っている人間がいたら、
その人はいわゆる'ごくつぶし'と形容される存在である。そう考えると、
「仕事」というものは、会社勤め、自営業だけでなく、専業主婦の家事や
ボランティアワークなど、明確な金銭的対価を得られないものも「仕事」の範疇に
含めることができるだろう。彼らは、社会の中で受け入れられるにふさわしい
価値を創出しているとみなされるからである。

もちろん、いわゆる生活水準の差は、どんな仕事をやるかによって左右されるのだが、
「仕事」(上記のような広い意味での仕事)を通じて、人は社会の中での自分の
存在意義・存在価値を確かめることができる。

●センスメイキングとしてのキャリア

 「キャリア」というものを考える時、「過去に経験してきた仕事、職歴」といった捉え方を
することを否定するわけではないが、現実にキャリアに悩んで、今どうすればいいのか、
という人にとって、より役にたつであろうキャリアの定義というものを私は提唱したいと思う。

それは、「センスメイキング」、つまり、「意味生成活動」としてキャリアを捉えるという捉え方である。
この場合、意味を生み出す主体は、それぞれのキャリアを歩む本人自身であり、今現在、
そして未来に向けて、仕事に対して「意味」を見出していこうとするプロセスがキャリアである、
と定義したい。ここで、「意味」とは自分の存在意義、もっとわかりやすく言えば、結局のところ
「やりがい」ということになる。

ただ、前述したように「意味」は、基本的に人、社会との関係性の中で生まれるものであり、
またそうでなければ、社会の中での存在意義・存在価値を認めることが困難であるため、
外的基準における仕事の意味をまず考える必要があるだろう。これは、

「この仕事を通じて、自分は社会にどんな役割を果たしているのか」

という質問で明らかになる。この場合、「社会的意義」と言い換えることが可能であろう。
そして、大事なことは、この意味(社会的意義)が自分の価値観、つまり内的な基準に
照らした時、価値を認めることができるか、という評価をすることである。これは、

「この仕事は自分らしさを発揮できているか」

という質問に答えてみることでわかる。

そして、外的基準に照らした自分の仕事の意味(意義)が感じられ、それが
内的基準においても、価値あるものだと認めることができる時、あるいはできるように
なった時、今の一瞬一瞬の時間が輝きのある、充実したものとなる。また、未来は
無限の可能性を秘めたものと感じられるようになる。

 このように、私は、キャリアを今と未来に向けた意味生成活動と定義するが、
内的基準に基づくキャリアの意味は、あくまで自らが能動的に見出すべきもの
である点を強調すべきだろう。外的基準たる社会的意義にはある程度の客観性が
あるが、内的基準は主観的なものである。しかし、生きるということは、自分らしさの
発現であり、己の主観を尊重しなければ、自分でいることはできない。

なお、幼少時の経験や過去の仕事・職歴を振り返ることは、自らの過去の行動から、
帰納的に自分の内的基準、つまり価値観を自己認識するというために役立つ。

投稿者 松尾 順 : 18:57 | コメント (0) | トラックバック

寸劇プレゼン

マーケティング・リサーチャーに必須のツールは「統計解析ソフト」
ですが、現在日本で、デファクトスタンダードの地位を確立して
いるのが

「SPSS」

です。

私がSPSSのソフトを始めて知ったのは95年頃ですが、
従来の製品と比較して、高度な分析が可能なのに格段に使いやすく、
かつ値段も手頃なので、早速当時の会社で導入し利用していました。

そして、独立した現在も、新規に購入して引き続き利用しています。
私のような個人で活動するリサーチャーにも手の届く金額で購入
でき、たいていの分析ができてしまうのは大変にありがたいです。
(さすがに高度なデータマイニングができるツールは数百万円
しますので、手が出ませんが・・・)


さて、SPSS社の場合、いわゆる4Pで評価すると、

Product:製品が優れている
Price:手頃な値段、コストパフォーマンス高い
Place:基本的に直販、コンサルティンググループ、パートナー
    会社との連携によるソリューション型販売も可能
Promotion:継続的なブランディング、プロモーション(狭義の販促)

となり、
とてもバランスのよいマーケティング戦略が展開されていて、
成功するための必要十分条件が揃っていることがうかがえます。

特に、Promotion(広義の広告・広報、販売促進戦略)に対して、
明確なコンセプトを打ち出し、ブランディングに相応の予算を
毎年安定的に拠出してきている点が、現在の高いブランドイメージ
を構築できた最大の要因だと思います。


SPSS社では、プロモーションの目玉として、
年2回(春と秋)、ユーザーや潜在顧客を集めたセミナーイベントを
開催しているのですが、先日開催された「Data Mining Day 2006」
に私も参加してきました。


この春のイベントでは、昨年から面白い試みをしています。

SPSS社のソフトを採用したソリューション紹介を
社員が演じる寸劇によって紹介する、「寸劇プレゼン」です。

ソリューション紹介というと、普通はプレゼンターがデモ画面を
スクリーンに映し出しながら操作手順を説明するといったところが
定番でしょう。


しかし、「寸劇プレゼン」の場合、架空の会社での特定場面
(ミーティングやコールセンター)を想定して、そこでリアルな
会話を再現しながら、自然な形でソフトの操作や特徴、便益が
紹介されていきます。

今回は、老舗の損保会社と新興の損保会社が対比的に描かれて
いました。

老舗企業では、顧客データ活用がまるでできず、お先真っ暗な
様子が、会議中の上司と部下との情けない会話で示されます。

一方、新興の方は、SPSSのソリューションを積極的に取り入れる
ことで、顧客の利便性が高まったり、コールセンターの負荷が
軽減されるといった成果が、ミーティングでの生き生きした
会話やコールセンターでのオペレーターと顧客との会話で
示されます。(やや理想的すぎる展開と感じないこともない
ですが、設定は架空の会社でも採用されているソリューションは
本物だそうです)


この寸劇プレゼン、昨年も大変好評だったそうですが、
今年も実際「観劇」していて、実に面白いと思いました。

やはり「物語」の魅力でしょう。

一定の文脈があり、演じる役者たちは喜怒哀楽の感情を
交えた会話を交わすのです。ついつい引き込まれてしまいますし、
印象的です。

SPSS製品の特徴、便益を認知させ、理解させ、
かつ記憶に留めさせるという点において「寸劇プレゼン」は
とても効果的だと思います。

「寸劇プレゼン」は、米国本社で最初に採用された方法の
ようですが、こうした先進的な取り組みができるのも、
SPSS社が「マーケティング巧者」であることを物語っていますね。


ほかの会社でも「寸劇プレゼン」を導入するところが
これから増えるでしょうか・・・?

