コミュニケーションは'BIG WHY'から始めよ!

『Start with Why: Hwo Great Leaders Inspire Everyone to Take Action』

の著者、Simon Kinek(サイモン・キネック)氏が、

「TED(Technology Entertainmet Design)Conference」

で行なった講演の動画をご覧になったことがありますか?

キネック氏の話は、まさにInspiring(示唆に富む)もの。
大変面白く、かつわかりやすくので必見ですよ。


さて、彼は、スティーブ・ジョブズや、
マーティン・ルーサー・キングといった
偉大なリーダーたちはまず、

「Why(なぜ)から語っている」

と述べています。

そして、Whyを実現するために

・How(どうやって)
・What(何をするか)

という順序で話を進めるのです。

つまり、偉大なリーダーは常に、
次のような順序で語っているのです。

Why ⇒ How ⇒ What

実際、スティーブ・ジョブズは、

「私たちのライフスタイルに革命を起こす」

という'Why'を印象的に語った上で、

・美しくデザインされて使いやすい(How)
・iPod、iPhone、iPadといった製品を(what)世に送り出す

と続けることで、人々の熱狂と共感を起こすことに
成功していますし、結果として同社製品は世界中を
席巻していますね。


一方、世の中に出回っている多くのメッセージを
見てみると、'What'から始まっていることがほとんど。

・こんな製品を出します(What)
・これはこんな設計に基づいています(how)

しかも、なぜ、その製品、あるいは企業が、
世の中に存在する価値・意義があるのか=Whyまで
きちんと語られていることがありません。

モノが欠乏していた時代ならともかく、
現代は、'What'から語り始めても人の興味・関心を呼び、
また、購買意欲を喚起させることはできないのです。


企業のコミュニケーションは、
「Whyを語ること」から始めなければなりません。

それは、企業や製品の社会における存在価値・意義
をまず相手に理解してもらうことです。

なぜなら、人々はもはや、'Why'が明確でない企業、製品
を受け入れてくれないからです。


ただし、キネック氏の主張に補足させてもらいたい
のですが、単なる'Why'では駄目だということ。

'Big Why'であることが望ましいということを強調したい。


'Big Why'とは、一個人の生活を超えて、
地域全体、あるいは国全体、世界全体、さらには
宇宙全体に変革・革命を起こすというレベルまで
'Why'のレベルを高めたもの。

まあ、「宇宙全体」は多少オオゲサとしても、実際、

世界全体の大問題=グローバル・ビッグ・イシュー
(地球温暖化、熱帯雨林の消失、旱魃・飢饉等)

を企業経営の主軸に沿え、これらの解決に寄与すること(Why)
を最初にメッセージとして前面に出しているグローバル企業
が増えつつあるのです。


フィリップ・コトラーの『マーケティング3.0』では、
マーケティングの目的の変遷を次のように示しています。

マーケティング1.0:製品を販売すること
マーケティング2.0:消費者を満足させ、保持すること
マーケティング3.0:世界をより良い場所にすること

マーケティング3.0でもやはり、

'Big Why'
を目的に据えなければならないとしているのですね。


あなたの会社・商品は、'Big Why'から語っていますか


TED Conference:
Simon Sinek: How great leaders inspire action

投稿者 松尾 順 : 13:23 | コメント (0) | トラックバック

「町の理容店」の徹底したデータ活用

日経ビジネス(2011.2.21号)に掲載されていた、
千葉市・稲毛区にある地場の理容店、「オオクシ」は
すごいです。

独自のIT技術を駆使し、顧客行動を分析することにより
リピート率84%を達成しています。

理容店業界では、リピート率70%を超えれば、
業界紙で特集が組まれる(参考事例として取り上げられる)
ということなので、オオクシがいかにすごいかわかりますね。


まだ42歳の現社長は、父親が経営していた理容店を
1990年代半ばに引き継ぎますが、当時は競争激化のため、
倒産寸前でした。

打開策に悩んだ末、現社長は19歳の頃アルバイトしていた
コンビニのPOSシステムを思い出し、病院のカルテを
参考に独自のITシステムを構築しました。

そのシステムは、どんな客が来て、誰が対応し、
どんなカットにしたのかといったデータが記録できるもの。

そして、システムに蓄積されたデータを分析すると、
ベテランの理容師が実はたいして稼いでいないといった
真実が如実に把握できた。

現在は、社員(理容師)の技術力、すなわち、
誰がどんなカットが得意か、不得意かということも、
ヘアスタイルを126通りに分類して分析しているそうです。


オオクシのお店で興味深いのは、
理容店でありながら、男女比率が5:5であることです。

つまり、ターゲット層を既存の利用店よりも、
大きく広げることができているわけです。

もちろん、当初は男性が大半だったわけですが、
女性も入りやすいお店作り(かつ男性にも抵抗のない)
に注力したおかげで、男性と女性の利用客数を同率に
することができた。

これは、個人客でなく、家族みんなで
来てくれる客を増やしたことも寄与しているようですが、
理容店としては斬新な発想ですよね。


そしてまた、オオクシが目指す最適なお店づくり
に活用しているのが顧客アンケートです。

40万件の顧客から約4000件のアンケートが、
集まるそうですが、その基本的な活用法は

「顧客の声をどれだけ無視できるか」
(全部聴いていたら破綻するから)

という視点に基づいて行なわれています。

これは記事を読むと、
どうやら次のようなことだと思われます。

・顧客の満足度、リピート率を本当に高めることに
 つながる改善にはお金をかけるが、そうならない
 ことに無駄なお金・努力をかけない。

要するに「過剰品質」にならないように、
顧客の声を上手に聴き、また上手に無視することで、
顧客満足度・リピート率を上げつつ利益を出せる
強靭な店作りをやっているようです。

実際、お客様の様々な要望に対して、
無差別にすべて対応していたら経費や手間が
かかりすぎて利益が飛んでしまうということがおきます。

しかも、その改善策のおかげで必ずしも顧客が増える、
リピート率が高まるとは限らないわけですし。


お客さまアンケートは基本的に、

・何を改善すべきか

を把握するために分析を行なうわけですが、

・何は改善しなくてよいか

という視点での解釈も必要なんですね。

投稿者 松尾 順 : 13:56 | コメント (0) | トラックバック

日本酒復活の日は来るか?

日本酒復活の日は来るか?

お酒について言えば、昨年(2010年)は
「ハイボール(ウイスキー)」の年でしたね。

ハイボールブームが頂点に達し、
凋落を続けてきたウイスキーの消費量に
歯止めがかかりました。

さらに最近は、わざわざ作らなくても、
すぐに飲める「缶入りハイボール」が好調に売れており、
今年も引き続きハイボール人気が続きそうです。


そして、今年の注目株はおそらく「マッコリ」。

従来、韓国料理店など限られた場所でしか
飲めなかったマッコリですが、昨年、酒販店やネットで
気軽に買えるようになったおかげで、消費量が一気に
拡大しつつあります。


マッコリは日本ではある意味、「新しいお酒」ですね。

韓国では「男性労働者のお酒」というイメージが強いのですが、
日本では、マッコリの名前くらいは皆知っていても、
そこから連想されるイメージが希薄なのを逆手に取り、

「女性向けのおしゃれなお酒」

というブランドイメージの確立に成功しつつあります。

おかげで、女子を取り込みたい居酒屋等での扱いも
増えています。

しかも、業界大手のサントリーも3月22日に、
微炭酸の缶マッコリ「ソウルマッコリ」を掲げて
マッコリ市場に本格参入。

というわけで、今年、「マッコリブーム」が
起きる可能性は非常に高いのではないかと思います。


こんな中、相変わらずの消費低迷に苦しんでいるのが
日本酒です。

海外では、和食ブームとともに日本酒も大人気です。
「日本酒ブーム」とも呼べる状況であり、
日本酒の輸出は過去最高になった模様です。


しかし、日本国内では完全に「通」のためのお酒。

高品質・高価格のプレミアム系日本酒はそれなりに
売れているものの、日本酒全体の消費量の減少は
悲惨なものがあります。

実際、日本酒の国内消費量は、1995年度が126万キロ
リットル、2008年度は62万キロリットルと半減しています。

ここ数年も、引き続き減少しているのは間違いないでしょう。


さて、きちんと調査をしたわけではないので
「仮説」の領域を出ませんが、日本酒が抱えている問題は、
かってのウイスキーとほぼ同じと考えられます。

すなわち、以下の3つの問題点です。

(1)飲みにくい(ウイスキーほどでないにしても
   アルコール度数高め)

