4つの関係性で見る

昨日「仮説」の話を書きましたが、実は、
「仮説」という言葉が嫌いな先生がいらっしゃるんですよね。

今、秋葉原の再興のプロデューサーとして活躍されている、
妹尾堅一郎先生(東京大学特命教授)です。

妹尾先生は、昨年まで学生と社会人合同の勉強会を週末に
開催されていて、私もメンバーの一人でした。
(最近は、上記秋葉原プロジェクトでお忙しくて勉強会を開く
時間が取れないようですが)

この勉強会では、ディスカッション中に、うっかり「仮説検証」
などと口にしようものなら、妹尾先生の顔色がさっと変わり、
にらみつけられたものです。(笑)

なぜ、「仮説検証」は禁句だったのか、
ぼんくらなことに、私は正確には思い出せません。

確か、「仮説検証」は、現状の問題解決が前提となってしまう。
したがって、妹尾先生の提唱されている、

「新たな課題(構想)を生み出す」(構想学)

ためにはあまり適していない考え方だから、という理由だったと
思います。(もちろん、文脈が違うから適切でないというだけで、
「仮説検証」の考え方を全面否定されているわけではありません)


さて、新たな課題(構想)を生み出すというのは
要するに「発想すること」です。

そして、妹尾先生からは、「発想する方法」についていろいろと
教えていただきましたが、わかりやすくて有効な方法として

「物事の関係を4つの視点で見る」

というものがあります。


4つの視点とは、

・補完
・相乗
・代替
・相殺

です。

*ここで言う「補完」とは、補うというより「付加価値」を
 与える何かのこと


例えば、「コーヒー」

コーヒーの補完関係にあるのは何でしょう?

ひとつは「ミルク」ですね。あるいは「シナモン」もそう。

では、コーヒーの代替関係にあるのは?

紅茶、日本茶などですね。

では、コーヒーの相乗関係にあるものは?

ケーキ、チョコレート、人によってはタバコ、となります。

コーヒーの相殺関係に当たるのは、
たとえば、「いかの塩辛」とかでしょうか。
塩辛を食べながらコーヒーを飲む人はまずいないでしょうけど、
一緒に飲食したら、どちらの味もだい無しですね。
(そんな組み合わせが好きな人もいるでしょう、どうぞお好きに)


どんなことにも、この4つの関係性は発見できますよね。

「ラーメン」なら、

補完:チャーシュー
相乗:ギョーザ、ライス
代替:そば、うどん
相殺:シュークリーム(普通はありえないですが)

などなど。

では、「日本酒」における4つの関係性に当たるものは?
(良かったら、考えてみてください)


この考え方は、事業・商品・サービス開発、マーケティングなどの
アイディアを出したいときに、簡単で有効な方法です。

投稿者 松尾 順 : 2006年05月16日 06:28

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コメント

妹尾先生の仮説の話です。

仮説はモデルの一種といえますけど、SSMでいうと、仮説(=あるモデル)は現実を映している「かもしれない」ひとつの形だといえます。

ご存知のようにSSMの考え方では、モデルと現実を比較して、新たな(豊かな)現実についての気づきを得ようとします。
その立場では、仮説を検証し、結果、採用or棄却したりという使い方を意識するより、次のステージに何を持っていくかを考えた方が、プロジェクト全体の成功には近づく、ということではないかと推測します。

そのときに仮説ありきだと、採用or棄却という文脈に囚われすぎて、そこから他に学べる点はなかったんだっけ?というのがおざなりになるような。焦点が絞り込まれすぎる、といいますか。

どうでしょう?

投稿者 菅原 : 2006年05月17日 10:18

菅原さん、まいど!

そうそう、思い出してきました。
「仮説検証」が妹尾先生の「構想学」と折り合いが悪いのは、
「正しい・正しくない」という視点でしかモノをみなくなり
がちだからでした。

菅原さんのおっしゃるとおり、SSMでは、モデルの改良に
重点がおかれてますからね。

コメントしていただくと、こうして大切なことを思い出す
ことができて助かります。ありがとうございました。

投稿者 松尾 順 : 2006年05月18日 07:38

あっていたみたいですね。

新しい職場に移ってから、マーケティングリサーチのSSM的活用の有効性に、自分でも明示的に気づいて、いろいろ試しています。

ただ、仮説検証という言葉は使っています。
チェックランド的に言うならモード2で使う(SSMを使うと宣言せずにSSMを使う)場合は、その方がメンバーも言葉にまだなじみがあるので、今のステージで何をするのか、わかりやすいことがあります。

ただ、仮説検証というアクションをしてみて、その後、検証結果が数字として正しいように出たけど、(ともすれば、はしごを外すような形で)本当に正しいの?などの問いかけをマーケター/リサーチャー側がしていく必要があるな、と。

プロダクト側、マーケター/リサーチャー側の得意分野もものの見方も違うので、見方の違いをよくぶつけて相互作用を引き出し、合意形成を行うプロセスが有効、ということを最近実感します。

投稿者 菅原 : 2006年05月18日 10:57

SSMはとてもいい方法論だと思うんですが、やっぱり慣れないと難しいですよね。

SSMの専門用語をあえて使わずに、考え方をうまく適用するのが得策なんでしょうね。菅原さん、すごい!

投稿者 松尾 順 : 2006年05月19日 18:21

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