ありそうでなかった後ろに長い傘

ありそうでなかった商品として
最近面白いなと思ったのが、ある新開発の傘です。

この傘は、上から見ると従来のまん丸の円ではなく、
後ろに長く伸びた楕円形になっています。


強い雨の時など、思わず傘を前に倒してしまいますよね。
そのため、背中の方がびっしょりになる。

この楕円形の傘なら後方に長い分、
あまり濡れることがないというわけです。


ただし、見た目がちょっと奇妙です。
(見慣れないからですが)

利用するのはちょっと恥ずかしいかなと思います・・・

投稿者 松尾 順 : 20:50 | コメント (3)

ありそうでなかった肉声防犯ブザー

仕事で遅くなった帰り。
駅から自宅までは人通りの少ない寂しい道。

急ぎ足で歩く。と、突然暗闇から人の影。
そいつはいきなり襲いかかってきた・・


こんな経験はしたくないものですよね。

でも現実には毎日あちこちで起きていることで、
いつあなたが被害者になるかはわからないわけです。


暴漢や強盗などに襲われた時、

「タスケテー!」

と声を出せない人って多いらしいですね。

突然のことに、
文字通り息を呑んでしまって、
声が出ない・・・

そこで、いざと言う時に声が出ない人のために
新しい防犯ブザーが出ています。

これは、従来の「ピロピロ」みたいな電子音に
加えて、

「タスケテー、タスケテー」

という女性の声(本物の声をキャプチャしたもの)
が出ます。

これなら、無機的な電子音よりも、
他の人が助けに来てくれる可能性が高くなりそうです。

ありそうでなかった商品ですよね。


ちなみに、暴漢に襲われた時は、「タスケテ!」ではなく

「火事だ!」(デマですが)

と叫んだ方がいいと聞いたことがあります。
そのほうが人が出てきやすいのです。

野次馬根性をくすぐるからでしょう。

投稿者 松尾 順 : 20:47 | コメント (3) | トラックバック

ちょっとアホ!理論

私の師匠(さまざまな面で・・・)であり、
多数の著作で知られる阪本啓一さんは2006年に

(株)JOYWOW

を設立されています。ユニークな社名ですよね。


「JOYWOW」のビジョンは、

「世界にJOY(楽しさ)とWOW(感動)を広めたい!」

だそうです。

こうしたビジョンを打ち出す背景には、

システムや株価ではなく、人間を中心に据え、
人間のこころと魂の幸せを経営目的としなければ、

「こころの病気と戦争と破壊と不幸の連鎖」

は止まりません。
(同社Webサイトより)

という認識があります。


阪本さんの思想を私なりに解釈するなら、

・儲かるか/儲からないか
・正しいか/正しくないか

という視点も重要ではあるものの、何よりも

・楽しいか/楽しくないか

を経営の判断基準の核にすべきである
ということだと思っています。

私自身、以前から

・その仕事は楽しくやれるか?
 (あるいは、どうしたら楽しくやれるか?)

ということを大切にしてきましたので、
阪本さんの考え方には全面的に共感しています。


さて、「楽しさ」を経営判断の核に置く人たちは、
最近増えているのではないかと思います。

おそらく、人間性を失わせてしまう、
効率性ばかりを追求しすぎる企業経営に対する反動
ではないかと思います。


京都に本社を置く古着屋チェーン、

「ヒューマンフォーラム」

の出路(でみち)雅明氏もまた、最新の経営手法を導入して
経営が安定するどころか、経営が行き詰まった末に、

「どっちみちやるんだったら楽しくやろう!」

と開き直ります。

同時に、

一緒に働くすばらしい仲間が何より大切

ということにも気づき、

「仲間を喜ばせ、ともに楽しみたい!」

という最高の学びを得るのです。


そして、ともに働く仲間たちに対して、
出路氏は、

「新しい希望の光」

を示します。

それは、仕事においての全ての判断基準を

「楽しいか/楽しくないか」

に置くことにするということです。


出路氏は、常識に囚われず、

「楽しい!」「仲間を大切にして生きる」

を実践することを

「ちょっとアホ!」

と呼んでいます。


出路氏自身は、
自分が興した会社が倒産寸前になって、
開き直った瞬間に、

「スーパーサイヤ・アホ!」

へと変身したのだそうです。


現在、ヒューマンフォーラムの経営は、

「ちょっとアホ!」

の精神に則って運営されており、
外部の人間から見ればまさに、

「あいつら、ちょっとアホとちゃう?」

と言われてしまうような制度や仕組みが満載です。


ただ、はっきりしているのは、
お客さんも、社員も、また社長の出路氏も皆、
楽しい毎日を送っており、会社も儲かっていると
いう点です。

同社の経営のひみつ(=ちょっとアホ!理論)を
知りたかったら、以下の出路氏の本を読んで
みてください。

『ちょっとアホ!理論 倒産寸前だったのに超V字回復できちゃった』
(出路雅明著、現代書林)


この本の中から、お客さんを巻き込む

「ちょっとアホ!イベント」

を2つご紹介しておきましょう。


・アフロの日

 毎月1回、週末の土曜日開催。

 アフロヘアーで来店すると全品30%オフ
 入り口付近においてあるアフロのカツラを買って、
 それをかぶって買い物をすれば全品20%オフ
 もちろん、スタッフ全員アフロヘアでお出迎え。

・体育祭

 ジャージを上下で着用してくれたお客さんは全品20%オフ
 ジャージ上だけ着用は全品10%オフ
 そしてなんと、「ブルマ」を着用してきてくれたお客さんは、
 出血大サービス全品50%オフ


なお、本自体も「ちょっとアホ!」ですよ。
常識に囚われない本づくりが行われています。


*JOYWOW
http://www.joywow.jp/

*阪本さんの最新著作

『気づいた人はうまくいく!』
(阪本啓一著、日本経済新聞出版社)

投稿者 松尾 順 : 14:58 | コメント (2) | トラックバック

やっぱり「くびれて」なきゃね!

日経デザイン最新号(June 2008)に掲載されている
消費者アンケート調査結果によると、

500mlペットボトル入りのミネラルウォーター10製品のうち、
パッケージデザイン(ペットボトルの形状)で選んで買うとしたら、
どれを選びますか?(択一)

という設問に対する回答で、
人気が高かった製品は以下の2つでした。

・アクアセラピーミナクア(日本コカ・コーラ)18.3%
・コントレックス(コントレックス)15.3%


上記2つの製品とも「ボトルの形が良いから」ということで
選ばれています。

現物を見てもらうとわかりますが、
両者の共通点は、腰の部分がくびれたヘチマ形ということです。


こうした形状は俗に

「ウーマンズボディ」

と呼ばれます。
典型的なのは昔のコカコーラの瓶の形ですね。


腰がくびれているデザインは、
手に取りやすいというメッセージを私たちに送っているので、
無意識に好んでしまうのです。
(これは「アフォーダンス」と呼ばれます。)

同時に、やはり性的な連想・刺激があることも
否めないのではないかと・・・


サントリーの「伊右衛門」が大ヒットした理由のひとつとして、
やはり竹を模したあの「くびれたボトルデザイン」があります。
(と私は思っています)


関連記事を以前書きました。

『下すぼまり形状』

この記事では、台所用洗剤のパッケージデザインについての
日経デザインのアンケート調査結果をご紹介したのですが、
やはり、くびれたデザイン(=下すぼまり形状)が好まれる結果に
なっています。


ミネラルウォーターにしろ、緑茶飲料にしろ、台所用洗剤にしろ、
くびれたデザインかどうかで売上に大きな差が出るじゃないかと
思いますが、現実には多様なデザインが存在していますよね。

デザイナーさんとしては、
上記のような人間心理よりも自分の発想やオリジナリティを
優先したいということなのでしょうか?

