「なんとなくスキ」「なんとなくイヤ」

私は、電子マネーのエディを普段の生活では多用しています。

ですので、コンビニも、エディが使える

サンクス、AM/PM、ローソン(ナチュラルローソン)

になるべく行くようにしてます。


幸い、事務所の近くに上記3店舗ともありますので、
その日の気分で行く店を決めてるんですが。

ただ、不思議なことに、
ナチュラルローソンに行くのだけは、
なんとなく気が進まないのです。
(駅前で一番便利なのですが)


どうしてなのか、その理由を考えてみました。

どうやら、他のコンビニと比べて、

「ちょっとだけエディでの決済時間が長いように感じるから」

ということに気付きました。

つまり、レジのカードリーダーに自分のカードを置いてから

「シャリーン」

となるまでの間の時間がコンマ何秒か遅いように感じるのですね。
それで、ちょっとだけイラっとする。


気のせいかもしれません。

でも、この実に些細なことがもたらす軽い不快感が
記憶に残っていて、ローソンに行きたいという気持ちを
邪魔しているようです。


私たちは、自分が購入・利用する商品や店舗を選択するに
当たって、常に明確な理由に基づいて決めるとは限りません。

しばしば漠然とした理由で、特定の商品や店を選んだり、
あるいは避けたりしていることも多いですよね。

これは、

「なんとなく好き」「なんとなくイヤ」

という状況です。


この「なんとなくスキ」「なんとなくイヤ」に
影響を与えているのは、実はかなり細かいレベルの要因です。

競合商品を見比べて、どちらを選んでも大差がない時、
つまり、明らかに優れたところ、劣ったところがない場合でも、
私たちはなんらかの基準で商品や店舗を選ばざるを得ない。

そんな時、私たちは「なんとなく」の感覚的判断を
優先してしまうのでしょう。


別のやはり些細なことですが、
「なんとなくイヤ」な例をご紹介しましょう。


房総半島の中ほどにある「養老渓谷」には、
ひなびた温泉郷があります。

我が家では、房総半島の太平洋側に面した勝浦、鴨川などに
よく旅行に行きますので、その行き帰りに養老渓谷に立ち寄る
ことがあります。


数年前、この温泉郷に総ヒノキ造りの立派な温泉ができました。

私はオープンしたばかりの頃行ったのですが、
建物から浴槽まですべて「天然木」でできているというのは、
なんとなく気分がいいものですね。

脱衣所から浴室までの廊下には、

「ヒノキを守るため通気をよくしてあります。
 お客さまには寒い思いをさせてしまいますが、
 ご了承ください」

なんてチラシが貼ってありましたが、
まあ、確かに寒いけれど仕方がないかと思いました。


さて、ヒノキ造りの贅沢な風呂でしばらく温まった後、
体を洗おうと洗い場に行って桶を持ったら、
なんとこれが、ヒノキを模したプラスチック製でした。

たいしたことじゃありませんが、

「なんだかなあ・・・」

ですよね。
ヒノキ風のデザインだけになおさらガッカリ。

プラスチック製にするなら、
いっそケロヨンの洗面器でも置いてあったほうが、
ノスタルジックで良かったと思いました。


結局、この温泉には2度と行っていません。
いいお風呂だったんですけどね。

「なんとなくイヤ」

なんですよね。


さて、企業側から見れば、この

「なんとなくイヤ」

というのはやっかいです。

といのも、顧客側としては、
不快な感情をあまり思い出したくないために、

「なぜ不快な感情を覚えるようになったのか」

という理由を封印してしまうからです。


ですから、例えばアンケートで不満や問題点を挙げて
もらおうとしても、なかなか真の原因が浮かび上がってこない。

このため、なぜ売れないかという原因がはっきりしないまま
どんどん顧客離れが進んでしまうのです。


「神は細部に宿る」

と言いますが、商品設計、店舗設計には、
些細な要素によって動く人間心理の機微をキャッチできる
優れた感受性が重要なのです。

投稿者 松尾 順 : 2008年06月10日 13:16

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コメント

まつおっちさん
まいどっ!
今日も楽しく勉強させていただきました。
いつもありがとうございます。

かなり前ですが、資生堂の会員(花椿会?)向けのホームページに「お試しお化粧コーナー」があって、自分の顔写真を登録し、模擬お化粧をしてどんな感じなるのかをネットで試すことができる。という(かなりあいまいな記憶ですけど、そんなコーナーです)のがありました。

これをつくるときに、ほんとはパソコンでシミュレーションするので、一瞬のうちに結果を表示することができるのですが、
行動科学的見地から、すぐに結果を表示するのではなく、
ほんのちょっとパソコンが考えているようなふりを装い、
待たされた感もなく、でも一所懸命考えてくれていると閲覧者が感じる時間をはじき出して、その時間で表示するようにしたところ、けっこうヒットしたって話をネット系講演会で聞いたことがあったのを思い出しました。

マーケティング⇒人に行動をおこさせる行為⇒人は実は理論ではなく感じて動くんですね。

投稿者 しがっち : 2008年06月11日 09:19

多分。。。。この、なんとなく嫌。って気持ち
女性はとてもよくわかるような気がする。
そして、このなんとなく好きって気持ちは
女性にとっては一目惚れって言葉で服を買っちゃったりするんだよな〜


なんとなく嫌いと言われて一人マラソンのherokoでした。。とほほ

投稿者 heroko : 2008年06月11日 10:52

しがっちさん、まいど。

まさに人は感じて動くものだと思います。

herekoさん、いつもコメントありがとうございます。

なんとなく・・・
というのは女性のほうが共感しやすい感覚だと
確かに思います。

投稿者 松尾順 : 2008年06月11日 17:56

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