「単発もの」
がほとんどです。
しかし、複数のDMを関連性を持たせて送ることで
反応率を改善することができます。
-------------------------------
仙台に本社を置くシステム開発会社、
東北オータス(株)では、
自動販売機のオペレーター向けの事業支援システム
「ベンディナ・ネクスト」
を販売しています。
同社では、販売チャネル拡大のため、
関西・中国・四国・九州の関係各社を
ターゲットに、新しい「ベンディナ・ネクスト」
を紹介するダイレクトメールを送付しました。
ダイレクトメールの目的は、各地域で開催する
ビジネスショーへの誘導でした。
なぜなら、話を聴いてもらえれば8割は成約に
至るという実績を持つ商品だったからです。
ですので、ダイレクトメールを開封し、
なんとか中身を見てもらうため、
同じ内容のダイレクトメールを連続で
3回送ることにしたのです。
ただし、同じ内容ですから、
なんの工夫もなく繰り出すだけでは、
逆効果でしょう。
そこで、2回目以降のDMでは、
再度送付した理由(=口実)を明記すること
にしたのです。
具体的には、1回目に「カセットコーヒー」を
同封したと記載しておいて、実際には同封しなかった。
そして、2回目のDMで
「ゴメンナサイ!私大切なものを入れ忘れていました・・・」
というお詫びとともに、
実際にカセットコーヒーを同封したのです。
さらに3回目のDMでは、
「コーヒーが飲めないというクレームがあったので」
という理由で、今度はティーバッグを同封。
(実際にそんなクレームがあったのかは不明)
この3回のDMの成果ですが、
ビジネスショーへの来場者は例年の2倍、
会場での商談件数は目標の3倍を上回ったとのこと。
同社では、このように
連続して立て続けにDMを送る方法を
「ストーカーDM」
と呼んでいます。
私としては、このネーミングはいかがなものかと
思いますが、その成果はめざましいものがありますね。
東北オータスの場合、B2Bであり、
限られた数のターゲットだから可能だったと
思うのですが、毎回単発のDMを送るよりは、
何らかの関連性を持たせることによって、
受け取る側の関心を引くことができ、
・開封率
・内容の閲覧率
を高めることが可能になります。
ただ、1回目のDMで「カセットコーヒー」を
わざと入れ忘れる、というのはちょっとトリッキーな手法。
まあ、「しゃれ」として済ませられる範囲ですかね。
さて、ダイレクトマーケティングの世界では、
関連性を持たせた複数のDMを同一ターゲットに
送る方法のことは、
「カリキュラム・マーケティング」
と呼んできました。
(ストーカーDMもこの枠組みに入ります)
カリキュラムマーケティングでは、
例えば1年間といった期間設定の中で、
複数回の連続したDMを送るための緻密な
計画を立てます。(こうした計画のことを
「カリキュラム」と呼ぶわけです)
例えば、1回目にアンケートを実施し、
回答データの集計結果を2回目のDMで報告。
そして、3回目のDMでは、アンケート結果
に対する意見を集約したものを報告する、と
いったように、
「擬似的な対話」
展開するのです。
あるいは、啓蒙的なコンテンツを含むDMであれば、
1回目は初歩的な内容、2回目は中級、3回目は
上級といったように、徐々に内容を高度化させていく。
受け取った側としては、
1回目を読んだら2回目の内容も読みたくなると
いうことで、結果的に自社商品に対する理解を
深めていってもらえることになるのです。
ターゲット規模が大きい場合、
カリキュラムマーケティングに基づく
郵送のDMは費用対効果的に実施が困難になる
場合が多いかと思いますが、現在であれば、
eメールやソーシャルメディアをうまく活用した
展開が可能かもしれません。
*東北オータスのDM事例については、
『販促会議』(2013年1月)の記事を
参考にしました。
刑務作業では、家具、革靴をはじめ様々な
製品が作られています。
しかし、昨今の不景気やグローバル化等
により、刑務所発の製品である
「刑務作業品」
の売れ行きが低迷。
こうした状況を打破すべく、
人気キャラクターを採用したり、
ブランディングに取り組む刑務所が
登場しています。
-------------------------------
長野刑務所に収監されている堀江貴文氏も、
彼のメルマガを読むと、刑務作業にがんばって
いることがわかります。
刑務作業では、さまざまな製品づくりに携わって
いますが、例えば「手さげ紙袋」を作っているようです。
刑務作業に対する報酬は、熟練度によって
上がっていきますが、非常に安いものです。
刑務作業を始めたばかりの2011年7月の
ホリエモンの作業報酬は618円でした。
(同年9月は901円に増額してます!)
