体験談は全てさらけ出せ!

以前、主婦の方を対象としたグループインタビューの中で、

「利用者の体験談」

を掲載しているパンフレットについての感想を聞いたところ、

・良いことだけを選んで掲載しているのではないのか?
・本当に利用者のコメントなのか(捏造ではないのか)?

といった疑念を持ちつつ読むというコメントを
多くの方が口にしていました。


まあ実際、新聞の折込や雑誌広告に掲載されている

「幸運の●●●」

といった怪しい系商品の体験談(大抵ぼやけた顔写真付)、
例えば、

・これを買ったら、翌日に彼女ができました!(25歳、男性)
・持ち歩いていたら、宝くじで1千万円当選!(40歳、主婦)

といった話は全て捏造だと言われていますね。

こうしたビジネスを「体験談商法」と言います。


また、通信販売事業で成功し、現在多数の著作を持つ某氏は、
自著の中で、売り出したばかりのダイエット食品の体験談を
初期のころは自分で創作したことを白状しています。


ただ、明らかに「この体験談はうそっぽい」と感じても、
信じたくなるのが人間心理の不思議。

「溺れるものは藁をもつかむ」

というところでしょうか。
つらい状況にいる人の弱みにつけこんでいるわけです。


最近は、ネット上でも、

「体験談商法」

が横行しているそうです。

真偽のほどが疑わしい体験談を前面に打ち出して、
商品の購入に誘う「体験談商法」は、特に健康食品関連に
多いですね。

なぜなら、効能をうたうことが薬事法で禁止されているため、
利用者の声を借りて効用を伝えるしかないからです。


もちろん、ありのままのユーザーの声を紹介するのなら
基本的に問題ありません。
(それでも、薬事法に抵触する可能性がゼロではない点ご注意)

しかし、企業側が販売促進を目的として
架空の体験談を捏造したら、当然ながらそれは「詐欺」ですね。


さて、こうした状況の中、
真っ当な商品を出している企業が考えるべきことは、
悪質な業者によって信頼性の低下してしまった

「体験談」

をどのように活用すればいいのかということです。


その答えは、明らかな誹謗中傷を除いて
全ての体験談を未編集状態で公開することでしょう。

良いこと、お褒めの言葉だけなく、
厳しい意見、批判、クレームも思い切ってさらけ出してしまう。


ネガティブな声を公開することは、
自社の評判を低下させることにもつながりかねないので
なかなか踏み切ることができません。

しかしながら、
ありのままを公開することによって

・この企業は正直である
・利用者に真摯に向き合おうとしている

というメッセージを一方で伝えることができます。


どちらにしても、インターネットのおかげで

「くさいものにフタをする」

ことがもはやできなくなった今、
いさぎよく全て公開してしまう以外の選択肢が
ないように私は思うのです。


ちなみに、ご存知の方も多いと思いますが、
売り手が見込み客に対して良いことだけを伝えることを

「片面提示」

と呼び、ネガティブなことも同時に伝えることを

「両面提示」

と呼びます。

心理学の実験では一般に

「両面提示」

の方が信頼されやすいということが
わかっています。

「両面提示」のテクニックは、
マーケティングやセールスの現場では、
長年実践されてきているんですよね。


(関連記事)
『両面提示広告:新生銀行のケース』

『シンプルマーケティング(19)DCCM理論』

投稿者 松尾 順 : 2008年06月09日 11:43

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コメント

ECサイトでも「ネガティブなクチコミの公開を許容すれば、クチコミの信憑性と共に企業の信頼度は上がり、逆に返品率などは下がる。」はずなんですが、皆さん炎上を恐れてしまうようで…。

投稿者 課長007 : 2008年06月09日 20:27

課長007さん、まいど!

おそらく、サイトの担当者が見ているのは
社内の上のほうなんですよね。

炎上した時に詰め腹を切らされたくないから、
リスクをなるべく避けようとするわけです。

ですから、ユーザーの声をすべてさらけだすには、
トップの理解、決断が必要になってきますね。

投稿者 松尾 : 2008年06月10日 02:20

まつおっちさん
まいどっ!
私は、起業してからいままでの営業経験でもっとも受注角度が高かったのは、失敗談をきいてもらえるようになったときです。
成功しますっ!
というのは、教科書、ビジネス本で数多くでていますが、これやって失敗しましたっ!っていう話はなかなか表にでてこないのですね。
また、成功談はビジネス本からの借り物で語ることができますが、失敗段は、ほんとに経験したものでないと語ることができなからだと思います。

みな、できれば、同じ失敗したくないのですね。

だから、転ばぬ先の杖!として、わが社のサービスを購入してくれるのだと思います。

投稿者 しがっち : 2008年06月10日 09:55

しがっちさん、まいど!!!!

失敗談を話したほうが受注しやすくなるなんて、
おもしろいですねぇ・・・!

投稿者 松尾順 : 2008年06月10日 14:08

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