(2)食事に合わない(和食には合うが、洋食にはNG)

(3)おじんのイメージ


ウイスキー業界では長年、ウイスキーの
「品質」や「味わい」を中心に訴求してきました。

しかし、それは、ウイスキーの既存飲用者にとっては
「当たり前」のことであり、一方で、若年層を中心とする
非飲用者には響かなかった。

このため、プレミアム系のお酒は根強い人気があったものの
ウイスキー市場全体の縮小をくい止めることはできなかったのです。

しかし、ハイボールは、炭酸で割ることによって、
飲みにくさを解消し、ビールや酎ハイと同様、
食事しながらゴクゴク飲めるお酒になりました。

また、ハイボール自体は昔からあったものの、
近年は「忘れられた存在」だったことが幸いし、
おじんくさいというイメージをひきずらなかった。

しかも、炭酸で割ることでジョッキ一杯当たりの
値段が酎ハイなみに安くなることも幸いしました。


ただ、忘れてはいけないのは、
今回のハイボールブームの仕掛け人、サントリーでは、
「ハイボール」という若年層にとって新しい飲み方を
提案するだけでなく、流通対策、すなわち、ハイボール
の扱い店を増やすという地道なことも並行してやった点です。

つまり、ハイボールという商品開発だけでなく、
価格、プロモーション、流通をも含む、マーケティング
全方位的な取り組みを行なったのです。

このことが、これまでウイスキーを飲まなかった若年層を
中心とする大衆の心を掴み、全国的なハイボール人気の獲得
に成功したといえます。


日本酒は、このハイボールの成功事例に大いに学ばなければ
ならないと思います。

端的に言えば、日本酒も以下のような方向性で
マーケティングに取り組むべきということになるでしょう。

-------------------

・日本酒を飲まないマス(大衆)層を狙うこと

・ビールと同じ程度のアルコール度数低め(5-7%)で
 飲みやすいこと

・食中酒として食事に合うこと

・おじんくさいイメージを払拭すること

・グラス一杯当たり、酎ハイ並みの安さであること

・居酒屋等での取り扱いを増やすこと

--------------------

上記に対する商品面での解決策が「日本酒ハイボール」か
どうかはわかりません。というか、いきなりそうした短絡的な
解決策に飛びつくべきではないでしょう。

根本のところから、ゼロベースで考えたほうが良いと
思います。ただ、日本酒復権のための基本的な枠組みは、
どうやら「ブルーオーシャン戦略」が使えそうですよ。


日本酒大好きな私(おじんですが)にとっては、
近い将来、本格的な日本酒ブームが巻き起こることを
切に願っています。

「ニューハイボールの秘密」

「眞露(ジンロ)のブランド拡張」

「ブルーオーシャン戦略の要諦」

投稿者 松尾 順 : 08:42 | コメント (0) | トラックバック

女性誌購読者は消費活発!

女性ファッション雑誌に対する消費者行動は、

1 自分で買って読む人
2 自分では買わず、美容院等で読む人、書店立ち読み人
3 そもそもまったく読まない人

に大きく分けることができますが、

・1の自分で買って読む人=購読者
・2と3の両方を含む人=非購読者

という購読者・非購読者に2分して、
それぞれの消費行動の特徴を見ると大きな違いが
あることが最新の調査でわかっています。

特に興味深いのは以下のような事実。

----------------------------------

・購読者は、非購読者よりも、ファッション・化粧品、
 外食・グルメ、旅行、金融・保険商品、乗用車など多様な
 商品・サービスに関心が高く、消費行動が活発である。

・購読者は、非購読者と比較して、1カ月に使う金額が、
 ファッション、化粧品で約2倍、バッグ・靴、ジュエリー・
 アクセサリーにおいては2倍以上。

・購読者は、非購読者よりインターネットの利用時間が短い、
 しかし、ネットショッピングの金額は高い。

----------------------------------

わざわざ自腹でファッション誌を買うくらいですから、
「消費が活発なのは当たり前でしょ!」と言われれば、
確かにそうなのですが、調査結果としてきっちり数字で
示せたことが大きい。

インターネットメディアの隆盛によって、
相対的に紙メディアの価値低下が顕著ですが、
少なくとも、女性ファッション誌については、
その価値が見直されるべきなことは明らか。

なぜなら、女性誌読者、とりわけ購読者は、
自社商品をたくさん買ってくれる可能性が高い、
企業にとってはありがたいお客さんであり、
そしてまた、トレンドを牽引するトレンドセッター、
オピニオンリーダーです。

そうした方に効率的にリーチできるのが
女性ファンション誌と言えるからです。


さて、女性誌の購読者と非購読者に
これほどまでに大きな差が開いたのは、
おそらくこの10年ほどのことだと思います。

経年比較ができないので推測になりますが、
ひとつはネットの浸透が両者の差を広げたのでは
ないか、ということ。

ネットが「誰でもメディア」になることにより、
紙メディアをわざわざ買わなくても、
ネットで十分だと割り切る人が増えました。
(これは雑誌だけでなく、新聞含めあらゆる
 紙メディアに起きていますが)

一方で、周囲に差をつけられる、価値のある編集
された情報はネットではなく、まだまだ紙でしか
得られないと考える、本当の意味で情報感度の高い人が
女性誌を購入し続けている。
(ですから、多面的な情報収集・消費活動で忙しい購読者は、
 ネットばかりやってる時間はないため、非購読者よりネット
 利用時間が短いのでしょう)

以上のことから、女性誌を買う人、買わない人で
その消費性向の格差が近年ますます広がっているのでは
ないかと思うのです。


もうひとつ、女性誌自体の変化もあります。

30年にわたって女性誌を研究している、
日本大学教授、仲川秀樹氏によれば、

“70年代から80年代にかけては、女性誌はファッションの
 参考書のようあものでした。読者は女性誌が提案する
 世界観に憧れを抱き、そのスタイルを日々のコーディネイト
 の参考にしていました。”

(中略)

“しかし、95年以降、雑誌が細かく分化し、それぞれが独自の
 スタイルを提案するようになっていきます。すると、読者は
 自分の趣向と位置する雑誌に登場するモデルを理想として、
 彼女たちが身につけている洋服を店頭で指名買いすることも
 増えました。”

“女性誌が提案するファッションがよりリアルになったことで、
 雑誌の講読と商品の購入がより直接的につながったといえます。”

実際、女性誌に限りませんが、
紙媒体がある種、「通販カタログ」化する傾向が見えていますね。

ですから、女性誌は、ますます「消費する気のある人」の
ためのメディアになっているわけです。

前述したように、最終的には自社製品を買ってもらいたい
広告主たる企業にとっては大変効率が良いメディアであると
言えるのではないでしょうか。


とはいえ、現実には女性誌の多くは、
広告収益の持続な低下に苦しんでいます。

この不振の原因は、ひとつには
ご紹介した調査のような形で女性誌の媒体価値を
明確に示せてこなかったことがあります。

もう一つは、広告主・広告会社としては、
さまざまな媒体の特性を比較検討して
メディアミックス、ビークルミックスを行ないたい
にも関わらず、個別媒体間の相対比較(実売部数とか
だけでなく、今回のような定性寄りのデータも含めた)
ができないことがあります。

実は、媒体側(出版社)としては、
こうした相対比較が行なわれることに対して
躊躇しているというか、抵抗があるのです。

「(うちはうち)他と比べられたくない」
という意識がある。

しかし、そのことが結局、
自分たちの首を絞ることにつながっているのです。


ファッションのネット販売の雄、「ZOZOTOWN」が
女性に大人気となり、急成長している背景には、
多様なファッションブランドの仕様や写真をそのまま
利用するのではなく、ZOZOTOWN独自の基準に基づいて、
データを整備し、横串で「比較検討」できるようにして
いる点にあることを、女性誌業界の人たちも学ぶべき
かもしれません。


