木の根っこ問題

「何が問題なのかがわかれば、その問題は解決したも同然だ」

という表現を聞いたことがありますか?

言うまでもなく、問題が特定できなければ、
解決策を考えることができません。

逆に、問題が特定できさえすれば、
解決策は、案外シンプルなものであることが多いですよね。

ですから、何が問題であるかさえわかれば、
解決に大きく近づいたことになるというのは確かです。


ただ、組織上の「問題」を特定するのは
それほど簡単ではありません。

なぜなら、何が問題かということについて、関係者が

「共通の認識」

を持つことが難しいからです。


各関係者が認識している問題が異なると、
それぞれの解決策も異なってくるため、議論が噛み合わない。

その結果、解決策がなかなか決まらないということになります。


こうなるのは、各関係者が目指す目的・目標や、重視点が
それぞれ違うからという点も大きいのですが、そもそも、

何が問題で、何が原因か

といった思考法に慣れていないという理由もあります。


そこで、私は、関係者(プロジェクトメンバー等)の間で、

「木の根っこ問題」

というトレーニングをすることがあります。

これは、

「問題とは何か」

を理解してもらうためのもの。

以前、日経コンピュータに掲載されていた
プロジェクトマネジメントの記事で見つけて、
なかなか面白いと思ったので業務に使わせてもらっています。


では、「木の根っこ問題」が
どんなものか簡単にご紹介しましょう。


次の文章を読んでください。


「道路作業員が、毎日5メートルの道を作っている。
 しかし、ある日は3メートルしか作れなかった。
 調べたら、 前方に障害物があることがわかった。
 それは‘木の根っこ’だった。」


さて、ここで「問題」は何でしょうか?


すんなり問題が特定できることもあります。

しかし、ビジネス的な観点から深読みしすぎたのか、
次のような答えが返ってくることが結構あります。

「障害物にでくわす前提で計画ができていない」

そして、この原因を聞くと、

「障害物にでくわす前提で計画ができていなかった」

と問題と同じ答えになり、解決策はその裏返しの

「障害物にでくわす前提で計画を立てる」

となってしまいます。


一読すると、以上のやりとりには、
なんら「問題」はないように思えます。

しかし、目先にある「根っこ」を
どうするのかということについては
何も答えていませんね。


さて、「木の根っこ問題」の正解は次の通り。

問 題:5メートルの目標に対し、
    3メートルしか道路が作れなかったこと
原 因:木の根っこがあったから
解決策:木の根っこを取り除くこと


正解を聞いてみればなんてことはありませんね。

要するに、問題とは、

「目標と実績のかい離」

のことなのです。

そして、そのかい離を生み出したのが「原因」であり、
その原因を取り除くことが「解決策」なのです。

したがって、問題を議論するときには、
「目標」が何かを念頭に置く必要があるわけです。


先ほどの深読みしすぎたような答え、

「障害物にでくわす前提で計画ができていなかった」

は、3メートルしか道路が作れなかったという「問題」
を生み出す間接的な原因(要因)と言えます。ですから、

問題の「背景」

と考えるべき事項でしょう。


普段なにげなく使っている、

「問題」や「原因」「解決策」

といった言葉は、その意味を十分把握して使うことを
お勧めします。

投稿者 松尾 順 : 2007年11月12日 11:55

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コメント

おお! これはシンプルだ!(笑)

投稿者 開米瑞浩 : 2007年11月13日 01:12

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