言葉じゃないところで伝えたいこと

油膜の浮くギトギトのラーメン。
こってりとんこつ博多ラーメンも顔負けのしつこい味。(たぶん)

談笑しながら、おいしそうに食べているのは、
円卓を囲む中国人のお偉いさんたち。

彼らの右手にお箸、でも左手には「特保黒烏龍茶」がある。
だから、脂っこい料理を心から楽しめます!


とまあ、こんなメッセージを伝えるのが、
今オンエア中の「中性脂肪に告ぐ」サントリー黒烏龍茶の
TVコマーシャルです。


見た覚えありますか?
サントリーのホームページでも見ることができますね。

「役員午餐会」


このコマーシャル、
中国の古いホテルを借りて撮影されたものです。

撮影ディレクションは写真家の上田義彦氏。

上田氏は、同じくサントリーの伊右衛門や無印良品などの広告を
手がけている売れっ子ですが、先日のNHKプロフェショナルに
登場、上記コマーシャル撮影の裏側を垣間見ることができました。


この中国での撮影、わずか15秒のコマーシャルのために、
この場面を何十回も繰り返し撮りなおしていました。

結局、予備日も含め3日間をまるまる使い切って
ぎりぎりでなんとか撮影完了。

役員さんたちが食べているラーメンはもちろん本物です。
毎回新しいのを作ってましたから、
この撮影のために消費されたラーメンは数百杯でしょうね。


それはさておき(^_^;、
上田氏がなかなかOKを出さなかったのは、
画面から伝わるものに納得がいかなかったから。

ラーメンの湯気がうまく映らないとか、談笑が自然で
ないとか、ラーメンの食べ方がおいしそうじゃないとか、
ようするに、しっくりとこない何かがあったわけです。

つまり、このコマーシャルを見た人に対して、
「言葉じゃないところで伝えたいこと」がちゃんと伝わる映像に
なるまで、OKを出さなかったんですね。


もちろん、

この見極めができるかどうか

が上田氏の力量であり、クリエイターとしての能力が
発揮されるべきところ。


ただ、不思議なことに、いい映像が取れた時は、
上田氏だけでなく、周りのスタッフも

「今のは良かったね」

とうなずきあっているんですね。


言葉以外で伝わること

には一定の普遍性があることがわかります。


人は、たとえうまく言葉で説明できなくても、

いいものと悪いもの

を感性によって瞬時に見分けることができますよね。


言葉も相変わらず重要ですが、
今後ますます画像が多様されていくであろう
マーケティング・コミュニケーションの世界では、

言葉以外で伝えたいこと

をちゃんと伝えることのできる能力が
ますます重要になっていきそうです。

投稿者 松尾 順 : 2006年10月12日 11:36

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