本文中でご紹介した調査結果は、
エムズコミュニケイト、大日本印刷(DNP)、
主婦の友社が行なった共同調査に基づきます。
http://www.emscom.co.jp/media_detail_63.html

●エムズコミュニケイト
http://www.emscom.co.jp/index.html

日大教授、仲川秀樹氏のコメントの出所:
「研究室へようこそ」(宣伝会議2011.2.15)

投稿者 松尾 順 : 14:16 | コメント (0) | トラックバック

「エクスペディア」にクマのキャラクターがいるわけ

このところ、世界最大のオンライン旅行会社、

「エクスペディアジャパン」Expedia.co.jp
http://www.expedia.co.jp/

の広告が目立ちます。
日経新聞でも15段全面広告とか打ってるし。


さて、最初に目を引くのはやはりなんといっても、
あのクマさんですね。

彼(彼女?)は、

「エクスベア(Exbear)」

という名前らしいですが、
昨年(2010年)リニューアルが行なわれた際に
新たに登場したキャラクターです。

彼(いちおうオスとしておきます)は

“かしこく、めんどくさがりや”

な性格なので、便利なエクスペディアを使う、
という設定になっています。


実は、海外本サイトに、エクスベアくんはいません。
日本だけの独自キャラクターなのです。

そもそも、リニューアルされた新サイトのデザイン自体、
海外の本サイト、Expedia.comと最低限のトーン&マナーは
合わせてありますが、日本人向けの大きなカスタマイズが
行なわれているのです。

先日の「グローバルWebサイト構築上の問題・課題点」
でも書きましたが、日本人は色彩豊かで賑やかなデザイン
が好きです。

しかし、エクスペディアジャパンが2006年に日本に進出、
最初のWebサイトをリリースした時、ほぼ海外本サイトを
踏襲したデザインだったそうです。

本サイト(Expedia.com)のデザインの基本方向は、

「スタイリッシュ、クールかつシンプル」

というもので欧米人好み。

日本人が見る印象としてはちょっとそっけない感じ。

そこで、昨年に実施したサイトリニューアルでは、
日本人の嗜好を研究し、現在のような比較的カラフル
で楽しげなデザインに変更されたのです。
(純粋な日本のサイトに比べると、それでもまだまだ
 おとなしめですよね・・・)


海外本サイトとエクスペディアジャパンのサイト、
ちょっと比較してみてください!

Expedia.co.jp
http://www.expedia.co.jp/
Expedia.com
http://www.expedia.com/

さらに、クマのキャラクターも登場させたのは、
日本人はこうした可愛らしい動物系のキャラクター
がとりわけ好きだからです。

エクスベアがいることで、
日本人はエクスペディアにより親しみを持ってもらえる、
そう考えての起用だったようです。

もちろん、欧米でもキャラクターが採用されている
サイトがありますが、どちらかというと大人っぽく、
かわいげのないものが多い。

なぜなら、かわいすぎるキャラクターを登場させてしまうと、
子供向けというイメージを与えてしまうからなんですね。
(元々、子供向けならOKですが)

ですから、本サイト、Expedia.comに、
エクスベアくんが出演することはまずないでしょうね。


*以上は、エクスペディアの日本ローカライズを担当
 しているBrandon K. Hill氏の取材記事を参考に書きました。
 (出所:Web Site Expert #34)


「グローバルWebサイト構築上の問題・課題点」

投稿者 松尾 順 : 09:01 | コメント (0) | トラックバック

瞳孔と表情で読む好意度

以前から、心理学の実験などで、

「人は興味のあるものを見ると瞳孔が拡大する」

ということがわかっていました。

好みの男性を見ている女性の瞳が、
キラキラと輝いて見えるのは瞳孔が物理的に
拡大しているからなんですよ~

さて、昨日の日経新聞(2011/02/20)の記事によれば、
従来、測定が困難だった「瞳孔の拡大度合い」を
正確に測定できる装置が開発されたようです。

開発したのは、特殊映像を手がける
「ナックイメージテクノロジー」と、五感の研究を
行なっている「夏目総合研究所」の研究チームです。


この装置の面白いところは、
瞳孔の拡大度合いだけでなく、目、眉、口元など
顔の12カ所の動きをカメラで捉え、注視している
対象物への「好意度・非好意度」を測定できる点。

瞳孔は、好きなものだけでなく、
危険なものや、怖いもの、嫌いなものなど
を見た時も拡大します。

しっかり目を見開いて、
対象の動きを追い、ヤバイと感じたら、
すぐに逃げたりできるように。


ですから、瞳孔の拡大度合いと同時に、
顔の表情が、

・緩んでいるのか
・険しくなっているのか

を測定する必要があるというわけです。

例えば、お笑い番組が好きな人にビデオを見せて、
好きなタレントが出てくると、瞳孔が開くと共に、
表情が緩みました。(つまり微笑んだということでしょう)

一方、嫌いなものを見ると、
瞳孔は広がるけれど、表情は険しくなる。

ですから、瞳孔拡大度合いと表情の変化の両方を
把握することによって、人が見ているものに対する

「好意度・非好意度」

が直接聴かなくてもわかるというわけ。

研究チームはさらに踏み込んで、

・喜び
・悲しみ
・驚き
・恐れ
・怒り
・嫌悪

の6つの感情に分けて判定できる手法を
開発中とのこと。CMやパッケージ(包装デザイン)
に対する評価手法として将来の実用化が楽しみです。

「fMRI」を活用するニューロマーケティングほど
大掛かりにならなくて済みそうですし。

投稿者 松尾 順 : 13:11 | コメント (0) | トラックバック

ソーシャルネットワークと共感力

女性の高い共感力は、近代よりもはるかに長く続いた
原始・狩猟採集時代に培われたと言われています。

男性が狩りに行っている間、女性たちは集落に残り、
近くの木の実を拾ったり、家事・育児をやったりといった
仕事を協力しあってやっていました。

こうした毎日では、女性同士は極めて密接な関係性が
あり、濃密なコミュニケーションが要求されるため、
相手の表情、言葉遣い、態度などから相手の気持ちを
的確に推測する力=共感力が高まったのです。

ちなみに、共感力に加え、原始時代の生活が影響している
と考えられ、今も根強く見られる女性固有の心理としては
以下のようなものがあります。

・つながっていたい
・ステイタスの差を最小限にしたい
・感情や弱みをみせる
・話すことで他者とつながる
・他者を助けることで自分の力を感じる
・協力のほうが楽しい
 
(出所:『女性のこころをつかむマーケティング』)

さて、女性の社会進出、すなわち、男性文化が根強い
企業で、女性が男性に伍していこうとする中で、女性の
共感性が低下していく可能性があるでしょう。
なぜなら、企業社会では、女性が本来好まない、

「競争」的発想をどうしても意識しなければならず、
共感性が高すぎると、競争を回避してしまいたく
なってしまうからです。

しかし、一方で、ソーシャルネットワークの浸透によって、
女性、そして男性の全般的な共感力を高めることに
つながる可能性があります。

ソーシャルネットワークは、そこでうまくやっていくためには
高い共感力を必要とします。お互いに認め合う、相手の気持
ちをわかりあうということができないと孤立してしまう。

孤立するのであれば、ソーシャルネットワークに所属している
意味がありません。

しかも、抽象性の高い「言語」主体のコミュニケーションから
相手の心理を的確に読まなければならない。これは相当負荷
の高い共感力養成トレーニングになるのです。
(ですから、すっかり疲れて果ててしまったり、十分な共感力が
 身に付かず、ソーシャルネットワークから離脱してしまう人も
出てきます)

