購入重視点に対する調査回答の解釈は難しい!

「顧客満足度調査」では、しばしば、

「購入に当たって重視する点はなんですか?」

という設問を入れます。


そして、

・品質
・機能
・デザイン
・価格
・アフターサービス
・企業のイメージ
・営業パーソン

などの選択肢を提示し、
5段階スケール(とても重視する~まったく重視しない)、
あるいは、最も重視する項目を3つまで選択するなどの
回答方法を採用します。


さて、この設問、単純なものに見えますが、
回答結果の解釈には注意が必要です。


過去の経験から、回答結果で上位にランクされるのは、
一般に製品関連の品質、機能、価格などです。

一方、下位の項目としては、
企業イメージや営業パーソンがくることが多いです。

したがって、このような結果の順当な解釈は、

回答者は、購入に当たって、
製品そのものについての項目を重視し、
企業イメージや営業パーソンはあまり重視しない

となりますよね。


ところが、回帰分析などの統計的手法を用いて別の視点
から検証すると、実は回答者は、

「企業イメージや営業パーソンも相応に重視している」
(購入に対する影響力が大きい)

ことがわかることがあります。


なぜこうした回答のずれが発生するのでしょうか?

ひとつには回答者の自己正当化の心理が働いていると
言われています。

「私は良識を備えたしっかりした人間である。だから、
 購入に当たっては、製品自体をしっかりと吟味し、
 営業パーソンの口車に載せられたり、
 企業イメージのようなあいまいなものに左右されることはない」

という自己を高く評価する意識が背景にあり、
重視する項目として、営業パーソンや企業イメージを選択する
のはこの意識と矛盾してしまうからです。


また、製品や価格が基本的に重視されるのは、

「当たり前品質」「魅力的品質」

という分類で説明できます。
(この分類は、東京理科大学の狩野教授が提唱する「狩野モデル」)

「当たり前品質」とは、要求が満たされて当然のもの。
品質、機能、価格などが該当しますね。

一方、「魅力的品質」は、商品の付加価値部分と言えるもので、
デザイン、企業イメージ、営業パーソンなどが該当するでしょう。


したがって、購入に当たって重視する点を聞かれたら、
当然のことながら、回答者は、まず「当たり前品質」を先に
答えますよね。このため、どうしても、魅力的品質に該当する
項目は下位になってしまうというわけです。


ついでながら、上記の「当たり前品質」「魅力的品質」は、
ハーズバーグの動機付け要因論の「衛生要因」「動機付け要因」
とも似ていますね。非常に重要な概念だと思います。

また、私は、満足度の要因論として

「不満足要因」(ないと不満、離反を招く)
「満足要因」(あると満足、リピートしてくれる)
「感動要因」(あると感動して口コミ誘発)

の3段階を提唱しております。


*上記内容は、

「お客様のホンネを見抜く ホントの!アンケート調査」
(浅野紀夫著、PHP出版)

を参考にしました。

投稿者 松尾 順 : 2006年08月30日 13:51

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