Webユーザビリティ失敗事例・・・新宿ピカデリー

今年(08年)7月19日にオープンしたばかりの映画館(シアターコンプレックス)、

「新宿ピカデリー」

に行かれた方います?


新宿・伊勢丹のすぐそばです。
丸の内線、副都心線、都営新宿線の

「新宿三丁目駅」

から徒歩1分。


私も今夏、新宿ピカデリーに何度か足を運びましたが、
最寄駅から近いのは便利です。
雨にもほとんど濡れなくてすみます。


複数のスクリーンを持つ

「シアターコンプレックス」

って、たいてい「ショッピングセンター」に
入居しているため駅からは結構離れていますよね。

昔ながらの映画館も、
駅からそこそこ離れていることが多い。

でも、新宿ピカデリーくらい駅から近いと、
やっぱり気軽に行きやすいです!


また、他の映画館とちゃんと比べたわけではありませんが、
シートとシートの間もゆったりしていて座り心地もグッド!

おそらく座席部分のせりあがり(傾斜)をかなり大きめに
取ってあるのだと思いますが、前の人の頭が全く邪魔に
ならないので快適に映画が楽しめます。

価格体系も斬新です。

マスメディアでも盛んに取り上げられていますが、
お金持ちをターゲットとした

「プレミアムルーム」

は、2名様でなんと3万円/1本・回。

「プレミアムルーム」は、専用エレベータで行く
個室仕様のバルコニー席です。

カッシーナのソファにゆったりともたれながら
映画が楽しめる空間になっているそうです。


また、メンバー(無料)になると、
平日A列の当日券が、先着5名/回まで1,000円で購入可能。

スクリーン最前列の席で首が多少痛くなっても、
安上がりに映画を観たいというお客さん向け。


とまあ、施設自体は言うことなしなんです。


ところが、新宿ピカデリーのWebサイトは、
残念ながらユーザビリティの設計に一部失敗しています。

けなしたり、茶化すつもりはありませんが、
わかりやすい「失敗事例」として皆さんの参考に
してもらうため、ここで取り上げてみたいと思います。


さて、何がいったい問題なのでしょうか。

それは、

「上映時間が確認しにくい(できない)」

という点です。

なぜ、こうなっちゃったのか。
その理由は次のようなものではないかと考えられます。

・映画館での映画視聴に関わる消費者行動シナリオを
 想定していない

・そのため、映画館サイトに消費者が訪問する目的と、
 その優先順位(重要度)を理解できていない


まず、消費者行動シナリオですが、個人差はあるとはいえ、
おおよそ次のような流れになるでしょう。


1.マスメディアや口コミを通じて新作映画のことを知る

2.興味を持ったので当該映画の公式サイトにアクセスして、
  詳細情報を得る

3.観たいと思ったので、上映している映画館を調べる

4.当該映画を観に行きたい映画館のサイトにアクセスして、
  上映時間と、行ける日時を確認する。

5.ネットでチケットを購入したり、街中のチケット屋で
  安い前売鑑賞券を購入、あるいは当日購入する

6.当該映画を観る

7.映画についての感想をブログに書いたり家族や知人に話す。


このシナリオに基づけば、
「映画館のサイト」に訪問する最大の目的は、

「上映時間を調べる」

ことです。

したがって、

サイト訪問者が、上映時間のページにすぐにたどり着ける

サイト設計が必須だと思われます。


ところが、新宿ピカデリーのサイトでは、
メインメニューにありませんし、作品一覧からも行けません。


→新宿ピカデリーのトップページスクリーンショット


上映時間のページは、画面左上部の

「チケット購入ボタン」

からしか行けないのです。


つまり、新宿ピカデリーの現状のサイトでは、

「上映スケジュール」

が、

「オンラインでのチケット購入プロセス」

のひとつとして組み込まれているわけです。


「チケット購入ボタン」の下には、

>>上映スケジュールもこちら

というテキストが小さく添えられてはいますが、
あまり目立ちません。


この「チケット購入ボタン」は、
全ページに常時表示されているものです。

しかし、いきなりチケット購入ではなく、
まずは上映時間を調べたい人にとっては無意識に
無視してしまうボタンです。

そんな方は、最初どこに上映時間が表示されているのか
わからず、探し回る羽目になるのではないかと思います。

(私もそんなひとりでした・・・)


また、上映時間表示が

「オンラインでのチケット購入プロセス」

に組み込まれていることで、
さらに大きな問題を生んでしまっています。


当サイトでのチケット購入は、
1週間先までしかできないことになっています。

例えば、今日(9月5日)時点で予約できるのは、
9月12日(金)までです。


チケット購入ボタンを押すと、
まずカレンダーが表示されるのですが、
日別の上映スケジュールが確認できるのは、
チケット予約が可能な9月12日までです。


→カレンダーのスクリーンショット(08/09/05現在)

→上映時間のスクリーンショット


したがって、9月13日(土)以降にここで映画を
観たいと思っても、13日以降の上映スケジュールは
確認することができないのです。

ご存知の通り、映画は封切り後の集客度合いによって、
上映回数、上映時間がたまに変更されますよね。

行きたい日の上映時間が確認できないと不安です。


ですから、現在のサイト設計だと、
1週間以上先に映画を観たいと思っている消費者を
最悪、取り逃がしてしまっている可能性がありますよね。


新宿ピカデリーさん、
早いとこ、この部分リニューアルお願いしますね!


*新宿ピカデリー
http://www.shinjukupiccadilly.com/index.html

投稿者 松尾 順 : 2008年09月05日 11:29

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トラックバック時刻: 2009年09月30日 15:11

コメント

試しにサイトに行ってみました。
本当に彷徨ってしまいますね。

そして、例えば今から今月の連休の予定を立てようと
上映時間をチェックしたい…
という希望はかなわないということですね。
「他の映画館さがそ☆」となってしまいそう...。

投稿者 natsuko : 2008年09月05日 23:58

natsukoさん、コメントありがとうございます。

やはり、さまよわれましたか!

そうなんですよ。

1週間以上先の予定の検討ができないのって、
すごく変な仕組みですよね。

投稿者 松尾順 : 2008年09月07日 12:55

映画館、キレイでした。

もともとあったところが変わった映画館だったので、サイトに行ったことはありませんでしたが、試しにサイトに行ってみました。

なんだかスクリーンショットであったサイトから変わっていますね。今日は来週金曜日まで買えるみたいだけどチケットはもっと先まで買えたほうがいいと思いました。いつも前売りかチケット屋で安いチケットを買って見に行く人なんで直接は関係ないけどw

それに上映予定とか公開中とかコンテンツが増えたんですかね。近くにバルト9もあるし、ミラノ座もあるから、もっと考えていかないと差別化できなさそうだと思いました。

投稿者 zzzzzz21 : 2008年09月30日 11:49

私の記事が影響したのかどうかわかりませんが、
サイトがリニューアルされていますね。

トップページで、上映されている映画とスケジュール
がダイレクト表示されるようになり、とても便利に
なっています!

チケットが10日を超えた先まで買えないのは、
集客状況に応じて上映スケジュールとかを柔軟に
変えられるようにでしょうね。これは仕方ないかな。

投稿者 松尾順 : 2008年10月01日 14:00

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