というわけで、全般的に言えば、ソーシャルネットワークの浸透
により、私たちはますます高度な「共感社会」に向かっていると
言えるのではないでしょうか。

投稿者 松尾 順 : 17:09 | コメント (0) | トラックバック

不愉快すぎるエレベーター

最近オフィスを移転されたクライアントのビルは、
エレベーターのドアがガラス張りになってます。

つまり「シースルー」なんですけど、
これ、なんともバツが悪い状況を生み出すのです。

それは何かというと、
先方での打ち合わせが終わると、
クライアントのご担当がエレベーターの
ところまでお見送りに来てくれるわけですよ。

そして、「ありがとうございました」などと
言いながら、お互い、エレベータのドアが閉まる
タイミングで頭を下げる。

そこまではいい。

で、頭を上げると、ガラス越しにまた相手と
目があってしまう。その時、どんな表情をすれば
いいのかわからない(笑)

なんとなく恥ずかしげに片手を軽くあげたりして。

つまり、オフィスビルで、エレベーターをシースルーの
ガラス張りにしてしまうのは、ちょっと落ち着かない感情
を生み出しやすいので、あまり好ましくないということが
わかりますね。


次に、東京駅・丸ビルのエレベーター。
(ショッピング・レストラーンゾーンのもの)

こちらは、ちょっとイライラさせられる設計に
なっています。

何かというと、
最近のエレベーターでは大抵ついている、

「カゴが今どのあたりを動いているか」

という表示がないのです。

ですから、エレベーターの前にいても、
いつ自分の階にカゴがくるのかまったく予測できない。


最近、都内のバス停では、次のバスが今どこの停留所
あたりにいて、到着までおよそあと何分かという表示が
ありますよね。

あんな機能があると、10分、15分待たなければならない
としても、心理的にはいらいらせずに待てます。


ところが、丸ビルのエレベーターは、
実際の待ち時間はわずか数秒、数十秒かもしれないけど、
「いつくるかわからない」という状況が軽いイライラを
生み出してしまうのです。

実際、私だけでなく、エレベーターを待ちきれずに、
すぐ後ろにあるエスカレーターに乗る人をよく目撃します。

ひょっとして、エスカレーターを使わせて、
店内を回遊させるための意図的な設計ではないかと
思ってしまうほどです(笑)


昨日のメルマガ&ブログで、日々の生活の中で、
自分の心理の微妙な変化を観察し、その理由・原因を
考えてみる「内観法」のトレーニングをやりましょうと
ご提案しましたが、今日はその具体例を示してみました。

他にも「不愉快すぎるエレベーター」って、
あなたの近くにありませんか?


余談ですが、次のようなクイズというか、
思考訓練があります。


あるホテルでは、エレベーターが一基しかなく、
朝のチェックアウト時にエレベーターが混雑するため、
「なかなかエレベーターが来ない」、といった宿泊客
からの苦情が多いという問題がありました。

施設の制約上、エレベーターは増設できません。

宿泊客のチェックアウトが集中する状況を
変えるのも困難です。

このホテルの苦情を減らす効果的な解決策を考えよ。

というもの。わかりますか?

回答は、

「エレベーターの前に鏡を設置する」

です。鏡が置いてあれば、待つ間に自分の身だしなみを
チェックできるので、待つのが苦にならないというわけです。

投稿者 松尾 順 : 10:47 | コメント (0) | トラックバック

「人の心理を的確に読む力」を高める一番の方法

「人の心理を的確に読む力」とは、要するに、

「マインドリーディング

のことなんですが、今日は、
あえて説明的な表現にしてみました。

*ただし、「マインドリーディング」は、
 製品やサービスの「消費行動」に関わる心理を
 主な対象にしています。


それで、「人の心理を的確に読む力」を高める
一番の方法は、結論から言うと、

「自分自身の心の動きを日々、客観的に観察すること」

です。

私たちは一日の中で、うきうきしたり、
気分が滅入ったり、イライラしたり、不機嫌になったり
と、常に気持ちが揺らいでいますよね。

その時、そうした感情にどっぷり浸ったままで
いるんじゃなくて、

「自分はなぜ、今こんな気持ちになってるんだろう?
 きっかけはなんだろう?」

とちょっと引いて、今の気持ち・気分の理由・原因
を考えてみるのです。

「上司に叱られたからガックシ」
あるいは、

「彼氏・彼女からメールもらってウキウキ」

みたいに理由・原因がはっきりしている場合も
ありますが、はっきりしないこともあります。


例えば、ある店ではなんとなく居心地がいいと
思っていて、よく考えてみたら、大好きな曲が
BGMでいつも流れているから、といったこと
に気付くことがあります。

あるいは、なんとなく心が落ち着くのは、
間接照明が使われていて、明暗のコントラスト
がほどよいから(だろう)という理由を発見する
こともあるでしょう。

上記のような理由・原因が本当に正しいかどうかは
それほど重要ではありません。大事なのは、
「なぜか?」と考えて、なんらかの仮説を導き出し
てみることです。

私たちは、普段のおだやかな感情・気持ちの変化に
ただ流されているだけで、いちいちその理由を考える
ことはまずしませんよね。
(めんどくさいし、疲れちゃうからですね)

でも、消費者心理をより的確に理解できるように
なりたいマーケターは、がんばって自分を観察対象
にしなければなりません(笑)


自分自身(の心理)を観察することは、

「内観法」

と呼びますが、お金も時間もほとんどかかららず、
いつでもどこでもできる、このトレーニング方法に
ぜひ取り組んでみてください。

そして、内観法によって導き出した仮説がどの程度
正しいかを検証するために、さまざまな心理学説を
学びましょう。

先日ご紹介した、「カチッ・サー理論」などは、
まさに、仮説導出に活用できるツールなのです。

*カチッ・サー理論とは?

投稿者 松尾 順 : 17:31 | コメント (0) | トラックバック

フェイスブックの浸透を加速させるのは「疎外感回避」

このところ、昔の職場の元同僚たちと、
数年ぶりにフェイスブック(以下「FB」)上で
芋づる式に‘再会’し、

「同窓会でもやりましょう!」

という話が進んでいます。

皆さんの間でもこんなこと起きてませんか?

FBのメッセージ機能、イベント機能を使って、
日時・場所を簡単にすり合わせできるので便利ですね。


さて私は、FBは日本でも急速に浸透すると確信していますが、
それは、たくさんの人とつながることができて、また、
便利な機能が使えるといったポジティブな理由からだけでは
ないと感じています。


FBをやっていないと、FB上だけでなく、
リアルな状況でも自分だけ仲間はずれにされるかもしれない。

そんなネガティブな「疎外感」を回避するために、
(意識的にも無意識的にも)皆始めざるを得ないと
感じています。

こんな疎外感は従来のSNSでは、
たぶんほとんど感じることがないですよね。

‘君、mixiやってないの?’

‘君、FBやってないの?’

では重みが違う。

基本的に匿名ベースであり、ヴァーチャルな付き合いが
多い従来のSNSでは、リアルとある意味分離している
おかげで、リアルな疎外感はそれほどありません。

自分だけ、mixiやってなくても平気なのです。


ところが、実名制のFBはリアルの延長であるため、
FBでの存在感がリアルな存在感とダイレクトに
結びついてしまう。


実際、冒頭に述べた同窓会も、
FB上にいない人には声をかけていません。

別の方法で連絡取れないこともないのですが、

「めんどくさいし、まあいいか」

となってしまうわけですね。


したがって、逆の立場、つまりFBやってない人に
とっては、知人・友人がなだれをうってFBを始めたら、
疎外されないために自分もやるしかない。

いわゆる「ネットワーク外部性」による利便性向上
に加えて、「疎外感回避」のためにFBの利用者は
どんどん増えていくことになるというわけです。


もちろん、その影には「FB弱者」を生み出すという
大きな負の側面がありますが。

「FB弱者」についての議論はまた改めて。

投稿者 松尾 順 : 13:42 | コメント (4) | トラックバック

知的かつ芸術的活動

現在取り組んでいる、

「英語で学ぶベーシック・マーケティングリサーチ」(2月27日)

の講義資料づくりの参考本のひとつとして、

『Marketing Research Kit for Dummies』

を採用しています。


本書によれば、

“マーケティングリサーチは、知的かつ、芸術的活動である。”
 Marketing research is both an itellectual and Artistic activity.

