カチッ・サー理論:自動車販売会社の取り組み事例

「カチッ・サー理論」とは、カセットレコーダーの
スイッチを「カチッ」っと入れると「サー」とテープから
音が流れ出すように、外部からの働きかけに対して、
人が無意識に、つまり‘自動的’に反応してしまうパターン
(=心理的スイッチ)を理論化したものものです。

昨日ご紹介したように、
ビューコミュニケーション(NPO法人)では、
「カチッ・サー理論」に基づく心理的スイッチ
(同法人では、「対人関係心理」と呼んでいます)と
して以下の10項目があるとしています。

1 返報性
2 コミットメント
3 容姿
4 類似性
5 お世辞
6 協同性
7 連合性
8 社会的証明
9 権威性
10 希少性

それぞれの解説は昨日のブログをご覧ください↓
http://www.mindreading.jp/blog/archives/201102/2011-02-03T0944.html

今日は「カチッ・サー理論」を業務の現場に
応用している自動車販売会社(セールスパーソン対象)
の取り組み事例をご紹介します。

ただし、取り組み始めてからまだ数ヶ月が
経過したばかりであり、明確な成果報告が
行なわれたわけではない点をあらかじめ
おことわりしておきます。


神奈川県の大手自動車販売会社、K社には、
いわゆる「セールスパーソン」が約500人います。

K社では、このうち30人のセルースパーソンを選抜、
彼らの顧客各30人に対してアンケート調査を実施し、
自分の担当セールスパーソンについての評価を
してもらいました。(回収サンプル数合計900件)

評価項目は、上記心理スイッチの10項目です。
アンケートで得られた心理スイッチの評価点と、
各セールスパーソンの販売台数との関係性を
分析したのです。


その結果、セールスパーソンの販売力と
最も正の相関が高かった上位3項目は以下でした。

1 類似性
2 多数性(社会的証明のこと)
3 お世辞

「正の相関が高い」というのは、
上記の項目に対する評価が高いセールスパーソン
ほど、車をたくさん売っているということです。


第1位の類似性というのは、この場合、
顧客とセールスパーソンになんらかの共通点が
あることです。生まれた場所や出身学校が同じ
だとか、どちらもサッカーや野球が好きだとか。

おそらく、優れたセールスパーソンは、
お客さんとの会話を通じて共通点をたくさん
見出し、それを会話のネタとすることで
好意度を高めているのでしょうね。


第2位の多数性とは、

「今これが一番売れています」

といった他の人の評価を伝えることです。

「他の人も買っているのならきっといいんだろうな」

といった、「多数派の意見・行動」に同調しがちな
人間心理をうまく刺激するのがうまい人ほど、
販売力があるということになります。

そういえば、先日の新聞記事で読んだのですが、
ビックカメラの販売員の方の話によると、
店頭セールスのコツの一つとして、

「最近売れている商品はですね・・・」

と周囲の人にも聴こえるように大きめの声で
説明すると、自分の周りにたくさんの人が
集まってきて、芋づる的にたくさん商品を
売ることができるそうです。

皆、自分以外の人が何を買っているか、
つまり、売れ筋って気になるものですよね。


第3位のお世辞。

多少薄っぺらいお世辞だとしても、
言われた方の気分は悪くないものですよね。

優秀なセールスパーソンは、
上手にお客さんを褒めること、つまり
「持ち上げること」ができる。

そうしてお客さんの気分をよくさせて、
クロージングに持ち込めるということでしょう。


以上の分析結果を読んだ方の中には、

「なんだ、どれも当たり前のことだよね・・・?」

と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、大事なのは、売れるセールスパーソンと
売れないセールパーソンの違いが何かを明確に把握し、
的確な改善施策を打てるようになることなのです。


実のところ、トップセールスの多くは、

「なぜそんなにキミは売れるの?」

と聴かれてもうまく言葉で説明できないのです。

「なぜだか売れちゃうんだよね」

としか言えない人が多い。

従来は、結局「センスの良し悪し」で
片付けられていたことも多かったわけです。

ですから、セールス研修でも、せいぜい礼儀作法や
セールストークのロールプレイをやるだけ。

「カチッ・サー理論」のような、対人関係心理に基づく、
効果的な販売増につながるセールス方法を学ばせること
はほとんどやられてこなかったというのが実情なのです。


さて、話を元に戻しますが、K社では、
調査結果を元に、カチッ・サー理論に基づく
セールス活動のあり方についての研修を開始し、
心理スイッチに関連した販売ノウハウのあぶり出し、
その共有化を図っているところです。

前述したように、まだ成果を検証できるところほど
時間が経過していませんが、大きな期待をかけている
そうです。

というのも、自動車自体で明確な差別化を図ることは
もはや難しく、結局のところ、

「セールスパーソンという人間をまず売ること」

ができなければ、自動車は売れないという
厳しい現実があるからです。

投稿者 松尾 順 : 2011年02月04日 13:59

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