刑務作業は、職業訓練を通じ、
出所後の社会復帰の可能性を高めることが
目的ですので報酬が少ないのは仕方ないところです。
さて、このように人件費が極めて低いことから、
刑務所発の製品は、国内メーカーのブランド品よりも
半分程度の価格で販売可能。
デザイン的にはいまひとつで、
どうしてもネガティブなイメージがつきまとうものの、
品質、安全面では大手メーカーの製品と遜色ないため
一定の人気があったようです。
ところが、刑務作業の主要な発注先である、
民間の中小企業が長引く不況により倒産したり、
刑務所よりも人件費の安い東南アジアに発注を移す
などしたことから、刑務作業が激減。
このままでは、受刑者に技術を習得させる機会が
なくなってしまうと、新たな取り組みを始めた刑務所が
現れているようです。
日経ビジネス(2012.12.10)の記事によれば、
栃木県・黒羽刑務所では、
「ハローキティ」のダルマ
の製作に乗り出しています。
黒羽刑務所では、元々「黒羽だるま」を
製作していたそうですが、サンリオのライセンス
許可を得て
「はろうきてぃだるま」
の製作に着手。なかなかの人気のようです。
こちらに写真が掲載されていますが、
とてもかわいいですね。
↓
http://gotochikitty.com/goods/promotion/kurobanedaruma/index.html
黒羽刑務所では、人気キャラクターを
採用することで製品の魅力を高めることに
成功したというわけです。
一方、オリジナルブランドを開発して、
爆発的な売上を記録しているのが、
函館少年刑務所の
「マル獄シリーズ」
です。
チョイ不良(ワル)風」の布製品。
刑務作業品としては初めて
「登録商標」
を行なっています。
「マル獄シリーズ」が購入できる
ネットショップがありました!
↓
http://www.e-capic.com/SHOP/44106/44225/list.html
マル獄シリーズは毎年ラインアップを拡大、
現在は55品目に上っています。
さて、「マル獄シリーズ」成功のヒミツは、
刑務作業を担当する刑務官が、
従来の刑務作業品の概念を打ち砕いたことに
あったようです。
それは、刑務作業品のネガティブなイメージを
逆手にとったこと。
また、民間のデザイナーのアドバイスを受け、
時代のニーズを取り込んでいること。
若年層を意識することで、ネットでのクチコミも
生んでいること、などです。
前述したように、従来、刑務所は、
近辺の中小企業から仕事をもらっていたのです。
要するに、「下請け」の仕事をやっていた。
しかし、函館少年刑務所では、
仕事をもらうのではなく、自らオリジナルな
製品を開発し、
「マル獄シリーズ」
というブランドを育てることに取り組んだことで
新たな活路を見出したわけです。
今、多くの企業が製品の差別化に苦労し、
売上確保に汲々としていますが、刑務作業品に
おいてもブランド化が可能であるという事実は、
おおいに参考にすべきではないでしょうか。
*上記内容は、
日経ビジネス(2012.12.10)
の記事を参考にしました。
]]>「ドライゼロ」
のヒットの影には、オーソドックスな
マーケティングリサーチに基づく明快な
コンセプト開発がありました。
-------------------------------
ノンアルコールビールは、
ここ数年で急激に拡大した市場のひとつですね。
市場規模としては、ビールが年間4億ケースに対し、
ノンアルコールビールは2000万ケース程度のようです。
さて、アサヒビールが2010年に出した
「ダブルゼロ」
は、キリンビールの「キリンフリー」や、
サントリーの「オールフリー」に太刀打ちできず、
「一人負け」(シェアは2%と低迷)
の状態でした。
アサヒの「ドライゼロ」は、
ダブルゼロの屈辱を果たすために開発され、
2012年2月に発売。
2012年の売上は500万ケースの見込み。
ノンアルコール市場2位のキリンフリーを抜き、
シェア24%を上回ったと見られています。
このように、発売以来、好調に売れている
「ドライゼロ」
の開発に当たっては、
王道を行く、つまりオーソドックスな
マーケティングリサーチ
が行なわれています。
まず、ノンアルコールビールやビールを
飲む頻度や量についての「予備調査」が
実施されています。
これは、本調査を行なうにあたって、
調査の掘り下げの方向性を見極めるために
実行されたものでしょう。
次いで、本調査を2回実施。
延べ対象者数は1,000人という規模でした。
調査の目的としては以下の2点。
1.ノンアルコールビールを飲む頻度、量、状況
(シーン)などの飲用実態を把握すること
2.顧客が持つ競合ブランドに対するイメージを
把握すること
1番目のノンアルコールビールの飲用実態で、