とのこと。

マーケティングリサーチが、

「知的(Intellectual)」

であるのは当然として、

「芸術的(Artistic)」

でもある、と書いてある日本のリサーチ本は、
私の知る限りありません。


なぜ、知的かつ芸術的活動なのでしょうか?

前掲書では、次のように説明されています。
(英文は省略します)

“マーケティング上の問題を解くためには、
 必要な情報を取得し、それを適切に解釈しなければ
 ならない”

“それには、創造性、芸術性、そして注意深い思考が
 必要とされるのだ”

マーケティングリサーチにおいて、
とりわけ「創造性」や「芸術性」が必要となるのは、
調査結果の「解釈」の段階においてです。

もちろん、どんなデータが必要なのか、そして、
そうしたデータを正確に取得するために、どんな調査方法が
適切かといった調査の「企画」段階においても、深い知識と
経験に基づく創造性や芸術性が役に立ちます。


しかし、分析結果の「解釈」ほど、
創造性、芸術性が必要とされる段階はありません。

なぜなら、ひとつの結果から多様な解釈ができるため、
ある意味曖昧で、解釈者の「主観」に大きく左右されるからです。

非常に単純な例ですが、
ある製品の認知率が35%という結果に対して、

「35%‘も’認知率があるのか」

「35%‘しか’認知率がないのか」

という真逆の2つの解釈が可能ですよね。

この場合に、‘’なのか、‘しか’のどちらが
適切な解釈なのかは、データそのものでは判断できず、
市場環境や消費者意識など、データ以前の
「環境・背景情報」や「歴史」、さらには
分析者の「経験」など基づいて行なわれるものなのです。


ですから、論理的な推論に基づいて明快な「解」を
求めることのできる科学の枠を超え、芸術の領域に
踏み込まざるを得ないことがおわかりでしょう。

まあ、マーケティングそのもの、経営そのものが、
科学であり芸術です。

科学、芸術の両輪をうまく回す必要がある。

これは、人、人で構成されている社会を相手に
している以上、心得ておくべき要諦と言えます。


以上は、昨晩のFBページ・ノートに
書いた内容をもとに再考してみました。

*Marketinglishページ・ノート:
 Marketing Researchはどんな活動か?

投稿者 松尾 順 : 12:20 | コメント (0) | トラックバック

探索的調査と検証的調査

「探索的調査」は、
新製品開発や既存商品の改善などを目的として、
消費者の消費実態やニーズを探るために行なう調査。

一方、「検証的調査」は、
新商品やリニューアル商品が上市されてから一定期間後、
販売状況や実際の購入者層などを把握し、新たな打ち手
(施策)を立案するために行なう調査です。


私はマーケティング・リサーチャーとして、
「探索的調査」、「検証的調査」のどちらもやらせて
いただく機会があります。

一般的に申し上げて、「探索的調査」は積極的に
行なうけれど、「検証的調査」は重要性が低く、
予算もあまり割かない企業さんが多いようです。

まあ、「検証的調査」は振り返り作業です。

「予習」には力を入れても、
「復習」にはあまり熱心になれない気持ちは
わかりますが・・・


しかし、「検証的調査」も、
実際、とても価値のある業務であることが
わかってもらえる事例がありました。
(「西川英彦の目」、日経産業新聞、2011/02/10)


ハウスウェルネスフーズが
昨年(2010年)5月に発売した新製品、

‘C1000 ビタミンレモンコラーゲン’

は、美肌を意識する女性の取り込みに成功。

「美容リフレッシュ飲料」と呼ばれる
新市場を開拓しました。


上記商品は、同社ロングセラー

‘C1000 ビタミンレモン’

のブランド拡張ですね。

同社は、近年販売が微減傾向にあった
既存商品‘ビタミンレモン’の状況を打破するため
探索的調査を行いました。

その結果、健康飲料市場において、

「女性美容」

の機能が重視されていることが
わかったのです。

そして、この機能を発揮できる成分として、
「ビタミンC」、そして次に「コラーゲン」が
あることから、コラーゲンを用いた

‘C1000 ビタミンレモンコラーゲン’

が開発されたというわけです。


興味深いのは、
発売後の「検証的調査」によって、
女性だけでなく、美肌を意識する男性層に
対しても、同製品に対する一定の需要が
生まれていることがわかった点です。

男性も以前と違って、若年層中心に
随分とおしゃれになり、「見た目」を
気にするようになってきています。

また、中年男性でも、
年を取ると肌のかさつきが気になりだし、
ほってはおけない気持ちになるとういうのは、
私自身が実感しています(笑)


さて、検証的調査によって、
ビタミンコラーゲンが男性にもよく売れていることが
わかったわけですが、購入される理由は、実は
容器の「色」にあったのです。

従来のコラーゲン飲料の容器は、
赤やピンク主体の色合いにしてあり、
明らかに女性だけを意識したものでした。

赤やピンクの飲料は、
人に見られるのがちょっと恥ずかしくて
男性は買いにくいもの。

しかし、ビタミンコラーゲンは、
薄い緑色をしています。

ですから、ビタミンコラーゲンなら
男性も‘恥ずかしくなく’購入できる。

これが男性にも売れている理由だったのです。


ひょっとしたら、「薄い緑」という寒色系の
容器にしたことで、主対象の女性層には、
ビタミンコラーゲンが多少とも敬遠されている
可能性もあるかも知れません。

でも、そもそも好調に売れ続けているわけですから、
容器の色はたいした障害にはなっていないことが
明らかです。

そして、検証的調査をしっかりやることによって、
今後、男性層も視野に入れた製品を開発するなら、
赤やピンクといった暖色ではなく、
寒色系を採用することが有効という知見が
得られたことは大きい。


企業の皆さん、ぜひ「探索的調査」だけでなく、
「検証的調査」にも力を入れてくださいね!


*ハウスウエルネスフーズ商品ラインアップ

投稿者 松尾 順 : 12:53 | コメント (0) | トラックバック

グローバルWebサイト構築上の課題・問題点

‘Google’のトップページに初めてアクセスした時、

「なんとそっけない画面なんだ」

といった印象を持ちませんでしたか?

‘Yahoo!Japan’の賑やかで楽しげなトップページに
慣れていた日本人にとって、Googleの「シンプルさ」
は驚愕ものでしたよね。

もちろん、当初は「検索機能」だけに絞り込んだ
Googleの使い勝手の良さ、検索結果の精度の高さで
たちまち、ビジネスユーザー中心に浸透していきましたが。


さて、日本企業のグローバル展開に当たって、
Webサイトも当然ながらグローバル対応を充実させていく
必要がありますが、ここで課題となるのが、
日本人と外国人の認識の違いです。