投稿者 松尾 順 : 16:08 | コメント (2) | トラックバック

心理的報酬・・・ハーレー検定

ちょっと前に書いた『継続ドライバ』(参照先は末尾)の記事で、
既存顧客の維持施策には、以下の2つの方向があることを
お伝えしました。

1.経済的報酬
2.心理的報酬


この2つのうち、「心理的報酬」の具体施策として、

「何とかマスター」

などといった称号を与える方法があります。
これは、顧客の名誉欲や特権意識をくすぐることが
狙いですね。


例えば、近年話題を集めたのが、

「ラーメン花月」

の「花月マスター」でした。

これは、一定期間内にラーメンを食べると
1杯毎に1ポイントがもらえて、15ポイントを貯めると、

「花月マスター」

に認定されるというもの。


花月マスターには、
創業者の直筆サイン入り認定証が贈呈されるほか、
同社ホームページなどに「花月マスター」として
名前が公表されます。

また、「新作ラーメン試食モニター権」が与えられ、
いち早く新作を味わうチャンスがあるということで、
初年度は8,930人のマスターが誕生しています。


今年は3年目ということで、

「花月マスターV3」

が開始されています。

ただ、そのキャンペーン内容を見ると、
認定証の贈呈や花月マスターの氏名公開はなく、
特別割引や特別サービスを含む、単なる

「ポイントシステム」

になっちゃってますね。

「ポイントシステム」は「心理的報酬」ではなく、

「経済的報酬」

ですから、当初とは趣が変わってしまっています。


さて、熱狂的な愛好家がいることで知られる
「ハーレーダビッドソン」では、今年8月から

「ハーレー検定」

を開始するそうです。(日本産業新聞、2008/05/27)


検定に出されそうな例題を1つ引用しておきます。

------------------------------------------------

●4人の創業者のうち、ファミリーネームが‘ハーレー’
なのは何人か?」

 
(1)1人 (2)2人 (33人 (4)4人

*正解は(1)の1人

------------------------------------------------

とてもマニアックですね・・・


当検定は、顧客にハーレーの製品や歴史に対する
関心を高めてもらうのが直接の目的です。

ただ、心理学で言う

「熟知性の法則」

(ある物事を良く知れば知るほど、
 それに対する好意が高くなるという傾向)

に基づけば、当検定を受検することによって
ハーレーに対する愛情がますます深まるでしょうし、
同時に、合格者は「名誉」を得ることができる。

ハーレーのことをますます熱く語り、
同社製オートバイの購入を周囲にも熱心に勧める
オピニオンリーダーが輩出されることになりそうですね。


『継続ドライバとは?』

投稿者 松尾 順 : 09:07 | コメント (6) | トラックバック

7歳年下の人と同じ気持ちでいたい日本女性

広告会社、グレイワールドワイドが
最近実施したアジア16カ国25,000人を対象とした
消費者調査の結果によれば、

「実年齢に対して、精神や行動は何歳ぐらいでいたいか」

という質問に対して国による違いが明確になっています。
(宣伝会議、2008.5.1)


・中国では、実年齢と精神年齢が一致
・フィリピンでは、実年齢よりも3歳上の精神と行動を求める人多し。

そして、日本では、

・「実年齢よりも7歳年下の人と同じ気持ちで行動したい」
 という願望がある

のだそうです。


調査の詳細をもっと知りたいところ(公開されてません)ですが、
若さに対するあこがれは、特に日本人女性に強いというのは
結構昔から言われてきたことですよね。

投稿者 松尾 順 : 09:55 | コメント (6) | トラックバック

本田直之氏のレバレッジシリーズ

先週、スキマ時間を見つけては、
本田直之氏のレバレッジシリーズの本5冊を
まとめ読みしました。


私はトレンド・ウォッチングのため、
ビジネス書のベストセラーは地引き網的に洗いざらい買い、
早めに読むようにしてるんですが、レバレッジシリーズだけ
はいままで1冊も読まないまま積読状態でした。

というのも、40過ぎのオヤジが読んでも
「今さら感」があるだろうなと思って読む気が
起きなかったからです。


実際読んでみると、

限られた時間を有効活用したい、最大の成果を上げたい

と日々考え続け、仕事のやり方そのものを工夫・改善してきた人
にとってはごく当たり前のことが書いてあるだけです。

それほど新奇性はありません。


しかし、きちんとノウハウとして確立されている点、
また比ゆ表現がたくみで実にわかりやすく読みやすい点には
脱帽しました。すばらしい!

さすがベストセラーになるだけのシリーズです。


40過ぎのオヤジが読んで、

「なるほどこうすれば良かったのか!」

と感心しているようであれば情けないし、
もはや手遅れ、後の祭りですが、20代の若手ビジネスパーソンに
とっては必読書と言えるシリーズでしょうね。

これらのシリーズを若いうちに読んだかどうかで、
5年、10年後、確実に差がついているでしょう。
(読むだけでなくて実行すればです・・・)


ちょっと気になったのが、
私の書いた本と内容的には重複する点があったこと。

本田氏の本が先に出てるので、
私がパクったと言われるかも知れないと思うのが
ちょっと嫌です。(考えすぎですかね・・・)


まあ、仕事のノウハウは、
突き詰めるとかなり普遍的なポイントに着地しますから、
表現に違いはあれ、本質は誰が書いても似通ってきます。

私の本も読んでいただければ、
誰の真似もしていないことがおわかりになると思います!
(新奇性はやはりありませんが・・・)


~~本田直之氏のレバレッジシリーズ(うち5冊)~~

『レバレッジ・リーディング』

『レバレッジ時間術―ノーリスク・ハイリターンの成功原則』

『レバレッジ・シンキング 無限大の成果を生み出す4つの自己投資術』

『レバレッジ勉強法』

『レバレッジ人脈術』

投稿者 松尾 順 : 00:05 | コメント (2) | トラックバック

「経営コンサルタント」と「経営者」の違い

昨日の記事でご紹介した本、

『ソニーをダメにした「普通」という病』
(横田宏信著、ゴマブックス)

の中で面白い記述がありました。


「経営コンサルタント」と「経営者」

の違いについての説明です。

同書の中で横田氏は、
「優れたコンサルタント」とは、

“企業経営にまつわる様々な事象を、
 それらの本質に即して論理的に分類整理する能力、
 すなわち「構造化能力」を磨きに磨き上げた者のこと”

と定義しています。

そして、

“自らの中に揺るぎない論理の構造物を持ち、
 ありものの経営手法に軽々に依存することもない。
 ありものの経営手法に軽々に依存する者は、
 優れた経営コンサルタントと言えるものではない”

と続けています。

これは、次々と登場する新しい経営手法
(アルファベット3文字の略語が多いですね)を
どんな企業にも画一的に適用しようとする
経営コンサルタントに警鐘を鳴らすものでしょう。


横田氏によれば、この高い「構造化能力」は、
優れた「経営者」の多くに通用するものだそうです。

「構造化能力」は、要するに

「物事の本質を見通す力」

と言えますよね。

物事の本質が見えているからこそ、
的確な決断を下すことができ、企業を成長に導ける
わけですから、経営者にとっても「構造化能力」が
なくてはならない資質なのです。


ただ、優れた経営者は、

“自らの中にある巨大な構造物を、
 ほんの一言のメッセージに凝縮する、という高い
 「抽象化能力」を併せ持つ”

と横田氏は指摘します。

これは、「要は何か」を短く語り切る能力です。

この「抽象化能力」において、
優れたコンサルタントは優れた経営者に
とても対抗できません。

なぜなら、完璧に論理立った「説明」よりも、
時に一言だけの「メッセージ」のほうが、
人には深く響くものだからです。

横田氏は、

“優れた経営者は「説明」でなく、
 「メッセージ」で勝負する”

と言い切っています。


なるほど!全くその通りだと思います。

ただ、一言補足させてもらえるなら、
経営者の発するメッセージには深い意味が含まれている
とはいえ、単なる「抽象語」ではなかなか伝わりません。

それは、巧みな比ゆによって、
聞き手の心(腹?)にストンと落ちるようなものでなければ
ならないと思います。

例えば、ソニーの平面ブラウン管テレビ「ベガ」の開発を
指揮した中村末広氏(ディスプレイカンパニープレジデント、
常務取締役、当時)は、優れた「比ゆ表現」で部下を
鼓舞していたそうです。(『ソニーの遺伝子』より)

“お前らは働いているつもりなんだろうが、
 やたら‘動’いているだけで、‘イ’(にんべん)
 のない動きなんだ”

プレゼンで毎回、同じシートを使って同じ説明を
繰り返す部下に対しては、

“オイ、お前はカラオケをやっているのか?”

など、多くの中村語録を残しています。


<参考文献>
『ソニーをダメにした「普通」という病』
(横田宏信著、ゴマブックス)

『ソニーの遺伝子』
(勝見明著、日本経済新聞社)

投稿者 松尾 順 : 12:16 | コメント (4) | トラックバック

ソニーの遺伝子はまだ残っているのか?