でも、準備は相当大変みたいですね。
寸劇に登場した社員の皆さんは、
ゴールデンウィーク返上で稽古したそうです。

投稿者 松尾 順 : 09:34 | コメント (0) | トラックバック

ナラティブ広告

説得ではなく、共感。

機能や性能だけで、
消費者を惹きつけることができた時代は終わってますよね。

もちろん、水で加熱する電子レンジとか、塩水で洗う洗濯機だとか、
「そんなのできるの」とびっくりするような製品が
今だってたまに登場します。

そうした機能、性能に頭抜けたものをもつ新製品なら、
買ってもらうための説得は比較的簡単です。
これまでの製品との明確な違いが説明できますからね。

でも、それほど画期的でもなく、競合他社との差もたいしてない
ということになれば、説得は難しい。
「自社の製品を買うべき明確な理由」を示せないからです。


そこで有効なのが、製品開発者の思いや背景、開発秘話など、
「物語」を語ること。

理詰めのロジックじゃなくてなく、ストーリーで攻める。
頭で理解してもらうのではなくて、心で共感してもらう。


近年の行き過ぎたロジカルシンキングの反動もあると
思いますが、「物語」の有効性がビジネスで認められつつ
あります。

最近人気の「スープストック トーキョー」の事業計画は、
イメージを刺激する豊かな物語が書かれていました。
それが、この事業に対する投資にGOがでる大きな力に
なったようです。

しょせん、つじつまあわせに過ぎない数字を羅列しただけの
事業収支計画だけでは人の心は動きませんよね。
スープを飲む情景がありありと描かれたストーリーが、
この事業の成功の可能性を感じさせたのでしょう。


イメージを刺激する物語は、共感を呼ぶだけでなく、
記憶に残りやすいというメリットもあります。
記憶に残りやすいというのは、ブランディングの視点では
非常に意味のあることですよね。

そこで、物語(ナラティブ)の手法を活用した
マーケティング・コミュニケーションが増えつつあります。

例えば、ソニーのパソコン「VAIO」は、
約1年間にわたって全国紙に

「ナラティブ広告」

- VAIOgraphy -

を展開していました。(日経産業新聞、2006/05/24)

PCの基本スペック(CPU、メモリー、ハードディスクなどの
性能)はだいたい、どの製品も規格化された標準品を
使っているのでユーザーに伝える意義は弱い。

むしろ、デザインや素材、機能の細部など、
ソニーならではのこだわりを「おはなし」に乗せて
伝える。

それは、ソニーの価値観を伝えることであり、
「VAIOgraphy」企画を主導した同社の高瀬氏は、

「モノの価値を、値段と機能だけでは判断しない人。
 価格以上に大切なものがある、という価値感に共感してもらえる人」

に顧客層を絞り込むことができるという効用もあると
言っていますね。

この物語手法については、最近いろんな本が出ていて
次のマーケティングトレンドになるのはまず間違いありません。


ところで、物語を語る力、習得したいですか。

文学寄りのシナリオライティングを学ぶのも悪くないですが、
ビジネスへの応用を考えるなら「ISIS編集学校」がいいです。

応用コースに当たる「破」(守・破・離の「破」です)
では、「物語編集術」という課題があります。
スターウォーズやジェームスボンドの映画を素材に
自分で物語を作る練習をします。

今ちょうど、私が師範代で教えていて、
生徒さんたちが取り組んでいる真っ最中です。

投稿者 松尾 順 : 07:35 | コメント (0) | トラックバック

拒否集合の増大

「新しいパソコンを買いたい!」と思い立ったとします。
その時、あなたはどうやって購入機種を絞り込んでいきますか。

まさか、世の中に存在するすべての機種を調べることは
しないですよね。

普通は、デスクトップかノートパソコンかといった
大きな仕様の違いや、だいたいの予算枠を決めた上で、
自分が知っている(思い出せる)メーカーの中から、
買いたい機種候補をいくつか挙げていきますよね。


ここで、自分が知っているメーカー名(および機種名)
のことを

「知名集合」

と言います。

知名集合に入るのは、やはり次のような大手どころになると
思います。

ソニー、富士通、NEC、パナソニック・・・など。


そしてさらに、「よし、この機種の中からどれかに決めよう」
と、購入をじっくり検討する製品群のことを

「考慮集合」

と言います。(ベタな言い方をすると「買いたいやつリスト」)

もちろん、「Mac命!」の人は最初っから
「Apple Computer」しか思い浮かばないし、
考慮集合にはMac製品しか入らないでしょうけど。(^-^)


ただ、大手量販店に行くと、そういえばSharpのパソコンも
あったな、とか、SOTECのようにお手頃価格で買えるメーカーが
あるのを知ることができます。そうすると、そうした新たに
知ったメーカーの中からも、購入機種候補が出てきますね。

つまり、「買いたいやつリスト数」が増加するわけです。

さらに、あなたがインターネットを活用すると、
エプソンとか、マウスコンピューターとか、
さらにたくさんの新たな候補を発見して、
ますます考慮集合が膨れることかもしれませんよね。