特に、パッと見のデザインに対する好みには、
日本人と外国人(とりわけ欧米人)と大きな差が
あるのです。

端的に言えば、日本人は色使いが派手で賑やかな
デザインを好みますが、外国人は、シンプルな色使い
のデザインを好む。

問題は、外国人の好みをわかっているデザイナーが提案した
シンプルなデザインに対し、日本人の担当者が、

「こんな平板なデザインはつまらない」

などと、自分の好みで判断し、デザインを
変えさせるといったことがしばしばおきることです。

デザイナーとしては、

「いや、あなたが見るサイトじゃないでしょ?」

と言いたいところでしょうけど、
結局押し切られてしまって、外国人にとっては
あまり好きになれないWebサイトがリリースされて
しまうことがあるようです。


日本人の場合、多様な民族、宗教、文化、価値観に
普段から接する機会が少ないため、自分自身の基準で
判断してしまいがちなんでしょうね。

これから海外向けWebサイトの立ち上げ、

もしくはリニューアルを担当される日本の担当の方は
ぜひ、外国人の嗜好がわかってるデザイナーさんの感性
を信じて任せてあげてください。

投稿者 松尾 順 : 09:25 | コメント (0) | トラックバック

「カチッ・サー理論」で、でんかのヤマグチを読み解く

マスコミでも頻繁に取り上げられる
驚異の街の電器屋さん、

「でんかのヤマグチ」

のことは、私のメルマガ&ブログでも
何度か紹介していますが。


同店の最新の状況は、
販促会議(2011年2月号)の記事で
把握することができます。

町田市郊外にある、
売場面積500平方メートルの同店の年商は
12億8800万円(2010年3月期)。

従業員数は42人(うちパート8人)です。

粗利益率はなんと38.9%!
年々粗利益率が高まっているようです。

これだけの粗利を取るわけですから、
店頭販売価格は、近隣の大手家電量販店よりも
数万円高い。カカクコムの最安値と比較したら、
2倍近くになることもあるようです。


また、同店はパナソニック系列店として、

「ハイビジョンテレビを一番売る店」

なのだそうです。


さて、同社が成功するきっかけとなった
最初の要因は、

「お客がうちを選ぶのではなく、
 うちがお客を選ぶ」

という戦略転換にあります。

同店のきめ細かなサービスを喜び、
繰り返し買ってくれる顧客にターゲット
を絞り込んでいるのです。

具体的には過去5年間、
商品を購入していない顧客を削除しており、
現在の顧客リストの数は12,000人です。

以前の記事によれば、
戦略転換前の顧客リスト数は3万4千人
だったそうですから、現在は3分の1以下まで
減らしたわけですね。


では、でんかのヤマグチが成功し続けている
最大の要因と考えられる点を、
「カチッ・サー理論」で読み解いてみましょう。

「カチッ・サー理論」は、お客さんが
自然に財布の紐をゆるめてくれるような
心理的スイッチをまとめたものです。
(詳細は末尾の記事URL参照)


実は、同店が活用している「カチッ・サー理論」は、
徹底した「返報性」だと考えられるのです。

「返報性」とは受けた恩義に対しては、
将来報いなければならないという心理のこと。

まず、同店では土・日にお客さんを
呼んで旬の特産品を無料プレゼントしています。

例えば、11月は「だんしゃく祭り」。

男爵いも、たまねぎそれぞれ2キロを
お客さんに持ち帰ってもらいます。

お店では、いもをゆで、塩、バター、キムチ
などを用意して、その場で食べてもらえるように
設営してあります。

過去32年間にわたって続けているこのイベント。
月5回開催して、1回あたり400世帯が来店するそうです。


また、同店は、
無料でモノを提供するだけではありません。

本業とは関係のないこと、また直接売上につながらない
ことでも、お客さんが困っていること、望んでいること
なら、営業担当者が喜んでやってあげる。

同店では、こうしたサービスを

「裏サービス」

と呼んでいます。

ちなみに、先日ご紹介した電器屋チェーン、
「セブンプラザ」では、同様のサービスを
「めんどうみ活動」と呼んでいますね。

同店では、電球の取り替えなどは当然として、
犬の散歩とか、留守番、そして、最近、包丁を研いで
あげたら好評だったとのことで、昨年10月から、
営業担当者は全員、「包丁研ぎ」を持ち歩いている
そうです。


こうして、とことんお客様のために尽くす。

すなわち、商品を売る前に、
たっぷりの「恩」をお客さんに売っているわけです。

結果として、お客さんとの絆が深まり、
同店の商品を喜んで買ってくれる。


返報性って、考えてみれば、
昔から言われてきた「先義後利」なんですよね。

ただ、利益をまず前提として考える企業では、
「まずお客さんに尽くす」ということがなかなか
実行に移せません。

大手企業では規模的に、また人的サービスの点から
みてもまず無理です。

しかし、顧客を思い切って絞り込める
中小規模なら対応可能です。

中小企業の生き残りのカギは、
カチッ・サー理論の中でもとりわけ

「返報性」

を重視することなのかもしれません。


『街の電器屋さんの復活』

『‘めんどうみ活動’に見る関係づくりの目的化』

『カチッ・サー理論とは?』

投稿者 松尾 順 : 16:51 | コメント (0) | トラックバック

ブランデッド・コンテンツ

今日も、

『教えて!カンヌ国際広告祭』(佐藤達郎著、アスキー新書)

から、興味深いキーワードをご紹介したいと思います。

「ブランデッド・コンテンツ」は、佐藤氏によれば、

“広告の形はしていないけれど、
 広告としての機能=ブランドのメッセージを
 ドライブする機能を果たしている一連の活動”

のことを指します。

従来の広告クリエイティブが、

「生活者にいかにメッセージを伝えるか」

という視点が根底にあったのに対し、
ブランデッド・コンテンツは、
コンテンツとしての魅力があることが最重要であり、

「商品が出てくるべき」
「商品は大事に扱う」
「商品を誉める」
「ブランドメッセージが明示的にわかる」
「広告としてわかりやすい」

といった従来の広告クリエイティブの原則に
捉われません。


佐藤氏が、ブランデッド・コンテンツの例として
挙げるのが、カンヌ・フィルム部門金賞のテレビCM

「ボールズ(BALLS)」

です。ソニーUKの液晶テレビ、ブラビアのCMで、
たくさんの色とりどりのスーパーボールが街の坂を
転がり落ちていくシーンが映し出されるもの。
(ちなみに、投下されたスーパーボールの数は25万個、
撮影場所はサンフランシスコ)

これは、本当にコンテンツとしてすばらしいですね。
Webサイトではメイキングなども閲覧できますし。


ブランデッド・コンテンツでは、

「メッセージが明示的に伝わらない=広告らしくない」
ことがプラスのキーワードになる、
と佐藤氏は考えています。

これは従来、

「どのブランドが、何をメッセージしているのか」
を明確に伝えるべきと考えられてきた広告作法と
真逆です。


ブランデッドコンテンツの登場は、
日々、洪水のように広告メッセージが押し寄せる中、
生活者が、「広告っぽいもの」をあからさまに忌避する
状況を踏まえ、まず、コンテンツとしての魅力を高め、
視聴者の共感を得ることへと、広告のあり方が大きく
シフトチェンジしつつあることを物語っているのでしょう。

『教えて!カンヌ国際広告祭』(佐藤達郎著、アスキー新書)

投稿者 松尾 順 : 13:40 | コメント (0) | トラックバック

シンプルメッセージ&リッチコンテンツの法則

先週末に読んだ、

『教えて!カンヌ国際広告祭』(佐藤達郎著、アスキー新書)

は久しぶりにワクワクするマーケティング本でした。

これからのマーケティングコミュニケーションの
方向性について教えてくれる、示唆に富む内容です。

マーケターは、必読中の必読ですよ。


本書には、メルマガのネタとしてもいろいろと
使えるキーワードがありましたが、そのうち、
まずご紹介したいのが以下の法則です。

「シンプルメッセージ&リッチコンテンツの法則」

これは、今の時代、本当に効果率的にブランドの
コミュニケーション行なうためには、

・メッセージはシンプルに

しかし、そのメッセージを伝えるコンテンツは、

・できるだけリッチ(豊穣)にすべき

という法則です。


なお、上記の‘リッチ’とは、いわゆる動画などを
駆使した「リッチコンテンツ」の意味ではありません。

例えばTVコマーシャルなら、設定やストーリー展開に
工夫を凝らすということです。
(したがって、謎解き的な要素や複雑になることが
 多くなります。)

カンヌの受賞作を見ると、その多くは、
メッセージはシンプルでありながら表現はリッチで、
視聴者をおおいに楽しませる(エンタテイン)もの
になっています。


前掲書の著者、佐藤氏は、
日本で広告クリエイティブについて

「シンプルさ」
が語られる時、

・メッセージがシンプル
・クリエイティブがシンプル

が混同されて語られていることが多いように思う、
と述べています。

「メッセージがシンプル」であることは当然ですが、
表現がシンプルでありすぎると、わかりやすくは
なるものの、面白みに欠け、印象の弱いものになる
リスクがあります。