今年2008年は、
ソニー創業者である

井深大氏

の生誕100年だそうですね。


先日、井深氏の直接の薫陶を受けた元ソニー上席常務、
天外伺朗氏のご講演を聴く機会がありました。

天外氏のお話は、
さすがソニーが誇る奇人変人のお1人だけに
ぶっ飛んだ内容でした。(内容のご紹介はまたの機会に)


面白かったのは、講演後の質疑応答の時間です。

聴衆の1人が、

「わが社は大変な状況になっているのですが、
 いったいどうしたらいいでしょうか?」

と質問したのに対し、天外氏が、

「あなたの勤めている会社はどちらですか?」

と質したところ、
最初は社名を出すのは差支えがあるといいつつも、

「実はソニーです・・・」

と答えたので、
会場が大いに沸いたというわけです。


ただ、現ソニー社員の質問に対する
天外氏の回答は率直でした。

「もはや図体がでかくなってしまったソニーは
 一朝一夕では変わらない。良くなるまでには
 まだ時間がかかりますよ」

といったみもふたもないもの。


天外氏は、2000年代前半に起きた

「ソニーショック」

を役員として経験されているだけに、
実感のこもったお答えではありました。


ソニーの直近(2008年3月期)の業績は、
純利益で過去最高を更新しており、
私たちが世界に誇れるスーパーブランド

「ソニー」

が復活しつつあるのは確かでしょう。
しかし、現場の状況はまだまだ厳しいようです。


さて、ソニーの近年の凋落の要因は、
天外氏も指摘しているように、
組織が大きくなったための

「大企業病」

に罹ってしまったためです。

ベンチャー精神あふれる革新的な企業であった
ソニーでさえ、組織が肥大化するにつれて陥ってしまう
様々な罠から逃れることができなかったのです。

元ソニーの横田宏信氏は最近出た著書の

『ソニーをダメにした「普通」という病』

で、ソニーは

「普通」という病(普通病)

に蝕まれてしまったことを具体的な

「症例」

を挙げながら解説しています。

なお、「普通病」とは、
端的には、大企業の多くが陥りがちな

「悪しき企業文化」

と解釈すればいいようです。


例えば、

・「会社のため」とを振りかざした内輪の論理が
 まかり通るようになったこと

・「そんなの聞いてない」とダダをこねる社員が
 増えたこと

・自分たちの技術で何ができるかという「機能価値」を
 優先しがちで、ユーザーがどう楽しめるかといった
 「使用価値」を軽視していること

・以前は、部門間の壁が低いカオス的な組織であったのに、
 今や縦割りのサイロ型になってしまったこと

・ソニー流よりも米国流を信奉する、いわゆる
 「米国かぶれ」の傾向が強まったこと

・優等生が増えて、奇人変人の居場所が
 なくなってしまったこと

など、大企業でよく聴く現象が、
ソニーにも起きているのだそうです。


ただ同時に、横田氏は

「ソニーの遺伝子」、

言い替えると

「ソニースピリット」

がまだ個人や組織の中に残っていることも指摘し、
ソニー復活の可能性を捨ててはいません。


ところで、「ソニーの遺伝子」って
どんな特質を持っているんでしょうね。

そのまんまの書名がつけられた

『ソニーの遺伝子』

という本を読む限りでは特に、

・部門の壁を越えチームが一体となって
 ゴールに突き進む「燃える集団」となれること

・奇人変人を許容する懐の広さがあったこと

の2点があるんじゃないかと思います。


ただ、こうしたカオス的状態の組織を
マネジメントするのは容易ではありません。

そこを実にうまくやっていたのが、

井深大氏

だったのです。

しかし、井深氏のマネジメントスタイルを
後の歴代社長は継承することができなかったと
天外氏は考えています。


なぜ継承できなかったのでしょうか?

天外氏によれば、

井深氏はどのようなマネジメントを行っているのか

について誰もわかっていなかった(理解できなかった)
からです。


ソニーに40年以上勤め、
井深氏を身近で最もよく知る天外氏でさえ、
彼のマネジメントスタイルの本質がわかってきたのは、
ほんの数年前のことだったそうです。


横田氏の本の中に、
横田氏自身が経験した井深氏のマネジメントスタイルが
うかがえるエピソードが書かれています。

横田氏が英国赴任前のある日、
デスクのかたわらに人影を感じて顔を上げると、
井深氏がいました。

井深氏はよく社内を一人でぶらぶらしていることを
横田氏も知っていましたが、まさか自分のところに
立ち寄るとは思ってもいなかったようです。


井深氏が横田氏に掛けた言葉はただ一つだけでした。

「仕事、楽しいですか?」

<参考文献>
『ソニーをダメにした「普通」という病』
(横田宏信著、ゴマブックス)

『ソニーの遺伝子』
(勝見明著、日本経済新聞社)

投稿者 松尾 順 : 21:31 | コメント (1) | トラックバック

リアル店舗の存在価値・意味

思考を柔軟にし、新たなアイディアやコンセプトを
生み出す力を伸ばす発想力のトレーニングとして、

「意味の拡張」

というものがあります。
(以前もご紹介したことがあります。文末の記事リンク参照)


これは、一言で言えば、

「ものごとの意味を多面的に考える」

トレーニングです。


以前と同様、具体例として、

「刑務所」

の意味づけの拡張で
説明するのがわかりやすいでしょう。


刑務所の第一義の意味は、

・刑に服すること

ですよね。

しかし、上記以外にも様々な意味づけが可能です。

・3食付のホテル(外出はできないが・・・)
・技能を身につけるところ
・技を継承するところ(盗みの技など・・・)
・規則正しい生活態度を習得するところ
・健康を回復するところ

などなど。


こうして見出した新しい意味の中には、
ユーザーに対し、新しい価値として打ち出せるもの
があるかもしれません。

それらは、新商品・新サービスを生み出すことにも
つながる可能性を秘めています。


ちなみに、この発想方法は、

「ソフトシステムズ方法論」

で使われる方法です。

また、松岡正剛氏が校長を務める

「ISIS編集学校」(編集工学研究所)

でも、類似のトレーニング(「言葉の言い替え」)が
ありますよ。


さて、インターネットが日常生活に浸透し、
オンライン店舗花盛りの現代。

もはやPCやケータイから買えないものはないという今、
リアル店舗の存在価値・意味が段々薄くなってきているのは
間違いないですよね。

実際、店舗を単なる

・ショッピングの場

と意味づけているだけでは、
リアル店舗は、オンライン店舗に勝てません。

もっと別の存在意義・価値を見出し、
それを消費者に訴求する必要がありますし、
頭を絞れば、リアル店舗にはショッピングの場以上の
存在価値・意味を生み出せる可能性が残されています。


このことを気づかせてくれたのが、
鹿児島の阿久根市にある巨大スーパー

「A-Zスーパーセンター」

のドキュメンタリーでした。
(NHK 『ドキュメント にっぽんの現場』)


阿久根市は人口2万5千人。

3人に1人が65歳という高齢化、
そして過疎化が進んでいる地域です。


A-Zスーパーセンターは97年にオープン。
売り場面積5千坪、33万品目を取り扱う超大型店です。
日用品から、「車」まであらゆるものがここで買えます。
しかも24時間営業。

当スーパーは商圏人口の小ささとは不釣合いな大規模さと、
24時間営業という斬新な運営を打ち出したため、
開店当初は無謀と考えられたようです。

しかし、大方の予想に反して大成功を収め、
以前から流通業界では有名な存在でした。


このスーパーの基本的な存在価値・意味は、

ここに来ればほぼなんでも揃う

という便利さにあることは間違いありません。

しかし、ショッピング以外の様々な意味を
見出している人もいるのです。


時々やってきては、
日中ずっとテレビ売り場でテレビ番組を
見ているおじさんがいます。

この人は一人暮らしのようです。
スーパーにいると寂しくないのだそうです。

必ずしも知り合いに会うわけではないけれど、
周囲を行き交う他の買い物客を感じることができる
からです。

彼にとって同スーパーは

「寂しさを紛らせる場」

になっています。


また、この店では、10時、11時過ぎに
まだ小さい子供や赤ちゃんを連れた家族客が
やってきます。

地方の賃金水準が低いせいでしょうか、
共働きが多いため、日中に買い物する余裕が
ないことが理由ですが、それだけではなく、
子供と触れ合う貴重な時間になっているのだそうです。

深夜にやってくる家族にとって、
同スーパーは

「家族団らんの場」

になっていました。


中高生も、夕方以降入り浸っています。
コンビニさえほとんどない地域なのです。

彼らにとって同スーパーは、自宅以外で

「仲間たちとダベる場」「暇つぶしの場」

となっていました。


長年住んでいる人も多い地域ですから、
買い物をしていると知り合いにもよく会います。

20年ぶりの旧友にばったり遭遇する
ということもあります。

同スーパーは、

「人々の交流の場」

ともなっていました。


オンライン店舗は確かに便利です。

でも、便利さでは勝てなくても、
リアル店舗の良さ・強みはまだまだいくらでも
見出せるなあと思ったのでした。


『意味の拡張』

*ISIS編集学校

投稿者 松尾 順 : 10:26 | コメント (2) | トラックバック

短期間でプロ並みの知識を獲得する方法・・・多面体読み

今日は、ベタな仕事のノウハウをご紹介したいと思います。


「これまでほとんど接点がなく、
 何も知らない業種・業界などの特定分野について
 短期間で十分な知識を獲得したい」

「そして、その分野のプロの方とのミーティングで、
 “なかなかやるな”“わかってるな”
 と思わせるくらいの議論ができるようになりたい」


上記のようなニーズをお持ちのビジネスパーソンの方は。
結構多いんじゃないでしょうか?

