常識の壁を打ち破る(3)ファンケルのケース

経験のない異業界・異業種に新規参入する。


これは、確かにリスクが高い事業ではありますが、
業界の常識に埋没していないだけに「常識破り」のアイディアを
生むことがあります。


その典型例のひとつが、
無添加化粧品としてのブランドを確立した

「(株)ファンケル」

ですね。

1980年創業の若い企業ながら、
年間売上高は、ついに1千億円を突破してます。
(連結売上、07年3月期)


ご存知の方も多いと思いますが、
無添加化粧品開発のきっかけは、創業者で現名誉会長の
池森賢二氏の奥さんの「化粧品アレルギー」でした。

当時、たまたま池森氏の知人に皮膚科のお医者さんと
化粧品メーカーの経営者がいました。

お医者さんによれば、皮膚科に駆け込む女性の7割は、
化粧品が原因の接触性皮膚炎だと言われたそうです。

一方、化粧品メーカーの知人に聞くと、
化粧品の品質を維持するため、防腐剤、殺菌剤、
酸化防止剤等を「必要悪」として入れているとのことでした。


そこで、池森氏は、化粧品大好きの奥さんが
アレルギーに悩まされずにすむ無添加の化粧品の開発に
乗り出したというわけです。


池森氏にとって、化粧品業界はまったくの未経験ゾーン。
徒手空拳で取り組んだ事業ながら、逆に常識に囚われることが
なかったのが奏功しました。


さて、防腐剤などを添加しない化粧品を開発するに当たって、
池森氏が考えたのは、1週間で使いきれる小さな小瓶として、

「アンプル瓶」

を採用することでした。


このアイディアは、化粧品業界の人間に大笑いされました。

“化粧品は、女性に「夢」を売っているのだ。
 素っ気ないアンプルなんかに入れたものが売れるはずがない”


しかし、実際に販売してみると、肌トラブルに悩む女性の
高い支持を受け、倍々ゲームで業績が伸びていったのです。


「売れない」と断言した業界人もまた、間違った思い込みに
縛られていたんですね。

人間の欲求の一側面しか見えていなかったということでしょう。


人の欲求は、大きくは2つに大別できます。

・ポジティブなニーズの充足
・リスクの回避


ポジティブなニーズの充足とは、「こうありたい」が叶うこと、
リスクの回避とは、「こうなってほしくない」を避けられること
(もしくは低減できること)です。

化粧品にとっては、「美しくありたい」という女性の欲求を
充足すると同時に、「肌荒れ等を起こしたくない」という
リスクを回避したいという欲求に応える必要がありますよね。

しかし、ファンケル登場以前には、
リスク回避という欲求の存在に対する認識が、
化粧品業界の人には弱かったということでしょう。


なお、私は野暮な男性でして、
化粧品のことを実体験としてはよくはわかっていません・・・

そこで、当ブログ&メルマガをお読みいただいている
知人女性(30代)から以前いただいた化粧品についての
メールの一部をご紹介します。(ご本人の許諾済み)


なお、以下の内容は、化粧品における

「ブランド(イメージ)」や「パッケージデザイン」

の重要性についての反論といったところです。


--(引用開始)--------------------------------------------

アットコスメが大成功していることもみても、化粧品は案外、
ブランド支持というよりは、その機能性が選択のポイントと
して重視されていると思います。

つまり、使い心地がいい、香りがいい、値段のわりにいいなど。

社会的ステータスを誇示する目的よりも、機能性や話題性
(限定品だとか季節ごとの新製品など)が重視されている気が
するのです、化粧品においては。

化粧水やマスカラならランコム、口紅やアイシャドウなどの
色物ならシャネル、サンローラン、ファンデーションは
ディオールと使い分けている人がほとんどだと思います。

特に化粧にはまればはまるほど、アイテムごとに、
得意不得意がブランドごとにけっこう明確なことが
分かってきますしね。

また、バッグや時計なら、どこのブランドか見て一発で
分かりますが、化粧品だと分かりませんよねー。
カバンから取り出して、パッケージを見せないことには・・・

そうなると、本来、ステータスを示したい相手に、パッケージを
見せる場面があるかというとまずないでしょう。

まあ、年齢的なこともあるのかもしれませんが、
ひと通りの海外ブランドも使ってきてたどり着いたのは、
機能性重視で、コストパフォーマンス重視という選択スタンス
でした。

--(引用終り)--------------------------------------------


ふむふむ、なるほど。
貴重な情報ありがとうございます。

あくまでお一人の意見ではありますが、
世の中の多くの女性の考え方を代弁していると見ても
いいんじゃないでしょうか。


ブランドやパッケージが最重要ではない。
まずは、製品自体が持つ機能性やコストパフォーマンス
ありきなんですよね。

また、大切な肌に直接触れるものですから、
「安全性」については言わずもがなということでしょう。


余談ですが、ファンケルは米国では苦戦しています。

そこで、売れない理由を調査してみたところ、
米国人女性は、肌につけてピリピリするくらいでないと
効果を実感できないんだそうです。

肌に優しいファンケルがなかなか受け入れられないのは
無理もないですね。


ところ変われば・・・といいますが、
人の心理はまことに面白いものですねぇ。

投稿者 松尾 順 : 2007年05月28日 11:38

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コメント

>米国人女性は、肌につけてピリピリするくらいでないと
効果を実感できないんだそうです。

そういえばリステリンについても似たような話を聞いた気が・・・

「リステリンは薬くさい。だからよく効く」
だったかな?

投稿者 開米瑞浩 : 2007年05月30日 10:15

開米さん、まいど!

なにごとにつけ、いかにも効きそうだという実感が得られないとダメ、というのは実利主義的な米国らしいですよね。

投稿者 松尾順 : 2007年05月30日 11:31

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