これからのデータマイニングに求められる「循環型マーケティング」の理論と戦略

従来から企業が蓄積してきた購買履歴データや、
Webサイトのアクセスログデータは、

「ビッグデータ」

と呼ぶにふさわしいボリュームがありました。

しかし、これまでとは異なる
「今」のビッグデータの特徴は、
消費者一人ひとりを識別できるIDキーによって、

・販売履歴
・アクセスログデータ
・コールセンターへの問合せ履歴
・SNSでのアクション履歴

などを統合して、
分析できる可能性が拓けたことでしょう。

つまり、消費者の商品情報の獲得から、
購入意思決定、商品の利用、感想・評価、その共有まで
一連の消費者行動のデータを「横」に眺めることが
可能になったのです。

こうした「今」のビッグデータに対して

「データマイニング」

を実行する際には、従来の「直線型」ではない、
「循環型マーケティング」の理論と戦略を
前提とする必要があります。

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今日は、2012年11月2日にIBM箱崎本社で
行なわれた、

「ビッグデータ時代を勝ち抜くための
 データマイニング活用セミナー」

に登壇された、

清水聰氏(慶應義塾大学教授)

のお話のエッセンスを簡単にご紹介しましょう。
(私見も入っていますのでご了承ください)


今までのデータマイニングが対象としてきた
ビッグデータとしては、

・小売業の購買履歴データ(POS)
・Webのアクセスログデータ

などがありました。

これらは、基本的に「データフォーマット」が
決まっていて、基本的にコード化が可能なもの。
(商品分類コードとかが最初からあるわけです)

つまり同質で定量的なデータなものでした。
データは大量だけど、データとしては扱いやすい。

一方、今のビッグデータは上記の

「同質・定量的データ」

だけでなく、コールセンターに寄せられる
意見・苦情・要望等のデータ、
およびSNS上の投稿のデータといった、
データフォーマットが固定しにくく、
コード化も難しい、

「異質・定性的データ」

が加わり、しかも、ユーザーのID情報などによって
一人ひとりにすべてのデータが紐付けられたものです。

つまり、多様なデータが顧客単位で統合されている
のが今のビッグデータ。
(私自身も実際の業務で取り組んでいますが、
当然ながら、統合作業は簡単なものではありません。)

こうした、顧客単位でデータが統合されているものを

「シングルソース(のデータ)」

と専門的には呼びます。

顧客一人(シングル)ひとりが、

全ての情報・データの源(source)

となっているからですね。


さて、従来のビッグデータを対象とする
データマイニングでは、

・販売履歴データ
・Webアクセスログデータ

など、個別に存在している
ひとまとまりのデータをそれぞれ
別個に分析していました。

つまり、いわばデータを「縦」にだけ
眺めていたということになります。

このデータマイニングは主に、
新たな仮説発見を狙ったものであり、
ともかくデータを回すことで、

優良顧客(セグメント)

の発見(識別)などで、
成果を上げてきたわけです。

しかし、しょせん消費者行動の一部分を
切り取ってみているだけなので、

セグメンテーション

を行なうのがせいぜい。

・消費者は、ある状況において
 どのような反応をするのか

・どのような働きかけをすれば、
 こちらの期待する反応をしてくれるのか

といった消費者行動の深い理解や、
予測モデルの構築には限界があったのです。


しかし、

「シングルソースデータ」

として扱える「今」のビッグデータ対象の
データマイニングでは、

・消費者行動のより深い理解
・消費者の反応(購買や離脱など)予測モデル構築

が可能となります。

購買履歴データでは、

何をいつ、いくらで買ったか(行動)

を把握できるのみ。

しかし、その人のアクセスログデータから、

・その商品を購入する前にアクセスしたサイト・情報

が、さらに、その人のSNSの投稿データからは、

・なぜその商品を買ったのか(理由)
・商品を使ってみて満足してるか(感想・評価)
・商品について、他者にはどんなことを話したか(共有)

も併せて把握できるかもしれないからです。

すなわち、今のビッグデータ分析からは、

・購買にいたるまでの行動(商品認知から情報収集)
・購買の場での行動(商品の比較検討・購買決定)
・購買後の行動(商品利用評価・共有)

の一連の消費行動が全体として見えてくるのです。

ただ、今のビッグデータ対象のデータマイニングに
おいて留意しなければならないことがあります。

それは、上記の一連の消費行動はぐるぐると
循環している点です。

一人の消費者が、ある商品についての情報を集め、
比較検討し、購買・利用した後、その評価を他者とも
共有することを通じて、この消費者の再購入に向けて
の新たなサイクルが開始されるからです。

そこで、これまで提唱されてきた、

情報収集→比較検討→購買→消費(利用)→廃棄

という線的な消費行動モデルではなく、
以下のように、循環する消費行動モデルに基づく
分析を行なう必要があります。

情報収集→比較検討→購買→消費(利用)→共有→廃棄
(*共有後は、情報収集に戻る)

なぜなら、個別のデータを「縦」に眺める場合なら、
とりあえず分析してみるというアプローチでもなんとか
なりましたが、統合されたデータを「横」に眺める場合は、
一定の理論・モデルを分析の枠組みとして用いないと、
どこからどう分析していいか混乱するからです。
(これは実感値としてあります)


実のところ、こうした消費行動に立脚する

「循環型マーケティング」

の理論と戦略はまだまだ手探りの段階。

したがって、ともかくも

シングルソースのビッグデータ分析

に取り組みつつ、並行して

循環型マーケティングの理論・戦略

の構築を急ぐ必要があると思われます。


今回はちょっと難しい話になってしまいました。

明日は、清水先生が紹介してくださった面白い事例を
取り上げたいと思います。

投稿者 松尾 順 : 2012年11月05日 10:51

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