例えば、

・コンサルティングサービス
・マーケティングサービス

を事業領域とする企業、具体的には、

経営コンサルティング会社や調査会社、広告会社

は、メーカー、金融、不動産、通信、サービス等、
多岐にわたる業界の問題解決を支援しています。
(専門とする対象業界を限定している企業もありますが)


したがって、上記のような会社の営業担当者や企画担当者は、
短期間のうちに、クライアントの属する業界の知識を
獲得する必要に迫られるわけです。

私自身、20代前半から調査会社や広告会社に
属してきましたので、これまで不案内だった業界の知識を
すばやく得る方法を工夫してきました。


そして、行き着いたのが、

「多面体読み」

と私が呼んでいる方法です。

ちなみに、この方法はコンサルタントやプランナーの方が
書いたビジネスノウハウの本でも、しばしばほぼ同一の内容が
紹介されています。(その意味では、別に私独自のノウハウ
というわけではありません)

したがって、かなり普遍性の高い有効な方法であることを
保証します。


では、「多面体読み」のポイントを説明しましょう。

=======================================================

(1)対象とする分野(特定業界など)について書かれた
   入門書を5冊以上購入する。


   「○○入門」「○○がわかる本」「図解○○の仕組み」

   といったタイトルのものを内容が多少重複していても
   気にせず、できるだけ多く買います。というより、
   むしろ内容が重複していることが重要です。

   同じ専門用語や同じ業界の仕組みのことなのに、
   本によって若干異なる説明がされています。

   これは、執筆者によってものの見方や理解の仕方が
   違うからですね。もちろん、こうした説明は、
   どれが絶対的に正しいということはありません。

   したがって、複数の本を読み比べることによって、
   業界の専門用語や仕組みについて多面的に理解すること
   ができるようになるというわけです。

   そもそも、どの本にも説明されていることは、
   覚えるべき重要なポイントです。ですから、
   複数の本を読むことによって、重要なポイントを
   確実に記憶に残すことができるわけです。

=======================================================

(2)入門書は、とにかく通読して繰り返し読む。


   対象とする分野についてなんら知識を持たない段階では、
   入門書でさえほとんど内容が理解できないと思います。

   これは、「全体像」が把握できていないためです。
   
   そこで、最初はあまり理解できなくてもいいので、
   本の頭から最後まで素早く通読するようにします。

   1ページ毎に立ち止まって内容を吟味することに
   時間をかけてはいけません。むしろ繰り返し通読します。
  
   1冊当たり3-5回位読み返すのがいいでしょう。
   1回目は時間がかかると思いますが、2回目以降は
   通読時間が段々短くなってきます。

   これは対象分野の「全体像」があなたの頭の中に
   構築されてきたことを意味します。

   ここで、「全体像」は、

  「理解の枠組み」(Frame of Reference)

   と言い換えることもできます。
   外国語の学習で言えば、

   基本的な文法と最低限の単語

   を覚えた段階と同じです。

   「理解の枠組み」さえできてしまえば、
   それだけで、対象業界のプロの方とそこそこ対等な
   議論ができます。少なくとも、適切な質問をして、
   プロの方の知識を上手に引き出すことが可能になる
   でしょう。

=======================================================

(3)全体像(=理解の枠組み)ができたら、
   中・上級の専門書にチャレンジすることと並行して
   業界紙(誌)などで業界の変化を押える。


   いったん、対象分野の全体像(=理解の枠組み)が
   できたら、より高度な専門書を読みこなすのも可能に
   なってきます。

   どんな専門書を読むべきかという「目利き」もある程度
   できるでしょうから、必要に応じて中・上級の専門書を
   購入し読みましょう。

   また並行して、業界紙(誌)を最低でも過去1年分くらい
   取り寄せ、対象分野において過去から直近までどのような
   変化が起こっていたのかを把握します。
  
   こうした、日々のニュースは「フロー情報」と呼びます。
   常に変化していく流れを拾い上げたものだからです。

   一方、(2)で身につけた「全体像」(=理解の枠組み)
   はストック情報」と呼び、文字通りフロー情報を理解する
   ためのベースとなります。

   だからこそ、まず複数の入門書を繰り返して読み、
   理解の枠組みを作り上げる必要があるというわけです。

=======================================================

(留意点)

・この1冊だけ読めばOKという本はありません!

 もしあったとしても、1冊だけで得た知識は表層的なものに
 とどまります。できるだけ多くの著者の異なる見方を吸収し、
 膨らみのある多面的な知識としていきましょう。

=======================================================


最後に、宣伝になってしまいますが、
上記のようなノウハウは以下の自著でも様々ご紹介しています。

ご興味のある方はぜひお読みください!

『営業はリサーチが9割!売上倍増の“情報収集”完全マニュアル』
(松尾順著、日本能率協会マネジメント出版情報事業)

投稿者 松尾 順 : 01:51 | コメント (2) | トラックバック

「魚介類サラダ」vs「海鮮サラダ」

あなたが和風レストランに行ったとします。

そして、メニューブックを見た時、
以下のどちらのメニューの方がより注文したくなるでしょうか?


1 魚介類サラダ
2 海鮮サラダ


おそらくほとんどの方が、

2 海鮮サラダ

と答えるんじゃないでしょうか。

そもそも、「魚介類サラダ」なんて
野暮な名前をつけるレストランは見たことありませんし、
センスありませんけど・・・


さて、レストランで

「海鮮○○」「シーフード○○」

というメニューは思わず注文したくなる、
売上げ増加に効くマジックワード。

魚を好む日本人の食欲中枢をとりわけ刺激する
言葉だと言えます。


「海鮮」のような、
人の感情や欲求を刺激することのできる言葉は

「情緒的意味」

を持っています。

一方、「魚介類」のように、
描写は正確だけれども辞書的な説明にすぎないものは、

「知的意味」

しか持っていないと言えます。


冒頭の例で言えば、

「魚介類サラダ」も「海鮮サラダ」

も実体は同じです。

しかし、人の心を刺激し、動かすという点で
マーケティング的にどちらが優れているかは明白ですよね。


なお、

「情緒的意味」と「知的意味」

の説明は、言語戦略研究所所長、齋藤匡章氏によるものです。


齋藤氏は、

“ビジネスでもプライベートでも、情緒的意味を意識して、
 相手の心にスッと入り込むような、気分に合うコトバ、
 心になじむ言葉を使うことが大切”

と喝破しています。


余談になりますが、
昨年のM-1の覇者、サンドウイッチマンのコント、

「ピザの宅配」

では、伊達さんがシーフードピザを注文したのに、
富澤さんが演じる宅配のお兄さんは、

「ミックスピザ」

を渡します。


注文違いに気づいた伊達さんが、

「これどう見てもミックスピザじゃねえか!
 シーフードピザが、どんなものかわかってるかい?」

と文句を言うと、富澤さんは

「はい、シーフドピザは、

‘死んだばかりの魚介類’

が載ってるピザです。」

と返す。

そして、伊達さんが

「おいおい、

‘死んだばかりの魚介類’

なんて言うな!」

と突っ込みを入れて笑いを取りますね。

彼らの言語感覚の鋭さが現れているコント
だと思います。


*参考文献

『コトバを変えなきゃ売れません。』
 (齋藤 匡章 著、サンマーク出版)

投稿者 松尾 順 : 10:33 | コメント (8) | トラックバック

『僕の彼女はサイボーグ』う~ん、微妙・・・

先日、

『僕の彼女はサイボーグ』

の試写会に行ってきました。

主演は、小出恵介(「ジロー」役)と綾瀬はるか(「彼女」役)
の2人。


映画の内容は、

「のび太」(=ジロー)と「ドラえもん」(=彼女)

の話みたいなものと思ってもらえればいいのですが、
現在と未来、さらにジローの過去も交錯する
ちょっと込み入ったストーリーです。


実は恥ずかしながら、私はこの複雑なストーリーに
混乱してしまい、最後のオチがわかりませんでした・・・


監督は、『猟奇的な彼女』『僕の彼女を紹介します』

のクァク・ジェヨン氏ということで、
結構期待してたんですけどね・・・


ただ、他に試写会を見た人のブログを読むと、

「良かった」「感動した」

などポジティブな感想を書いている人が
圧倒的に多いのに驚きました。


数少ないネガティブな感想の中に、

『恋空』が良いと思った人には楽しめるかも・・・

といったコメントがあったのですが、
まさにこの映画は若い人向けに作られた作品であり、
私のようなオヤジがわからなくても仕方が無いと
いうことでしょうね。


とはいえ、サイボーグに扮した綾瀬はるかは
とっても可愛かったし、場面・場面は飽きることなく
楽しめたのでまあいいか!

