ネットツールと「自己呈示・自己開示」

自分のことを他者に伝える場合の方法を
その「目的」で分けると大きく2種類あります。

「自己呈示」と「自己開示」です。

ネットツールはこの2つの方法に応じて
今後は明確に使い分けられていくことになる
でしょう。

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「自己呈示」とは、わかりやすく言えば、
伝える相手に対して自分をより良く見せる、
また好感度を高めることを目的とする
コミュニケーション。

いわゆる

「プレゼンテーション」

は自己呈示の方法のひとつです。

昨今、よく言われる

「セルフブランディング(あるいは、
 パーソナルブランディング)」

は「自己呈示」を積極的に行なうことですね。


一方、「自己開示」とは、相手に対して、
自分の感情や意見をありのまま伝えることを
目的とするもの。

自分が信じる宗教における神や聖なる存在に
対して罪の告白をする

「ざんげ」

は、自己開示の最も極端な例だと言えます。

「自己開示」は、ざんげまで行かずとも、
相手に対して気持ちを素直に吐露することで、
相手との親密感を高めることができます。

また、つらい思いを持っているなら、
それを吐き出してしまうことを通じた

「癒し」(要するに「すっきりする」)

の効果もあります。


さて、ここ数年で急速に普及した
フェイスブックやツイッターといったSNSは、

・自己呈示
・自己開示

のどちらに適したコミュニケーションツール
でしょうか。

アカウントを開設したばかりで、
とても親密な数人程度だけとつながっているだけ、
あるいはクローズドな設定にしてあるなら、

「自己開示」

のためのツールとして活用できますね。

ようするに、

「ぶっちゃけトーク」

ができるわけです。


ところが、公開設定をしているツイッターや、
またフェイスブックでは、それほど親しくない人たち
ともつながることが増え、

「特定少数」

から、

「特定多数」

あるいは、

「不特定多数」

へとつながる人々が増加した場合、
もはや

「自己開示」

は非常に難しいものとなります。


ぶっちゃけトークが全くできないわけでは
ないけれど、一歩間違うと

「炎上」

のリスクを抱えているからです。


したがって、基本公開設定であり、
特定多数の友だちやフォロワーを有している
フェイスブック、ツイッターユーザーは、

「自己呈示」

を主体とする投稿にならざるを得ません。

つまり、自分の投稿を見ている人々に対して、
自分の印象を良くする、あるいは
少なくともネガティブな印象を与えないように
配慮しながら言葉や内容を選らばなければならない。

・休日に遊びに行きました
・レストランでディナーを楽しみました

なんて気軽な内容でも、
行き過ぎると、嫉妬する人がいるかもしれない。

昨今言われる「SNS疲れ」と言われる現象も、
別に、つながっていること自体が負担なのではなく、
自分の投稿が相手にどんな印象を与えるだろうか、
ということを常に考え、言葉や内容を選ばなければ
ならないことから来るのだと思います。

また、相手の投稿に対しての反応、
すなわち

・「いいね」をポチるかどうか
・「コメント」をするかどうか

も「自己呈示」の1種ですが、
これも結構気を遣いますよね。

確かにちょっと疲れる・・・(笑)


「自己呈示」は要するに

「見せたい自分」

をフェイスブックやツイッターという

「ステージ」

で演じているようなものです。

たまには楽屋に戻って素顔に戻り、

「あーやってらんねーな・・・」

などとつぶやいてみたいもの。


まあ、ツイッターへの投稿はそもそも

「つぶやき」

と言われるように、自己開示的な投稿がある
程度許容されてきましたが、近年はユーザー数
の増加により、数年前と比較すると、やはり

「自己開示」

はやりにくくなっています。


このところ、スマートフォンで利用できる

「LINE」

の利用者が急成長していること、
また、恋人同士2人だけで利用できる
アプリ

「Pairly(ペアリー)」

の人気が高まっているのも、
親密な相手とだけとクローズドなやりとりが
できるから。

もはやフェイスブック、ツイッターでは
やりにくい

ぶっちゃけトーク=「自己開示」

が存分にできるからでしょう。


社会において多様な人々と関わりながら
生きる私たちは、

・自己呈示
・自己開示

の両方を必要とします。

したがって今後、
フェイスブックやツイッターは基本的に

「自己呈示」

に適したネットツールとして活用し、
一方、「LINE」や「Pairly」のようなアプリは、

「自己開示」

のネットとして活用する。

このような、目的に応じたツールの使い分けが
明確になっていくものと思われます。
(逆に言えば、この使い分けを意識しないと、
「炎上」するリスクが高まるということです)

投稿者 松尾 順 : 2012年09月24日 10:09

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