サイコグラフィック分析最前線

これまで、ターゲットユーザーの購買行動の予測や
セグメンテーションには、主に、

性別、年齢、居住地、職業などの
「基本属性」(デモグラフィック属性)

と呼ばれるものが主に使われてきました。


でも、たとえば、「28歳、都心に住む独身OL」と言っても、
好きなファッションも音楽も遊ぶ場所も人それぞれですよね。

したがって、ターゲットユーザーの行動行動の予測や
セグメンテーションの軸としてはさほど有効ではないのが現実!

それでも、他に有効なセグメント軸がなかったので
最善の策として採用していただけです。


しかしながら、最近の消費者は、
ますます理解しがたい存在になってきてます。

情報化の進展によって、
口コミによるブームが起きやすくなっている一方で、
いわゆる、「オタク」的な細分化されたマーケットも
次々と生まれているような状況です。


このため、以前から主張されてきた

「サイコグラフィック属性」(心理学的属性)

の活用がますます必要になってきていると思います。


すなわち、ターゲットユーザーの

価値観や動機、性格等、

を把握して、ユーザーの購買行動予測や
セグメンテーションの精度を高めていく動きが、
今後活発になってくるでしょう。


その最新事例のひとつが、
リンクアンドモチベーション社(以下、リ社)が提供する

「ライフスタイルデータ分析」

に基づく各種サービスです。


この分析では、調査協力者の性格や価値観の違いに基づき、

・消費に積極的な・・・「浪費快楽型」
・政治・社会参加に前向きな・・・「良識社会型」
・知識教養に関心の高い・・・「自立達成型」

など、消費者をライフスタイル別に
8つに分類(セグメント)しています。


そして、市場調査においてこの分類を活用します。
(日経産業新聞、07/09/26)

たとえば、30-40歳代の女性を対象にしたヨーロッパツアー
を企画する旅行会社からの依頼を受け、
上記8つの分類に属するそれぞれのターゲットユーザーに

「参加意欲があるか」

といった質問を投げかけます。


その結果、「良識社会型」の参加率が高そうであれば、
現地での観光内容を美術館や歴史的建造物めぐりなど、
ちょっと固めのものにします。

あるいは、「浪費快楽型」の参加が多いようであれば、
有名ブランド店でのショッピングの時間をたっぷり取る
旅程とします。

このように、ターゲットユーザーの価値観や消費スタイルに
沿った商品企画を行うことで、参加者の満足度を高め、
リピート率を向上させることが可能になるというわけです。


*リ社の上記内容についてのニュースリリース

また、豊田通商でも、
リ社の上記「ライフスタイルデータ分析」を使って、
顧客の価値観や心理を分析できるシステム、

「CLAS」
(カスタマー・ライフスタイル・アナリシス・システム)

を開発しています。
(日経ストラテジー、NOVEMBER 2007)


たとえば、同社の自動車資材部では、
シートやカーペットの内装の企画や調達を
てがける際のヒントとしたそうです。

同システムを利用することで、
ターゲット層の価値観や好きなブランドを
より深く理解できるため、内装の素材等の選定が
容易になるとのこと。


*豊田通商の記事は、ITproのWebサイトにもアップされてます。


サイコグラフィック分析をやるには、
その元データの収集を対象者に対するアンケート調査に
頼らなければならないという問題が依然として残りますが、
今後実用レベルで使える方法がさまざま開発されていくことが
期待できますね。


なお、リ社の「ライフスタイルデータ分析」は、
ODS社の「ライフスタイルインディケータ」を継承したもの。

これについては、関連記事を以前書きました。

*シンプルマーケティング(2)ライフスタイル-1

投稿者 松尾 順 : 2007年09月28日 13:11

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トラックバック時刻: 2014年01月25日 19:24

コメント

「サイコグラフィック分析」キタ――(゚∀゚)――!!

マーケティングの話では、どこでも必ずといってよいほど使われる言葉な割に、実体がよくつかめないでいるので、関連する話題をこれからも期待してます。

>その元データの収集を対象者に対するアンケート調査に
>頼らなければならないという問題

このブログでは「サイコグラフィックの事例」に限らず、データを上手に読んで「サイコグラフィック分析」と同等の成果を挙げている事例が多いのでとても勉強になっています。(最近だと「オギノ」の事例とか)

でも、「サイコグラフィック分析」としては、「ライフスタイル分析」のような大枠でのレベルに留まってしまっているものなのでしょうか?

--------------------

「高層ビル」の事例や、金森努さんのブログで紹介されていた「DAKARA」の成功事例など、徹底的にやれれば効果的だとおもうのですが、まだ費用対効果などの関係で、実践的だと捉えられていないってことかな~。

「サイコグラフィック分析」というと聞こえは悪いかもしれませんが、要するにそれだけ「お客様の声を聞く」ってことですから、今後もっと有効な手法が生み出されて、盛んになっていって欲しいとおもっています。
しかし、どちらかというと、情報技術の問題じゃなくて、まず「データを集めるためのオペレーション」の問題かなぁ。

投稿者 はぐれヲタ : 2007年09月28日 14:54

連投失礼します。

はぐれヲタさん、こんにちは失礼いたします。
>まず「データを集めるためのオペレーション」の問題かなぁ。
ぼくもそういうことなのかなと思います。

これは、大きく言うと、「アンケート調査での元データの収集」の時、答えてもらう項目が増えていくこともあり得るということでしょうか?もしそうだとすると、どうなんでしょ。

もういくつか、自動車会社とか靴屋さんがやっていますが、
「セカンドライフ」という3D Internetでは「ユーザーに調査・アンケートとは直接的に思わせないデータ収集」に成功しています。
しかしながら、これは「「サイコグラフィック分析」にはならないですかね。。。「セカンドライフ」というメタバース内では違った人格になっている人も多いですから。

投稿者 Chrosawa : 2007年09月28日 19:28

とにかく、データなけれりゃ分析できない、
わけですから、顧客情報分析は、
デモグラフィックにせよ、サイコグラフィックにせよ、
情報収集オペレーションをいかに回すかがカギですね。

投稿者 松尾順 : 2007年09月29日 11:12

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