投稿者 松尾 順 : 13:19 | コメント (2) | トラックバック

営業はリサーチが9割!売上倍増の“情報収集”完全マニュアル

5月30日、私の初めての本が出ます!

20代の若手ビジネスパーソン(主に営業関連の方)を
主要読者層に置いた

「情報収集マニュアル」

です。

営業だけでなく、企画・マーケティング関連の方にも
参考になる内容だと自負してます。

既にアマゾンで予約注文できますので、
興味のある方はぜひご購入お願いします!


『営業はリサーチが9割!売上倍増の“情報収集”完全マニュアル』
(松尾順著、日本能率協会マネジメント 出版情報事業)


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投稿者 松尾 順 : 10:29 | コメント (6) | トラックバック

クレーマー扱いするな!

昨日、サンクスのたこ焼きのまずさに腹を立て、
同社お客さま相談室にクレームのメッセージを
送ったことを書きました。

型どおりの内容とは言え、
サンクスからはきちんと返事をもらいましたし、
私の声が同社の商品開発に反映されたかどうか定かでは
ありませんが、現在サンクスの店頭に並んでいる

「大玉たこ焼き」

の味は改善されていたのでまあ一件落着です。(笑)

ちなみに、ネットでも、
以前のたこ焼きを評価するコメントは見つかりませんが、

「大玉たこ焼きはなかなかいける」

という他の人のコメントがちらほら見つかります。


さて、このように、
消費者側から企業に投げかける不平・不満が
度を越してしまうと、いわゆる

「クレーマー」

扱いされてしまい、
邪険な対応をされてしまうこともありますよね。


ただ、どこからを

「クレーマー」

と呼ぶのかという明確な線引きはなく、
企業側も、また消費者側も判断に苦しんでいるようです。


ここでひとつクレームの例をご紹介します。
(日本経済新聞夕刊、2008/05/09より)

東京に住む波野春江さん(仮名、62歳)は、
昨年10月、娘さんから5千円の割引券と交換できる
ポイントがたまったカジュアル衣料大手のカードを
もらいました。

そこで、波野さんは、このポイントカードを使って
セーターを買おうとしたところ、店舗の店員からは

「使えません」

と一蹴されてしまったのです。

カードには

「年中有効、無期限」

と書いてあったので抗議したものの、
店員は取り合ってくれません。


娘の気持ちを無にしたくなかった波野さんは
会社にも電話したのですが、

「店頭で7カ月間、廃止の告知をした」

と店に行かなかったことを責めるような口調
だったそうです。


さらに、波野さんは、国民生活センターの指導を受けて、
社長にも手紙を出したけれど、結局、

「クレーマー」

として対処されてしまったそうです。


あなたは、波野さんはクレーマーだと認定しますか?

私は認定しません。


このカジュアル衣料大手、
たぶん、数年前にポイントシステムのサービスを
中止したU社のことでしょう。

U社の製品は私も愛用してるので、
あまり非難したくはありませんが、浪野さんのケースは
明らかに間違った対応をしてしまったと思います。


このカジュアル大手は、
自社でいったん始めたサービスを自社の都合で
勝手に中止したわけです。

サービス中止後、
ポイントカード交換の期間を十分に取ったとはいえ、
最後まで責任を取るのが筋でしょう。


もちろん、どこかで線を引かないと、
きりが無いということもあるかも知れません。

しかし、浪野さんのようなケースは
そうそう頻繁に発生するとは考えられません。

年を重ねるごとに減っていくでしょうし、
例外として受けつけても、収益に与える影響は
軽微なものでしょう。

むしろ、善意の消費者の要求を杓子定規に拒否することに
よって、ブランドイメージや評判を低下させてしまうこと
を回避すべきだったのではないでしょうか?


そういえば、クレーマー対策のプロフェッショナル、

『となりのクレーマー』

などの著者、関根眞一氏が以前テレビに出演された際、
次のようなケースにどのように対応すべきかを話されていたのを
思い出しました。(詳細はうろ覚えなので、
多少状況が違うのですが、問題の本質は同じです)


靴を脱いで上がるタイプの某飲食店で、
お客さんの靴が紛失してしまいました。

誰かが間違えて履いていったらしいのです。

お客さんは困っています。
どうにかしてくれと店員に泣きついています。


さて、店舗側としてはどのように対応すべきでしょうか。

「自分のお持ち物はご自分で管理なさってください」
と断り書きさせていただいております。
うちとしては責任取れません。

とつっぱねてもOKでしょう。

お客さんも、こう言われたら、
それ以上文句は言えないと思います。


しかし、関根さんの答えは、

「お客さんにお金を渡して靴を買ってもらう」

というものでした。

これは、クレーム鎮火のために、
てっとり早くお金でケリをつけようとしている
のではありません。

むしろ、

「宣伝費」

なのです。

なぜなら、店の責任でもないのに、
靴代を渡してくれたお客さんは大感激しますよね。

おそらく、この店のファンとなり足繁く通ってくれる
ことでしょう。また、「あの店はいいよ」と
口コミしてくれるでしょう。

その結果、靴代なんて簡単に回収できてしまうから、

「宣伝費」

とみなすことができるのです。


クレーム対策として、
このような発想ができる会社はおそらく、
高い評判と多くの固定客を抱えているんじゃないでしょうか。


(参考書籍)

『となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術』
(関根眞一著、中公新書ラクレ)

『「苦情」対応力 「お客の声は宝の山」』
(関根眞一著、講談社)

『苦情学―クレームは顧客からの大切なプレゼント 』
(関根眞一著、恒文社)

投稿者 松尾 順 : 17:30 | コメント (4) | トラックバック

サンクスのたこ焼き

私は子供の頃から「たこ焼き」が大好きです。
お祭りなどに行くと、たこ焼きの屋台に目が釘付けに。

いつも、

「1パック買ってくれるまで屋台の前から動かないよ・・・」

となります(笑)


ですから、屋台のような、できたてホカホカのおいしい
たこ焼きがいつでも買えたらいいのに・・・

と切実に思っています。

ただ、実はいつでも買える「AM/PM」の冷凍たこ焼きは、
かなりおいしいです。しょっちゅう買ってます。

普通サイズの6個入りのため量は物足りないけれど、
中のタコは噛み応えのある大きさですし、十分に満足です。


一方、サンクスでは、ずいぶん前から、

「手焼きたこ焼き」(15個入り)

を販売していました。

ところが、ボリューム感に惹かれて買ってみたら、
正直がっかりする味だったんですよね。

中のタコも実際入っているのか、
爪楊枝でほじくって確認したくなるほど小さい!

二度と買うものかと食べた瞬間は思いました。


ただ、私はコンビニに対して幻想を持っています。

100m2ほどの狭いスペースに
3-4千品目の商品が並ぶコンビニです。

商品の棚取り合戦は激しいし、
売れないもの、まずいものはすぐに棚から撤去され、
別の商品、あるいは改善された商品に切り替わっていくはず。


このように勝手に期待していた私は、サンクスの

「手焼きたこやき」

を2-3ヶ月に1回は再購入していたんですよね。


しかし、

「今回は前回よりも、少しはおいしくなってるんじゃないか」

という淡い期待は毎回確実に裏切られました。

以前と同様、あいかわらずまずい。

結局、過去1年で4回ほど間を置いて
繰り返し買ってみたものの、すべてハズレでした。


1ヶ月ほど前、最後に手焼きを買ってやはりまずかったため、
さすがに切れてしまった私は、サンクスのWebサイトから、
同社お客さま相談室にクレームのメールを送りました。

先方からは、

「商品開発セクションに
あなた様の貴重なご意見を伝えます」

という、まあ型どおりの返事がきたのですが・・・


さて、先日サンクスに行った時、手焼きに代わって、

「大玉たこやき」(6個入り)

が棚にあるのを発見。早速、試し買い。

食べてみたら、なかなかいける味でした!
手焼きのものよりも、格段に改善されています。

私が偉そうに言うのもなんですが、
これは一応、合格点をあげてもいいかなと思いました。

(相変わらず、中のタコは小さいのが難点ですが。)


「大玉たこ焼き」は春の新商品です。

まさか私1人のクレームを受けて出してきた
新商品ではないでしょう。

しかし、1消費者からの直訴とは言え、
「まずいよ」という指摘を受けたことによって、
発売直前の大玉たこ焼きの味を改めて見直した可能性は
あります。


Googleで検索してみると、
サンクスの以前のたこ焼きは量はあるが味はダメという
コメントをかなりの数、発見することができます。

こうした消費者の生の声を
同社開発担当者は十分にフォローしていたのでしょうか。

過去1年ほどにわたって、
手焼きたこ焼きの味がまったく改善されなかったところ
を見るとそうではないようです。


でも、私のケースのように、
企業に対して直接物申すことにによって、
新商品が改善された可能性があることを考えると、
消費者としては、企業に対して直接メッセージを
もっと積極的に送る必要があるんじゃないかと思います。


企業の立場としては耳の痛い意見は
あまり聞きたくないのが正直なところです。

しかし、改めて言うまでもなく、
現代の顧客は数多くの選択肢を持っています。

ダメな会社、商品はさっさっと見限られてしまう。

ですから、お客さまの声を取り入れる仕組みを
さらに充実させていくことが企業における
喫緊の課題ではないでしょうか。


ところで今、私は、

「大玉たこ焼きの中のタコは小さい。がっかりする」

というメッセージを
再びサンクスお客さま相談室に送るべきか悩んでいます。(笑)

たかがたこ焼き、されどたこ焼き。

投稿者 松尾 順 : 14:40 | コメント (2) | トラックバック

アイディアを生み出す鍵は「経験データベース」

「斬新なアイディア」を次々と生み出せるようになりたい!

