良循環の医療システム(後編)

歯医者さんの数は、
実はコンビニより多いのだそうです。

このため、過当競争に陥っており、
歯科医院の経営は大変厳しい状況です。

実際、年収が300万円程度の歯科医師が
5人に1人もいると言われており、マスコミでは、

「歯科医師のワーキングプア問題」

がしばしば取り上げられるほどですよね。


こんな厳しい経営環境の中で、千客万来、
全国から、またわざわざ海外からもお客さんが
押し寄せてくるため、次の予約が数週間先にならざるを
得ないという超人気の歯科医院があります。

それは、東京都・中央区、築地や月島に近い
聖路加ガーデン・セントルークスタワー1Fに開業している

「馬見塚(まみづか)デンタルクリニック」

です。


同クリニックの「経営理念」は、

「健康創造型歯科医療」

という言葉に集約されています。


これは、具体的に言えば、

「できる限り‘治療’をしない」

というもので、現在の歯科医療の真逆の考え方。

言い換えると、
治療が必要なムシ歯などにならないように

「予防」

のための医療に力を入れるということです。


ですから、当クリニックでは、
一般の歯科医院が提供する各種診療にも
すべて対応していますが、特に、

「PMTC」
(プロフェッショナル・メカニカル・
 トゥース・クリーニング)

と呼ばれる治療を前面に出しています。

これは、歯垢をきれいに取り去った上に、
フッ素を塗布するもの。

PMTCを受けると、

・歯周疾患の改善、進行防止
・ムシ歯予防
・歯質強化
・審美性の向上(タバコのヤニなどによる着色の除去)

などの効果があるそうです。


「PMTC」は正確には「治療」ではありません。

歯の病気を治すのではなく、
歯の病気を防ぐためのものだからです。

このため、保険診療の対象とならず、
患者さんの全額負担(自費診療)となります。


「PMTC」は、1-2ヶ月に1回程度、
定期的に受けることが原則です。

1回あたりの医療費は1万円超!

これを患者さんが全額負担するわけなのですが、
PMTCを受けている患者さんは、PMTCの意義・価値を
十分納得した上で、喜んでこの費用を負担しています。


病院の全診療費に占める「自費診療」の割合を

「自費率」

と呼び、これが高ければ高いほど
病院の収入も増えます。

歯科医院の場合は、自費率が50%を超えたら理想的
と言われているのに対し、当デンタルクリニックの
自費率はなんと

70%

だそうです。

つまり、患者さんの多くが、
同クリニックの技術力や、PMTCなどの予防医療の価値を
高く評価し、健康保険の対象とならない「保険外診療」を
望んで受けているということです。


馬見塚院長は、予防医療について言えば、

「もはや、‘患者さん’とは呼べない」

とおっしゃっていました。

PMTCの定期受診を通じて、当クリニックが
患者さんの歯の健康を守り続けることが理想だからです。

実際、小さい頃からPMTCを受けている人の中には、
小学6年生の時点でも全永久歯でムシ歯ゼロという子供さん
がいるとのこと。


実は、開業当初は、この「予防医療」の考え方を
患者さんに理解してもらうのにはとても苦労したそうです。

「とにかくこのムシ歯を治してくれればいいから」

といった患者さんがほとんど。


しかし、ムシ歯は普段の生活習慣に起因するものです。

仮に今のムシ歯を治療しても、
文字通り「対処療法」に過ぎません。

しばらくするとまた同じところや別のところが
病気になり、再び治療しなければならなくなるのです。


そこで、現在罹っている病気の治療だけでも、
また病気を早期発見することだけでもなく、
そもそも病気にならない

「予防」

の重要性を馬見塚院長は患者さんに説き続けました。

「患者さんにとって本当に良い医療とは何か」

を重視し、「治療してくれればいい」といった
お客さんの目先の治療ニーズに安易に迎合しなかったのです。


そして今や、当クリニックの来院者の8割は口コミ。

ほぼ全員が、当クリニックの「健康創造型歯科医療」の理念や、
PMTCについての基本知識をWebサイトで理解し、納得した上で
やってくるので、もはや「予防」の重要性を時間をかけて
説明する必要はほとんどないそうです。


当記事前編では、

「良循環の医療システム」

の基本的な方向性として

・「医師に会う時はすでに患者」という状況を抜け出し、
 医師と患者の対話を促進し、関係性を改善する

・開業医と勤務医のインフォーマルな連携プレーを促進し、
 医療の生産性向上と勤務医の時間の余裕を生み出す。

・「国民医療費」というコスト発想ではなく、
 「国民医療消費」という「価値」の消費へ発想転換する

の3点をご紹介しました。


歯科医院の場合、2点目の「開業医と勤務医の連携」に
ついてはあまり該当しないものの、

・医師と患者の対話促進、関係性改善

および

・「国民医療消費」という「価値」の消費への発想転換

については、
馬見塚クリニックでは現実のものとなっていることが、
以上の説明からご理解いただけたでしょうか?


*馬見塚デンタルクリニック


*本記事は、馬見塚デンタルクリニックのWebサイト、
 および、馬見塚デンタルクリニック院長、馬見塚賢一郎氏
 のご講演に基づいて作成しました。

投稿者 松尾 順 : 2008年07月17日 11:11

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コメント

「保険診療の対象とならず、自費診療となる」からこそ、このケースは成功したのかもしれません。
「治療ではなく予防、そして予防は保険外診療」、加えて診療報酬の低さ云々からすれば、むしろ保険外診療に光明を見出すトレンドに傾くかもと思ったりしています。

投稿者 M流 : 2008年07月21日 16:27

M流さん、コメントありがとうございます。

ご指摘の通り、原稿の健康保険制度の枠を
出ることができている点が成功のポイントですね。

ただ、枠を出るためには、医療側、患者側、
双方の意識改革が必要なんだそうですけど。

投稿者 松尾順 : 2008年07月22日 05:47

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