消えてしまったものを探せ!

以前もご紹介しましたが、田坂広志さんが最近説かれている
「ヘーゲルの弁証法」によって未来を読む方法は、やはり
有効ですね。


田坂さんによれば、
「ヘーゲルの弁証法」において最も役立つ法則が、

「螺旋的発展」の法則

というものなんですが、これは

「物事は、発展するとき、直線的ではなく螺旋的に発展する」

という意味です。


具体例を挙げると、昔市場で対面で行われていた「競り」が、
現代の大量生産・大量流通システムの中で消えかかっていた
ところに、IT、インターネットの力を借りて、パワフルな
仕組みを備えた「オンラインオークション」として復活して
きたことがそうです。

つまり、昔盛んだったけれど、いったん表舞台から消えていた
懐かしい何かが、新たな付加価値を伴って再登場することです。

これを田坂さんは、「螺旋的発展」では、

「進歩・発展」と「復活・復古」

が同時に起こるのだと指摘されているわけなんですが、
この螺旋的発展をリアルタイムで目の当たりにしているのが
米国証券業界でしょう。


数日前の日経産業新聞のコラム記事によると、

圧倒的な低価格を武器に登場したネット証券は、
数年前には市場取引シェアの半数以上を占めるほどの
隆盛を誇ったそうです。

ところが、ここ数年間の既存証券会社の逆襲で、
ネット証券会社のシェアは15%程度に低下してしまった。

このシェア低下の理由は「競争条件の変化」。

既存の証券会社が手数料をネット証券並みに引き下げた結果、
ネット証券の優位性は失われた。一方で、既存の証券会社は
「情報」を軸にしたサービスを提供するようになった。

しかし、この「情報」を付加価値として顧客に提供する
サービス競争にネット証券はついていけない。

なぜなら、ネット証券は、極限までコストを引き下げるため
にあらゆる余分なものをそぎ落としてしまっており、もはや
付加価値「情報」を提供する能力を持っていないからなんですね。

手数料が同じなら、顧客は当然ながら
サービスのよい既存証券会社が良いに決まってます。

揺り戻しというか、既存の証券会社が螺旋的発展によって
新しい形態の証券会社として生まれ変わってきたというところ
でしょうか。


さて、この事例からもおわかりかと思いますが、
弁証法を未来を読むために活用するに当たってのポイントは、
昔はあったけれど、今は

「消えてしまったものは何か」

を探すことです。

証券業界の場合は、コストダウンの過程で消えていた
「付加価値情報提供機能」がそれに当たります。

この機能を復活・復古させるところに螺旋的発展があった。


田坂さんは、

未来を「予測」することができないが、
「予見」することはできる。

と言われてますが、確かに、いったん消えたものがわかれば、
未来の展開がかなり高い確率で予見できるでしょうね。


ところで、日本の証券業界について、
私はかなり無知なんですが、米国のようなことが起こりつつある
んでしょうか。

ご存知の方、ぜひ教えてください!

投稿者 松尾 順 : 2006年04月28日 13:17

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コメント

松尾さん、トラックバックありがとうございました。

付加価値のある書評。いいですね。勉強になります。

投稿者 ten@10倍ブログ : 2006年04月29日 18:42

ten@10倍ブログさん、こんにちは。
こちらこそトラックバックありがとうございました。

使える弁証法、いい本ですよね。

投稿者 松尾 順 : 2006年05月01日 09:43

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