Webサイトの分割戦略

多様な分野の製品・サービスを数多く扱っている企業が
Webサイトを開発する際、最初に悩まされるのは、
来訪するユーザーの種類が多岐にわたる点です。


なぜなら、
Webサイトのコンテンツやデザインの方向性を左右する

「ターゲット設定」

が難しくなるからですね。

要するに、

「誰をメインターゲットにサイト開発をすべきか」

で頭を抱えるということです。


標準的なサイト開発プロセスでは、
ターゲット設定にあたり、まずどんな種類の人々、
すなわち

「ユーザータイプ」

がサイトにやってくるかを明らかにします。


例えば、仮の事例として、
ゴルフ、テニスなどのレジャー・スポーツ施設に加えて、
結婚式場、会議場などを擁する大規模リゾートのWebサイト
の場合のユーザータイプを考えてみます。

・一般旅行客(家族中心)
・ゴルフ客
・結婚式を挙げたいカップル
・会議開催を考えている法人客
・旅行会社
・その他取引先
・入社希望者
・マスコミ
・投資家

などが想定されますね。


上記のそれぞれの人たちは、
サイト来訪の目的が異なるのは当然として、
年代も関心・嗜好などもバラバラです。

あるユーザータイプにとって好ましいデザインが、
別のユーザータイプにとっては不快感を与えてしまう
可能性もあります。


例えば、結婚式を控えたウキウキ気分のカップル向けに
明るい軽めのデザインを施したとします。

すると、ビジネスモードで訪れた法人客は、
このリゾート施設の会議場を利用すべきかどうか、
ちょっとためらってしまうかも知れません。

もちろん、各ユーザータイプ向けコンテンツのカテゴリー
ごとにデザインのトーン&マナーをチューニングすること
でこうした問題を回避するわけですが。

ただ、全体の統一感を維持する必要がありますから、
どうしてもデザイン上の制約が発生しますね。

また、目的のコンテンツも
ユーザータイプごとに大きく異なるにも関わらず、
ひとつのサイトに統合しようとすると、
多くの場合、情報構成に無理が生じやすいものです。


そこで、ユーザータイプが多岐にわたる場合は、
ひとつの解決策として、ユーザータイプごとに異なる
独立したサイトを立ち上げるのも手です。


最近の具体例として、「明治乳業」があります。

同社では、リニューアルに当たって、
各種リサーチ、ログ解析を通じた効果測定を行ったそうです。

その結果、消費者の約9割が
商品・キャンペーン情報しか閲覧していないこと
がわかりました。

(PRIR、2008 APRIL)

逆に言えば、同じサイト内にあった

「明治乳業」

という企業自体についての各種情報は
ほとんど見られていなかったということです。

食品を扱うメーカーとしては、
企業の姿勢や活動を紹介することを通じて、
企業や商品に対する安心感・信頼感を醸成したかった。

ところが、そのためのコンテンツが
十分に活かされていなかったことになります。


この原因のひとつが、
ユーザーのターゲットを絞りきれていなかった
ことだそうです。

さまざま情報がウェブサイト内に乱立し、
情報が複雑に入り組んでしまい、
消費者に見てほしい情報が伝わりにくく
なっていました。


そこで同社では、
サイトリニューアルに当たって、
まず、会社としてのウェブサイトの位置づけを
明確化。

そして、

・どんな目的で、
・誰を相手に
・どんなコミュニケーションを図っていくか

を整理しました。

そうしてたどり着いた結論が、

・ターゲット
・機能
・役割

によってサイトを分割することだったそうです。


結局、リニューアル後の同社のサイトは、

・商品情報サイト( www.meinyu.jp )
・企業情報サイト( www.meinu.co.jp )

の独立した2つのサイトに分割されて
運営されています。

ちなみに、「商品情報サイト」は、
消費者をメインターゲットとにしたコンテンツ、
一方、「企業情報サイト」は、ビジネスパーソン、
投資家を対象としたコンテンツをメインに揃えています。


大手企業の中には、

・ターゲット
・機能
・役割

の違いに応じて、
多数のサイトを同時並行的に立ち上げ、
自在に運用しているところも増えてきました。

しかし、その域まで達している企業は
まだまだ少数派でしょう。


コミュニケーションツールとしての

「Webサイト」

をどう使いこなすかについては、
まだまだ様々なトライアルが必要な時期かなと思います。

投稿者 松尾 順 : 2008年03月07日 10:42

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コメント

CMSの導入など、別ドメイン・別サーバーにしたほうが、運用・管理しやすいといったケースは多々ありますね。
担当部署の違いといった組織の論理での別ドメイン・別サーバー化ではなく、ユーザーオリエンテッドの視点からの別サイト化は評価できます。
ただ、コミュニケーションツールとしての「Webサイト」(効果)を考えた場合、たとえ別ドメイン・別サーバーであっても、両サイトのコンテンツ編集権も含め一括管理・運用する体制があることが肝要なのかなとも思います。
兄弟サイト同士で、SEOのランディングページを競争しあうなんていうコミュニケーションロスは、できるだけ避けたいもの・・・。
そういえば、自社展開するあらゆるWebサイトからお客様の知りたいコンテンツを集め表示することができる『TOYOTA MyPage(etoyota.net)』は、複数サイト化の弊害への修正アプローチともとらえられます。
確かに、いろいろトライアルが必要な時期なのかなぁと・・・。

投稿者 つくねパパ : 2008年03月07日 20:16

つくねパパさん、コメントありがとうございます。

>ただ、コミュニケーションツールとしての「Webサイト」(効果)を考えた場合、たとえ別ドメイン・別サーバーであっても、両サイトのコンテンツ編集権も含め一括管理・運用する体制があることが肝要なのかなとも思います。

おっしゃるとおりだと思います!

まあ確かに、理想に近いのは、
TOYOTA MyPageのようにユーザーが自由に欲しい情報だけを
構成できるサイトを提供することかもしれません!

投稿者 松尾順 : 2008年03月10日 06:55

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