これは、私にとって長年の夢。
なかなかできるようにならないのが残念です・・・


しかし、どうやったら
アイディアを生み出すことができるかという

「基本原則」

はわかってきました。それはとてもシンプル。

「火のないところに煙は立たぬ」

です。


インプットなくてアウトプットなし。
空っぽの頭でいくらうんうん唸っても、
何にも出てきやしません。


なによりも先に、
アイディアを生み出すための土壌となる

「知識」

が豊沃でなければならないのです。

ここで言う「知識」とは、あなたの頭の中に

「記憶」

として留められたもののこと。


最近は、ネットの検索エンジンで
豊富な情報が簡単に引き出せますよね・・・

しかし、検索テクニックをいくら磨いたところで、
アイディアを生み出すことには必ずしもつながりません。

なぜなら、どんなに豊富な情報を集めたとしても、
ただ自分の体を素通りさせてしまうだけなりがちだからです。


自分の記憶にとどめるためには、
様々なメディアや人々を通じて得た情報について、

「へぇ・・・そうなんだ」

と心を動かし、

「どうしてこうなんだろう」「なぜこうなるんだろう」

としっかり自分の頭で考える。
また、実際に自らの5感で体験してみる。


こうして自分の記憶に留められた

「知識」

という土壌を拡大し、耕し豊沃にしていく。

アイディアづくりは
日々の地道な土壌づくりから始まるというわけです。


電通出身のクリエイティブディレクター、コピーライター
の山本高史氏は、最新著作「案本」の中で、
私の言う「土壌」と同じ意味で、

「水がめ」

という言葉を使っています。


“自分の頭の中に「水がめ」がある。その中には「水」が
 満ちていて、それはどうも「アイディアの源」のような
 ものらしい。アイディアの源の水を汲んで、発想する。
 広告表現を考える。コピーを書く。”(案本、P67)


“「水がめ」の水を、「アイディアの源」のようなものと
 漠然と認識していたが、いまはそれが「経験データベース」
 であることを理解している。この「経験データベース」は、
 「経験=知ること」によって満たされていく”(案本、P68)


なるほど。山本氏の説明は実にわかりやすいですね。

土壌、あるいは水がめの正体は、

「経験データベース」

なのです。


そして、山本氏もまた、

「経験データベース」

を満たすためには、「意図的」に経験を増やすことが
必要だと指摘します。

“なにげなく経験を繰り返したところで、
 それは積み重ならない。ぼくらはたいていのことを
 忘れてしまうからだ。”(案本、P82)


そして、「経験」を次のように定義しています。

“なにかに遭遇して、それを意識化し、つまりそれに対して
 気持ちを動かすなりして記憶し、脳に残すこと”(案本、P83)

なお、「経験」というと旅行に行くことのような、
日常とは異なる特別なものと思いがちです。

しかし、山本氏が

「実は毎日、経験している」

と言うように、
朝起きてから夜眠るまでの毎日の生活も
経験そのものです。

すっかり慣れてしまっているために、
自動思考でなんにも考えずに過ぎてしまうがちな一日の
出来事の中から、何かに着目し、心を動かす、考える。

こうしていくらでも

「経験データベース」

は増やしていくことができるんですよ。


(参考書籍)

『案本「ユニーク」な「アイディア」の「提案」のための
  「脳内体験」』(山本高史著、インプレスジャパン)

投稿者 松尾 順 : 09:55 | コメント (3) | トラックバック

ビジネスパーソンは3秒先を予見せよ!

現在公開中の映画

『NEXT-ネクスト』

は、ご覧になりましたか?


同映画でニコラス・ケイジが演じている主役、
クリス・ジョンソンは、2分先までの自分の未来がわかる
超能力を生まれながらに持っています。

たった2分先までとは言え、
自分にどんなことが起こるかがわかるのは
大きいですよね。


クリスは、自分を狙って撃たれた
ライフル銃の弾丸をよけることができます。
まるでスパイダーマンのように・・・

ただ、スパイダーマンは高度な身体能力で弾丸を避けますが、
クリスは事前に弾道がわかっているから逃げられるという点が
違いますね。


さて、彼は、このような自分にふりかかる災難を察知して
避けることが可能なだけではありません。

自分がこれから起こそうとする行動の2分以内の展開が
見えるため、最善の行動を選び取ることもできるんです。

事前に「シミュレーション」ができるわけです。


例えば、映画の中でクリスが運命の人と感じた女性、
リズ(ジェシカ・ビール)と何とかして仲良くなろうと
近づくシーンがあります。

そこにリズの元カレが現れ、
いやがる彼女を強引に外に連れ出そうとするため、
クリスは止めに入ります。

ここで、クリスは最初、
元カレと殴り合いになった場合の展開を予見します。

すると、「勝手にやってなさい」と、
殴りあう男2人を置いて彼女が立ち去るシーンが
クリスには見えました。

そこで、クリスは、殴り合いを避け、
あえて元カレに自分を殴らせるという行動を
選択します。

もちろん、殴られたクリスは痛い思いをしますが、
おかげでリズの同情を引き、見事仲良くなることに
成功するというわけです。


クリスの超能力はあくまでフィクションです。

しかしよく考えてみれば、日常のビジネスや生活の中で
私たちはごく短い将来(およそ3秒以内)を予見して、
(正確に言えば‘予測して’)行動を起こしていますよね。


例えば、商談の場面。

「自分が次にこういったら、相手はどう反応するだろうか」
「では、言い方をこう変えたら、相手の反応はどう変わるだろうか」

というシミュレーションを高速で行い、
半分無意識的に、適切と判断した言葉を口にしています。

したがって、クリスのように

「2分先」

はどちらにせよ無理にしても、
3秒先くらいまでの予見(予測)が的確にできるようになれば、
日々の物事はより円滑に進むようになると言えるのでは
ないでしょうか。


ちなみに、この短期的な予測力の極限が試されるのが、
プロスポーツの世界です。

プロ野球では、ピッチャーが投げた時速150kmのボールが
打者の手元に届くまでわずか0.45秒。

この1秒の半分にも満たない時間で、
バッターは、向かってくる球がストレート、それともカーブ、
はたまたフォークか、といった球種や、また高めか低めかと
いったコースを見極めなければいけません。


ただし、ボールが投げられた後、
球種とコースを確実に見極めてから
バットを振ったのでは遅い。

なぜなら、時間が短すぎて、
脳の反応の限界を超えているためです。

そこで優れたバッターは、
高度な動体視力を駆使して球を追いつつ、
過去の経験などに基づいて、ごく短い時間で
球種・コースを予見(予測)し、早めにバットを
繰り出しているようなのです。

第三者的には、ボールの動きに対する反応力が
高いからどんな球でも打てるように見えます。

しかし、実は、0コンマ何秒の中で素早く予見した
球種・コースに応じてバットを出していたのです。


幸い、私たちビジネスパーソンでは
そこまでの極限の予見能力は求められません。

せいぜい3秒先までの予見力を磨けばいいと
思います。

では、どうやって3秒先までの予見力を磨くか
ということですが、それは

「予兆」

を注意深く探る癖をつけるということに
なるでしょう。


新幹線のカリスマ販売員を例に挙げると、
顔を上げて視線を動かしている、上着のポケットに
入れた小銭をカチャカチャさせている、といった行為は、
何か注文したいという行動の予兆です。

ですから、こうした予兆を確実にキャッチし、
ワゴンを押すスピードを落として、その客に対して、
「注文待ってますよ」という態度を見せることができる人が、
平均の何倍も売れるカリスマ販売員となるわけですね。


あなたも、「予兆」を探る癖をつけて、
3秒先の予見力を磨きましょう!

