プロに勝つクラウドソーシング

工業デザイナー、奥山清行氏は、
次のようなことをある講演でおっしゃっています。
 

“アマチュアのひとつのアイディアのひらめきには
 プロもかなわない。

 しかし、プロは1万倍の努力を1万回続けて、その中から
 たったひとつのベストを選ぶことができる。

 組織やチームといった仕組みを駆使して、
 アマチュアのひらめき以上のものを作り出すのがプロだ”


つまり、プロは圧倒的な努力(圧倒的なトライ&エラー回数)
によって成功確率を高め、常に一定以上の成果を維持している
ということなのだと思います。


そういえば、天才エジソンが数々の発明に成功したのも

“1%のひらめきと99%の汗(努力)”

でしたね。


エジソンや奥山氏のような天才には、
アマチュアが10人、いや100人束になっても
敵わないでしょう。

しかし、束になるアマチュアの数が、

千人、1万人、10万人・・・

となれば話が違ってきます。


1人ひとりのひらめきはポツポツとしか出なくても、
集団全体として見ると、相当数のひらめきが創出されている
状況となるからです。


実際、このような仕組みが
インターネットを活用して実現可能となっています。

「クラウドソーシング」

と呼ばれる仕組みです。

すなわち、「群集(クラウド)」のパワーを
活用するわけです。


さて、リクルートの研究機関、

メディアテクノロジーラボ(MTL)

では、今年(08年)8月から、
クラウドソーシングを応用した実験サイトを
立ち上げています。
(日経産業新聞、2008/10/29)


このウェブサイト、

「みんなのクリエーティブエージェンシー C-TEAM」

には、誰もがクリエーターとして登録可能。
バナー広告制作のコンペに参加できるというもの。

9月末時点のクリエーター登録者数は約1,200人だそうです。
(日経情報ストラテジー、DECEMBER 2008)

クリエーターとなった人たちは、
広告主(現在はリクルートの各媒体)の依頼に基づき、
バナー制作に必要なロゴ素材をダウンロードしたり、
自分でキャッチコピーを考えます。

バナーの対価は500ポイント。
また、クリック率上位のクリエーターには、
賞金ポイントが与えられます。
(現金に交換可能なポイントです!)


こうして、様々な人が制作したバナー作品は、
リクルートが購入したポータルサイト

「goo」

の広告枠に一定期間されます。

そして、クリック率の高い、つまり、
閲覧者の行動を引き出す効果の高いバナーは、
他のバナーよりも露出回数が増やされます。

また、飽きられたため、
クリック率が低下したバナーの露出回数は
減らされます。


すなわち、寄せられたバナー作品全体で
クリック率が最も高くなるような

「バナー掲載最適化」

が図られているというわけです。


その結果、あるテストケースでは、
バナー広告掲載の最適化前後でクリック率が

1.7倍

と改善。

また、クリックしてアクセスした広告主のサイトで、
実際にサービスを利用するなどの行動に結びついた率も、

3.7倍

へと向上しています。

しかも、アマチュアのバナーの中には、
プロが制作したバナーのクリック率を上回るものも
多かったようです。


リクルートでは、以上のような知見を活かし、
自社媒体ではなく、通販、不動産会社など幅広い企業に
この仕組みを使ったバナー広告制作を提案する事業化に
踏み切る予定とのこと。


クラウドソーシングが応用可能な分野は、
ある程度限られるとは思います。

しかし、

「C-TEAM」

のような仕組みが使える分野においては、

圧倒的な努力ができない、中途半端なプロ

は、群集のパワーによって淘汰されてしまうかもしれません。
(あー、他人事じゃないぞ・・・!)

投稿者 松尾 順 : 2008年10月31日 13:55

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mindreading.jp/mt/mt-tb.cgi/950

コメント

コメントしてください




保存しますか?