拒否集合の増大

「新しいパソコンを買いたい!」と思い立ったとします。
その時、あなたはどうやって購入機種を絞り込んでいきますか。

まさか、世の中に存在するすべての機種を調べることは
しないですよね。

普通は、デスクトップかノートパソコンかといった
大きな仕様の違いや、だいたいの予算枠を決めた上で、
自分が知っている(思い出せる)メーカーの中から、
買いたい機種候補をいくつか挙げていきますよね。


ここで、自分が知っているメーカー名(および機種名)
のことを

「知名集合」

と言います。

知名集合に入るのは、やはり次のような大手どころになると
思います。

ソニー、富士通、NEC、パナソニック・・・など。


そしてさらに、「よし、この機種の中からどれかに決めよう」
と、購入をじっくり検討する製品群のことを

「考慮集合」

と言います。(ベタな言い方をすると「買いたいやつリスト」)

もちろん、「Mac命!」の人は最初っから
「Apple Computer」しか思い浮かばないし、
考慮集合にはMac製品しか入らないでしょうけど。(^-^)


ただ、大手量販店に行くと、そういえばSharpのパソコンも
あったな、とか、SOTECのようにお手頃価格で買えるメーカーが
あるのを知ることができます。そうすると、そうした新たに
知ったメーカーの中からも、購入機種候補が出てきますね。

つまり、「買いたいやつリスト数」が増加するわけです。

さらに、あなたがインターネットを活用すると、
エプソンとか、マウスコンピューターとか、
さらにたくさんの新たな候補を発見して、
ますます考慮集合が膨れることかもしれませんよね。


つまり、ネットを活用するかしないかで、
私たちの情報量に大きな差が生じ、
「考慮集合」となる「買いたいやつリスト」の数に
大きな差が生じてくるということです。

ま、これはもっともな現象ですね。


清水聰先生(明治学院大学教授)は、
ユーザーのインターネット活用度合いと考慮集合の関係について、
自動車の購入を対象に調査されていて、
上記のような、

インターネットユーザーにおいて
考慮集合が増加する傾向を検証されてるんですが、
その傾向よりもっと興味深いのは、

「このメーカー(機種)だけは買いたくない」
(買いたくないやつリスト)

という

「拒否集合」

もまた、インターネットを活用する人の方が多くなるという点です。


インターネットだと過剰なまでの情報が簡単に集まりますが、
その情報を元に「買いたいやつリスト」に入れるものを選別
していくのと同時に、

「あー、こいつは明らかに使えない」


というものもわかるので、「拒否集合」に入る数も増えて
しまうというわけですね。

以前は、情報量が限られてましたから、買いたいものは
ある程度見えてきても、買いたくないかどうかという
ネガティブな判断はできませんでした。

しかし、情報入手が容易なネットの時代では、
駄目な商品はばっさり斬られてしまうわけです。


清水先生は、

「企業にとってインターネットは両刃の剣となることが
 明らかにされた」

と上記研究を収録した著書、

「戦略的消費者行動論」(清水聰著、千倉書房)

で書かれていますが、ほんと、他社と横並びの平凡な製品しか
市場に出せないメーカーは、すぐに「拒否集合」に入れられて
しまって日の目を見ることがない、
そんな厳しい時代になっちゃったんでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 2006年05月24日 10:56

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