影響力を解剖する(5)影響力の源-1

影響の与え手が、
なんらかの目標(意図)を持って受け手に働きかけ、
首尾よく目標を達成するために重要、あるいは有効なこと。

言い換えると、影響力をもたらしているもの。

それを

「影響力の源」

と呼ぶことにします。


これまでの研究では、
影響力の源は次の6つがあるとされています。
(米国の社会心理学者、フレンチとレイヴンの説)


・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力


今回は、最初の3つについて簡単に解説します。


[賞影響力]

“夏休みの宿題やったら、おこづかいあげる”

お子様のいらっしゃる家庭では、
こんな会話が交わされているところもあるでしょう。

なんらかの「賞」=「報酬」で
相手を動かそうとするのが「賞影響力」ですね。

「アメとムチ」のアメのほうです。


さて、賞(ごほうび)は、

・金銭的報酬
・心理的報酬

の2つに大別できます。

「金銭的報酬」は、現金や物品などの金で換算できるもの。
「心理的報酬」は、賞賛や承認などの金で換算しにくいもの。


ただ、私の個人的な見解ではありますが、
‘社会的動物’である私たち人間にとって、

「認められたい」(存在を認知されたい、必要な人間と認められたい)

という欲求、すなわち「承認欲求」が対人関係における行動
においてもっとも大きな要因となっていると考えています。
(「金銭的な成功」を目指している人も、結局は、
 承認欲求を金銭的に満たそうとしているのです)

したがって、「賞」(報償)としては、

「承認」(あなたはかけがえのない人間である)

をしてあげることがもっとも有効でしょう。

ちなみに、ビジネスのためのブログは除き、
世の中の多くの個人ブロガーがコツコツとブログを書く原動力と
なっているのは、この「承認欲求」だと考えてます。

ブログにつくコメントやトラックバックは、

「承認」

の目に見える形だと思います。(好意的であれ敵意的であれ)

読み手の反応が目に見えにくい従来のホームページ式日記と
違ってブログが爆発的に増えたのも当然でした。


[罰(強制)影響力]

「アメ」と「ムチ」の「ムチ」のほうですね。

「私の言うことを聞かないのなら、
 身体的、または精神的な苦痛を与えるよ」

というのは罰影響力を行使している状況です。


なお、「賞を与える」(アメ)、逆に「罰を与える」(ムチ)は
両極端の影響力の源ですが、どちらも、
「賞」か「罰」を相手に思いのままに与えられる状況
(双方が属している家庭とか、会社などの組織・集団)に
あるからこそ影響を及ぼすことができるわけです。

したがって、上記のような「縛り」が弱い関係では、
当然ながら、賞影響力、罰影響力は低下してしまいます。
(別のところから賞を得られる機会や、あるいは
 罰を回避できる可能性があるからです)


[正当影響力]

組織の中では、指示系統がはっきりしています。
もっとも明快なのが「軍隊」でしょう。

子の場合、部下は上司(上官)の命令に
原則として従わなければなりません。

あるいは、公的な場においては、
治安の維持のために働く警察官の指示に、
われわれ一般市民は原則として素直に従います。


上司(上官)や警察官は、社会的な規範に基づく

「正当影響力」

を行使することができるわけです。


このほかにも「正当性」をもたらすものとしては、

・血筋(王家の血を受け継いでいる等)

が挙げられますね。


また、『影響力を解剖する』では、
他の人より多くの賞や罰を持っていることで、

「正当性」

が高めていくことにつながる述べられています。


確かに、賞や罰を与える側が、
ある意味「受け手」よりも「偉い」という感覚が
生じてくるものですよね。

自然発生的な「番長」が、周囲が認める

「正当影響力」

を行使できるようになるのは
端的にいえば、最もケンカが強い、
つまり最大の罰を与えることができる点と関係しています。


なお、お気づきだと思いますが、
企業・組織内で「正当影響力」を悪用するのが、

「セクハラ」や「パワハラ」

と呼ばれる行為ですね。
(実質的には、「罰影響力」を背景にしてますが)


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 2007年08月17日 11:01

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