日本の広告の場合、
佐藤氏も、また私も感じていますが、

「あれもこれも言いたい」

というクライアントの意向を汲みすぎてしまい、
メッセージが複雑になる傾向があります。

一方で、メッセージが複雑になっていることもあって、
表現はできるだけシンプルなもの、わかりやすいもの
を求められる。

結果として、「消費者がどう受け取るか」ではなく、
「自社がなにを伝えたいか」しか考えない、
独りよがりで平板なコミュニケーションとなってしまい、
消費者の関心・興味を引くことができずに終わって
しまいがちです。


佐藤氏は次のように書いています。

“表現はすべて、「ひとつの言いたいこと=シンプル・
 メッセージ」を効果的に伝えるために、作り上げられて
 いく。受けての注意を喚起し、メッセージが受け手の
 気持ちに届くように、表現は「絞り込まれたメッセージ」
 に向かって、進んでいく。”

“つまり、メッセージとは、クリエイティブの「的」と
 言い換えることもできる。的が複数あっては、あるいは
 的がぼんやりしていては、力のある矢を射ることはできない”

本書でも紹介されている、
カンヌ金賞受賞のタイのコマーシャルは、
まさに、メッセージはシンプルだけど
表現は大変リッチな例です。

このコマーシャル、すなわちUnif Green Teaの
「ワーム(Worms)」のメッセージは、

「茶の木の先端にある最上の新芽だけを
 使用したおいしい日本茶」

というだけのシンプルなもの。
しかし、表現はこれでもかというリッチさ。

私も大好きなコマーシャル。
ぜひYoutubeでご覧になってみてください↓
Japanese/Thai tea commercial with catarpillars

『教えて!カンヌ国際広告祭』(佐藤達郎著、アスキー新書)

投稿者 松尾 順 : 12:11 | コメント (0) | トラックバック

カチッ・サー理論:自動車販売会社の取り組み事例

「カチッ・サー理論」とは、カセットレコーダーの
スイッチを「カチッ」っと入れると「サー」とテープから
音が流れ出すように、外部からの働きかけに対して、
人が無意識に、つまり‘自動的’に反応してしまうパターン
(=心理的スイッチ)を理論化したものものです。

昨日ご紹介したように、
ビューコミュニケーション(NPO法人)では、
「カチッ・サー理論」に基づく心理的スイッチ
(同法人では、「対人関係心理」と呼んでいます)と
して以下の10項目があるとしています。

1 返報性
2 コミットメント
3 容姿
4 類似性
5 お世辞
6 協同性
7 連合性
8 社会的証明
9 権威性
10 希少性

それぞれの解説は昨日のブログをご覧ください↓
http://www.mindreading.jp/blog/archives/201102/2011-02-03T0944.html

今日は「カチッ・サー理論」を業務の現場に
応用している自動車販売会社(セールスパーソン対象)
の取り組み事例をご紹介します。

ただし、取り組み始めてからまだ数ヶ月が
経過したばかりであり、明確な成果報告が
行なわれたわけではない点をあらかじめ
おことわりしておきます。


神奈川県の大手自動車販売会社、K社には、
いわゆる「セールスパーソン」が約500人います。

K社では、このうち30人のセルースパーソンを選抜、
彼らの顧客各30人に対してアンケート調査を実施し、
自分の担当セールスパーソンについての評価を
してもらいました。(回収サンプル数合計900件)

評価項目は、上記心理スイッチの10項目です。
アンケートで得られた心理スイッチの評価点と、
各セールスパーソンの販売台数との関係性を
分析したのです。


その結果、セールスパーソンの販売力と
最も正の相関が高かった上位3項目は以下でした。

1 類似性
2 多数性(社会的証明のこと)
3 お世辞

「正の相関が高い」というのは、
上記の項目に対する評価が高いセールスパーソン
ほど、車をたくさん売っているということです。


第1位の類似性というのは、この場合、
顧客とセールスパーソンになんらかの共通点が
あることです。生まれた場所や出身学校が同じ
だとか、どちらもサッカーや野球が好きだとか。

おそらく、優れたセールスパーソンは、
お客さんとの会話を通じて共通点をたくさん
見出し、それを会話のネタとすることで
好意度を高めているのでしょうね。


第2位の多数性とは、

「今これが一番売れています」

といった他の人の評価を伝えることです。

「他の人も買っているのならきっといいんだろうな」

といった、「多数派の意見・行動」に同調しがちな
人間心理をうまく刺激するのがうまい人ほど、
販売力があるということになります。

そういえば、先日の新聞記事で読んだのですが、
ビックカメラの販売員の方の話によると、
店頭セールスのコツの一つとして、

「最近売れている商品はですね・・・」

と周囲の人にも聴こえるように大きめの声で
説明すると、自分の周りにたくさんの人が
集まってきて、芋づる的にたくさん商品を
売ることができるそうです。

皆、自分以外の人が何を買っているか、
つまり、売れ筋って気になるものですよね。


第3位のお世辞。

多少薄っぺらいお世辞だとしても、
言われた方の気分は悪くないものですよね。

優秀なセールスパーソンは、
上手にお客さんを褒めること、つまり
「持ち上げること」ができる。

そうしてお客さんの気分をよくさせて、
クロージングに持ち込めるということでしょう。


以上の分析結果を読んだ方の中には、

「なんだ、どれも当たり前のことだよね・・・?」

と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、大事なのは、売れるセールスパーソンと
売れないセールパーソンの違いが何かを明確に把握し、
的確な改善施策を打てるようになることなのです。


実のところ、トップセールスの多くは、

「なぜそんなにキミは売れるの?」

と聴かれてもうまく言葉で説明できないのです。

「なぜだか売れちゃうんだよね」

としか言えない人が多い。

従来は、結局「センスの良し悪し」で
片付けられていたことも多かったわけです。

ですから、セールス研修でも、せいぜい礼儀作法や
セールストークのロールプレイをやるだけ。

「カチッ・サー理論」のような、対人関係心理に基づく、
効果的な販売増につながるセールス方法を学ばせること
はほとんどやられてこなかったというのが実情なのです。


さて、話を元に戻しますが、K社では、
調査結果を元に、カチッ・サー理論に基づく
セールス活動のあり方についての研修を開始し、
心理スイッチに関連した販売ノウハウのあぶり出し、
その共有化を図っているところです。

前述したように、まだ成果を検証できるところほど
時間が経過していませんが、大きな期待をかけている
そうです。

というのも、自動車自体で明確な差別化を図ることは
もはや難しく、結局のところ、

「セールスパーソンという人間をまず売ること」

ができなければ、自動車は売れないという
厳しい現実があるからです。

投稿者 松尾 順 : 13:59 | コメント (0) | トラックバック

カチッ・サー理論とは?

昨日(2/2)午後は、
ビューコミュニケーション(NPO法人)が主催する

[ECS研究会 実証実験 成果発表会]

に出席してきました。

同法人は、顧客満足度指標(CSI)をはじめとする
各種評価事業を行なっている団体です。


‘ECS'とは、拡張された顧客満足度の意味です。
(Extended Customer Satisfactionの略称でしょう)

従来のCSの概念ではカバーできない領域を指標化
しようとする試みのようです。


さて、昨日の成果発表会は、

1部:売上の科学
2部:顧客の心をつかむ科学

の2部構成でした。


1部の「売上の科学」は高度な分析方法を用いた
実証研究の話でしたので割愛します。

2部の「顧客の心をつかむ科学」について
簡単にご紹介したいと思います。


顧客の心をつかむ科学は、

『影響力の武器』

で提示された「カチッ・サー理論」が
下敷きとなっています。

これは、スイッチを「カチッ」っと入れると、
「サー」と音が流れるカセットレコーダー
(喩えが古いですけど、まだCDが普及して
ない頃に書かれた本なのです)のように、
外部からの働きかけに対して、人が無意識に、
つまり自動的に反応してしまうことを意味
しています。

そして、このカチッとスイッチを押すことの
できる働きかけの主なものが末尾に示した
10項目です。


実証実験では、この「カチッ・サー理論」を
実務の現場で実際に活用してその効果を
検証することが目的になっています。


今回は、以下の2組織の取り組み事例の
発表が行なわれました。

・自動車販売ディーラー(セールスパーソン)
・病院(看護士)

