サル仕事が新たな発想を生むことの示唆
昨日、紙の資料をPCに入力するため、
ひたすらキーボードを打ち続けていると、
新たな発想を得る瞬間がやってくるという話を書きました。
サルでもできる、あるいはサルにでもやらせたい、
そんな退屈な単純作業という意味の
「サル仕事」
が新しい発想をもたらしてくれるというのは、
不思議なことですよね。
さて、なぜこんな現象が起こるのかという理由については、
を読んでくださいということにしておりましたが、
それはあまりにひどかろうと思いましたので、
同書の中で、妹尾氏が挙げている3つの理由(示唆)を
ご紹介しておきます。
1点目は、「量」は「質」に転換するということです。
ひたすらデータを入力するという単純作業を通じて、
少しずつ蓄積されていくデータが、
ある閾値を超えた瞬間に一挙に抽象概念として焦点を結ぶ。
ひたすら同じ動作を繰り返すことは、
スポーツや武道の基本練習に似ていますね。
一流の域に達したアスリート、武道家は、
やはり、「質」を云々する前に、まずは圧倒的な練習、
稽古を積み重ねることの重要性をわかっています。
2点目は、サル仕事から新たな発想を得るということは、
「ミョウバン型」の発想法を無意識に実践していたのだろうと
いうことです。
妹尾氏によれば、発想法は大別すると
「樹氷型」と「ミョウバン型」
の2つがあると考えているそうです。
樹氷型は、ある軸(樹氷でいえば樹木そのもの)がまずあり、
そこにさまざまな情報(樹氷)を付加していくことによって
新たな発想を導くものです。
一方、ミョウバン型は、ミョウバンを水にどんどん溶かしていき、
一定の濃度を加えたところで強い衝撃を加えると突然結晶化する
現象になぞらえて、情報の蓄積から突然新たな着想を得ること。
ここで、樹氷型とミョウバン型の発想法の違いは、
樹氷型は、元の軸(樹木)が核としてあるために、
その形を超えた発想が生まれることはないのに対して、
ミョウバン型は、その水溶液と結晶がまったく異なる姿を
しているのと同様、元の情報と、新たに得た発想に大きな違い
(飛躍)があるという点です。
私の考えでは、樹氷型は、ロジカルな手順を踏む各種発想法
(オズボーンのチェックリストなど)のテクニックが適用可能。
しかし、ミョウバン型は、漠然としたテーマはあっても、
出発点としての軸はなく、とにかくひとつの箱(頭脳)の中に
大量のデータをぶち込んでいくうちに、突然変異的に閃きを
得るもの。
したがって、ミョウバン型の発想法は、明快なテクニック
として確立できるようなものではないと思います。
ただ、ミョウバン型の方が、樹氷型よりも
はるかに斬新で型破りな着想が得られるわけですから、
もし、ミョウバン型の発想を得たかったら、
出発点としての軸(ある場合には「仮説」と呼べるもの)を
持たず、無駄を承知のサル仕事に取り組んでみることが必要
でしょう。
この対比は、仮説ありきの従来のリサーチと、
ともかくも膨大なデータと格闘する中で新たな金鉱(知見)を
発見しようとする「データマイニング」の関係に似ていますね。
さて、3点目の示唆は、
私たちは、情報を頭だけでなく、身体でも読んでいる
ということです。
何か新しい企画づくりに取り組むとき、
ただ頭の中であれこれ考えを巡らせるのではなく、
紙とペンを用意して、浮かんだアイディアを言葉や絵として
書き留めていたら、いい企画ができたという経験があなたに
もありますよね。
考えてみれば、情報とは、資料に表された数値や文字
といったものだけでなく、私たちの5感を通じて得る、
数値や文字にしがたいものもすべて「情報」です。
そうした、いわば「目に見えない情報」を
身体を通じて取り込むことが、新たな発想を得ることに
役立っているといえるのかもしれませんね。
投稿者 松尾 順 : 2008年01月09日 15:23
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» サル仕事 from 茶太郎のほぼ日々マーケティング
うちの会社内のブログを読んでいてふと思い出しました。
何かやりを始めた最初のころ一番必要なのは量!量!量!
「何でこれをやらなきゃなんないんだ???」
... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2008年01月18日 16:51
コメント
ちなみに、「小説家修業」の方法のひとつに「写経」というのがあります。
これ、プロ作家の作品を一字一句手書きで書き写していくという方法なんですよね。
単なる単純作業のようでありながらこれが勉強になるなるなるなる。
ただ「読む」だけでは気がつかない作品の仕掛けが、手に取るように見えてくるのが不思議です。
投稿者 開米瑞浩 : 2008年01月10日 11:26
開米さん、まいど!
写経は、確か浅田次郎氏もやっていたと
どこかで読んだ覚えがあります。
ただ単に書き写すだけなのに、
文章の奥底が見えてくるってほんと
不思議ですよね。
投稿者 松尾順 : 2008年01月10日 11:50
今やっている仕事が無意味ではないのだと
何だか救われた思いです。
ありがとうございます☆
ここ数日、社長会議を控えた部長の、
プレゼン用資料作りに追われています。
その指示内容もころころ変わるから大変。
「自分の勉強になる」
と言い聞かせ、何とかモチベーションを維持。
「単純作業の中で身につくものがある」
と感覚的に感じていたことが、
明解に説明されていて、とてもすっきりしました。
投稿者 Nori : 2008年01月10日 22:05
Noriさん、コメントありがとうございます。
部長に振り回されていて大変ですね。
でも、実際、いろんな点で勉強になってると
思いますよ!
投稿者 松尾順 : 2008年01月11日 12:15
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