優良企業の経営者はみな長期政権

世界最強の企業と言えば・・・?


近い将来、日本の「トヨタ」がそう言われる可能性も
なきにしもあらずですが、現時点ではやはり、

「GE」(ゼネラル・エレクトリック)

でしょう。


そしてGEと言えば、

“20世紀最高の経営者”

と賞賛された同社元CEO、ジャック・ウエルチ氏を
思い浮かべる方が多いと思います。


ウエルチ氏は、1981年から2001年までの20年間にわたって
GEを率いた後、現会長兼CEOのジェフ・イメルト氏に
その座を譲りました。

イメルト氏を後任に選んだ時、ウエルチ氏は、

「今後20年を託した」

と言ったそうです。
(日経ビジネス、2008年1月7日号)


自分と同様、GEの最高経営責任者は、
長期政権を前提として企業のリーダーを務めるということを
明確に述べたわけです。


GEの哲学は、

「結果を出せる長期的なチャンスを指導者に与える」

というものだそうです。

イメルト氏は、毎年日本に訪れて会うクライアント企業や
パートナー企業のトップが頻繁に変わること、そのため、
就任6年足らずのイメルト氏がCEOとしての在任期間が
一番長いことに驚いています。


イメルト氏は次のように述べています。

“私たちのビジネスからは、どうすれば

 「3年間のCEO」

 になれるのか、想像もできません”

これは、在任わずか3年間ばかりで、
CEOとしてのまともな仕事ができるはずがないだろう
という意味を込めているようです。

逆に言えば、業績を長期にわたって向上し続けるためには、
トップは長期的にその座にいなければならないということを
GEはわかっているということです。
(この哲学・考え方が正しいことは、GEの業績が証明していますね)


実は、日本でも上記のことを裏付けた実証研究があります。

三品和広氏(神戸大学大学院経営学研究科教授)は、
最近、上場企業1013社の過去50年間の財務データの分析を
行いました。

その結果、持続的な成長を続け、
過去最高益を何度も更新した「優良企業」122社では、
同じ経営者が長期間にわたってその座にあった点が
共通していたそうです。


また、これら122社が成長を続けられた理由について、
三品氏は、

独自の「事業立地」

を選んだことにあるとしています。


事業立地とは、
端的には「ポジショニング」のことであり、
純粋な意味での「戦略」そのものです。

「戦略」とは、

「長期的な競争優位性を維持できるポジションを構築すること」

のことだからです。


ただ、「戦略」を絵に描いた餅ではなく、
現場の「戦術」にまで落とし込み、実際の「強み」(競争優位性)
にまで磨き上げるためには長い時間を要します。

したがって、優れた経営者が将来の変化を的確に読み、
適切な「戦略」を打ち出し、その戦略実現のため長期的に
リーダーシップを取り続けた企業こそが成長を持続できるのだ

ということがいえるでしょう。


なお、

経営者がトップに長く居座り続けすぎてしまうことの弊害

ももちろんありますよね。

ですから、自分の引き際を見極めるだけの見識が
経営者には必要でしょう。

また、イメルト氏が45歳でGEのCEOに選ばれたように、
長期にわたってリーダーシップを発揮できるように、
若いうちにCEOの座に就かせることが求められます。


まあ、日本の大手企業の多くは、
カネボウのように経営危機にでもならないかぎり、
若手リーダーを生み出すのはまずもって難しいのでしょうけど!


*三品氏の上記実証研究が紹介された講演についてのブログ記事

 『戦略不全の因果 三品和広さん』(慶應MCC「夕学五十講」楽屋blog)

この講演には私も出席しました。


*参考書籍

『戦略不全の因果-1013社の明暗はどこで分かれたのか』
(三品和広著、東洋経済新報社)

『戦略不全の論理-慢性的な低収益の病からどう抜け出すか』
(三品和広著、東洋経済新報社)

『経営は10年にして成らず』
(三品和広氏、東洋経済新報社)

投稿者 松尾 順 : 2008年01月15日 11:51

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コメント

ひさびさの ミクです。相変わらずの凄いブログの内容に
私は驚いています。 私とは違い頭がいいんでしょうね(笑)

今後とも参考にさせていただきます。でわ

投稿者 コウジ : 2008年01月15日 17:27

コウジさん、コメントありがとうございます。

えーと、地道に情報収集して、
自分なりに勝手に編集して文章化してるだけなんですよ。

正直、自分の文章や書いている内容はたいしたことない
ということを自分でも自覚しています。

投稿者 松尾 : 2008年01月15日 19:49

こんにちは。いつも興味深く拝見しています。若い人を選ぶ前に、10年かけて後継者を育て選んでいることがポイントかもしれませんね。そのあたりはジャック・ウェルチさんの「わが経営」に詳しいです。参考までに。ではでは。

投稿者 Dora : 2008年01月15日 21:26

ちょっと気になったことです。

持続的な成長を続け過去最高益を更新しつづけた企業だから、同じ経営者が長期間にわたってその座にあることができた(クビにならなかった)、と結論しない理由も書かれているのでしょうか?

事業素質(または企業素質)の高さと経営者の質、どちらが優良企業たるに重要かといったら、私は前者のように思っています。

投稿者 y : 2008年01月15日 23:18

Doraさん、コメントありがとうございます。

長期に会社を成長させるだけの器を持つ経営者の卵を
早期に見極め、英才教育をし、かつ複数の候補者と
競わせて、最高の資質を持つと判断されたものが次期
CEOとして選ばれる。こうした仕組みを確立した点が、
GEの成長以上に、ジャックウエルチの最大の功績と
いえるんじゃないかと私も思っています。

投稿者 松尾順 : 2008年01月15日 23:38

yさん、コメントありがとうございます。

yさんのような見方も確かにあると思います。
業績が成長している限り、経営者は賞賛されこそすれ、
その座を追われることはありえないですからね。

しかし、社長は絶対的な権力者として、
会社の戦略を好き勝手に変えることができます。

ですから、長期に業績を維持している会社は、
やはり経営者が優れているのだと私は思います。

なぜそう断言できるかというと、
どんな優良企業でも、ダメ経営者が就任したら
わずか数年で会社もダメになるケースが多いからです。

トップに上り詰めるのには長い時間がかかるのに、
地に堕ちるのはあっという間ですよね。

投稿者 松尾順 : 2008年01月15日 23:42

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