ガキが着るものはイヤ

子供服ブランドで急成長してきたナルミヤ・インターナショナル。
ご存知でしょうか。

同社社長、成宮雄三氏の本、

「チャンスは6時の方向にある-小が大に勝つ逆張りビジネス論」

を読むと、成宮さんは、前例にとらわれない大胆なアイディアで
逆境をチャンスに変えてきた人であることがわかります。


さて、事業に100%の成功はなく、時に失敗することも
覚悟しなければなりませんが、
ナルミヤインターナショナルさんも最近、

「ブランド拡張戦略」

に失敗しちゃいました。
(日経MJ、2006.05.26の記事より)


同社の主力ブランドは、小学校高学年~中学生のジュニア向けの
「エンジェルブルー」です。
ジュニア服としては異例の1万円を超える値段のものでも
飛ぶように売れているというので、注目されていたわけなんですが。

ナルミヤさんはここで欲を出しすぎたか、エンジェルブルーの
支持層を広げるべく派生ブランド、

「エンジェルブルーキッズ」

を04年8月、発売します。小学校低学年層向けです。

子供服という同じカテゴリーながら、新たなターゲット市場を
狙った「ブランド拡張戦略」を採用したんですね。


ところが、しばらくして既存ユーザーだった小学校高学年~
中学生女児が同ブランドを購入しなくなり、
ナルミヤの百貨店などでの売上げは、04年11月から前年割れを
始めるようになります。

結果として、直近年度の2006年1月期の決算は、1995年以来、
初めての減収減益に陥りました。


エンジェルブルーのような、既に確立されたブランドをテコと
して新市場に展開するのは、新たなブランド構築のための投資が
最小限で済むので大変効率的ですが、
同時にブランド拡張の「リスク」にも注意を払う必要が
ありますよね。

ブランド拡張のリスクの一つは、あまりにも広範囲にブランドが
拡散してしまうことによる「希少価値の減少」です。

もう一つは、新たに加わったネガティブなブランドイメージが
もたらす「ブランド価値の破壊」です。


「エンジェルブルーキッズ」の場合、後者のケースです。

キッズという言葉が付いてはいるものの、

エンジェルブルーは低学年のガキが着る服というイメージ

が広がりました。
このため、従来の小学校高学年~中学生のユーザーにとっては、
「ガキが着るものはイヤ」だということで、
ネガティブなブランドイメージが付加されることになったんですね。


一般論として、ユーザーのライフスタイルを表現するような
高級ブランドの場合、それが格下の層(下層階級や低年齢層)に
広がった時点で、従来のユーザーはそのブランドから離れて
いきます。自らのライフスタイルとのイメージのズレが発生
するからです。

このような従来のユーザーが購入をやめてしまうような
新たなユーザーのことを、オピニオンリーダーの逆の意味で、
「ディスオピニオンリーダー」と呼びます。

エンジェルブルーの場合、低学年が
「ディスオピニオンリーダー」の役割を果たし、
従来のユーザー離れが起きたということになりますね。


まあ、おじさんの私から見れば、小学生~中学生はみんな
ひとくくりで「ガキ」にしか見えないんですけど。

とこんなことを言ったら、
中一の娘に怒られてしまいそうです。(笑)

投稿者 松尾 順 : 2006年06月06日 11:02

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コメント

ナルミヤの話でちょっと思ったのですが・・・。
Abercrombie&Fitchの日本進出はどうなのでしょうね。確か、一度延期されたのでしたっけ?

僕は、Abercrombie&Fitchはビンテージ加工のがクローズアップされる前の、ちょっとアウトドアチックな感じものが主流の時はわりと好きでしたので。

ただ、今のままのスタイルそのままだと、ちょっと時期的にきついような気はします。
かといって、ライセンス商法にすると、うーん、これまた米西海岸ではちょっとした人気を誇っていたModernAmusementのようにもなりかねないしなあと思っています。

何か、あっと驚くような展開を考えているのでしょうかね。日本進出に備え。

投稿者 Jules with UltraVNC : 2006年06月06日 16:54

Julesさん、まいど!

Abercrombie&Fitchの日本進出については
すいません、ぜんぜんウオッチしてませんでした。

ともあれ、今の日本の消費者ニーズに合うようにモデファイするのはどこの会社の簡単じゃないでしょうね。

投稿者 松尾 順 : 2006年06月07日 05:34

我が家にも小6の一人娘が居ます。

以前はエンジェルブルーはじめとした、ナルミヤの服の大ファンで、デパートに行けば服が見たいとか、バーゲンがあると青山の本社ビルまで連れて行きましたよ(笑)

その娘に聞いたんですが、今回の日経MJの指摘もあるのでしょうが、そもそも「飽き」が根本にあるみたいです。
服に限らず、キャラクターやタレントも、次から次に娘のマイブームは代わっているようです。

子供が自ら選ぶ子供服に、ヴィトンやグッチのような持続的なブランドそのものを育成することが難しいかもしれませんね。ミキハウスがブランドなのは、親が買っているから、ブランディング出来たと思います。

ホント、いまどきの娘は何考えているか分からないです(笑)

投稿者 JUN : 2006年06月08日 23:26

JUNさん、コメントありがとうございました。

なるほど、そもそも「飽き」があるわけですね。
流行を追うファッションブランドでは、
仕方のないことなのかな・・・

それにしても、男性から見ると、女性は小さい頃から
理解が難しい生物であることは確かです。(笑)

投稿者 松尾 順 : 2006年06月08日 23:43

>それにしても、男性から見ると、女性は小さい頃から
理解が難しい生物であることは確かです。(笑)


世の中の消費は女性がリードしている訳ですから、マーケティングやコミュニケーションは、本当に難しい・・
理屈どおりに、事が進んでくれませんよね(笑)

「女心と秋の空」って言うくらいですからね。男選びと物選びに共通する、男性には分からない心理があるんでしょうね。

投稿者 JUN : 2006年06月09日 20:43

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