お客さんに告白しよう


「事業の目的は、顧客の創造である」

とはドラッカーの言葉。


この本質がわかっていながら、現実には、

「事業の目的は、商品の販売である」

と考えている(建前はさておき行動レベルでは)企業が
あいかわらず大多数を占めているようです。

顧客を食い物にする不祥事が、昔も今も絶えることがないのが、
その証拠です。


しかし、「商品の販売が事業目的」とする考え方じゃあ、
これからは生き残ってはいけないよ、ということで
10数年前に登場したのが、いわゆる

「CRM」(Customer Relationship Management)

でした。


「CRM」は、簡単に説明すると、

「顧客との良好な関係を構築、強化、維持」

することです。

文字通り、「顧客の創造」ですよね。

もちろん、その先には、結果として商品が売れる、
というか、「商品が買われる」というロジックに
つながっているわけですけど。
(「売れること」が、先にあるのではない点が重要なんです)


さて、顧客との良好な関係を構築するというのは、
ベタな言い方をすれば、

「お客さまと‘相思相愛’の関係」

になることだと言えます。


ところが、私の過去の経験に基づいて言わせていただくと、
企業が「CRM」を導入し、実践する際に、
根本的に間違った考え方で取り組んでいるケースが多いのです。


それは、CRM施策において考えがちなことは、
企業が顧客に対して、一方的に、

“当社(商品)を好きになってください”

と訴えようとしてしまうということです。
これでは、単なる従来の販売促進と同じです。


たとえば、特に大手企業が発行するメルマガ。

「リレーションシップメール」

などと大層な名称を
つけているものさえありますが・・・


その実態は、新商品情報を羅列しただけのものが
ほとんどですよね。

必死でアピールしたいということはわかるのですが、
その本心は、

「当社(商品)を愛してください(=買って下さい)」

であることが見え見えです。

相手が、それを望んでいるか、
喜んでくれるかどうかを全然考えていない。


各種懸賞も同様です。

「得する何か」「ただでもらえる何か」で、
相手の関心を引こうとすること自体は、
やむをえないことだと思います。


しかし、こうした施策は、基本的に
相手に気に入られたいがための小手先のテクニックに
過ぎないという自覚が足りません。

お客さんも、このことがわかっているから、
おいしいとこだけ取って逃げていく。


そもそも、お客さんに対して、
自社(商品)を愛して欲しいと願うなら、
まず考えるべきことは、

「どのようにお客さんを愛するか」

です。

愛が欲しいなら、まず自分から与えなくては。


「お客さんを愛したい」という思いがあればこそ、

・お客さんのことをもっとよく知りたい
・十把一絡げには扱いたくない
・時には損をしてでも尽くしたい

ということが自然にできるようになっていく。


お客さんのすべてが、
愛を受け止めてくれるわけではありませんが、
中には、愛を投げ返してくれて、
相思相愛になるお客さんが必ずいます。


実は、企業だけでなく、個人レベルでも、
成功しているトップセールスマンの行動を見ると、

「お客様に対する深い愛」

からくる行動が、顧客の信頼を得ていることがわかります。
(一方的に愛を奪うことで一時的に成功するセールスマン
 もいますが、長続きはしません。)


ですので、
私は、今後、クライアントのCRM施策立案を
お手伝いする際には、

“では、お客様をどうやったら深く愛せるのかを考えましょう。
 どうやったら、うちを愛してもらえるかを最初に考えるのは
 やめましょう!”

とはっきり伝えようと考えています。


ところで、今回のタイトルは、

『戦わない経営』(浜口隆則著、かんき出版)

の中で見つけたフレーズです。
この場を借りてお礼申し上げます。


また、当該箇所を引用させていただきます。

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ビジネスはお客さんがいないと完結しない

いくら自分が好きな仕事だって、
いくら価値がある仕事だって、
お客さんがいないと成立しない

だから、お客さんは大切なパートナー。

だから、お客さんを好きになろう。

そして、先に、「好きです」って言おう。
告白してしまおう。

すると、何人かに一人は、
「私も好きだよ」って返してくれる。

それが、ファンが生まれた瞬間

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この考え方を実践に落とし込めるかどうかが、重要なんですが!

投稿者 松尾 順 : 2007年07月02日 09:33

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