神童がプロとして大成しないのはなぜか?

以前、今は解説者として知られる、
元プロ野球選手の方が嘆いていたのを覚えています。


なんに対して嘆いていたかというと・・・

せっかく、素晴らしい才能が認められてプロ選手に
なれたのに、練習が嫌いで手を抜くことばかり考えている、
そして、毎日飲み歩くような不摂生な生活を送ってしまう
若手選手が多いことにです。


若い頃は「神童」、あるいは「天才」と呼ばれながら、
プロとして大成するのは一握り。

多くは、才能を腐らせ、
大きな花を咲かせることなく散っていく。


なぜなんでしょうか。
ずっと不思議に思っていました。


実は、「プロ」として成功できるかどうか、
言い換えると、「高みを極めることができるかどうか」
の分かれ目は、

「マインドセット」(心構え)

にあったんですね。


才能に恵まれた人が陥りやすいマインドセットは、

「才能・能力は天性のものである」

というものです。


ですから、彼らにとって「努力すること」は
ダサイこと。なぜなら、努力は才能のないものが
するものだと考えているから。


そして、学校や試合(本番)は、
自分の才能を周囲の人に見せ付ける場です。

才能があるんだから、常に勝ち続け、
また、優秀さを周囲に見せ続けなければならない。

だから、失敗は受け入れられない。
とても恥ずかしいことだから。


でも、努力をしなければ、
持てる才能の上限で能力は頭打ちになりますよね。

しかも、失敗はいやなので、
失敗するリスクのある難易度の高い課題を
わざと避けるようになる。

そして、「やればできるんだけどね・・・」
などと言い訳をして、自分のプライドを守る。

もし万が一、失敗してしまっても、
その原因を他人や環境のせいにすることで、
自分の才能に傷がつかないようにする。

こうして、まさに才能におぼれて自滅していくのです。


テニスの天才、ジョンマッケンローも
若い頃はこうしたマインドセットの持ち主
だったようです。


彼が試合に負けたとき、
決して自分に落ち度があるとは
考えなかったのです。

ある時、友人と対戦して負けたのは、
相手が恋愛中で、自分はそうではなかったから
という言い訳をしたらしいですね。


一方、天性の才能にも恵まれ、
あるいは、それほど才能に恵まれなかったとしても、
それぞれの世界で高みを極め、プロとして成功を
収めた人々もいますよね。


彼らが持っているマインドセットは、

「才能・能力は伸ばせるものである」

というもの。

だから、日々の地道なトレーニングを怠りません。
努力すれば、いくらでも優秀になれると考えている。

彼らにとって、学校や試合(本番)は、
自分の能力をさらに伸ばす場であり、
才能・能力を証明する場ではありません。


そして、「失敗」は自分のできないこと、
わかっていないことを確認できる貴重な体験です。

ですから、失敗するリスクのある難易度の高い課題には、
それを乗り越えればさらに大きく能力が伸ばせるから、
積極的にかつ喜んで取り組む。


こうしてコツコツと努力することによって、
天性の才能をさらに開花させ、あるいは、
生まれつきの才能を上回る能力を身に付けることが
できるのです。


さて、前回の記事「ほめるな、ねぎらえ!」で
ご紹介したスタンフォード大学心理学教授、
キャロル・S・ドゥエック氏は、

「才能・能力は天性のものである」

と考える人のことを

「Fixed Mindset」(邦訳は「こちこちマインドセット」)

と呼んでいます。

そして、

「才能・能力は伸ばせるものである」

と考えている人を

「Growth Mindset」(同、「しなやかマインドセット」)

と呼んでいます。


上記2つの考え方のどちらを持っているかで、
あなたが高みを極めることができるかも決まるのです。

この2つの対極的な考え方はとても面白いですよ。
次回、さらに掘り下げてみたいと思います。


*参考文献
『「やればできる!」の研究』
(キャロル・S・ドゥエック著、今西康子訳、草思社)

投稿者 松尾 順 : 2009年04月28日 12:35

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コメント

なんだかんだ、「真剣か?」ってところが個人事業主が組織を作れない理由だろうし、人格面でも収益面でも差別化要素になってるってことがわかってきたかもな今日この頃です。

投稿者 課長007 : 2009年04月29日 00:33

課長007さん、まいど!

究極は、「人間力」ですかね・・・

投稿者 松尾順 : 2009年04月29日 10:26

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