「会話を最大化」するブロガー会議
企業とブロガーをつなぐ立場で、
さまざまなイベントを開催されている『百式』の田口元氏。
田口氏が主催するイベントは、
・セキュリティ会議
・ユーザビリティ会議
・ワイヤレスピクチャー会議
など、
「○○会議」
という名称で統一されているのをご存知の方も多いでしょう。
これは、企業とブロガーが
「共に解決策を探る全体会議」
という意味合いがあるようです。
記者会見のように、企業がブロガーに対して
一方的にメッセージを伝えるだけの場ではない
ということですね。
実は、私も1年ほど前、
電動シェーバーの「ブラウン」さんの新製品発売に
合わせて開催された
「ブラウン会議」
に参加させていただきました。
ただ、20代半ばからひげを伸ばし始め、
以来20年近く、ヒゲソリには縁のない私は、
本来、この会議への参加資格はなかったのでした・・・
大変申しわけないことです。
いまさらながらですが、懺悔しつつお詫び申し上げます。
さて、田口氏によれば、
企業とブロガーをつなぐ会議で目指しているのは、
“トータルで見た時に「会話が最大化すること」”
です。
“企業とブロガー間で見れば、
2者の会話を最大化するためにやっているのが
「会議」というわけです”(田口氏)
そして、イベントを準備するにあたって、田口氏は
・メッセージ
・ストラクチャー
の2つの視点から企業の担当者と打ち合わせを重ね、
組み立てていきます。
「メッセージ」は、次の4段階で詰めていきます。
・Value(目指すところ)
・Data/Problem(調査/事実)
・Our solution(製品の特性)
・Yours(全体会議)
なお、メッセージを作る際に
田口氏が注意しているのは、いきなり
「製品を売りたい」
というメッセージではなく、
「なぜその商品が必要なのか、開発に当たっては
どの部分で苦労したのかをまず伝えるようにしている」
という点です。
また「ストラクチャー」を考える上では、
次の「5つの立場」からそれぞれの関係性で何を
仕掛けていくかを押さえていくのだそうです。
・企業
・参加ブロガー
・読者ブロガー
・消費者
・マスコミ
繰り返しになりますが、
これらの関係者間の「会話」を最大化することが
田口氏の狙いです。
田口氏主催の○○会議シリーズは、
実に緻密に組み立てられたものであることが
うかがえますね。
ところで、田口氏は、ブログは
「雑誌」
であり、ブロガーは
「雑誌の編集長」
と考えると分かりやすいと述べています。
そして、ブロガーがこうしたイベントに興味を持つのは、
「ネット上にはまだ掲載されていない情報」
が得られるかも知れないから。
ブロガーは常に検索できない情報を求めている。
だから、イベントには
「開発担当者」
のような立場を呼ぶのが良いと、
田口氏は考えています。
また、田口氏は、ブロガーは、
「単に言われたことを書く」
というより、
「表現」や「クリエイト」する人たち
だと捉えています。
だから、もし企業側で許されるのなら、
「イベントはブロガーを企画の主体に持ってくるといい」
とまで言い切っています。
たとえば、企画段階から参画できるなら、
ブロガーとしてはとてもうれしいわけです。
私もブロガーの一人として、
この気持ちが実によくわかります。
さて、企業の立場に立つと、
ついつい既存媒体と同様に、「ブロガー」のことを単なる
「効果の高い、使える新媒体」
といった見方をしてしまいがちです。
しかし、田口氏の卓見を聴くと、
そのような見方では、
ブロガーとの良好な関係づくり
はうまくいかないことがわかりますね。
(当記事の出典)
『宣伝会議』(2007.9.1)
特集:企業とブロガー マッチポンプはあるか
田口氏の取材記事(P.034-036)
投稿者 松尾 順 : 2007年09月04日 13:00
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コメント
松尾さん、こんにちは。
最近ぼくは1999年に書かれたクルートレインマニフェスト("the cluetrain manifesto")を読み返して愕然としたところです。いま、何か正しいことをいおうとすると、クルートレインマニフェストの95のテーゼのどこかにおさまってしまうのです。
日本語訳のサイト
http://www2.gol.com/users/jheine/cluetrainj.html
を見ると例えばこんなことがかかれてますよね。
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8.インターネットで情報化された市場とイントラネットで情報化された社員の双方で、人々は新しく強力に話をしあっている。
9.このように情報化の進んだ対話によって、強力な新しいかたちの社会組織や知識の交換方法が出現する。
10.その結果、市場はますます賢くなり、さらに情報化がすすみ、より組織化されていく。情報化された市場に参加することで人は根底から変わる。
11.情報化された市場にいる人々には、企業などよりはるかに優れた情報とサポートを自分たちでお互いに提供しあっているというのがわかっている。企業は、商品に付加価値を付けているという宣伝文句を口にするが。
---
なんだかもう「彼はクルートレインされている/されていない」という乱暴な二分法をつかいたい誘惑すら感じます。微笑。
投稿者 衰弱堂 : 2007年09月04日 13:27
衰弱堂さん、いつもコメントありがとうございます。
クルートレインは、最近再び脚光を浴びてますね。
再読しようかと思ってたところです。
「彼はクルートレインされている/されていない」
という二分法は大胆ながら面白い見方ですね!
