シンプルマーケティング(12)生活者のイノベータ度とプロダクトコーン

さらにプロダクトコーンの話。
なんたって、シンプルマーケティングの中核理論ですから。


プロダクトコーンは、商品を3つの要素(切り口)、すなわち

・規格=企業側の商品定義(ハードな定義)
・ベネフィット=生活者の得するコト、モノ(ソフトな定義)
・エッセンス=商品が持つ性格(擬人化)

で見るものでした。


そして、このプロダクトコーンの3要素を
どのような順番で訴求するのが効果的なのか?

これについては、既に

シンプルマーケティング(9)プロダクトコーン理論:訴求の順番

でご紹介してますね。

商品の特性や市場環境(プロダクト・ライフサイクル)
を考慮しなければなりませんが、基本的には、

「規格」→「ベネフィット」→「エッセンス」

と移行していきます。


シンプルマーケティングでの森さんの説明によれば、

新技術を応用した商品や新規産業の場合、
「規格」を優先的に訴求して商品の説明をし、
生活者が安心して商品を買えるような基盤を作る

ことが重要です。

そして、産業が成長期にさしかかり、
技術に格差がなくなった時点で「ベネフィット」を訴求し、
さらに「ベネフィット」が普及した時点で
「エッセンス」を訴求していくのが効果的だそうです。


ただ、一方で対象となる

「生活者のイノベータ度」

も理解し、考慮しておく必要があります。


いわゆる「イノベータ理論」、
これは、簡単に言えば、
生活者の新技術や新商品に対する購買行動の差を
示したものですが、シンプルマーケティングでは次の
3つのタイプにシンプル化されています。

・イノベータ
・アーリ・アダプタ
・フォロワー


新商品が出ると、真っ先に飛びつくのがイノベーター。

「PS3」をゲットするために、
寒い中徹夜して量販店に並ぶような人たちのことです。(笑)

イノベータに続いて、「アーリ・アダプタ」が買い、
フォロワーは周囲の評判を確かめた上で、
おっとり刀でそろそろと買い始める。


イノベータは、対象商品に詳しく、関心の高い人たちです。
購入判断は自分で行うことができます。

一方、フォロワーは、対象商品の知識をあまり持っておらず、
購入に当たって、他人の意見・推薦に頼りがちです。


ですから、訴求対象が「イノベータ」なら、
商品の

「規格」

を説明してあげればいい。

彼らは、「規格」を見て、
その商品がいいか悪いか判断できるからです。


一方、「フォロワー」が訴求対象なら、

「エッセンス」

を説明しなければなりません。

フォロワーは「規格」だけで商品を判断しません。(できません)
したがって、企業が、規格からベネフィットを翻訳し、
さらにベネフィットからエッセンスを導き、
商品にどんな「イメージ」があるのかまで伝える。

こうやって初めて、フォロワーは購入に動いてくれます。


森さんによれば、

プロダクトコーンの訴求のサイクルと、
生活者のイノベータ度の3タイプは表裏一体であり、
この流れをいかにつかむかが、
ヒット商品をつくり、育てるためのキーポイントの一つ

だそうです。


◎シンプルマーケティング
(森行生著、ソフトバンククリエイティブ)

投稿者 松尾 順 : 2006年12月05日 13:41

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コメント

映画界で「全米ナンバー1」ってやるのは、日常的に映画館に足を運ばない“フォロワー向け”ということでしょうか?

投稿者 課長007 : 2006年12月05日 18:40

課長007さん、まいど!

付和雷同型がフォロワーですから、そうでしょうね。
もうひとつは、米国に対する憧れみたいなものを
いまだ持ってる人。これは嗜好によるターゲティング
でしょうか。

投稿者 松尾順 : 2006年12月05日 21:06

基本的には、まつおっちさんが説明してくれたとおりです。
ただ、いくつかコメントを。

> 新技術を応用した商品や新規産業の場合、
> 「規格」を優先的に訴求して商品の説明をし、
> 生活者が安心して商品を買えるような基盤を作る

安心というキーワードは一般的にフォロワーが反応するので、誤解を招きやすいかも。
この場合の「安心」とは「正確」という意味でしょうね。

私のようなパソコンイノベータにとっては「早い」と言われても信用できません。「なにを基準に、どれだけ早いんだ」と懐疑的になる。
だから「Pentium4 3.0GHzより、ベンチマークで1.5倍早い」
と言われてようやく納得する。
-------------------------------
> 新商品が出ると、真っ先に飛びつくのがイノベーター。

これは間違いではありませんが、

> 「PS3」をゲットするために、
> 寒い中徹夜して量販店に並ぶような人たちのことです。(笑)

は転売屋さん…もとい、マニアです(笑)
イノベータとマニアは微妙に違います。
マニアはせいぜい2~3%、イノベータは10%ですから、乱暴に言えば「イノベータは一般人のココロを持ったマニア」です^^

投稿者 森@シストラット : 2006年12月06日 19:14

課長007さん

「ナンバー1」「発売以来20億本の売り上げ」といったコピーはすべてフォロワー向けです。
「そんなに、みんなが買っているのに、自分はまだだ、やっべー」
という心理をあおるわけです。

ただし、逆に言えば
「『ナンバー1』『発売以来20億本の売り上げ』というようになったら、その商品はおしまいだ」
もまた真なり、です^^

投稿者 森@シストラット : 2006年12月06日 19:17

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