ついでながら、

5年後、10年後の自分や周囲がどうなるか

という長期の予見力も同じくらい重要ですが。

投稿者 松尾 順 : 10:22 | コメント (0) | トラックバック

顧客の時代がやってきた! 「売れる仕組み」に革命が起きる

今日は久しぶりのビジネス書レビューです。


『顧客の時代がやってきた!「売れる仕組み」に革命が起きる』

は、米国・ロサンゼルスにオフィスを構え、
20年以上にわたり、日米間のビジネスの橋渡しに尽力されてきた
石塚しのぶ氏の著作。


さて、本書の議論の出発点となっているのは、
タイトルにもある

「顧客の時代」

という点です。

第1章で石塚氏は、社会全体の風潮として

「ニッチマインド」

が生まれつつあると述べています。

つまり、顧客の頭の中に、

「欲しいものは必ず見つかる」

という堅固な確信が芽生えつつあるということです。


なぜなら、

“店舗でも、カタログでも、インターネットでも、
 購入方法にかかわるありとあらゆる選択肢があり、
 情報を得るためのツールがある。

 売り手主導で発信される宣伝/広告やマス・メディアに
 頼る必要はなく、自分が求める 商品やサービスを自分と
 同じ視点で利用する「一般消費者」たちの正直な意見や
 感想を聞くことができる。

 自分んの欲しいものを自力で探して見つからなければ、
 ネットでほかの消費者とつながり、どこで買えるか
 教えてもらえばいい。真の意味で、顧客に「選択権」が
 ある時代が到来したのだ。”

ということだからです。


そして、石塚氏は第2章以降で、
すでに現実のものとなった

「顧客の時代」

において企業が生き残るためにどのような戦略・施策を
展開すべきかを豊富な事例に基づいて論じています。


私が最も面白いと思った事例は、
米国オフィス用品販売の最大手、

「ステープルズ」

の顧客の声を聞く徹底した姿勢や取り組みです。


顧客の声を聞くプログラムのことを専門的には

「VOC」(ボイス・オブ・カスタマー)

と呼びますが、ステープルズのVOCの中で、
ひときわユニークで刺激的な取り組みとして
紹介されていたのが、

「グループモニタリングセッション」

です。

これは、月に約4回、
ステープルズ本社の大講堂に数百人の社員が集まって、
1回につき1時間ほど、コンタクトセンターの顧客対応
をライブで傍聴するというもの。


通常、コンタクトセンターのオペレーターと顧客との
やり取りは、スーパーバイザーや、センターの品質向上を
担当する社員が定期的にモニタリングする程度です。

ところが、ステープルズではほぼ毎週1回、
数百人の社員が顧客の生の声を聴くことができるのです。


このセッションに参加する社員は、
普段は顧客と直に接することがほとんどありません。

こうした社員が、カスタマーサービスの現場をライブで体験し、
顧客が感じているであろう問題点や不平・不満などを
身をもって知ることで、顧客の抱える問題の根源を理解して、
顧客のニーズを先取りし、問題の発生を回避する方策を
立案する上でのインスピレーションを得ることができると、
同社では考えているのだそうです。


その他、同社では、

「会員制サンプリングプログラム」

を運営。

同プログラムに会員登録したユーザーには、
毎月サンプル商品やサービスの紹介、ディスカウントクーポン
などがパッケージで送られ、商品試用後の感想などを

Webアンケート

を通じてステープルズにフィードバックすることが
できるようになっています。


同社では、SNS的機能を有した

「カスタマーコミュニティ」

も運営するなど、

ウェブを媒介としたVOC

に力を入れることによって、
何か問題があった時にだけ顧客の意見を聞く

「イベントベース」

ではなく、
自然な環境の中で継続的に顧客の声を収集する

「オーガニックベース」

でのVOCを実現しているのです。


石塚氏のこの本には、顧客主導のうねりが

「医療サービス」や「お役所」(公共サービス)

にも大きな変化を呼び起こしている事例なども
紹介されており、様々な分野の方にとって参考になる
良書だと言えます。

じっくりと腰をすえて読むことをオススメします。


『顧客の時代がやってきた!「売れる仕組み」に革命が起きる』
(石塚しのぶ著、インプレス)

投稿者 松尾 順 : 12:38 | コメント (0) | トラックバック

ブログ使用禁止語

先日ご紹介したオペラ歌手、ポール・ポッツさんの記事を
和歌山県・北山村のブログポータル

「村ぶろ」

にも転載しようとしたら、

「使用禁止語」

が文中に含まれているため、
掲載できませんという警告が出ました。


余談で書いたラブコメ映画「Music & Lyrics」の
ドリュー・バリモアのセリフ中にあった

「セックス」

が引っかかったのです。

そこで、

「セ○クス」

としたら無事掲載できました。(笑)


私は他のブログサービスを使ってないので
よく知らないのですが、
ライブドア・ブログやアメーバ・ブログでも、
同様の制限がかかってるんですかね。


「セックス」は、TVやラジオでは
放送禁止用語になってないと思います。

もはや禁止するほどのNGワードではないですよねぇ・・・


まあ、「村ぶろ」は自治体がやってるブログポータルですから、
放送コードが厳格になるのも仕方ないかな。

投稿者 松尾 順 : 09:03 | コメント (0) | トラックバック

すごか!

昨日知ったんですが、
JR九州が2009年春から発行予定の
ICカード乗車券の名称は、

「SUGOCA(スゴカ)」

なんですね。

九州の方ならすぐにピンとくると思いますが、
九州人が初めて東京タワーのような巨大な建造物を
目にした時などに思わず口にする言葉が

「すごか!」(=すごい)

という方言です。

他のJR各社のICカード乗車券の名称は、

JR東日本は「SUICA(スイカ)」
JR西日本は「ICOCA(イコカ)」
JR東海は「TOICA(トイカ)」

ですが、これらの中で、

「SUGOCA(スゴカ)」

は、最も秀逸なネーミングではないかと
勝手ながら思います。

投稿者 松尾 順 : 00:30 | コメント (0) | トラックバック

ピジンとクリオール

いつの時代も、奇妙な言葉や文字を次々と生み出して、
大人を困惑させるのは子供たちですよね。

「言語」もまた、他の様々なものごと同様、
過去から受け継いでいく部分と、現在の環境に応じて
変えていくべき部分があると思いますし、それはいわば

「言語の進化」

とでも呼べるものでしょう。

そうした進化を主導するのが、
次世代の子供たちであるのは当然かもしれません。


興味深いのは、子供たちは生まれつき

「体系的な言語」

を生み出す力を備えているという点です。


昔、ハワイや東南アジア諸国、アフリカ諸国などの
熱帯、亜熱帯地域において、砂糖きびやコーヒーなどを
広大な農地で栽培した

「プランテーション」

と呼ばれた大規模農園には、
世界各地から労働者が集められました。

彼らは、当然ながらそれぞれ自分の国の言葉しか
話せなかったため、仲間とコミュニケーションができません。

そこで、

「ピジン」

と呼ばれる独特の言語が生み出されます。

ピジンは、さまざまな国の言葉がごちゃ混ぜになったもので、
ほぼ単語を並べるだけに近い、簡潔化された言語です。

あまり英語ができない人が、
外国人相手に片言の英単語を並べて
なんとか意思疎通を図ろうとする場面が、
ピジンが生まれる状況に近いんじゃないかと思います。


したがって、ピジンは「文法」が確立していない、
とても不安定な言語なのです。


さて、こうした労働者たちから生まれた子供は、
親たちが話すピジンを聞いて育ちます。

つまり、「母語」として習得していくわけです。

ところが、驚くべきことに、
その過程でしっかりとした語彙の体系や文法体系を備えた
安定度の高い言語へと変化するのです。
(これを「言語の進化」と呼んでいいのかはわかりませんが)


こうして次世代の子供たちが作り上げた言語を

「クリオール」(「クレオール」と表記されることもあります)

と呼びます。

親世代が生み出した不安定な言語「ピジン」が、
次世代の子供たちによって、他の自然言語(英語、仏語など)に
ひけを取らない安定的な言語「クリオール」へと完成を遂げる。

これは世界各地の旧プランテーション地域で
等しく起こったことなのだそうです。

人間の生得的な言語能力の高さを感じさせますよね。


ちょっと強引な論理展開かもしれませんが、
若い人たちが生み出す奇妙で理解不能な新語は、
なんらかの時代の要請や必然性があると考えて、
あまり神経質にならないほうがいいんじゃないかと思います。


*以上は、NHKラジオ「徹底トレーニング英会話」テキスト
 の連載記事「心のサイエンス~ことばを知ろう」
(執筆:大津由紀雄慶應義塾大学言語文化研究所教授)を
 参考にしました。

投稿者 松尾 順 : 10:16 | コメント (0) | トラックバック

「継続ドライバ」とは?

