観念価値の時代

「製品が提供できる価値にどのような種類があるのか」

については様々な考え方や理論があります。


私の場合、
最近は以下の3階層で製品価値の構造を捉えています。

(1)便益価値(最下層)
(2)感情価値(中階層)
(3)観念価値(最上層)


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(1)便益価値

製品がどんな具体的な欲求を充足してくれるのか、
ということです。

「その製品は、どんな問題を解決してくれるのか」
「その製品は、どんな役に立つのか」

といった質問の答えが「便益価値」になります。


先日のドリルの話で言えば、

「ドリル」という製品は、

「ねじ穴」

を開けるのに役立つという

「便益価値」

を持っています。

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(2)感情価値

その製品を利用することによってユーザーが感じる

「心地よさ」「たのしさ」、「うれしさ」

など、感情に作用する価値のことです。
(「情緒価値」ということもあります)


これはブランドイメージとも強く結びついています。

たとえ割高(最近はそうでもありませんが)でも
アップル製品を積極的に購入したいと考えるユーザーが
いるのは、アップル製品を所有することの喜びや楽しさが、
他のメーカーよりも大きいからですね。 

また、以前ご紹介した、花王のハンディモップ、

「クイックルワイパーハンディ」

では、小さいほこりを除去して部屋がきれいになるという

「便益価値」

に加えて、思わずなでなでしたくなる、
ネコじゃらしのようなふわふわした形状にモップ部分を
したことで、「楽しい」「かわいい」といった

「感情的価値」

をユーザーに提供しています。

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(3)観念価値

これは「コンセプト価値」と言うこともありますが、

「製品」

そのものが持つ価値というよりも、
むしろ、その製品を提供する企業が打ち出している

経営理念や方針、企業文化

などがもたらす価値です。


具体的には、

「誠実な経営に徹する」

といった経営自体についての方針や、

「原材料には天然ものしか利用しない」

といった品質についての考え方であったり、

「環境保護」「動物愛護」

といった、社会的な意義の高い問題に対する
貢献意識の強さです。(いわゆる「CSR」)

人々は、上記のような、
製品の背後にある企業のこだわりや考え方、
社会的な貢献意識の高さに共感して、
あえてその製品を選択するという行動を取ります。

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さて、従来は「便益価値」の大きさが、
特定の製品が選ばれる最大の理由でした。

近年は、便益価値での差別化が困難になったため、

「感情的価値」

がより重視されるようになってきましたね。

しかし、これからは、なによりも

「観念価値」

が購入に当たってますます重視されるように
なってくるでしょう。

どんな製品かということ以上に、
どんな会社がそれを提供しているのか、
そしてその会社はどんな考え方を持っているのか
を知った上で購入を判断したいと考える消費者が
増えていきます。

これは、情報化が進んだことにより、
企業の実態が次々と明るみにでるようになった今、
公正で誠実な会社があまりに少ないことに消費者が
気付いたことの反映でもありますね。


*情緒価値重視の製品開発:花王のケーススタディ

投稿者 松尾 順 : 2008年10月20日 07:44

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コメント

観念価値・・・いい言葉ですね。
いつの時代にも他社に先駆けて取り組む企業が抜け出ていきますね。
観念価値にリソースをさくことによるROIを短期間でしか、考えられることのできない経営者の会社はだめでしょうね。

投稿者 しがっち : 2008年10月21日 07:15

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