つまり、ネットを活用するかしないかで、
私たちの情報量に大きな差が生じ、
「考慮集合」となる「買いたいやつリスト」の数に
大きな差が生じてくるということです。

ま、これはもっともな現象ですね。


清水聰先生(明治学院大学教授)は、
ユーザーのインターネット活用度合いと考慮集合の関係について、
自動車の購入を対象に調査されていて、
上記のような、

インターネットユーザーにおいて
考慮集合が増加する傾向を検証されてるんですが、
その傾向よりもっと興味深いのは、

「このメーカー(機種)だけは買いたくない」
(買いたくないやつリスト)

という

「拒否集合」

もまた、インターネットを活用する人の方が多くなるという点です。


インターネットだと過剰なまでの情報が簡単に集まりますが、
その情報を元に「買いたいやつリスト」に入れるものを選別
していくのと同時に、

「あー、こいつは明らかに使えない」


というものもわかるので、「拒否集合」に入る数も増えて
しまうというわけですね。

以前は、情報量が限られてましたから、買いたいものは
ある程度見えてきても、買いたくないかどうかという
ネガティブな判断はできませんでした。

しかし、情報入手が容易なネットの時代では、
駄目な商品はばっさり斬られてしまうわけです。


清水先生は、

「企業にとってインターネットは両刃の剣となることが
 明らかにされた」

と上記研究を収録した著書、

「戦略的消費者行動論」(清水聰著、千倉書房)

で書かれていますが、ほんと、他社と横並びの平凡な製品しか
市場に出せないメーカーは、すぐに「拒否集合」に入れられて
しまって日の目を見ることがない、
そんな厳しい時代になっちゃったんでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 10:56 | コメント (0) | トラックバック

検索せず、探索せよ

土日も休まず発行されてる日刊メルマガが、
いくつかありますよね。

私も何誌か登録してますが、そのうちのひとつ、

「ビジネスマトリクス」理論と実践の狭間で

は、軽いタッチの文体でなかなか深いことが書かれています。

実際、発行者の長沼良和さんは、昨日のメルマガでも
次のようなことを書いてました。(本文中一部引用)

「新聞を読みましょう」というテーマでした。

--------------------------------------------------------

(新聞を読むと)
ネット新聞では気付かない情報が入手できるということが
 分かりました。

というのも、ホームページだったら、興味のある記事しか
読まないじゃないですか。どうでも良いところは読み飛ばす
以前に見ることもありません。

しかし、紙の新聞の場合、見開きで全体を眺めますから、
興味のある記事もない記事もすべて見ることになります。

すると、
 
「へぇ~、こんなこともあるんだぁ。。。」
 
という新しい発見があるのです。

--------------------------------------------------------
(業務連絡:長沼さん、勝手に引用させてもらいましたが、
 ご了承お願いします)


私も新聞を結構きちんと読んでいますが、その目的は
この新しい発見を期待してのことです。

長沼さんが書かれているように、ホームページだと
ある程度決まったサイトしか見ないし、それらのホームページ
から得られる情報は話題がある程度絞られていますよね。

たまに幅広いテーマを扱うニュースサイト的なところにも
行きますが、あまりの情報量の大きさにたじろいで、
結局、検索して関心のある情報だけ取り出すことに
なりがちなんですよね。

だからどうしても「新しい発見」がなくなる。


すでにある程度明確な物事を効率的に進めるためには、
一切のムダを省き、一直線に目的の情報に向かえばいいと
思います。

しかし、プランナーやクリエイターといった、
新たな発想や気付きを生み出す仕事をしている立場の方なら、
あえて効率を捨て、視野を広げて普段あまり関心を
持たない情報を「探索」してみるのは結構意義があると思います。


目的を持って情報を探し出すのは「検索」。

インターネットは情報システム、巨大なデータベースですから、
検索に便利ですね。


一方、漠然とした問題意識だけで、様々な情報を渉猟し、
新たなテーマを発見しようとするのが「探索」。

これは、ネットでもいわゆる懐かしい「ネットサーフィン」
でもできますが、やはり一覧性の高い新聞、雑誌といった紙
メディアがいいですよね。

たまには、意識的に無駄な時間を作って、いろいろ
探索してみたらどうでしょう。それは、すぐに結果に
つながる行為には必ずしもなりませんが、決して無駄には
ならないと思いますよ。


なお、

「検索せず、探索せよ」

は、尊敬する妹尾堅一郎先生(東京大学教授)が
いつも言われていることです。

投稿者 松尾 順 : 04:44 | コメント (0) | トラックバック

理想の自分で行動する

以前、女性衣料品店を経営していた友人から、

「ターゲット顧客が40代だったら、40代に似合うデザイン
ではなくて、30代に似合うデザインで品揃えをする」
(そうすると40代のお客さんが集まる)

と聞いて「へぇー」を連打したことを覚えています。

自分の本当の年齢よりも一回り若い
「こうありたい自分=理想の自分」に基づいて商品を
選ぶのが女性なんですね。


もちろん、女性だけでなく男性も同じようなものです。

ちょっと前に書きましたが、
リクルートのR25の創刊に当たってビジネスマン対象の
調査をやった時、事前のアンケートでは「新聞を読んでいない」
と答えていたのに、グループインタビューでは、
「日経新聞?もちろん読んでいます」
とみんな答えたそうですから。

「虚栄心」でしょうね。
虚栄心が、本当の自分じゃなくて、理想の自分で
答えさせるのでしょう。


さて、女性の服の話に元を戻すと、服は自分をよりよく
見せるという役割を持っているのですから、本来は、
「本当の自分」を直視したほうがいいと思うのですが、
自分の「虚栄心」を満たすことの方が重要のようです。


