どんな家が欲しいのか、依頼者にはわからない

脳科学者、茂木健一郎さんが司会を務めるNHK
「プロフェッショナル仕事の流儀」は、毎回いろんな業界の
「職人」が登場してなかなか良いのですが、ご覧になってますか?

先週は、建築家、中村好文さんでした。

暖かい人柄を感じさせる方で、
仕事を楽しんでる様子がほのぼのと伝わってきました。


さて、中村さんは、「人の生活が好き」だから、
という理由で個人向け住宅設計しか手がけないそうです。

中村さんが設計を引き受けたら、
まず施主のご家族と打ち合わせをするんですが、

「どんな家が欲しいですか?」

とは決して聞かないんですね。


「ご主人は、朝何時に起きるんですか?」

「で、朝食はご家族で?」

などと、家族の行動をざっくばらんに聞いていきます。

中村さんは、そんな雑談のような会話の中から、
この家族が心地良いと感じる家は、
具体的にはどのようなものなのかを探っていくわけです。


番組の中で、中村さんに設計を依頼した家族の8歳の男の子が、
カメラを向けられて「どんな家が欲しい」とNHKの人に
聞かれていたんですが、この子はこう応えたんですよ。

「家族が安心して・・・楽しく暮らせる家」

ふーむ、実に優等生的回答です。(^-^)

しかし、彼の回答は本質を突いています。

つまり、人にとって、「家」というモノから、
どんなベネフィット(この子の場合、安心、楽しさ)が
得られるかが大事だということです。


しかし、自分の求めているベネフィットを享受するために、
具体的にどんな家の造りが適しているかは、
素人なので実はよくわからないのです。

たとえ自分はわかっているつもりでも、
それは単に表面的な知識や流行に左右されていただけで、
実際に建ててみたら、住み心地が悪くて後悔することが
ありますしね。

だからこそ、家の構造や機能、性能に詳しいプロの助けが
必要なわけです。


つまり、中村さんは、

「どんな家が欲しいのか、依頼者にはわからない」

ということを踏まえて、

家を建てようとする家族が求めているベネフィットを
彼らの行動や意識から「洞察」し、
建築のプロとしての知識と経験を活かして、
具体的な設計に落とし込んでいるんですね。


このアプローチ、建築だけの話じゃないですよ。

前も書いたような気がしますが、
ターゲットユーザーに、「どんな商品が欲しいですか」
なんてアホな質問をしてはいけません。

投稿者 松尾 順 : 2006年04月20日 06:00

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