上記2組織の取り組み内容は、
明日明後日に続編としてご紹介しますね。


今日は、ビューコミュニケーションズが
指標として設定している「カチッ・サー理論」
の10項目がどんなものかを示しておきます。

------------------------------

1 返報性

受けた恩義に対しては、
将来報いなければならないという心理。

最初に無料プレゼントをもらってしまうと、
その代わりになにか買わないと悪いと感じて
しまうようなこと。

2 コミットメント

自分の態度や行動が「一貫していること」
は望ましいとみなす心理。

一度、小さい依頼に「YES」と言ってしまうと、
次の大きな依頼に対しても「YES」と言いたく
なってしまうようなこと(「NO」と言うのは、
一貫性が保てないから)

3 容姿

外見の良さ(「みだしなみ」も含む)
は好感度に大きな影響を与えるという心理。

いわゆる「ハロー効果」が効いています。

4 類似性

自分と出身地や趣味関心事が似ている人に
対して親近感を覚える心理。

5 お世辞

たとえ、真実ではないとしても、
自分を称賛してくれる人を好ましく思う心理

6 協同性

自分の味方になってくれる人、協力してくれる人
を好む心理。

7 連合性

望ましいこと、望ましくないことを
結びつけてとらえる心理。

おいしい食事の時に会った人に
対してはその好ましい思い出とその人が
結びつき、その人に対して好感を持つような
こと。

8 社会的証明

他者がどうしているかに基づいて、
自分の行動を判断してしまう心理。

「これが一番人気ですよ」と言われると、
自分も欲しくなるようなこと。

9 権威性

権威がある人は、自分よりもある分野において
知識があり、その人に従うことが自分にとって
利益になる」ということを知っているから、
無意識に服従してしまう心理。

資格や肩書きが立派な相手をむやみに
信用しがちなのは、この権威性によるもの。

10 希少性

機会を失いかけると、それはより価値が
あるものだと感じてしまう心理。

限定●●個と言われると、
売り切れる前に買わなきゃと、
たいして欲しいものではなくても
感じてしまうようなこと。

----------------------------------

上記10項目は、販売やサービスの現場で多くは、
経験則的に、つまり無意識に適用されており、
優れたセールスパーソン、サービス提供者は、
これらをうまく活用できている人々なのです。

ただ、こうして「形式知」として体系化され、
伝授されることが今までほとんどなかったという
のが現実なんですね。

では、明日は取り組み事例をご紹介します。
なかなか興味深いですよ。

『影響力の武器 第二版 なぜ人は動かされるのか』
(ロバート・B・チャルディーニ著、社会行動研究会訳、誠信書房)


ビューコミュニケーションズ Webサイト
http://www.viewcom.or.jp/index.html

投稿者 松尾 順 : 09:44 | コメント (2) | トラックバック

今の売り手が果たすべき役割は「ステージャー」である!

『経験経済』(1999)の中で、
パイン&ギルモアは、経済システムは
次のように変化していると述べています。

農業経済

産業経済

サービス経済

経験経済

そして、それぞれの経済において、
売り手の役割は以下のように変化しています。

取引業者

メーカー

プロバイダー

ステージャー

農産物が主な商材であった「農業経済」では、
売り手は、自然から収穫されたものを市場で
相対取引する‘取引業者’という役割でした。

モノ(有形物)が主流となった「産業経済」では、
モノを製造する‘メーカー’としての役割がメイン。

サービス(無形財)が主流の「サービス経済」では、
有形物を製造はせず、サービスを提供することが
重要なので、売り手は、‘プロバイダー’と
呼ぶのがふさわしい。

そして「経験経済」では、

思い出に残るような経験

を買い手に提供するための「場=ステージ」を
演出する‘ステージャー’としての役割が
求められています。

経験経済の中で、買い手たる顧客は、
「クライアント」というよりは、
「ゲスト」と呼ぶべき存在になります。


今はまさに、
経験経済の真っ只中にいると言えますね。

例えば、デパートの外商さんは、
富裕層を相手にしているわけですが、
デパートで売っているようなものは
ほとんど持っていて、もはや欲しいものは
ないと言われる。

むしろ、

「今持っているドレスやバッグを身に
 着けていける 機会・場所が欲しいわ」

と外商さんに言うのです。

つまり、何かを売るためには、
まさにそれを活用できる

「ステージ」

も用意してあげないといけないのです。


また、カフェにもっとお客を呼びたければ、
例えば、

「早朝の街のゴミ拾いボランティア活動」

みたいなものとセットで仕掛ける。

ちょっと善いことができるステージを
提供することでカフェへの集客増も実現する。

従来のように、割引クーポンを配って、
直接カフェに呼ぼうとするのもありですが、
以前ほどの効果は期待できなくなってますよね。


これから、あらゆる売り手は、
自分たちの主な役割を「ステージャー」とみなし、
顧客・見込み客に対してどんな素晴らしい

「ステージ」(場・機会)
を提供できるかを
まず念頭に置かなければならないといえます。


『新訳 経験経済』
(B・J・パイン、J・H・ギルモア著、
 岡本慶一、小高尚子訳、ダイヤモンド社)

投稿者 松尾 順 : 10:06 | コメント (0) | トラックバック

お世辞パワー

相手を説得するためには、

・頭で納得してもらう
・心で納得してもらう

の両方が必要です。


まず、「頭で納得してもらう」というのは、
セールスの場面なら、製品の品質や機能の良さや
価格の妥当性を上手に説明して、

「この製品は私のニーズを充足・解決してくれそうだ」

と論理的に理解してもらうこと。

ですから、頭で納得してもらうためには、
豊富で正確な商品知識や具体的なデータを
元にわかりやすく説明できることが肝要ですね。


一方、「心で納得してもらう」というのは、
同じくセールスの場面なら、

「この会社(人)なら大丈夫そう」

と感情的に受容してもらうことです。

つまり、心で納得してもらうためには、
要するに、セールスパーソンに対する、
見込み客の「好意」を高める必要があるのです。


好意を高める方法にはいくつかありますが、
ひとつは「類似点を見つけること」です。

出身地や出身学校、好きな趣味など、
なんらか見込み客と共通点を見つけることが
できれば、一気にお互いの距離感が近づきます。


さて、好意を高める方法として、

「お世辞」

も非常にパワフルであることが
最近の研究で明確になってきたようです。


「お世辞」って、‘根も葉もない’という
形容詞がつくくらいですから、逆に反感を
持たれそうに感じられます。

しかしそうではないのです。


愛知県の大手自動車販売会社では、
セールスマンごとの新車販売台数の成績と
顧客によるセールスマンに対する評価点
との関係を調べてみました。

その結果、さまざまな評価ポイントのうち、
「お世辞がうまいかどうか」が、セールス
パーソンの販売成績に一番大きい影響を
与えていたのです。

つまり、お世辞のうまいセールスパーソン
ほどたくさん売っていたというわけです。

おそらく、お世辞よって、
セールスパーソンに対する好意度が
アップしたからでしょうね。

同販社では、セールス研修メニューに、

「お世辞講座」

を早速組み込んだとのこと。


やみくもにお世辞を言えばいいわけでは
もちろんないでしょうし、販社の置かれた状況
などによって、常にお世辞が最も有効ということ
ではないようですが、

「お世辞は好感度アップにつながり、
 結果的に、セールス増に効果がある」

というのはある意味、
目からウロコ的発見ですよね。


まあ、いち消費者として考えてみても、
多少上滑りなお辞儀だとわかっていても、
それなりに気分は良くなるもの。

気分よくさせてくれる人だと、
思わず財布の紐もゆるくなるというのは
実感として納得できます。


セールスの場面に関わらず、
家族や同僚、友人知人との交流においても、

「お世辞パワー」

を適切に活用したいものです。

*上記本文中、愛知県の自動車販売会社の事例は、
 日経MJの記事「成長へのみちしるべ」
 (11/1/31、11/1/24)を引用しました。

投稿者 松尾 順 : 13:28 | コメント (0) | トラックバック