この人間心理を利用しているのが、

「バニティサイジング」。

米国のアパレル業界で流行っているサイズ表示法だそうです。

この英語、日本語に訳せば

「虚栄心を満たしてくれるサイズ表示」

となりますね。

これは、自社のサイズ表示だけ標準的なサイズ表示法よりも
小さめにするものです。
わかりやすく言うと、標準サイズでは「L」と表示すべき
ところを「M」と表示します。

すると、Lサイズの消費者としてはうれしい。
というのも、このお店・ブランドではMサイズが入るので、

「あれ、私って、やせたのかしら・・・」

と好ましい勘違いをもたらしてくれるからです。

あるいは、本来Mサイズの人は、Sサイズが着れるので、
標準より痩せている自分に対する勘違いの肯定感を
味わわせてくれる。

しかし、よく考えると「バニティサイジング」は、
サギみたいなもんですよね。

でも、おそらく女性(男性)は、仮に
バニティサイジングを採用しているということを知っていても、
よろこんでだまされるんじゃないでしょうか。

だから、米国のアパレル業界も堂々とやってるんでしょう。


日本でも「バニティサイジング」ってやってるところ
あるんでしょうか。

最近は小学女児向けの服を成人女性が着るのが流行ってる
そうですし、きっとどこかやってるメーカーあるでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 07:29 | コメント (5) | トラックバック

インターネットマガジン休刊

インターネットマガジンがとうとう休刊ですねぇ・・・

同誌が創刊されたのは1994年9月でした。
94年は、日経新聞などで「インターネット」の進展が
頻繁に取り上げられ始めた年で、私は、
「インターネットのメディア登場元年」と呼んでいます。


当時、私はシンクタンクの研究員でしたが、
インターネットのただならぬ動きに注目し、大いに興味を持ち、
自分の目で、「ホームページ」がどんなものか、
見たくて見たくててたまらなかったですね。
(まじめなやつも、エロいやつも・・・)

もちろん、まだインターネットは、一般社員が使える環境には
なっていませんでしたし、個人で契約するにしても、当時は
従量課金で月数万円以上、とても手が出せない。

そんな頃、ほぼ唯一のインターネット専門誌としてワクワク
しながら読んだのが「インターネットマガジン」でした。


95年前半には、ベッコアメインターネットが個人向けに
定額制のネット接続サービスを開始し、私もちゅうちょなく
飛びつきました。

以来、私はどっぷりとインターネットの世界に浸かり、
いわゆる「インターネットマーケティング」の領域での
活動がかなりの割合を占めてきました。


インターネットマガジンは、私もいつしか購読しなくなって
いましたが、それは、インターネットをどう使いこなすか、
という段階から、インターネットをどのようにビジネスや
マーケティングに応用するか、という段階に入った頃の
ように思います。


インターネットマガジンの休刊の理由は、

社会全体に大きな影響を与えるまでに進化したインターネットを
一つの(総合)月刊誌でカバーすることがむずかしくなった

からだそうです。


考えてみれば、もはや「インターネット」という言葉は
あまりに当たり前すぎてほとんど使いませんよね。

インターネットは暗黙の前提としてわざわざ言うまでもない。

いきなり、「Web2.0」とか「マッシュアップ」とか
個別の話題に入るようになりました。


これまでは、インターネットの「量的な側面」、つまり
普及率といったことが話題の中心でしたが、これからは、
ネットのより深い活用、つまり「質的な側面」が注目
されるわけです。

これは、弁証法でいう「量から質への転化」が始まっている
と言えるんでしょうね。量的な変化がある時点で質の変化
へとつながるということです。

そうやって物事は進化していく。


田坂広志さんは、「量から質への転化」のタイミングは、
そのキーワードがメディアで取り上げられなくなった時
だとおっしゃってました。

メディアは常に新しいものを追いかける。

新しい言葉、そして、その言葉が指し示す意味なり概念が
すっかり定着したた時、メディアは、その言葉は
取り上げるだけの価値があるとはみなさなくなる。

つまり、メディアは言葉を消費してしまうわけです。
しかし、それは、その言葉の終わりを意味しないのです。

むしろ、そこから質的な転化、新たな進化が始まるという
ことだそうです。

インターネットマガジンの休刊は、インターネットの量から
質的転化を示すひとつの徴候でしょうね。


ともあれ、インターネットマガジンにはお世話になりました。
ありがとう。

投稿者 松尾 順 : 18:16 | コメント (0) | トラックバック

記事かと思ったら広告だった

私が読んでいる日刊のメルマガは10誌くらいあるのですが、
その中で、しばらく読み始めてから、

「あれ、これ広告じゃないか」

とわかって、怒りの鉄拳を振り下ろしたくなるものがあります。


いつもとまったく同じ体裁で、本文中に広告コピーが展開されて
いる。なのに、タイトルにも本文にも、
「号外」とも「PR」とも「広告」とも書いてない。

本文と勘違いさせて開封率、精読率を高めようという
魂胆でしょうけど、フェアじゃないですよね。
ユーザーを欺く行為ですから。

記事と広告・PRは区別ができるように明示しなければ
いけないのはメディアの常識、倫理です。
(記事は、本人の判断で書きますが、広告・PRはお金を
もらって書くものですから、読み手が区別できないと、
記事の信頼性が損なわれますよね)

