‘病める’米国医療制度・・・『シッコ』

「米国なんかにゃ、死んでも絶対住みたくないな・・・」

と心から思いました。

「米国で病気になったら、終わりだ・・・」
(金持ちでない限り・・・)

マイケルムーア監督の新作映画、

『シッコ』

を見た後の率直な感想です。

『シッコ』は、米国医療制度の病巣を赤裸々に描いた傑作。

米国では医療保険に加入できず、高額の治療費が払えないため、
大きな傷口でさえ自分で縫わなければならないような人が
5千万人もいます。


でも、

医療保険に入っているから安心というわけではない

のがあきれてしまう点です。
本当に米国の医療制度は病んでいます。

というのも、保険会社が保険金の支払いを拒否したたために、
必要な手術や投薬が受けられず、死んでいく人が多数いるのです。
(受けていれば助かったのに・・・)

保険会社に雇われているドクターは、
保険加入者の申請(○○手術の費用を補償してほしい等)の
否認(拒否)率が高いほど、報酬が高い仕組みになっています。

つまり、保険会社の利益を上げるために保険金の支払いを拒み、
病人を見殺しにすればするほど、ドクターも儲かる仕組みなのです。

(全ての保険会社がそうだというわけじゃないでしょうけど)

また、入院患者が治療費を払えなくなると、
病院は、冷貧困層が住むエリアの医療センター前の路上に
その患者を寝巻姿のまま捨てます。
(この医療センターはとりあえずお金がなくても面倒はみます)

病院側が、一方的に患者をタクシーにのせて、
 そこで強引に降ろすように頼むのです。

病院もまた、お金がない病人は見殺しにするのが米国の実態。
病人ですから、必要な治療が受けられず、文字通り死に至る人も
いるでしょう。


一方、シッコで紹介されていましたが、
米国と川を隔てただけのカナダや、英国、フランス、
そして米国の仮想敵国のキューバでさえ、

「国民皆保険制度」

が確立しています。したがって、これらの国では、
医療はすべて無料で受けられます。
(もちろん、税金負担は大きいのですが!)

フランスでは、赤ちゃんのいる家庭には、
週2日ほどベビーシッターサービスが「無料」で
受けられるほどです。


シッコの中で特に印象に残っているのは、
911の救援活動に従事し、その後遺症に苦しんでいるに
もかかわらず、必要な治療が受けられないでいた米国人を
ムーア監督がキューバの病院に連れて行ったところ、
笑顔で受け入れられ、無料で必要な治療を受けることが
できたというシーン。

キューバの平均寿命は、米国より長いのだそうです。


近年問題になっている日本の保険会社の保険金不払いも、
米国保険会社の「人の命より利益優先」という姿勢に
比べると、まだましに感じられましたね。

また、無料ではないにせよ、
比較的軽い負担で相応の治療が受けられる日本の医療制度も、
断固として守らなければならないと思いました。
(改善の余地は多々あるにせよ・・・)

なお、米国では、

『シッコ』

は、ドキュメンタリー映画として史上2位の動員を上げています。

ところが、日本では不入りのためか、
封切り1ヶ月もたたずに公開を打ち切る映画館が
相次いでいますね。

まあ、固い内容ですし、しょせん他国の問題ですから、
平和ボケしてる日本人の関心があまり向かなかったのでしょう。


マイケル・ムーア監督の一連の作品は、
テーマの描き方が一面的で客観性に欠ける点があるという指摘が
これまでありました。

「シッコ」もそうした批判を受けているようですが、
とにかく見て損はない映画だと思いますよ。

楽しいというより、びっくり・唖然とさせられることの連続で、
最後まで目が離せません。

投稿者 松尾 順 : 2007年09月29日 10:09

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コメント

連投、すみません。ちょっと「キモい」かもしれませんので、
これでやめますので許してください(笑)

「シッコ」気になっていました。DVDになったら必ず見ます。
以前日本は「社会主義が一番成功している資本主義国家だ」なんて外国の誰かに嫌味(?)を言われたりしましたが、どうなんでしょう。もしそうだとしても、「系列」とか「談合」とか「終身雇用」とか、企業(=会社)が家族に近いという独特の考え方を指してそういっただけで、以前から社会保障が充実している国とは思えませんから、そういった部分を指したわけではないでしょう。

さて、昨今日本では、健康保険料は値上がり、負担金割合は引き上げ、高齢者負担金割合も引き上げられるという傾向です。(強行採決した自民党は自ら一部を保留凍結しましたが)

「事実上破綻している年金制度」「介護保険制度」…「生活保護暮らしのほうが年金暮らしより裕福」とか、「独り暮らし老人の孤独死」「病院たらい回し問題」なんてのも話題になっています。生存に関わる根本的なところが、まぁとにかく「こりゃ大変だ!」であります。

どれもこれも問題の一番は「財源」なんでしょうが、
収入の少ない人へ増税して、収入の多い人や増益傾向にある企業に減税する、なんてことやってちゃ解決するわけがないんです。

健康保険料を支払うことが難しく医療を受けられない人の特集を少し前TVで見ました。
僕だって例えば月5万円になったら払えないです。
そのとき仮に自分が健康だったら余計支払わないかもしれません。
このままでは、日本の健康保険制度も破綻に向かいます。

小泉・安倍政権から格差が顕著になったといわれる日本。
“アメリカ追随”はぜひ「良いところ」だけにしてほしいですね。

投稿者 Chrosawa : 2007年09月29日 17:34

Chrosawaさん、まいど!

ぜんぜんキモくないですよ。
まったく面識のない方だとちょっと・・・ですけど(笑)

シッコは、行き過ぎた自由主義がどんなに持たざるものに
とって厳しい社会を生み出すかを示したものだと私は
とらえました。

何事につけ、米国を真似しがちな日本ですが、
おっしゃるとおり、よいところだけにしてほしいですね。

投稿者 松尾順 : 2007年09月30日 12:05

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