私が専門とする

「CRM」(Customer Relationship Management)

では、「新規顧客の獲得」に加えて、

「既存顧客の維持」

の施策が重要な地位を占めています。


既存顧客の維持施策は、
大きくは次の2つの方向で考えます。

1.経済的報酬の提供
2.心理的報酬の提供


「経済的報酬」として最も普及しているのは、

「ポイントプログラム」

でしょう。

航空会社のマイレージのように、
利用回数、金額などに応じてポイントが付与され、
蓄積ポイント数に応じて、

「特典航空券」

などの金銭的な価値を持つ賞品と交換可能な仕組みのことを

「経済的報酬」

と呼びます。


最近、このポイントプログラムは、

「ポイントの大判振る舞い」

のために企業の収支を圧迫する傾向が強まったため、
ポイント付与条件や付与数を厳しくするところが増えていますね。


一方、「心理的報酬」とは、
金銭では換算できない価値を提供するものです。

「何とかマスター」

などといった称号を与えたり、
優良顧客に対する特別待遇を与えることによって、
名誉やプライド、特権意識をくすぐるもの。

「コミュニティ」も心理的報酬の一種で、
共通点を持つ人々とのコミュニケーションを通じて、

「集団欲」(仲間とつるみたい)

を充たすことでユーザー維持を図ります。


では、「既存顧客の維持施策」について、
具体的な事業分野ではどのように実施され、
また整理されているか、ひとつご紹介しましょう。


ヘルスケア(健康ビジネス)の開発や活性化
のコンサルティングを手がける

(株)スポルツ

では、ヘルスケア(ダイエット含む)の事業成功の鍵を

「継続率」

にあると考えており、
「健康行動」を継続するために作用する

「サービスアイディア」

を国内外の様々な具体事例から抽出・整理しています。


同社ではこれらを

「継続ドライバ」

と呼んでいますが、現在のところ
以下の10個の継続ドライバが明らかになっているそうです。

---------------------------------------------------

1.インセンティブ

 健康行動の継続度や目標の達成度に応じて、
 報酬がもらえる機能

2.ヘルスコミュニケーション

 専門家による専門性あるコミュニケーション
 (インストラクティング、コーチング、メンタリングなど)

3.パーソナライズ

 一人一人に合った選択を可能にする機能

4.ビジュアルモニタリング

 視覚的に自分の健康状態・行動・結果を記録し
 表現できる機能

5.エンターテイメント

 楽しさ演出機能。ゲーム的な要素をプログラムの中に組み込む

6.交流

 他者との交流機能。リアルの場とウェブコミュニティ

7.コンペティション

 競争機能。不特定多数、知り合い同士で行うものなど

8.エンカレッジメント

 励まし機能。専門家が直接アドバイスを行う
 「直接的励まし」、参加者のコミュニティで他者の活動状況を
 伝える「間接的励まし」がある
 
9.ITベネフィット

 IT機能機器との連動で継続支援するもの
 
10.ヘルスナレッジ

 健康づくりに必要な知識提供機能

---------------------------------------------------


「継続ドライバ」

は、ダイエットなど挫折しやすい
ヘルスケア分野において長年工夫されてきた

「顧客維持施策」

であり、他の事業分野でも大いに参考になる
アイディアが含まれていますよね。


「継続ドライバ」の詳細は下記出典をご参照ください。

『ヘルスビズウォッチ・マガジン』Vol.02 Spring.2008
(無料情報誌です)

→(株)スポルツ
http://www.sportz.co.jp/


スポルツが運営するWebサイト、

「ヘルスビズウォッチ」
http://www.healthbizwatch.com/

では、「今注目のキーワード集」の中で、
継続ドライバの説明が行われています。

投稿者 松尾 順 : 08:02 | コメント (0) | トラックバック

北京オリンピック出場選手のブログ

今年の北京オリンピックでは、
開催中に出場する選手の生声がブログを通じて読めそうです。


従来、国際オリンピック委員会(IOC)では、
大会期間中の選手によるジャーナリズム活動を禁じていました。

しかし、今回正式に認可したのです。

ただし、ブログ投稿に当たっては、

・個人の体験に限定
・五輪大会に関する一切のビジュアル(競技や会場が写っているもの)の、
 音声などの投稿の禁止

などの規定を守らなければなりませんが。


とはいえ、選手本人から、
競技前後の率直な気持ちを知ることができれば、
競技を見るのがより一層楽しいものになりそうですね。

投稿者 松尾 順 : 04:38 | コメント (0) | トラックバック

コンビニの刺身

ファミリーマートでは、
昨年10月から刺身の販売を
都内6店舗で実験的にやっていたそうです。

そして、この4月からは60店に拡大、
2008年中には、400店で刺身が買えるようにする計画とか。


私はほぼ毎週末、
スーパーで小さめの刺身盛り合わせを
酒のつまみとして買い、

「小市民の贅沢」

を味わってますが・・・


コンビニで刺身を買いたいかと言われると、
どうかな・・・という感じです。


コンビニで扱ってる食品は、
どれもこれも添加物だらけというイメージが強い。

(とか言いながら、便利なのでつい買っちゃいますが)

コンビニの刺身も、
見た目とか保存のためにいろいろ添加物使うんだろうな・・・

とつい色眼鏡で見ちゃいます。
(スーパーだっていろいろ使ってますけどねぇ!)

投稿者 松尾 順 : 22:21 | コメント (0) | トラックバック

「歌」というコミュニケーション

元携帯電話のセールスマン。

英国のスター誕生番組でその才能を見い出され、
今は世界ツアーを敢行するほどの人気を
博している英国人の新人オペラ歌手。

その人の名は・・・?


ポール・ポッツ氏です。

彼の名前は覚えていなくても、上記番組

「Britan's Got Talent」(以下「BGT」)

に登場し、冴えない風貌と裏腹に、

「誰も寝てはならぬ(Nessun dorma)」
(プッチーニの歌劇、『トゥーランドット』から)

を高らかに歌い上げ、
聴衆を感動させた動画を「YouTube」で
ご覧になった方が多いでしょう。


彼は今週来日し、渋谷Bunkamuraの

オーチャードホール

での2日間にわたる公演を成功裡に終えました。


私は昨晩(4/30)の彼の公演に、
トレンドウォッチングを兼ねて行ってまいりました。


何がトレンドウォッチングかというと・・・

まったくの無名。しかも、デビューして
1年にもならないオペラ歌手が、いきなり

「オーチャードホール」(総客席数2,150)

でのライブを実現できたのは、

「ネットの力」

以外に考えられないからです。


昨日の公演でも入り口で来場者を観察していたのですが、
中学生だけのグループからお年寄りまでいろんなタイプ
の人たちがいて客層がバラバラ。


おそらく、ポール・ポッツ氏来日コンサートのチケットを
購入した人の共通点は、口コミなどを通じて彼のことを知り、
「YouTube」を見て感動し、

「ぜひ、自分の耳で直接聞いてみたい!」

と考えたことだけだと思います。

もしネットがなかったら、
決してこんなことは起こらないですよね。


さて、肝心の彼の歌ですが、
やや線は細いものの、繊細で伸びやかな高音がすばらしく、
心の奥底まで入り込んできます。

彼は小さい頃から歌が大好きで、6歳から地元の教会で
歌っていたそうです。しかし、オペラの英才教育を受けた
エリートではなく、ほぼ独学で今の歌唱力を身につけた雑草
のような人。

思わずプロ野球の現楽天監督、野村克也氏を連想しました。(笑)


彼が歌った曲の歌詞は英語やイタリア語なので
言葉として伝えたいことはほとんどりわかりませんでした。

しかし、彼の歌に対する「熱い思い」は
聴いているほうにも確実に伝わってきました。


たとえ歌詞がわからなくても、歌はまぎれもない

「コミュニケーション」

であることを改めて納得しました。


ついでながら、私の好きなラブコメ映画のひとつ、

「Music & Lyrics」(ラブソングができるまで)

では、ヒュー・グラント演じる元ポップスターのアレックスと、
ドリュー・バリモアが演じるソフィーの2人が
新曲を作り上げていく中で愛を育んでいくという話なんですが、
この中のある場面でソフィーが口にするセリフがちょっと
面白いです。ご紹介しておきましょう。(意訳してます)

“メロディーは人に初めて会うようなもの。
 身体的な魅力だとかセックスだとかに惹かれて。
 でもその後で、その人となりを理解するのが歌詞よ。
 相手のストーリーを知ることでね。
 メロディーと歌詞が組み合わさって魔法ができるの”


このソフィーの言葉に従うなら、
ポールポッツ氏が歌う歌詞の意味も理解できたなら、
さらに昨日のコンサートが楽しめたということになりますね。


どちらにせよあの歌声だけで十分堪能できましたけど!


*ポール・ポッツ情報
http://www.bmgjapan.com/paulpotts/
*こちらで「BGT」のコンテストの動画も見れます。

投稿者 松尾 順 : 13:20 | コメント (0) | トラックバック