しかし、メルマガのような個人ベースで運営されるマイクロ
メディアの場合、まだうるさく言う人がいない。
なので、知らぬ顔で記事まがいの広告を発行してるんでしょう。


さて、同じようなことがブログの中でも発生してますし、
これから問題となってきそうです。

最近、ブログの本文中に宣伝コピーを
書くことでお金をもらえるサービスが登場しています。

例えば、昨年12月からベンチャー企業、エニグモさんが始めた

「プレスブログ」

では、新商品を紹介するブログの書き手会員を募集しています。

エニグモでは、企業からサービスを受注すると、商品内容の紹介、
文中に必須のキーワードなどを挙げて、執筆を促すメール
マガジンを会員に送ります。

会員がこれを受けてブログを書き、書いたことを同社に報告すると、
1件あたり500円-1000円の報酬が書き手に支払われるそうです。

登録会員は4月末で10万人を突破。

ブログは、いわゆる「ネット口コミ」のメディアです。
企業としては、こうしたサービスの活用にも大いに
期待しているでしょう。


ただ、登録会員は、普段は、広告用のブログだけを
書いているわけじゃないですよね。
(アフィリエイトだけのブログとかたくさんありますが、
 それは初めからそれに徹しているのでなんら問題なし)

エニグモから、記事掲載の依頼があった時だけ書くことに
なるわけですが、まさか、今回は「広告」ですとは
書かないんじゃないでしょうか。

おそらく、いつもの通りの文体で、
たまたま面白い新商品を見つけたかのように書くと思います。
(私が書くならそうしますね。お金もらって「ちょうちん記事」
書いてるということをアカラサマにするのはいやですから)

だとすると、いくら個人の日記であったとしても、
やはりメディア倫理上の問題が発生するんじゃないでしょうか。

*以上は、私の推測なので誤解があったらお詫びします。


「プレスブログ」のWebサイトを見ると、
新商品発売などのプレスリリースを個人ブログで「記事」と
して取り上げてもらうという説明がなされていますが、
内容掲載に対価を払うならば、それを「記事」と呼ぶのは
まずいでしょう。

マスメディアでは、記者がお金をもらって記事を書くことは
ありません。(少なくとも建前としては・・・)

したがって、報酬をもらって書くブログは「広告」であって
「記事」という認識にはならない。
仮に百歩譲っても「ペイドパブ」(PR記事)です。
しかも、そのことは明記される必要があります。


エニグモさんのサービスにケチをつけるつもりは
ありませんが、このあたりの倫理上の問題が今後浮上して
きた時、大企業ほどこうしたサービスを利用しづらくなります。

つまり、倫理上の問題が企業成長の障害になりかねない点、
警鐘を鳴らしておきたいと思います。


今後、ブログも有益な広告媒体として活用したい
われわれマーケターとしては、ネット広告における
メディア倫理基準を確立し、周知する必要がありますよね。

投稿者 松尾 順 : 09:16 | コメント (0) | トラックバック

マーケティングコミュニケーションの冗長率

メシ、

ハイ

フロ、

ハイ

ネル。

・・・。

枯れた夫婦の会話です。(笑)
余分な言葉が一切そぎ落とされたムダのない言葉だけ。

こういうコミュニケーションを「冗長率」が低いと
言うそうです。

長年連れ添ってお互い十分わかりあっている
(またはわかりあえないとあきらめた?)ような関係では、
伝えたいことだけを言葉に出すだけで相手に通じるから、
冗長な尾ひれはいらないんですね。


一方、お互い知らないもの同士がコミュニケーションを
行う時、相手の考え方や反応がわからないので、まずは
「最近雨ばかりですね」などと、当たり障りのない話から
始めて、少しずつ距離感をつめていきますね。

そして、ある程度わかりあえたと感じた段階から、
もっとシリアスな話題、例えば商談に入っていく。

つまり、親密な間柄よりも、お互い知らないもの同士の方が、
冗長率の高いコミュニケーションが必要なんですね。
(中身のないどうでもよい話をヒマにまかせて
 友人とだらだら続けるというのとは、次元の違う話ですよ)


劇作家・演出家の平田オリザさんによると、
夫婦のような親しい関係で行われるコミュニケーションを「会話」、
あまり親しくない関係でのそれを「対話」と呼んで
区別しているそうです。
(英語では、前者は「Conversation」、後者は「Dialogue」です)


「会話」は、基本的に同じ土壌に立つ者同士が、
相手にしてほしいこと、伝えたいことをストレートに言うことが
目的になります。


一方、「対話」は、価値や情報の交換が主な目的になります。
つまり、異なる人格・価値観を持つ同士が、
お互いの考え方をすり合わせることです。

したがって、それぞれが伝えたいことだけを伝えようとして
ガチンコ勝負してしまうと摩擦が生じやすくなります。

そこで、無駄な言葉を挟むことによって、
摩擦を和らげる必要がある。だから、
「対話」では、冗長率が高くならざるを得ないわけです。


この「会話」と「対話」の区別や、冗長率の高低は、
マーケティング・コミュニケーションにおいても十分意識
する必要がありますよね。

よく聴く話ですが、優秀な営業マンは雑談が得意です。

営業とはお客さんとの対話です。
少なくとも最初は親密でもない関係のお客さんに対して

「自社商品はこんなにいいんですよ、買ってください」

という価値観や意思を最終的には伝えなければいけない。

もちろん、このことをストレートに言ってしまったら
拒否されるだけ。

まずは冗長率の高いコミュニケーションを通じて、
相手の考え方や感情、反応パターンを十分に読みきってから
本題に入る必要がある。

営業マンは雑談ができないと基本、うまくいかないわけです。


広告やWebサイト、メルマガでも同じでしょう。

限られたスペース、時間、文字数などの中で、
お客さんとの関係を十分に測った上で、適切な冗長率の
コミュニケーションを図る必要がありますよね。

自社の商品情報満載のメルマガが、読み手からみたら
まるでつまらない理由もこのあたりにありそうです。

投稿者 松尾 順 : 07:00 | コメント (2)

4つの関係性で見る

昨日「仮説」の話を書きましたが、実は、
「仮説」という言葉が嫌いな先生がいらっしゃるんですよね。

今、秋葉原の再興のプロデューサーとして活躍されている、
妹尾堅一郎先生(東京大学特命教授)です。

妹尾先生は、昨年まで学生と社会人合同の勉強会を週末に
開催されていて、私もメンバーの一人でした。
(最近は、上記秋葉原プロジェクトでお忙しくて勉強会を開く
時間が取れないようですが)

