「経営コンサルタント」と「経営者」の違い

昨日の記事でご紹介した本、

『ソニーをダメにした「普通」という病』
(横田宏信著、ゴマブックス)

の中で面白い記述がありました。


「経営コンサルタント」と「経営者」

の違いについての説明です。

同書の中で横田氏は、
「優れたコンサルタント」とは、

“企業経営にまつわる様々な事象を、
 それらの本質に即して論理的に分類整理する能力、
 すなわち「構造化能力」を磨きに磨き上げた者のこと”

と定義しています。

そして、

“自らの中に揺るぎない論理の構造物を持ち、
 ありものの経営手法に軽々に依存することもない。
 ありものの経営手法に軽々に依存する者は、
 優れた経営コンサルタントと言えるものではない”

と続けています。

これは、次々と登場する新しい経営手法
(アルファベット3文字の略語が多いですね)を
どんな企業にも画一的に適用しようとする
経営コンサルタントに警鐘を鳴らすものでしょう。


横田氏によれば、この高い「構造化能力」は、
優れた「経営者」の多くに通用するものだそうです。

「構造化能力」は、要するに

「物事の本質を見通す力」

と言えますよね。

物事の本質が見えているからこそ、
的確な決断を下すことができ、企業を成長に導ける
わけですから、経営者にとっても「構造化能力」が
なくてはならない資質なのです。


ただ、優れた経営者は、

“自らの中にある巨大な構造物を、
 ほんの一言のメッセージに凝縮する、という高い
 「抽象化能力」を併せ持つ”

と横田氏は指摘します。

これは、「要は何か」を短く語り切る能力です。

この「抽象化能力」において、
優れたコンサルタントは優れた経営者に
とても対抗できません。

なぜなら、完璧に論理立った「説明」よりも、
時に一言だけの「メッセージ」のほうが、
人には深く響くものだからです。

横田氏は、

“優れた経営者は「説明」でなく、
 「メッセージ」で勝負する”

と言い切っています。


なるほど!全くその通りだと思います。

ただ、一言補足させてもらえるなら、
経営者の発するメッセージには深い意味が含まれている
とはいえ、単なる「抽象語」ではなかなか伝わりません。

それは、巧みな比ゆによって、
聞き手の心(腹?)にストンと落ちるようなものでなければ
ならないと思います。

例えば、ソニーの平面ブラウン管テレビ「ベガ」の開発を
指揮した中村末広氏(ディスプレイカンパニープレジデント、
常務取締役、当時)は、優れた「比ゆ表現」で部下を
鼓舞していたそうです。(『ソニーの遺伝子』より)

“お前らは働いているつもりなんだろうが、
 やたら‘動’いているだけで、‘イ’(にんべん)
 のない動きなんだ”

プレゼンで毎回、同じシートを使って同じ説明を
繰り返す部下に対しては、

“オイ、お前はカラオケをやっているのか?”

など、多くの中村語録を残しています。


<参考文献>
『ソニーをダメにした「普通」という病』
(横田宏信著、ゴマブックス)

『ソニーの遺伝子』
(勝見明著、日本経済新聞社)

投稿者 松尾 順 : 2008年05月23日 12:16

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コメント

人を使う事について私はソニーの中村さんみたいなタイプだと自分でも思いますが、私のお店みたいに2~3人で働いていると、作業の工程は1~10まで教えるのですが、中々難しいのは働く事が初めてという新人には工程以外でも口ではパッと言えませんが
、『何年人間やってるのぉ?そのくらいわからないのぉ?』と
コチラが思うような事まで質問されるので 手取り足取り 赤ん坊に教え込むように、最初のうちは教えていたのですが、

教えてる時間 私の仕事も出来ない、新人の仕事も教えてる段階なので 進まない だから ある程度 数回教えても 判らない新人さんに期待しないで、さっさと私が作業を一人でしてしまい終わらせます とくにナマ物はスピードが真情の職人仕事なので働く事が初めてという人には仕事の工程を教え その後の質問は『君ならどう感じる?どうした方が良いと思う?』
と逆に自分で考える力を芽生えさせるように心がけてます。

しかし それでも中には『解らない』という新人さも中には
います。

私自身も理屈は苦手の現場主義ですが 初めて働く若者達に1言で 言うなら 『色んな人の中で揉まれなさい』と云いたい
ですね(笑)

人に教え私も教わる いやぁ~人を育成するっつーの十人十色だけに真に難しいものです。

あとは経営者の魅力次第ですかね  

投稿者 光!治める為に!! : 2008年05月23日 19:29

光!さん、まいどです!

部下の教育の基本は、
自分で考えさせるということですよね。

なんにせよ教育は大変です・・・

投稿者 松尾順 : 2008年05月24日 13:14

『ソニーをダメにした「普通」という病』の横田宏信です。
『経営者の発するメッセージには深い意味が含まれている
とはいえ、単なる「抽象語」ではなかなか伝わりません。
それは、巧みな比ゆによって、聞き手の心(腹?)にストン
と落ちるようなものでなければならない』
同感です。
その「比ゆ」上手の中村末広さん、本当に面白い方です。
私の上司でもあったのですが、ソニーの中でも数々の伝説を残しています。
末広さんのような人が役員になれちゃうところが、ソニーの凄さだったのですが。

投稿者 横田宏信 : 2008年05月31日 23:41

横田さま、コメントくださり
ありがとうございます!

中村さんも相当な奇人変人(褒め言葉)
だったようですね。

投稿者 松尾順 : 2008年06月02日 06:55

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