命を賭けたデザイン 第1章:仕組まれた出会い

新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


1月1日から4日までは、産業スパイ小説もどきの内容をアップします。
これは、2年ほど前にISIS編集学校の「破」応用コースの課題として
作成したものです。
(一部加筆修正)


こんな小説(フィクション)らしきものが、まったくの未経験者でも
それなりに書けてしまうのはISIS編集学校校長、松岡正剛氏が編み出した
編集メソッドのおかげです。


ただし、正直なところ、私の課題作は平均以下のレベル・・・
限られた文字数の中で、心を打つファンタジーを描ける方もいます。

これは「才能」の差ですね。いかんともしがたい!


ともあれ、興味のある方は、ぜひ編集学校の門を叩いてみてください。

今のところ予定ありませんが、
私が師範代としてお相手することがあるかもしれません!


では、

「命を賭けたデザイン」

のはじまりはじまり


*本文中に登場する「デザイン原器」とは、特定企業、ブランドのデザインに
一貫性・統一感を与えるための「デザインのひな型(プロトタイプ)」です。
メーカーの研究所などに、門外秘出として保管されているものです。

これについて書いた記事「感覚優位性」があります。


<登場人物>

●国枝丈治

H電機社長室秘書。

ジョージと呼ばれるナイスガイ。
しかし、その正体は産業スパイである。

31歳。独身。身長180cm。米国生まれ・米国育ち。母親が日本人、父親が米国人
のハーフ。実は父親はCIAのスパイであり、若い頃からCIA的な訓練を受けていた。

20代前半は、米国企業で調査業務をやっていたが、しばらく母親の母国日本で
働きたいと思い、4年前に来日した。一人暮らしのマンションは目黒にある。

そして、H電機社長より、S電機の「デザイン原器」を盗み出すという特命を受ける。

●大友健二

S電機 神奈川技術研究所 主査。

デザイン原器を守る立場にある。30歳、独身、柔道5段。
豪快で愉快な男だが、女性と話すのは苦手。

●作田ひとみ

S電機 神奈川技術研究所 副研究員

S電機の新製品開発者のアシスタント。26歳、独身。
モデルにスカウトされそうになったほどの容姿の持ち主。

●田中智史

S電機 神奈川技術研究所 総務課員 28歳、独身。

S電機の研究所の総務部門勤務。めがねをかけたインテリ風の外見。
実は韓国系電機メーカー、K電機のスパイ。
1年前にS電機にうまくもぐりこむことに成功し、やはりS電機の
「デザイン原器」を盗むことを狙っている。


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命を賭けたデザイン 第1章:仕組まれた出会い


「おっと、失礼!」

ジョージは、踊っているひとみにわざとらしくぶつかった。

ここは六本木のクラブ。

平日でそれほど混んでいない。ひとみはナンパには慣れているから、
適当にやり過ごそうとしたがジョージの魅力的な笑顔には
逆らえなかった。

出会いはありきたりだったが、ジョージとの機知に富む会話は
楽しかった。


「今までの男たちとは何かが違うわ・・・」

ジョージは、日本人と米国人のハーフという顔立ちもさることながら、
ずっと米国で過ごしてきた。日本語は母親の教育で不自然さはない。

しかし、生粋の日本人とは明らかに違う立ち振る舞いが
ひとみを魅了したのだ。


「ドライブで気分を変えようか?」

ジョージが駐車場から出してきた車はフェラーリ。
フェラーリに乗るのは初めてではなかったが、
乗り手が違うとこんなにも変わるものだということをひとみは知った。


「もう一杯、テキーラ飲む?いつもテキーラしか飲まないのね」

ひとみはジョージに声をかける。ベッドの上のジョージは軽くうなずく。

ひとみのマンションにジョージは頻繁にくるようになった。
そういえば、ジョージがITベンチャー社長であること以外、何も知らない。

ジョージのマンションに連れて行ってもらったこともない。
ひとみはふとそう思ったが、ただジョージと一緒にいられるのがうれしくて
それ以上考えなかった。


「え、デザイン原器を持ち出すって、本気?」

ジョージの真の目的がS電機のデザイン原器だったと知って、
ひとみはやるせないものを感じた。

しかし、いまやジョージを心から愛しているひとみは、
ジョージの計画を手伝うことに躊躇しなかった。

(続く)

投稿者 松尾 順 : 2007年01月01日 11:53

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