『幸福の方程式 新しい消費のカタチを探る』

『幸福の方程式 新しい消費のカタチを探る』
(山田昌弘+電通チームハピネス著、
 ディスカバー・トゥエンティワン)

これからの消費者心理・消費行動を解読する上で
たくさんのヒントを与えてくれる本。

マーケター必読書です。


さて、本書に示されている、

消費者心理・消費行動の変化

における最も重要なポイントは、

「消費をすることが幸福を生み出す」

という従来の考え方から、

「幸福を得るために役立ちそうな消費を行う」

という考え方へのパラダイム・チェンジでしょう。


言わずもがなのことですが、
日本の高度成長期には、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、
あるいは、自家用車、クーラーなどを買い揃えることで、
幸福を実感できたわけです。

これは、

「家族が幸福になるという物語」

でした。


その後に続いたのは、
さまざまな「ブランド」を消費することが、
幸福を生み出すという物語を追いかけた時代。

すなわち、

「ブランド消費の時代」

です。


ブランド消費の時代は、
家族ではなく「個人」が主役でした。

一定の幸せが得られるという

「保証」

のついたブランドを購入することで
個々人が幸福感を得てきたわけです。


そして現在。

モノを購入することを通じた家族の幸福物語や、
個人の幸せを保証したブランド消費はどちらも、
まったく消えてしまうことはないでしょう。


しかし、私たちは、

「新しい幸せの形、新しい幸福の物語」

をダイレクトに追求し始めています。


そして、「消費」は、

新しい幸福の物語を完成させるための‘道具’

に過ぎなくなりつつある、

というのが、

『幸福の方程式』

の基本主張です。


例えば、昔ながらの「旅行」は、
旅行そのものが目的であり楽しみでした。

しかし近年は、
東南アジアの某国にボランティアに行き、
社会貢献をすることが目的であり、そのための
ツアーに人が集まるという現象が増えてきています。


つまり、「社会貢献」をサポートするために、

「旅行」(というサービス)

が消費されているのです。


同書ではこのような、

幸福を得るのに役立ちそうだからと
何らかの商品を消費すること

「道具消費」

と呼んでいます。


さて、同書で仮説として示されている

「新しい幸福の物語」

は次の3つです。

-----------------------------------------------------

(1)自分を極めるという物語・・・個人-個人の内的感覚

 端的にいえば、何かにはまって充実した時間を過ごすこと。
 自分の内面に向かう。個人農園で野菜づくりに精を出すなど、
 あえて不便を楽しむ。オタクな世界もこの典型。


(2)社会に貢献するという物語・・・個人-社会の関係

 端的には、社会的な役割を見出し、
 自分が社会に役立っているという納得感を得ること。

 自分はそれなりに豊かな生活をしているがゆえに、
 途上国の貧困や地球環境問題に対してなんらか良いことを
 して、 罪悪感を多少とも軽減したいという
 「ギルティ・フリー」な消費行動も含まれる。


(3)人間関係のなかにある物語・・・個人-個人の関係

 端的には、自分を受け入れてくれる身近な人たちの中で、
 自分の「居場所」を見出すこと。

 従来の「家族」「会社」という、一定の役割が期待され、
 縛りのきつい居場所ではなく、かといって完全に孤立して
 生きるのでもなく、人との距離感を調整し、ちょうどいい
 距離を買う、という選択をする人が多くなってきている。

 考えてみれば、「ツイッター」は、
 人とのちょうどいい距離を自己裁量で調整しやすい
 「道具」ですね。

------------------------------------------------------

なお、上記のような幸福の物語が成立する鍵として、

・時間密度
・手ごたえ実感
・自尊心
・承認
・裁量の自由

の5つがあると同書では解説してあります。
(詳細は、同書をお読みください!)


しかし、結局のところ、
幸福をもたらしてくれる究極のキーワードは

「つながり」

なのです。

実は、これまでの家族の幸福につながる消費、
個人の幸福につながるブランド消費の背景にも、
「つながり」が隠れていました。


しかし、いまはつながりをダイレクトに
実感するために消費を行うという現象が
起きているわけです。

これが冒頭に述べたパラダイムチェンジです。


山田昌弘氏は次のように書いています。

“自分の内側、社会、周りの人々との間につながりを
 つけることが幸福を生み出すスタイルです。そして、
 人々は、つながりを求め、それを維持することに
 お金をかけ始めているのです。”


ですから、
売れる製品・サービスづくりのためには、

「新しい幸福の方程式」

を理解すること、そして人々が、

「つながり」

を生みだし、実感し、また維持することに
役立つためにはどんな製品・サービスが有効かを
考える必要があると言えますね。


『幸福の方程式 新しい消費のカタチを探る』
(山田昌弘+電通チームハピネス著、
 ディスカバー・トゥエンティワン)

投稿者 松尾 順 : 2009年10月07日 13:03

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