パズル制作者が失業する日

1997年、米IBMのコンピューター「ディープブルー」が、
世界チェスチャンピオンのガスパロフ氏をチェス対決で破った時、
私たちは、大きな衝撃を受けましたよね。

チェスのような高度なゲームをする能力は、
人間の知能だからこそ持ちえるものだと考えていたのに、
コンピューターがそれを上回ってしまったことに、
一種の恐怖を感じたのかも知れません。


さて、チェスほどの話題にはなってませんが、
イタリアのシエナ大学が開発した「ウェブクロウ(Web Crow)」
は、クロスワードパズルを解く能力で人間を上回る能力を
証明したそうです。

「ウェブクロウ」は、いわゆる「人工知能」
(AI:Artifitial Intelligence)の技術を使って開発された
ソフトウェアです。

日経産業新聞(2006/08/07)のコラムによれば、
辞書や百科事典をデータベースに組み込むことで、
自然言語の体系やさまざまな知識を学習し、

「右の反対は?」
「九月を陰暦でなんと呼ぶ?」

といった程度の問題は答えられるようになってきたそうです。


そして、「ウェブクロウ」がIBMの「ディープブルー」と
大きく違うのは、インターネットの検索エンジンと接続している
点です。

ウェブクロウは、クロスワードの設問の中からキーワードを
抜き出しネットで検索、関連語を抽出して試行錯誤で正解を
発見していきます。

ウエブクロウが接続しているのは、おそらくグーグルでしょうね。

グーグルの高度な検索技術とインターネットという巨大な情報源の
おかげで、ついにパズルの分野でもコンピュータが人間を上回る
性能を持ち始めたわけです。


日々新しい情報が更新されるインターネットだと、
過去の知識だけでなく、最新の時事問題にだって簡単に対応
できますし、日本語に対応させることだって問題なし。

しかも、ウェブクロウの技術を逆に使うと、
気の利いたパズルが簡単に制作できるようになります。

そうすると、近い将来、パズル制作者が失業する日が
間違いなく来るということです・・・


考えてみれば、クロスワードパズルを解くことは、
主として言語情報の記憶に頼っています。

多少連想を働かせる力が必要ではありますが、
頭の中に蓄積した過去の情報、知識の再生力に依存するところが
大きいですよね。

しかし、この能力は、そもそもコンピュータが得意な領域であり、
人間を凌駕するマシンが出てくるのは時間の問題だったわけです。

ただ、それはインターネットという巨大な外部脳の成長が
不可欠だったのでしょうけど。


あまり愉快な話ではありませんが、今後も
人間にしかできないと考えられていたことが次々とコンピュータで
代替されていくことは、こうした事象を見ていればはっきりと
「予見」できますよね。

こんな時代、
あなたがいい仕事をするために伸ばすべきスキルは何なのか、
現実を直視して考える必要があると思いませんか。


英文ですが、以下は「ウェブクロウ」の記事です。

●COMPUTER BEATS HUMANS AT CROSSWORD PUZZLES

投稿者 松尾 順 : 2006年09月08日 10:30

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