ケータイで服を売る

「試着ができないのに、ネットで服が売れるわけがない」

というのが、EC(電子商取引)が始まったばかりのころの
「常識=思い込み」でしたね。


でもよく考えてみれば、ネット以前から、
セシール、ムトウ、千趣会、ニッセンといったカタログ通販でも、
同様に試着ができないアパレルが山ほど売れていた。


カタログ通販で服を購入する場合、

試着→買う

という流れではなく、

買う→試着→気に入ったらキープ、気に入らなかったら返品

のが実質的な消費者の意識であり購買行動だと言えます。

我が家でも、気楽に通販でモノを買い、
気に入らなければ気楽に返品するという女性(妻)の行動を
目の当たりにしていました。
(ご存知かと思いますが、返品は基本着払いでOK)


それでも、カタログやPCならまだしも、
画面の小さいケータイで服が売れるというのは、
いまだに素直に信じるのが難しいですね。


さて、ケータイで服が売れることを実証した、
携帯向け女性専用サイト

「ガールズウォーカー」

を運営するゼイヴェルの今期(08年3月期)は、
携帯通販だけで100億円を突破する見込みだそうです。
(日経MJ、2007/12/10)


同社社長の大浜史太郎氏によれば、
ゼイヴェルの成功の鍵は、

「クロスメディア戦略」

でした。


ガールズウォーカーの立ち上げは2000年4月。
当事業では当初、主に「広告収入」を見込んでいました。

携帯通販は、大手衣料メーカーに相手されなかったため、
中小の在庫処分を扱うしかなかったとのこと。

しかし、神戸コレクション(リアルなファッションショー)
を協賛。また、「CanCam」などの雑誌と連動させた商品販売方法が
奏功して実績を上げたおかげで商品の取り扱いが広がっていった
のです。

特に、2005年から開催しているリアルなファッションショー、

東京ガールズコレクション(TGC)

のインパクトが大きく、携帯通販に服は卸せないと
言ってたメーカーの態度が変わったそうです。

「TGC」は、複数の女性誌のモデルが横並びで登場し、
リアルクローズ(普段着として使えデザインが斬新な
高級感のある服)を世界に発信する場。

そして来場者は、
山田優や押切もえなどの人気モデルが着ている服を見て
欲しいと思ったら、即座に手元のケータイで発注ができます。


このTGCの第2回には、東京コレクションに来たことのない
グッチの総裁が来場したほど。

今年(2007年)3月に開催された第3回TCGには、
延べ2万2千人が来場。うち3千5百人が購入し、
購入単価は平均1万1千円だったそうです。


今後も同社の基軸は「クロスメディア戦略」。
全国の百貨店や雑誌といかに連動するかが重要だと
大浜氏は述べています。

ゼイヴェル自体も初の携帯発女性ブランドを立ち上げ、
全国に22店舗を展開。

これは近年、女性層の集客力が衰えつつある百貨店に
依存しすぎないための戦略なのかもしれません。


ガールズウォーカーは現在、
F1層(20-34歳の女性)を中心に700万人の会員を
抱えています。

ゼイヴェルでは、この巨大な顧客資産をベースに、
情報やトレンドを売るマーケティング会社を目指しています。


不安定なECが売り上げの大半を占める現状から、
若い女性層への有力媒体として収益率の高い広告販売を強化、
ブランドのコンサルティングを主要な事業として育てていく
方針だそうです。ブランド再生事業も開始してます。

投稿者 松尾 順 : 2007年12月10日 13:35

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コメント

う~ん、ケータイで服が売れることについて、
ガールズコレクションの例はすごくよくわかるのですが
他にはどういうときにケータイの強みが出るのでしょうか?
雑誌をみてパッと買うイメージなのでしょうか?

申し込み用のインフラとして便利であることはわかるのですが、商品紹介として考えるとやっぱり携帯はまだ「?」な感じがします。

PC上での服の通販については「なぜ通販で買うのですか」という本を読んで良く納得できたのですが、ケータイはまだちょっと理解できない。考え方が古いというか、感覚が付いていかないんですよね・・・。

投稿者 はぐれヲタ : 2007年12月10日 16:19

松尾先生、こんにちは

「ガールズウォーカー」は私も前からちょこちょこ見てました。ほんと見れば見るほど「?」なのですが、実績を見れば、やり方次第でどうにもでもなるといういい見本ですね。

画面は小さいけれど、ボタン一つで買えるから簡単だし、店員とのやり取りもなしで購入も返品もできるなら心理的な障壁もないのかな、、、などと考えましたが、そういう便益よりも「このかわいい服はここでしか変えない=ガールズウォーカー=良い」ってブランドの力なんでしょうね。そう考えると、浮き沈みの激しい個人売りより、ビジネス向けに安定した商売したいというのもわかる気が致します。

*****

先日、某社のマーケティングの友人から「日本の若い人は服にほんとにお金を使うけど、長期的な投資になるようなものはあまり買わない」なんて話を聞いてきて、ほんとか嘘かわかりませんが、少々複雑な思いもします。

投稿者 sergejo : 2007年12月11日 03:58

はぐれヲタさん、コメントありがとうございます。

ゼイヴェルさんがクロスメディア戦略を採用したということからおわかりのように、ケータイ単体ではなかなかモノは売れないわけです。端末自体は、注文・決済ツールとしての役割が大きいですよね。ケータイの強みは、ご指摘の通り、ほぼ24時間肌身離さず持っている点で、欲しいという欲望を購買という行動に即座につなげられる点でしょうね。ファッション衣料品は必需品じゃないので、理性的な判断じゃなくて、感性的な判断で買われますし。欲しいと思ってもその場で注文できなければ、まあいいかとなりますよね。

投稿者 松尾順 : 2007年12月11日 09:47

sergejoさん、ども!

ある程度、ガールズウォーカーのブランドが確立されれば、ケータイでの購入もさらに促進されますよね。ブランドに対する理解、信頼があれば、細かい商品説明は不要、極論注文さえできさえすればいいならケータイで問題ありませんよね。

投稿者 松尾順 : 2007年12月11日 09:51

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