京都花街の経営学(0)イントロダクション 

京都花街、そして芸妓さん、舞妓さんたちの世界は、
室町末期から現在に至るまで350年にわたって続いてきた
日本の伝統文化のひとつと言えますよね。

でも、花街について、
ほとんどの方は表面的なことしか
知らないと思います。

また、しばしば間違った理解や
偏見を持っていることもあるでしょう。

しかし、その独特の風習やしきたり(ルール)は、
長い歴史の中で培われたものであり、
一定の必然性があるのです。


経営学の視点でこの世界を徹底的に分析し、
わかりやすく説明してくれている本があります。
次の本です。

『京都花街の経営学』
(西尾久美子著、東洋経済新報社)

同書は、京都花街の仕組みや、
芸妓・舞妓さんたちのキャリアを実地体験も踏まえて
深く掘り下げて研究した博士論文を元に書かれたもの。

記述は平易ですからとても読みやすいですよ。

今週はこの本をじっくりご紹介していきます。
今日はイントロダクションです。


京都花街が提供しているのは、端的に言えば

「富裕層向けの高度なおもてなしのサービス」

と言えます。

このサービスのメインキャストはもちろん、

「もてなしのプロフェッショナル」

と呼べる

芸妓(げいこ)さん、舞妓(まいこ)さん

たちですね。


彼女たちは、単に舞いや小唄などの伝統芸能が
できるだけではダメなのです。

「お座敷全体の場の雰囲気を
 顧客にとって心地よいものにする」

空間プロデューサー的な役割も求められるのです。


また、お座敷を提供するのが、
いわゆる「お茶屋」ですね。

お茶屋もまた、高い顧客満足を目指し、
顧客に対する深い理解に基づいた、

「最適なサービスの組み合わせ」

を実現できるようベストを尽くしています。


企業が顧客に提供する「サービス」の質の重要性が
ますます注目されている昨今、京都花街のメカニズムや
芸妓・舞妓さんの提供するサービスの極意を学ぶことは
大きな意義があるのではないでしょうか。


さて、芸妓・舞妓を目指す女性の多くは、
中学卒業後15歳位で花街に入ります。

そして、約1年間の集中的な育成期間を経て

「舞妓さん」

としてデビューします。


舞妓さんとして働く間は、

「年季奉公」

の時期です。給料は支払われません。

舞妓さんを住み込みで受け入れ、育成し面倒を見る
「置屋」のお母さん(経営者)からお小遣いをもらいます。
(「置屋」は、芸人やタレントが所属する、現代のタレント
 事務所のような存在と考えてもらえばいいでしょう)


でも、年季奉公、つまり
デビューから22歳位までの通算6年ほどの期間を過ぎると、

「芸妓」

として独立することも可能になります。

独立した方は、「自前さん芸妓さん」といいます。

自前さん芸妓さんは、
「芸妓組合」といった組合員組織もある独立自営業者です。

自営業者ですから定年はありません。
90歳を過ぎた現役の方もいらっしゃるそうですよ。

「手に職を持つ」ことのできる芸妓は、
才覚によっては相応の高収入を稼げ、また「もてなしのプロ」
としての誇りを持てるやりがいのある職業のひとつだと言えます。


なお、「芸妓」は正式には‘げいぎ’と読みますが、
京都では通称‘げいこさん’と呼びます。一方、東京では
‘芸者さん’と呼びます。

また、芸妓さんを体を売る「娼妓」(しょうぎ)さんと
混同してはいけません。

前掲書によれば、売春防止法が施行された昭和30年以前の
公娼制度の枠組みの中では、花街には、芸妓さんと娼妓さんの
両方がいて、それぞれ別個の存在だったそうです。

「芸」は売っても「体」は売りませんという
気概を持ち、芸を磨き続けるのが芸妓さんなのです。


いわゆる「旦那」が
芸妓を「妾」的に囲うといった暗いイメージもある

「水揚げ」

も現在はまったく行われていないそうです。


では明日以降、じっくりと芸舞妓のキャリアや京都花街の
精緻なメカニズムについてポイントをご紹介していきますね。

お楽しみに!