この勉強会では、ディスカッション中に、うっかり「仮説検証」
などと口にしようものなら、妹尾先生の顔色がさっと変わり、
にらみつけられたものです。(笑)

なぜ、「仮説検証」は禁句だったのか、
ぼんくらなことに、私は正確には思い出せません。

確か、「仮説検証」は、現状の問題解決が前提となってしまう。
したがって、妹尾先生の提唱されている、

「新たな課題(構想)を生み出す」(構想学)

ためにはあまり適していない考え方だから、という理由だったと
思います。(もちろん、文脈が違うから適切でないというだけで、
「仮説検証」の考え方を全面否定されているわけではありません)


さて、新たな課題(構想)を生み出すというのは
要するに「発想すること」です。

そして、妹尾先生からは、「発想する方法」についていろいろと
教えていただきましたが、わかりやすくて有効な方法として

「物事の関係を4つの視点で見る」

というものがあります。


4つの視点とは、

・補完
・相乗
・代替
・相殺

です。

*ここで言う「補完」とは、補うというより「付加価値」を
 与える何かのこと


例えば、「コーヒー」

コーヒーの補完関係にあるのは何でしょう?

ひとつは「ミルク」ですね。あるいは「シナモン」もそう。

では、コーヒーの代替関係にあるのは?

紅茶、日本茶などですね。

では、コーヒーの相乗関係にあるものは?

ケーキ、チョコレート、人によってはタバコ、となります。

コーヒーの相殺関係に当たるのは、
たとえば、「いかの塩辛」とかでしょうか。
塩辛を食べながらコーヒーを飲む人はまずいないでしょうけど、
一緒に飲食したら、どちらの味もだい無しですね。
(そんな組み合わせが好きな人もいるでしょう、どうぞお好きに)


どんなことにも、この4つの関係性は発見できますよね。

「ラーメン」なら、

補完:チャーシュー
相乗:ギョーザ、ライス
代替:そば、うどん
相殺:シュークリーム(普通はありえないですが)

などなど。

では、「日本酒」における4つの関係性に当たるものは?
(良かったら、考えてみてください)


この考え方は、事業・商品・サービス開発、マーケティングなどの
アイディアを出したいときに、簡単で有効な方法です。

投稿者 松尾 順 : 06:28 | コメント (4) | トラックバック

仮説をぶつける

「仮説」とは何でしょう?

マーケティング・リサーチャーとしては、
「調査仮説」という言葉が身近なものとしてあります。

でも、「仮説」とは何かをわかりやすく説明してある本は
今までほとんどみたことがありません。不思議なことなんですが。


私が講師を務めさせていただいている
「マーケティングリサーチ」のセミナーでは、
「調査仮説」を次のように説明しています。

「裏づけのない自分の勝手な思い込みの因果関係」


具体的に説明しますね。

「自社の製品の売れ行きが落ちてきたので、
 売り上げを回復する手を打ちたい」

というマーケティング課題があったとします。

このマーケティング課題に対して、
調査をやることになった場合、
通常、調査課題(目的)は、

「製品の売り上げ低下の理由を把握する」

ということになるでしょう。


この次に、「調査仮説」を立てるわけです。

自社製品の売り上げが低下してきた原因は、

-製品が陳腐化してきたから
-より魅力的な競合製品が登場したから
-消費者の低価格志向化が進んで、価格が割高に
 感じられるようになってきたから
-小売店の棚における自社製品のスペースが縮小
 されているから
-広告で起用したタレントの人気が良くなかったから

など、いろいろ挙げることができます。

ただ、これらの原因は、まだどれが正しいのか、
確証はありません。裏付けとなる事実、データが
手元にないからです。

要するに、「調査仮説」とは

「おそらく“自社製品が売れない”(結果)の
 原因は、こんなことだよね」

と各自が「勝手に考えている思いつき」に過ぎない、
因果関係です。

そこで、こうした仮説のどれが正しいのか、
事実、データの裏づけを取るのが「調査」の役割です。

ですから、逆に言えば、調査をするに当たっては、
基本的に、まず「仮説」を立てない限り、
「何を具体的に調べたらよいのか」が
わからないことになります。


さて、「仮説」については、
日経ビジネス最新号(2006年5月15日号)のインタビューに
登場した伊勢丹社長、武藤信一氏が、
もっとわかりやすい説明をしてくれていますね。


「売り場のスタッフが、お客さまの本音を引き出すのは
 難しいのでは。」

という記者の質問に対し、

武藤さんは、同席していた日経ビジネスのスタッフに
突然質問します。

「あなたにはお嬢様が2人いらしゃいましたよね?」

「いえ、娘と息子です。」

虚を突かれたスタッフは、真実を教えてしまいました。


武藤氏いわく、

「ねっ。お客様は、仮説をぶつけると、
 こうやって必ず正直に答えてくれるんです。」


なるほど!

