自動ドアを廃止して得られるもの?

高級ホテルに行くと、ドアマンがエントランスのドアを
うやうやしく開けてくれますよね。

あれはなんだかいい気分です。(^-^)

偉くもない自分が偉くなったような、一種の優越感。
実にいい。

しかし、

「ドアマンの費用対効果はどうなんだろ?」

などど野暮なことを考え出したら、夜も眠れなくなるでしょう。


ドアマンはホテルの顔であり、お客さまの第一印象を形成する
最も重要な役割を果たしているのは確かです。

ただその効果を定量的には図れませんね。

したがって、「ドアマンは収益に間違いなく貢献する」
という経営者の「信念」が、彼らの存在を支えているのです。


さて、訪問営業をしない高収益ディーラーとして有名な
「ホンダクリオ新神奈川」では、同社のショールームから
自動ドアを撤去しました。

手で開けるドアに戻したのです。
効率優先の自動化時代に逆行してますね。

改装費用は1店200万円以上。
自動ドアの減価償却が終わっていない店舗もありました。

私は自宅が千葉・松戸ですので、同社店舗に行く機会は
ないのですが、おそらく、お客さんが来店すると、
お店のスタッフがすぐにドアを開けて出迎えるのでしょう。

帰り際も当然、ドアを開けてお見送りします。
すると、お客さんも

「ありがとう」

と声をかけてくれるそうです。


自動ドアをなくす改装費用は高額でしたが、
お客さんの大切にされたいという気持ち、つまり「自己尊重感」
をくすぐり、優越感を与えているだけでなく、
ドアを開けるだけで、「借り」(恩)まで作らせています。

ただドアを開けてあげるだけのさりげないことですが、
あからさまに恩を売るより、はるかに無意識に溶け込むでしょう。

そして後になって、なぜだかわからないけれど、
「あの店で車買ってあげなきゃ悪いなあ」という気持ちに
お客さんはなっているでしょうね。


この時代に逆行する投資がどれだけのリターンを生み出すのか、
定量的な評価は無理でしょう。しかし、同社の相沢賢二会長は、
確実にペイするという「信念」を持っているに違いありません。
相沢氏は、人の心理がよくわかっているマインドリーダーの
マスターと言えるんじゃないでしょうか。


似た事例としてこんなのがあります。

都内観光の「はとバス」では、
バスの座席を5cmだけ高くする改装を1台あたり約200万円
かけて行っています。

これは、たとえ5cmでも高いところから周囲を見下ろすことが、
お客さんに心地よい優越感を与えるからという判断です。

これも、やはり経営者の「信念」によって行われていること。


経営者は、優れたマインドリーダーであり、かつ信念を持って
たとえ検証が難しくても、必要な投資を行う胆力が
必要なんだと思います。

*ホンダクリオ新神奈川の事例は日経産業新聞(2006.01.13)より

投稿者 松尾 順 : 2006年01月18日 10:30

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