売れるデザインは現場から生まれる

日経デザイン最新号(February 2011)に掲載されていた、
プロダクトデザイナー、澄川伸一氏の講演記事の中に
面白い話がありました。

澄川氏は、
デザイナーとしてのキャリアをソニーで始めています。


彼がソニー・アメリカのデザインセンターにいた頃、
“スポーツウォークマン”の設計を任されたのだそうです。

当時の製品設計では、ウォークマンを身につけて
ジョギングしたい時には、ストラップで腰にぶら下げられる
ようになっていました。

ところが、実際に腰にぶら下げると、
製品の重みのためにジョギングパンツがずり落ちてしまう。


それで、アメリカ人が現実にはどうしているかを
調べてみたら、皆ウォークマンを手に持って走っていた。

腰につけている人は誰もいなかったのだそうです。

私も若い頃、スポーツウォークマンではありませんが、
ウォークマンで音楽を聴きながら走っていた時期があります。

やはり、走るときに、それなりに重みのある機器を
腰にぶらさげると、パンツがずり落ちるだけでなく、
ブラブラしてとても走れなかったことを思い出しました。


澄川氏は、リサーチというか現場で、
実際にアメリカ人が走っている姿をみて、

「ああそうか」

と腑に落ちたと述べています。

ストラップで腰につけるのは合理的なようですが、
実は自分では走ったことのないデザイナーが、
デスクの上で考えたものに過ぎなかったわけです。


そこで澄川氏は、片手でつかみ易い、
また簡単な操作が走りながらできるような
ウォークマンを設計したところ、
ユーザーの好評を博したのです。


ユーザーに喜ばれる、結果として
売れる製品デザインは、やはり現場(の観察)から
生まれるということなんですよね。

これは、言われてみれば当たり前のこと。
しかし、意外に実践されていないことなのかも
しれませんよね。

「なんでこんなに使いにくいんだ」

と日々の生活で感じる製品、結構多いですから。

投稿者 松尾 順 : 2011年01月24日 11:14

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mindreading.jp/mt/mt-tb.cgi/1206

コメント

コメントしてください




保存しますか?