「仮説」を立て、ぶつけることで初めて真実が引き出せる
ということなんですね。


なお、「仮説」というのは、日常の仕事においては
「問題意識」と言い換えることができます。

「なぜ~は~なんだろう」
「多分~だからだ」

と考えるのが問題意識。

これは、自分なりの勝手な因果関係を考えてみること
ですから、まさに「仮説」です。

で、じゃあ、この「仮説」を検証してみよう、
ということで具体的なアクションになる。

すると、真実が見えてくるというわけです。

投稿者 松尾 順 : 06:03 | コメント (0) | トラックバック

前向きな中国の消費者

オンラインモニター(回答協力者)を抱えるネットリサーチ会社
は、日本市場が飽和状態なのかどうかわかりませんが、
外国進出を本格化させるところが増えていますね。

特に今、調査ニーズがあるのは、
やはり日本企業が積極的に進出している「中国」のようです。
(近い将来は「インド」でしょうね。)


昨日の日経産業新聞(2006.05.11)によると、
インフォプラントさんは、今月中に自前で集めた現地モニターを
使ったネット調査を開始するそうです。

これまでは、現地提携先のモニターを利用してきたのですが、
選択式の調査をやると、全体的に回答が前向きな方にブレやすい
という傾向が分かってきたとのこと。

そこで、自前のモニターに対しては、選択式回答に加えて
「自由回答」を中心にした調査を実施できるようにして、
中国消費者の本音を引き出すようにするそうです。


「回答が前向き」という意味が、この記事だけではもうひとつ
はっきりしません。

そこで勝手に推測してみますが、
高度成長期が続き、消費意欲も高い中国ですから、
「いけいけどんどん」「ポジティブシンキング」のかたまり、
何事にも鷹揚で肯定的な消費者が多いのかも知れません。


海外調査の場合、個別の回答者に起因する違いだけでなく、
上記のような国民性の違いや、時代の気分のようなもので、
回答に偏りが出てくることを注意する必要があるんですね。


そういえば、同じ日の日経産業新聞の別の記事では、
某日本企業の中国現地会社の社長を最近、
日本人から中国人に切り替えているということが
書いてありました。

なぜなら、日本人は「改善」はできるが「改革」はできないから。

猛スピードで変化しつつある中国では、やはり
中国人じゃないと迅速、大胆な意思決定はできない、
と判断したようです。


成熟国家の日本で暮らしていた気分のままで、
成長国家の中国に赴任しても通用しないんでしょう。

調査モニターの意識が日本と中国で違ってくるのも
こんな話を聞くと当然だと思えますね。

投稿者 松尾 順 : 07:40 | コメント (0) | トラックバック

成功するために失敗する

人気メルマガ「プレジデントビジョン」の今週のゲストは、
人材採用や営業のコンサルティング会社「ワイキューブ社長、
安田佳生氏です。

安田さんは、物言いが実にストレートなので私は大好きです。
(面識はないのですが)

ワイキューブは、営業電話をかけまくる「プッシュ型営業」
から、問い合わせを増やして売りにつなげる「プル型営業」
に転換して成功した会社です。

「プル型営業」のことを同社では「反響営業」と言ってますが、
これは要するに「見込客創造」のためのマーケティングに重点を
移したということですね。


安田さんは、広報についての考え方も実にユニークです。

メディアに記事として取り上げてもらうために一番大事なのは
文字通り「ニュース性」があるかどうか。

目新しいこと、変わったことじゃなきゃ掲載する価値が
ないわけです。

安田さんはこのあたりの理解を踏まえて、

「必要のないことをやれば、記事として扱ってもらえる」

と言い切ってます。

それで、安田さんが実際にやったのは、例えば
社員用に1本1万円のオリジナルの傘を作ったこと。

社員200人に配ると200万円の費用です。

これは常識的な経営判断では「無駄遣い」。
必要のないことにムダ金を使っているということになります。

しかし、こんな不必要なことをやるからこそ、
ニュース価値が出てきてメディアが寄ってくる。記事になる。

200万円の広告費用をかけるよりよっぽど安上がりで、
かつ社員満足度も上がるのです。

ワイキューブのオフィスも、地下にバーを設置し、
ワインセラーもあったりと、仕事をやる場所という視点で
評価すると不必要なものだらけ。

でも、あちこちの媒体で紹介された結果、
ブランド価値は確実に向上してますからね、
外野がケチをつけるわけにはいきません。


安田さんの成功するための考え方も本質を突いていると
思います。

成功パターンを学ぶのではなく、逆説的ですが、
失敗パターンを学ぶべきだというんですね。
売れない理由、反応がない理由を解明してつぶしていく。

安田さんによれば、失敗パターンは20パターンくらいだそうで、
それらをつぶしてしまえば、ある程度明確な成功曲線を描ける
のだそうです。

大事なのは、実際にやってみて失敗しないと駄目だという点。
失敗を避けていては失敗から学べないということ。


全くその通りだと私も思います。

過去の成功者である大手企業が成功し続けることが難しいのは
ここにあるんだなと思いました。

現在の事業で儲かっていると失敗による損失を恐れてしまい、
新たなチャレンジができなくなる。失敗もしないかわりに、
新たな成功曲線も見えないので新興企業にしてやられてしまう
わけです。

投稿者 松尾 順 : 10:23 | コメント (0) | トラックバック

「購買動機」を読むのは簡単じゃない


博報堂買物研究所の所長、長谷川宏氏の話です。
(販促会議2006.6)


ある流通の売り場担当の方が、自店の売り場について、

「この売り場に来るお客さまは、自分の買いたい商品を
 パッと手にとって、すぐにレジに向かう。
 ここは、とても買いやすい良い売り場なんだ。」

と語ったそうです。


ところが、お客さまの気持ちを調べると、

「あの売り場は何の発見もないし、とてもつまらない。
 とにかくすぐに立ち去りたい」

というものだったのです。


要するに、

「お客さまがすぐに買うものを決めてレジに向かう」

という行動の背景にある「購買動機」は、

「その売り場にいたくなかったから」

であって、

「良い売り場だから」

ではなかったということです。


長谷川氏は、

「同じ行動、同じ状況を見たとしても、売り手と買い手では
 全く受け取り方が変わってくる。常にその前提に立って、
 売り場のリサーチをすることが必要です。」

と述べています。


私たち人間は、相手の「行動」を手がかりに
相手の「心理」(気持ち)を解釈(推測)する力を持ってます。
(他の動物にはこの力はほとんどありません)

