イノベーションの達人:花粉の運び手

今日は、

『イノベーションの達人! 発想する会社をつくる10の人材』
トム・ケリー&ジョナサン・リットマン著、早川書房

に紹介されている10の人材のうち、第3番めのキャラクター、
「花粉の運び手」です。


「花粉の運び手」は、特に関連もなさそうな複数のアイディアや
コンセプトを並列させることによって、新たに優れたものを
生み出す能力を持っています。

人類学者が観察を通じてアイディアのネタを発見するのが得意
なのに対し、花粉の運び手は、情報の組み合わせやメタファーを
駆使するのが得意なようです。

例えば、花粉の運び手の功績のひとつとして本書で紹介されている
ものに、ピアノの鍵盤のアイディアを拝借して、
初期の手動のタイプライターを開発した事例があります。

ピアニストが鍵盤を指でたたくイメージから、
文字通り、タイプライターから今のPCに至る「キーボード」
の原型が生まれたんですね。
これは、「メタファー(比喩・置き換え」の力」と言えます。

こうして、ある物事をまったく別のところに持ち込むことで
斬新なアイディアを生み出すさまをトムは「他家受粉」と呼び、
それを実行するのが「花粉の運び手」というわけです。


花粉の運び手は、強い好奇心と柔軟な頭脳の持ち主です。

本や雑誌やネット上の記事をむさぼり読んで、
自分やチームが巷の話題に乗り遅れないようにしますし、
多方面に関心があって多彩な経験をするので、
ひとつの経営課題からアイディアを拝借して
思いもよらぬ別の状況に生かすのがうまいのです。


では、組織の中で「花粉の運び手」を育てるためには
どうしたらいいのでしょうか。

トムは、IDEO社が持つ他家受粉のレシピにある7つの
「隠し味」を紹介してくれています。

1.発表会をしよう。
2.さまざまな背景をもった人をたくさん雇おう。
3.議論が巻き起こるような空間をつくろう。
4.さまざまな地域のさまざまな文化を取り入れよう。
5.週に一度の「ノウハウ」講演会を主催しよう。
6.客人から学ぼう。
7.多様なプロジェクトを進めよう。

要するに、さまざまな異なる文化的背景や価値観を持つ人々を
歓迎し、彼らが自由に議論できる環境をつくりだすということ
のようです。

まさに、

「ダイバーシティ・マネジメント」(多様性の管理)

のことですね。


そして、トムによれば、
よりよい「花粉の運び手」になる最も効果的な方法は、

「さまざまな場所に足繁く通うこと」

だと述べています。

「花粉の運び手」には、
好奇心だけでなく行動力も必要のようですね。

投稿者 松尾 順 : 2006年08月03日 11:13

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