イノベーションの達人:語り部(ブランドを培う人)

ようやく最後の一人にたどりつきました。

『イノベーションの達人! 発想する会社をつくる10の人材』
トム・ケリー&ジョナサン・リットマン著、早川書房

から、10番めのキャラクター、

「語り部」

を取り上げます。


本書の「語り部」の章、冒頭の引用がぐっときます。


世界は原子でできているのではなく、物語でできている

-ミュリエル・ルーカイザー(詩人)


ブランドの価値に精通した現代の企業は、
よい物語の語り方を知っています。

彼らは、新しい試みやひたむきな努力やイノベーションを
説得力のある物語にして、私たちのイマジネーションを捉えます。


物語には、事実や報告書や市場動向では伝えられない説得力が
あります。物語は、感情面での結びつきを形成するからです。

また、物語の語り部は、チームに団結をもたらします。
その物語は組織の伝承となっていつまでも語られていきます。


そして、何よりも、物語の語り部は、
普通の人たちをヒーローにします。

確かに!
思わず、「プロジェクトX」を連想してしまいますが、
優れたブランドには必ず、よく知られた物語がありますよね。


さて、私たちが人を理解したいなら、そして
人が本当に求めているものを知りたいなら、
人が語る物語に耳を傾けなければいけません。

トムは言います。

“私たちの多くは、他人の物語を理解するとき、近道を
 しようとする悪い癖がある。「要するに」と思いつつ
 話を聞くから、あんたの考えを聞かせてくればいい、と
 端的に重いってしまう。(中略)
 ・・・さっさと要点をいってくれ、というわけだ”

一方、イノベーションの達人の一人である「人類学者」は
人の端的な考えなど聞きません。すぐに結論に飛びつくことも
ありません。イエスかノーかと尋ねる質問をしません。

人類学者は、現場に出て行き、

「あなたは自分の携帯電話サービスを気に入っていますか、
 いませんか」

といった質問ではなく、

「あなたが自分の携帯電話にがっかりしたときの話を
 聞かせてください」

といって会話を始めるのです。

会話の中心を物語に据えることによって、
相手との強い個人的な絆を形成し、深い洞察を得ます。


ですから、組織(企業)は、物語のよい聞き手であることも
必要だというわけです。


同書では、組織(企業)がよい語り部になるべき7つの理由を
挙げています。ここでは項目のみ記します。
詳細はぜひ同書を読んでください。

1.ストーリーテリングは信頼性を築く
2.ストーリーテリングは強い感情を解き放ち、
  チームの絆を深める
3.物語は物議をかもす問題や厄介なテーマについても
  探索する「許可」を与える
4.ストーリーテリングはグループの視点に感化をおよぼす
5.ストーリーテリングは主人公をつくる
6.ストーリーテリングは変革にかかわる新しい語彙を提供する
7.よい物語は混沌に秩序をもたらす


“よい物語はがらくたを突き抜ける”

とトムは言っていますが、断片的な情報が氾濫するなか、
魅力的なコンテキスト(文脈)を持つ物語は、人々の記憶の中に
ずっと残り続けるのです。

このことが、マーケティングに示唆すること。
説明しなくてもわかりますよね。

投稿者 松尾 順 : 2006年08月25日 09:41

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