しかし、売り手という立場になると、
不思議と「行動から心理を解釈する力」が低下します。

行動を解釈するための「枠組み」(フレーム)が
ゆがんでしまうようなんですね。


この「枠組み」とは、わかりやすく言い換えると、

自分に都合のいい「思い込み」

のことですが、これが、
お客さまの行動の奥にある本当の心理(購買動機)を曲解してしまう。


そこでよく、「思い込み」を捨て、「買い手の立場」に立って
考えろと言います。

また、買い手としての自分の気持ちを振り返ってみる「内観」
というリサーチ手法もあるのですが、「思い込み」を消し去るのは
なかなか難しい。


そこで、買い手に対するリサーチをやらざるを得ないのですが、
最近、「3秒間動機」という面白い調査があるのを知りました。

調査会社のドゥハウスさんが提供しているサービスです。

「3秒間動機」の調査とは、実際に買う商品を決めている売り場で、
お客さまがどうしてその商品を買うのか、その「購買動機」を探る
ものだそう。

下記の本で詳細が紹介されてました。

「買う気にさせる3秒ルール」
(喜山荘一&ドゥハウス著、中経出版)

投稿者 松尾 順 : 14:39 | コメント (0) | トラックバック

デジタル化する感性

先日、コンガのレッスンを受けているプロのパーカッショニストの
先生との雑談で、最近の音楽業界事情が話題に上りました。

このところCDが売れない状況が続いているので、
相応の販売が見込めるトップアーティストでもない限り、
レコード会社も簡単にはCDを出してくれない。

したがって、仕方なくCDを自主制作するアーティストが
増えているのが現状。また、あえてCD化せずに、Podcasting
のような仕組みを使って、MP3化した音源をオンラインで
バラ売りすることも増えている。


ただ、オンラインでの音楽販売をやる場合に気になったのが、
MP3(あるいは他の圧縮方式)化することによる
「音質」の低下です。

特に、パーカッションを初めとするアコースティックな楽器は
音の厚み・深みが失われてしまいますので、
音質の悪さを理由にMP3プレーヤーを使わない人もいますから。


しかし、コンガの先生によれば、
最近は、MDやMP3プレーヤーからしか音楽を聴かない人が
多くなってきたので、高品質な音、本物の音を知らない。

だから、そもそも「音質の良し悪し」を聞き分けることが
できないので、「音質」はあまり問題とはならなくなってきた、
とのことでした。

デジタルな音に慣らされた耳は、アナログ的な微妙な音の違いを
聞き分ける能力を失いつつあると言えるでしょうね。


同じことは、「目」についても言えるようです。

パソコンモニターやテレビゲームのコントラストの強い、
派手な画面に慣れた目は、階調が豊富で自然に近い写真は、
「地味」に映るため好まれなくなってきたのだそうです。

このため、こうしたユーザー側の感性の変化に合わせて、
印刷媒体の写真は単調になってきている。

つまり、プロに言わせると、
写真の「品質」は、意識的に低下させられているわけです。


とても残念なことですが、自然な音や画像に近づけようとする努力
が徒労に終わるだけでなく、逆にユーザーの受けが悪くなること
さえある。

デジタル化社会が生んだ功罪といえるのでしょうけど、
こうした「デジタル化する感性」に対して、
様々な表現形式を駆使するマーケターも十分な注意を払う必要が
ありますね。

投稿者 松尾 順 : 07:39 | コメント (4) | トラックバック

ユーザーが主役

連休の半分は、家の用事のため自宅に張り付いていた私ですが、
インターネット無しの世界にはもはや住めない体質です。

メールは毎日チェック、最近は、ミクシィ、グリー、楽天日記
など、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も
日課になっています。

こうしたメールやSNSのように利用頻度の高いものは、
当然ながら使い勝手の良さや、自分の好きなデザインかどうか、
などが大事になってきますよね。

実際、あまり深く理由を考えたことはないのですが、私は
ミクシィがなんとなく使いやすいように感じて、
最も多く利用しています。

こんな、使い勝手やイメージのちょっとした(大きくない)
差異が、ミクシィが日本最大のSNSへと成長した背景に
あるのかもしれません。


一方、米国最大のSNSは「MySpace」です。
今年後半には、日本進出を計画していることが報道されました。

しかし、実は、米国のSNSで最初に成功したのは
「Friendstar」でした。特に10代に人気があったんですよね。

ところが、後発の「MySpace」に
あっという間に追い越されてしまった。


技術面、デザイン面では、明らかに「Friendstar」が優れている
というのがIT専門家の一致するところ。

なのに、なぜ「Myspace」が勝ち、「Friendstar」が負けたのか。


この理由は、「Myspace」はユーザーの自由を許したのに、
「Friendstar」は、ユーザーの行動を規制したことに
あるようです。

たとえば、「Friendstar」では、デザインに厳しい制約を置いて
いたため、ペットの写真の投稿を禁止したそうです。
一方、「Myspace」は、ユーザーの好きなようにページをデザイン
させました。

結果として、Myspaceには、デザインセンスの欠けた極端に
見苦しいページも登場したそうです。でも、
そうした自由さが、特に10代のユーザーに受けたんですね。


「Myspace」のページを私は見たことはありませんが、
見た人によれば、“10代の子供たちの「寝室」のよう”だと
形容しています。散らかし放題の子供部屋を連想させるようです。

大人が見れば「ちょっとはキレイにしたら?」と言いたく
なるものですが、子供たちにとっては、その乱雑さが居心地
いいわけなんですよね。


この話は、編集会議(2006.6)のウェブニューストピックスの
記事から拾ったものですが、

結局、誰のためのサービスなのかを企業は理解しておくべき
だということ、

また、ユーザーが主役であるという視点(いわゆる
「顧客中心主義」ですね)でサービスを設計、運営しないと
ユーザーから簡単に見放されてしまうということ、

なんでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 13:48 | コメント (2) | トラックバック