アサヒの担当者が着目したのはビール愛飲者の
ノンアルコールビールを飲む状況です。
例えば、
「ビールをいつも飲んでいるが、
翌日仕事が忙しいときは控えたい」
「休肝日を作りたい」
といった理由でノンアルコールビールが
飲まれていたのです。
従来、ノンアルコールビールは、
妊婦さんや運転中など、アルコールが飲みたくても
飲めない状況が想定されていました。
しかし、ビール愛飲者が自らの意思であえて
「飲まない」
という選択をするときもあることが
明確になりました。
一方、ブランドイメージについては、
「ポジショニングマップ」
を作成したところ、オールフリーを
はじめとする競合製品は、
「健康」
「女性的」
といったイメージが強いものでした。
また、味については「フルーティ」という
評価で、ビールとはそもそも違うものという
認識が強かったようです。
一方、ポジショニングマップで空白地帯
(ホワイトスペース)となっていたのが、
「男性的」
「ビールに近い」
といったイメージ。
以上のような調査結果の分析を踏まえ、
アサヒのマーケティング担当者が
打ち出したコンセプトは
「ビールの代替品」
というもの。
(これは、本当の意味でビールの代わりになる
味やイメージということのようです)
ターゲットは、男性を中心とするビール愛飲者で、
何らかの事情でアルコールを飲めない、あるいは
飲まないときに選択してもらえるノンアルコール
ビール。男性的で飲み応えのあるもの。
こうして、できるだけビールに近い味わいを
実現したダブルゼロが開発されたというわけです。
スーパードライをほうふつさせる
シルバーのパッケージを採用したのも、
「ビールの代替品」
というコンセプトに沿ったものです。
さて、こうしてドライゼロの開発プロセス、
また、「ビールの代替品」というコンセプトを
後から振り返ってみると、実に平凡で当たり前だと
感じるかもしれません。
しかし、多くの消費者に受け入れられ、
ロングセラーになるような製品ほど、
コンセプトは単純でシンプルなものです。
そして、その製品は、
人々の単純な欲求を充たしているだけ、
あるいは単純な問題を解決しているだけなのです。
例えば「甘栗むいちゃいました」という製品は、
栗の皮をむく手間を省いただけですね。
「栗は食べたいけど皮をむくのが面倒」
という単純な問題を解決した
ありそうでなかった製品ですよね。
しかし、「甘栗むいちゃいました」や、
その類似製品は既に定番商品として、
コンビニ、スーパー等の棚に並んでいます。
おかげで、栗の消費量が
大きく拡大したのではないでしょうか。
ドライゼロも同じでしょう。
例えば、
「明日は定期健診だからアルコールは控えよう。
でも、大好きなビールは飲めないのは残念だ。
だから、ビールを飲んでる気分になれる
ノンアルコールビールが欲しい」
といった消費者の単純な欲求に
応えることができたからこそのヒットしたのでしょう。
なお、アサヒのマーケティング部では、
IBMの統計解析ツール
「SPSS Statistics」
を導入しています。
同社では、調査会社任せにすることなく、
担当者自らがデータと向かい合うため、
3年前からマーケターの分析能力強化に
取り組んでいるのです。
ドライゼロ開発のためのリサーチにおいても、
担当者自ら、調査データを徹底的に分析したおかげで、
シンプルながら明快なコンセプトを自信を持って
打ち出せたのでしょうね。
*上記内容は、
日経情報ストラテジー(January 2013)
の記事を参考にしました。
]]>しかし、これからのマーケターは、
自らもリサーチを企画・実行し、また分析ツールを用いて
データを分析する必要性にせまられています。
-------------------------------
私は、シナプス・マーケティング・カレッジの講師として、
「マーケティングリサーチ入門」
の講座を10年近く続けています。
受講者が所属されている業種・業態は様々です。
入門講座ですから、ほとんど、あるいは
まったくリサーチの経験のない方が、
「リサーチの概要を理解したい」
という「目的」で受講される点は共通しています。
しかし、受講の「動機(きっかけ)」が、
近年変わってきたように感じています。
以前は、マーケティング全般を学んでいる方が、
マーケティングリサーチについても理解しておきたいと
いった個人的な動機が多かったのです。
ところが、最近は、
・これまで営業やっていたけれど、
マーケティング関連部署に配置転換になって
自分でリサーチをやらなければならなくなった
・転職したら、業務経験のないマーケティング関連部署に
配属となったため、リサーチもやらなければならない
という方が増えています。
つまり、業務上の必要に強くせまられて
