ホームページのユーザーテスト結果をどう解釈するか?

星野リゾート代表取締役、星野佳路氏は、

「個人旅行の予約ツールはほとんどがネットになる」

と感じているそうです。
(「IT経営への提言[日経コンピュータ他特別編集版])」
収録の特別講演より)


同社が運営するリゾート、宿泊施設でも、
それぞれ独自のホームページを立ち上げ集客を図っています。

問題は、各ホームページのアクセス数には大きな差が
あったことです。また、ホームページ来訪後の予約件数にも
ばらつきがありました。

そこで、ホームページの「ユーザビリティ」を検証するため、
ホームページ上の消費者の行動調査に取り組んできています。


星野氏の言う「行動調査」とは、
消費者がホームページに期待していることを口頭で聞くだけでなく、
旅館やリゾートのホームページを見るときに行動の裏に潜む
原因、理由、心理を分析しながら行動を分析すること。


そして、具体的な調査方法としては、
アイトラッキング(視線追跡)システムを活用した
ユーザーテストを行っています。

ホームページ上をどのようにユーザーの視線が動いているのか
を記録し分析することによって、さまざまなことが見えてきます。


星野氏によれば、次のようなことがわかったそうです。

・想像以上に、写真のインパクトが大きいこと
・一生懸命書いた文章にはあまり目を向けてもらえないこと
・アクセスマップも非常に重要だということ
・デザイン的に素晴らしいホームページが予約獲得に直接
 結びつかないケースがあるということ


さて、こうした結果をあなたはどのように「解釈」しますか?


星野氏の講演で話された内容に基づく限られた情報ですので、
あくまで推測に頼った解釈しかできませんが、
自分なりにいろいろと考えてみるのが「解釈力」を
高めるために有効だと思います。


私の場合、

・一生懸命書いた文章にはあまり目を向けてもらえないこと

という結果が気になりました。

これを短絡的に解釈すると、

「くだくだと長い文章は効果がない。短い簡潔な文章にすべし」

ということになりそうです。


私はそうは思いません。

やはり、伝えたい情報や思いは、
たとえ長くなってもたっぷりと掲載すべきだと思います。

(もちろん、専門用語を多用しないわかりやすい文章や、
 適切な見出しなど、読みやすさへの配慮は必要です)

というのも、人は最終的にどのホームページで
購入をするかの判断材料の一つとして、

「情報の豊富さ」

を重視していると考えられるからです。


では、なぜ

・一生懸命書いた文章にはあまり目を向けてもらえないこと

という結果が出てしまうのでしょうか。

これはおそらく

「ユーザーテスト」

という特殊な環境だからだと私は考えています。


ユーザーテストの被験者(調査協力者)は、
「初見」としてホームページを見るという意識で
調査に臨むでしょう。

この場合、ユーザーが気になるのは、
全体的な漠然とした印象です。

つまりざっと見た第一印象で、
このページに有効な情報がありそうか、
使いやすそうかを判断しようとするでしょう。

この場合、どうしても視線は画像に行きやすく、
逆に、文章をじっくり見ることはしません。


おそらく、テストではなくリアルな状況で、
複数のホームページを見比べるとき、
あなたもこうするのではないでしょうか。

比較対象のホームページ全てを隅から隅まで、
なめるように見るのではなく、ざっとあたりをつけて

「このホームページがよさそうだ」

と1-2個に絞りこんでから、
じっくりと文章を読み込んでいきますよね。


ですから、初見の「ざっと見」の段階で、
情報量の多いホームページと少ないサイトがあった時、
多くの場合、情報量の少ないサイトは捨てられるでしょう。
(使いやすさは同じ水準だとしたら)

なぜなら、

「このホームページでは十分な情報が得られそうもない」

と最初の段階で判断されてしまうからです。

したがって、最初の時点で、
文章をちゃんと読んでもらえないことは、
けっして問題ではないのです。


以上は、あくまで私の「仮説」の域を出ませんが、
ユーザーテストの結果を安直に判断せず、
リアルなユーザー環境も考慮しながら、
さまざまな「解釈」の可能性を探ることが必要だと思います。


あなたの「解釈」もぜひ教えてくださいね!

投稿者 松尾 順 : 2007年09月25日 10:22

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コメント

これは、あくまで商業サイトについての話ってことでいいんだよね?

私は、経験上WEBサイトでは初見は大事だと思うよ。
「あたり」をつけてもらえるようなホームページでなければ、ただの沢山のHPの中で埋もれて行くだけの一部受けのサイトになってしまうからね。それじゃあ商業サイトじゃないからね。
つまり、「初見で選ばれるサイト」=「アクセス数の見込めるサイト」と言えると思うんだ。
商業サイトとしては、このアクセス数が見込めるか見込めないかがまず大事な点だと思うしね。
そして、この初見で適用されるルールとして、多分、広告業界のルールが一番近いと思うんだ。
広告デザイン、コピーには余分な情報がほとんど使われない。
そういう意味で、
簡潔な文章はWebサイトにはとても重要な要素と言えると思うんだ。

問題は、その初見で選んでくれたユーザーがさらに
今度は中身を掘り下げ濃くして魅力のあるサイトづくりをしてかなければならない。。。
つまり、リピーターを作り、更なるアクセス数の増加並びに継続をしていくサイトにしていくという意味では、情報量が多い方がいいと思う。
でも、その情報も、ただ懸命に書いたものというだけでは駄目で、
きちんと整理され、見やすく解りやすいものでなければならい。
つまり、ここでも文章はなるべく簡潔にしておく必要がある。といえると思うんだよね。

ただし、例外がある。

それは、ブログやコミュニケーションをとりながらユーザを確保していくようなサイト。
こういう場所では、懸命に書いたものも売り物になるということが言えるからね。

投稿者 こねこね : 2007年09月26日 02:53

こねこねさん、まいど!

