影響力を解剖する(8)影響方略-1

相手に影響を与えるための具体的な「働きかけ方」のことを

「影響手段、影響方略」
(Influence tactics、Influence strategy)

と呼びます。

なお、今後は「影響方略」で統一します。

「影響手段」よりもイメージが高尚で、
もっともらしく聞こえるからです。

これも、「影響力」を意識した言葉の選択です。(笑)


また、「影響方略」においては、
これまで紹介した6つの影響力の源、すなわち、

・賞影響力
・罰(強制)影響力
・正当影響力
・専門影響力
・参照影響力
・情報影響力

を適切に活用することにより、
相手に影響を与えることに成功しやすくなります。


さて、

『影響力を解剖する』

では、18種類の「影響方略」が挙げられていますが、
これら18種類を

・賞影響力に関連する影響方略
・罰影響力に関連する影響方略
・賞罰に関連しない影響方略

の3つに分類して説明が行われています。


今回は、

「賞影響力に関連する影響方略」

に分類されている5項目を簡単にご紹介します。


[賞を与えることを約束する]

母親が、夏休みの宿題をやったらアイスクリームをあげる
と子供に言うのはこれ。最もシンプルな方略ですね。


[第三者から賞がもらえることを指摘する]

自分の部下に対して、「この仕事を成功させれば、
きっと部長も喜ぶだろう」などと言うのが該当します。

自分よりも、相手に影響力の高い第三者を引き合いに出すこと
が有効な場合もありますね。


[依頼をする前に賞を与えておく]

以前、紙のアンケートを送付する際、
協力依頼状と共に、事前に謝礼のテレフォンカードを
同封しておくという方法をやったことがあります。

これは、相手に強引に「貸し」を作らせ、
アンケートに答えないと悪いなと思わせることで、
回収率を高めることが狙いでした。
(確かに効果ありました)

こうした

「依頼する前に賞を与える」

というのは、いわゆる

「返報性の規範」
(人から受けた恩義には、お返しをしなければならない)

を活用したものです。


[以前に与え手が受け手にしてあげたことを思い出させる]

「昔の恩義を忘れてるんじゃない?
 思い出したら、今回は私のお願いを聞くしかないでしょ!」

などと言われた経験は誰でもあるでしょう。

あなたが、何か頼みごとをしたい相手がいたら、
以前、その人に何か「貸し」がなかったかどうかを考え、
それをネタに相手を揺さぶるのです。
(言われなくてもこの影響方略はよく使ってるよ、
 ということでしたら大変失礼しました)


[受け手をよい気持ちにさせる]

「賞」には、金銭的なものと心理的なものがあるのでした。

相手をほめたり、持ち上げたりして

「よい気持ち」

にさせるのは心理的な賞=「心理低報酬」です。

端的に言えば、「ゴマをする」ことです。
でも、効果は高い。

ちょっと社内を見回してみたら、

「ゴマすりの才能だけで昇進した人がいかに多いか」

ということを実感される方もいるでしょう。


人は、自分が大切にされること、すなわち

「自己尊重感」

や、他人に認められること、すなわち、

「承認欲求の充足」

にいかにメロメロになるかということでもあります。


『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

投稿者 松尾 順 : 2007年08月22日 10:58

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