炭団の夜

先日夜、前の会社の元同僚たちと、御茶ノ水駅そばの

「焼肉居酒屋 炭団(たどん)」


に行ってきました。


炭団は、3月20日にオープンしたばかり。
居酒屋大手「ワタミ」の新業態1号店です。

あのワタミさんが焼肉店展開に打って出る最初の店ですから、
美食家マーケター(笑)としては必見。

「実地調査」に乗り込んだというわけです。


さて、調査結果を簡単にご報告しますと、まず魅力は安さ。

カルビ、ハラミ、ピートロ、ホルモンなど、
各種の「基本肉」が380円から。

値段のわりには柔らかくておいしいね、というのが
元同僚たちと一致した意見です。


ただ、日経MJの記事(2006.03.24)によると、
炭団のカルビは80グラムで380円。
一方、牛角は、同110グラムで490円ですから、
グラム当たりの価格比較では大差がありません。

それでも、絶対価格の「380円」は、
単純に「安い」と感じます。

このあたりは、さすが顧客心理をよく読んでいますね。


また、目立つ点としては、ドリンク類の豊富さです。

ビール、サワー、ワイン、焼酎(日本、韓国)、ウイスキー、
日本酒、カクテル、なんでもござれといった感じ。

このドリンクメニューの充実にもちゃんと理由があります。

焼肉で一定の品質を保ちつつ手頃な値段で提供しようとすると、
ワタミの既存の居酒屋の食事メニューよりも、
粗利益率が10%ほど低下するそうです。このため、代わりに
ドリンクをたくさん飲んでもらって利益確保を狙っています。


また、なにせ開店して1週間ほどの一号店ですから、
サービスも気合入っていますね。

スタッフのモチベーションも高いし、
十分な教育を受けていることがうかがわれました。

来店時には、においがつきにくいようにコートやスーツの
上着を入れる「コートカバー」を貸してくれたり、
コートやかばんなどを入れられる「収納ケース」が
各テーブルの下に置いてあるなど細かい気配りにも感心。

残念ながら、まだ「オペレーション」が十分に回っていないようで、
最後に頼んだ「カルビクッパ」を食べたらやたらぬるい。
調理に失敗したようです。

すぐに作り直してくれたのでOKでしたけどね。

まあ、でも全体としてみれば、

「牛角に勝ってるかも!」

という感想です。

事務所から近いのでまた行きたいと思います。
リピーター作りの仕掛けはなんにもやってなかったですけど。


ところで、ワタミさんがなぜ焼肉屋を始めたのか。

社長の渡邉美樹氏によると、居酒屋マーケットが予想以上に
縮小しているからだそうです。(日経アソシエ、2006.03.07)

居酒屋のメインターゲットである若年層が長期的に減少していく
見込みであることに加えて、日本経済が二極化。

居酒屋は、生活レベルではいわゆる「中流」を
お得意さんとしてきたわけですが、近年、中流が上流(富裕層)、
もしくは下流(いわゆる年収300万円以下の世界)に分化し、
上流と下流の間が空洞化しつつあります。

上流の人たちはめったに居酒屋には行きませんし、
下流の人たちは、居酒屋の代わりにコンビにで酒を買って
自宅で飲む。

つまり、中流層市場が限定・縮小する中で、
収益を維持、拡大するためには、「居酒屋」業態の中で
いくらバリエーションを増やしても利用客は増えない。


そこで、新業態というより新業種と呼べる「焼肉店」を
立ち上げることがベストの戦略と判断したようです。

渡邉社長によると、「中華」にも目をつけているそうですので、
ワタミ版「中華料理店」の登場も近いかも。

投稿者 松尾 順 : 2006年03月30日 13:00

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