投稿者 松尾順 : 2007年09月04日 13:32
メルマガ含めて、情報源として活用させていただいていますが、
初コメントさせていただきます。
「会話を最大化」のエントリーを読んで
私もまさしくクルートレインが浮かびました!
原文の読める英語力がないため2001年に出版された邦訳からなんですが、当時「この本は鋭い!」と感銘をうけ、「本当に時代がそうなっているわね」と読みかえす度に納得していました。「これって、ブログのことよね、これってカカクコムみたいなサイトのこと?」みたいな…。本質的な洞察の鋭さでは「Web進化論」以上なのにちっとも話題にならなかったなあと思っていましたが、再脚光を浴びているんですね。
“昔々、市場には会話があり、…並ぶ品々には作り手の肉声が刻まれていた。”が、それが大量生産時代で失われた。→インターネットの登場で地球規模会話が取り戻されつつあるという文脈、“市場そのものであるわれわれは、企業のメッセージなど欲していない。われわれは企業とビジネスについて肉声で語り合いたいのだ”といった表現など、まさにその通りだと思います。
書かれた当時は“ブログ”の“ブ”の字もなかったのに驚きです。
投稿者 udone : 2007年09月05日 13:34
udoneさま:
クルートレインマニフェストについては先日拙blogのエントリにて取り上げましたのでお時間があるときにでも見ていただければ幸いです。
再評価という面ではやはり、ティム・オライリーが「Web2.0とは何か?」の中でクルートレインマニフェストについて言及していないというのが非常に残念なところです。
投稿者 衰弱堂 : 2007年09月05日 21:21
Udoneさま、コメントありがとうございます。
皆さん、5年ほども前のクルートレインを思い出すということは、それだけこの本の内容が衝撃的だったというこというこでしょうね。
投稿者 松尾順 : 2007年09月06日 10:46
私はクルートレインマニフェストについては知らないのですが、面白そうですね。紹介いただいた和訳ページで勉強してみます。
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田口さんの主催されていた「無敵会議」シリーズには1回参加したことがあります。そのときは「検索会議」というテーマでした。改めて振り返ると、あのように楽しい「会議」というかコミュニケーションを活性化させてくれる場は他になかったのですが、仕組みがわかってちょっと感動しているところです。
今更ですが、研究しがいがありそうですね。いいネタありがとうございます。
そういえば、私が参加した会議でも松尾さんが言われている要素はしっかりありましたね。
>「開発担当者」のような立場を呼ぶのが良い
Yahooのアルゴリズム開発担当者の方が参加されてて驚き!
「ここだけの話」もたくさん聞けましたよ。
>「イベントはブロガーを企画の主体に持ってくるといい」
新しい検索サービスの対象を、参加者で企画して、キッチリ評価した上で商品まで用意されていました。
このような仕組みで、難しく意識することなく「メッセージ」と「ストラクチャー」を考える訓練をさせてもらえていたと言うことでしょうか。参加者にそれと意識させずに、普段やらない高度なことに挑戦させると言う点は、最近流行の「ゲームニクス」にも通じるものがありそうです。
・・・と、ちょっとこじつけっぽいですがゲームとか面白いもの大好き人間の意見でした。
投稿者 はぐれヲタ : 2007年09月06日 13:05
はぐれヲタさん、まいど!
やっぱり、いいイベントは、しっかりと設計されているということがわかりますよね。
ゲームニクスもこんど取り上げたいテーマです!
投稿者 松尾順 : 2007年09月07日 14:32
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