夕学五十講 西尾久美子氏講演(08/06/16) 受講生レポート

京都花街の経営学』
(西尾久美子著、東洋経済新報社)

投稿者 松尾 順 : 2008年06月30日 11:44

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コメント

まつおっちさん
まいどっ!
京都花町研究はMFOの「ブールパパ」さんが第一人者ですよ♪

投稿者 しがっち : 2008年07月01日 08:43

しがっちさん、まいど!

えーそうなんですか!

一度、ブールパパさんのお茶屋遊びに
お供したいものです。(笑)

投稿者 松尾順 : 2008年07月01日 12:13

 西尾久美子さんとは、彼女も属している「京都花街でネットワーカー後援会」という宮川町のお茶屋件、置屋「花傳」
さんを応援する会でご一緒させていただいて、一度この本の出版を祝う会でご一緒させていただいたことがあります。

 この会は決して富裕層むけの会ではなく、年間3000円の会費で参加でき、宴会等も2万円前後と非常にお値打ちで
サラリーマンの会員が多いのが特色です。

 京都の5つの花街は、現在100名をこえる舞妓を擁して、一見はなやかに見えますが、経済的には非常にきびしい
状況であることはたしかなようです。

 「花傳」さんのお母さん、小糸さんは、京都花街で初めて
自分のホームページを独学でひらいたような革新的な面がある一面、非常に芸熱心で、彼女のやかたに属する子は北京からの帰国子女として京都の花街で初めてインターネットを通じて、花街に入った小桃さん(最近彼女の写真集が発売されました。ご一読をおすすめします。花街入門書としても非常によくできています)や、武庫川短大を出て、1年就職したのちどうしても芸妓になりたいと小糸さんのもとへ入った弥千穂さん、昨年の京都の新年式典へ舞妓姿で参加して、NHKでとりあげられた弥寿葉さんなど非常に芸達者で、宮川町を代表する芸妓さんを何名も育てられたすばらしいおかみさんです。
 さきほどの「京の花街ネットワーカーの会」は小糸さんを応援しようと自然発生的に出来た会ですが、ロサンゼルスに住み、子育てをしながら、京都の真の花街を紹介したドキュメンタリー映画「はんなり」をつくりあげた曾原さんなど、真に花街文化を愛し、守っていきたいと願う人たちの集まりです。
 西尾さんの力作もそんな土壌があってできたものかと思います。
 それはともかく、なぜ京都では何百年も続くような企業が数多くあるのか、その秘密の一端がこの「京都花街の経営学」にある気がして読んだのですが、正直まだよくわからないというのが本音です。
 ただ一つ言えるのは、京都では競争と共存、共生がうまくバランスがとれるような工夫が数多くあることは確かです。

 ともあれ、京都花街は日本の伝統文化、なによりおもてなしの心を味わえる数少ない場所の一つであることは確かですが、花街へ行くというと色眼鏡で見られる(妻を含めて)の
が難点です。

投稿者 ブールパパ : 2008年07月02日 05:48

 松尾さんの説明、非常にわかりやすくて、的確で今後が楽しみです。 

投稿者 ブールパパ : 2008年07月02日 05:56

ブールパパさん、ご丁寧なコメントありがとうございます!
小桃さんの写真集も買ってみます!

投稿者 松尾順 : 2008年07月02日 11:47

お久しぶりっ!凄く興味のある話しをありがとうございます。
もっと若かったらやりたかったなぁ〜〜〜っ

ちなみに東京向島の現代の芸者さんには・・・
自称なのか解らないですけど銀座のお店にいらっしゃるお客様に聞くと、お足を開いた遊び(ゲーム?)もなさったりして、娼妓さんと変わらない方もいらっしゃってるみたいでビックリしました・・・

投稿者 heroko : 2008年07月03日 22:58

herokoさん、コメントありがとうございます。

東京の芸者さんは、京都とは結構違うんですかね・・・?

投稿者 松尾順 : 2008年07月04日 06:37

どうなんでしょうね。
全てではないとは思います。

が、銀座のお姉さま方と六本木や歌舞伎町のお姉様方が違う空気を持っているように、向島や浅草などカシによって空気が違うところがあるのかもしれないですね。

投稿者 heroko : 2008年07月05日 12:29

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