パーソナルブランドの価値構造


今回は、「@IT自分戦略研究所」に連載している

『エンジニアも知っておきたいキャリア理論入門』

の最新記事である第14回

「選ばれるエンジニアになるためのブランド力を養う」

のポイントをご紹介します。
(エンジニア対象の記事ではありますが、
 すべてのビジネスパーソンにとって大事な内容ですよ)


当記事で取り上げた理論は、
マーケティングにおける「ブランド論」の視点から、
「キャリアづくり」を説いたもの。

博報堂出身、現在は独立され、
マーケティング、人材育成関連サービスを
展開されている山本直人氏の持論です。


さて、山本氏が定義する「ブランド論」とは、

「他者からどのように認知されるべきか」

を考えることです。

ここで、「認知される」というのは、

・どの程度、名前が広く知られているか、
・どの程度、どんな特徴があるか理解されているか
・どんなイメージが連想されるか
・どの程度、好意を持って受け入れられているか

といったことを含みます。

ですから、ブランド論は、
商品や企業、地域などだけでなく、

「人」

に対しても適用可能なのです。


そして、
ブランドを作り上げていく、
すなわち、

「ブランド化のプロセス」

をコントロールすることを

「ブランドマネジメント」

と呼びます。


ここで「ブランド化」とは、
自社(自分)にとって望ましい

「ブランド認知」

を形成することと言えるでしょう。


このブランド化に当たって
ぜひとも押えておきたい切り口が、

「ブランドの価値構造」
(ブランドが利用者などに提供する価値の構成)

です。

山本氏は以下の3つの階層で説明しています。

・属性
・機能的価値
・情緒的価値


これを人に当てはめる、すなわち

「パーソナルブランド」

について考えてみると次のようになります。

-----------------------------

・「人」の属性

 性、年齢、学歴、保有資格など
 (客観的な特徴)


・「人」の機能的価値

 企画力、コミュニケーション力など、
 仕事を遂行するために求められる能力
 (実務遂行能力)


・「人」の情緒的価値

 その人と一緒にやる仕事は、安心できる、
 楽しい、勉強になる、成長感が得られるといった、
 相手に好ましい感情を湧き起こさせる資質
 (端的には「人間性」や「人間力」と言えるでしょう)
 
--------------------------------

そして、ブランド化とは、
基本的にはこの価値構造の視点から、
それぞれの価値を高めていく取り組みだといえます。

もちろん、すべての価値を同じように
高めるのではなく、自分の強み・弱みを考慮して、
メリハリをつける必要がありますが。


上記の人のブランド価値構造を踏まえると、
さまざまな示唆が得られますね。

例えば、

・高い学歴や資格など、
 どんなに優れた属性を持っていても、
 機能的価値、すなわち実務遂行能力が
 伴わなければブランド化は難しい

・どんなに優れた実務遂行能力を発揮できる人でも、
 極端な自己チューや高慢な態度によって周囲の人に
 ネガティブな感情を与えてしまうようであれば、
 情緒的価値を提供できていないことになり、
 仕事が回ってこなくなる可能性がある。

といったことです。


近年は、機能的価値=実務遂行能力を
提供できるのは当然であり、むしろ、

情緒的価値=人間性、人間力

を求める傾向が強くなってきています。

この背景には、
あらゆる分野が高度化、複雑化、専門化した一方、
もはや1人でできる仕事はほとんどなくなり、
実際の業務では、様々な専門家がチームを組んで、
共に取り組む必要性が出てきたことがあります。

チームとしての成果につながるためには、
メンバーから総スカンされるような、
情緒的価値のない人間は、個人としてどんなに
優秀でも「使えない」ということになってしまうわけです。


近年、米国のビジネス界でも、

“Personality matters”(人格が大事)

という言葉がささやかれるようになっています。

他人を押しのけてでも個人の成功を追求することを
良しとしてきた米国でさえ、もはや、仕事力だけでなく、
高い人間性によって人を魅了しなければならないという
認識が高まってきているのです。


山本氏の説くパーソナルブランド論の詳細については、
下記参照記事、および参考書籍をぜひご覧になってください。


*参照記事

『エンジニアも知っておきたいキャリア理論入門』
第14回 選ばれるエンジニアになるためのブランド力を養う


*参考書籍

『グッド キャリア』
(山本直人著、東洋経済新報社)

投稿者 松尾 順 : 2009年09月10日 09:06

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