もちろん、商業サイトについての話。
目的が遊びならどう書いてもらってもご自由にです。

大事なのは、情報の見せ方ですわ。
初見では、確かにスペースの制限のある広告コピーと同様、簡潔さが求められる部分がある。しかし、ユーザーのニーズにおいていくらでも情報が深堀りできるように、その奥にたっぷりと情報を用意しておくのが重要でしょう。

初見だけがいいサイト、つまりぱっと見はよさそうに見えても、それ以上の情報がないサイトは、「みかけだけのサイト」ということで、相手にしてもらえないですね。

投稿者 松尾順 : 2007年09月26日 06:57

これは自分の専門なので、思わず書いてしまいますが、たぶん松尾さんや我々が想像しているよりも文章や文字をユーザーさんは読まないですよ。

これは、テスト環境だから、というのもゼロとは言いませんが、ユーザーさんがも「何かを検討する」という行動をリアルに考える必要があります。

一生懸命に書いた、というのが、何を書いたのか、というところが大事でもあります。

また、文章は嘘を(意図しないでも)つきやすいですが、写真は嘘をつきにくい(とユーザーが考えている、というのもあります。

豊富な情報も、豊富の中身が重要です。

ネガティブなクチコミを見すぎて、楽しい旅行が楽しくなくなり、もうクチコミなんかみない、という学習をする人もいます。

投稿者 菅原 : 2007年09月26日 10:23

あと、読む読まないかは、例の価値ハンターかどうか、というポイントも大きいかと。

松尾さんの、問題提起に沿う?話をすると、ユーザビリティテスト会社は、ユーザー行動についての知見はある程度ありますが、ターゲティングやユーザーセグメントについては、素人同然ですし、リクルーティング力もないので、そのあたりの影響もあるでしょうね。

投稿者 菅原 : 2007年09月26日 10:34

菅原さん、まいど!

サイトにおける情報量(特に文字量)の重要性は、
価値ハンターといったターゲットセグメントに加えて、
商品特性(高関与、低関与)の違いも考慮する必要が
ありますね。

耐久消費財のような高関与商品だけでは、
やはりある程度の文章による説得がないと
相手にされないわけです。

また、高関与商品は、初見で購入を決断するのではなく、
購買対象となるいくつかのサイトをざっくり検討して
絞込み、いわゆる「考慮集合」化する。

ここまでは、文章はちゃんと見ないでしょう。
ただし、たっぷりと情報があるように見えることが
必要なので、結局のところ情報量が鍵になってきます。

そして、最終的に購買するかどうかという意思決定の
段階では、じっくりと文章を読むはずです。
ただし、フェラーリを衝動買いできるような富裕層は別ですよ(笑)

ところで、ネガティブな口コミを見たくなくなったという
話は面白いですね。

投稿者 松尾順 : 2007年09月26日 10:51

うん。みせかけだけのサイトはそのうち相手にされなくなると私も思うよ。

このテスト「アイトラッキング(視線追跡)システムを活用したユーザーテスト」でしょ?
つまり、「初見の「ざっと見」の段階」で、サイトの奥や、情報量など作製再度が懸命に書いた文章のところまで実際にユーザは確認してサイトを選ぶ人は少ない。という結果だったということ。そして、それは実際に私はそうだと思う。
私は今の仕事でもよくネット検索をして情報を得る事があるけれど、沢山ヒットするサイトの中でどれを選ぶかと思った時に、初見では見やすいところ、解りやすく書いてそうなところを自然と選んでるもの。その選ぶときにサイトを見る時間なんてものの数秒。情報量の多さなんかみちゃいないわ。
ただし、選んでから読みこんでいってリピーターを作るという意味では、情報量の多さはとても重要な要素だとは思うけどね。

投稿者 こねこね : 2007年09月26日 12:06

失礼します。
まったくの素人で申し訳ありませんが、書かせていただきます。

見やすさやなどの要素も重要だと思います、
写真の重要性ももちろんのこと文章の量や質の問題もあるでしょう。
しかし、言うまでもありませんが、デザインや画像が貧弱で文章量が多くてもアクセスの多いサイトもあるし、
デザインがステキで画像なんかもふんだんにあるけど、文章的に大して情報のないサイトでもアクセスが多いサイトもあると思います。
他の色々なパターンも。

ではなにで「選ぶか」、と考えたときに、
「何となく信頼できそうなサイト」じゃないのかな、と思います。
ぱっとざっと見したときに、「おっ」てな感じで。
必ずしも「情報の量」や「質・内容(画像or文章)」ではないのではないかと、そう思った次第です。

投稿者 Chrosawa : 2007年09月26日 13:30

こねこねさん、重ねてのコメントありがとう。
Chrosawaさんも素人じゃないじゃないですか!

さて、いろいろとコメントをいただいて、
ホームページのあるべき姿が多少見えてきました。

それは、

・ぱっと見、信頼できそう、楽しそうに見える
 (だから、深堀りしよう、リピートしようと思う)

・実際、深堀りしてじっくり見たら、楽しかった、
 ほしい情報が得られた
 (満足したので、商品やサービスを利用することにした)

という流れを作れていること、じゃないでしょうか。

したがって、初見においては、表面的なデザインがより重要であり、その後については、表面的なデザインだけじゃなくて、内容(情報の量、および質)も重要になってくるということになるかと思います。

投稿者 松尾順 : 2007年09月26日 14:22

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