リサーチ入門講座を受けにこられているわけです。
そうした方の話を突っ込んでお聴きしてみると、
・調査・分析結果を踏まえた企画・提案が求められている
(また、より求められられるようになってきた)
・社内にリサーチのプロはいない、
かといって、リサーチ会社に外注する予算の確保が難しい
といった事情があるため、
自らリサーチを企画・実行せざるを得ない方が
ほとんどです。
この背景には、やはりインターネットを核とする
「デジタル革命」
の影響が大きいのでしょう。
社会のIT化=デジタル化が進み、
かつインターネット技術でデジタル機器類が
ネットワーク化された。
このため、あらゆる事象・消費行動などに
ついての豊富なデータが日々量産されており、
かつ、そうしたデータの入手が容易になりました。
(いわゆる「ビッグデータ」ですね)
また、インターネットを活用した調査
(ネットリサーチ)のおかげで、必要なデータを
低コスト・短期間で集めることができます。
一方、社会が高度化・複雑化したため、
従来のように、担当者の
「勘や経験、思い込み」
だけで物事を判断することはリスクが
高いという状況にある。
このため、可能なかぎりリサーチ・分析結果に
基づく意思決定が必要とされています。
このように、データの入手、リサーチの実行が
容易になり、またその重要性がますます高まっている
にも関わらず、日本企業の経営状況は全般的に厳しく、
調査のための外注予算が十分に割けないために、
マーケターがリサーチや、分析スキルを身につけなければ
ならなくなっているのです。
マーケターの皆さんにとっては難儀なことですね。
しかし、むしろ喜ばしいことかもしれません。
なぜなら、優れた商品企画、広告・販促企画は、
顧客・消費者を深く理解する中から生まれるからです。
そして、顧客・消費者を深く理解する一番の方法は、
自らがリサーチを企画・実行し、じっくりとデータを
分析することだと私は考えているからです。
幸い、使いやすい分析ツールがいろいろとありますし、
データをあれこれ眺めるのは実に楽しいものですよ。
リサーチやデータ分析を必要にせまられてやらなければ
ならなくなったマーケターの皆さん、楽しくがんばってください!
*シナプス・マーケティング・カレッジ
http://www.cyber-synapse.com/college/
「異化」の視点によってものごとを見ることで、
常識を打ち破る新しい発想が生まれます。
-----------------
有機野菜を中心とする食品を宅配するネット通販、
オイシックス
の初のヒット商品は2001年に発売した
「ふぞろい野菜」
でした。
色や形、大きさなどが規格を外れている野菜は、
農協などの正規ルートでは売れないため、
自家用にするか、処分せざるを得ないのが現状。
同社では、こうした規格外品を買い付け、
「ふぞろい野菜」として販売。
ニンジン、きゅうりなどは、
通常品より3割程度安いのだそうです。
この「ふぞろい野菜」が生まれたのは、
同社スタッフが農家の収穫を手伝っている際に、
畑の片隅に規格外品が積まれているのを
発見したことがきっかけ。
同社社長、高島宏平氏は、
「売れば絶対にヒットする」
と農家を説得したそうですが、
最初はなかなか説得に応じなかった。
「味は同じだが、傷があったり形が
悪かったりするから出荷できない」
と農家側は思い込んでいたのです。
実際、農協ルートには規格外品は
出荷できないのが現実であり「常識」。
要するに、農家としては、
既存の「常識」に捉われていたわけです。
そこで、高島氏は、
同社の会員に調査を実施。
「形がふぞろいでも、
安くて安全でおいしい野菜なら買う」
という好ましい反応が得られた調査結果を
農家に見せることで、ようやく規格外品の
買い付けに成功したのだそうです。
さて、社会調査において、
「同化」「異化」
という言葉があります。
「同化」とは、見知らぬことを、
「既に知っていること」
に当てはめて認識しようとすること。
一方、「異化」とは、
既に知っていることをまるで
「まだ知らなかったこと」
のように認識してみて、
「なぜか」
と問い直してみることです。
オイシックスの高島氏の場合、
「規格外品は出荷できない、売れない」
という常識をそもそも持っていなかったため、
「消費者にきっと受け入れてもらえるはず」
という発想につなげることができた。
しかし、当事者である農家は当初、
「正規ルートでは売れない」
という既知の事実=常識で、
「規格外品を販売する」
という発想を認識し、否定してしまった。
つまり、「同化」の視点でものごとを
考えてしまったわけです。
まあ、これは無理もないことで、
農家に限らず、あらゆる業界において
「同化」
の視点でしかものごとを認識できないために、
新しい発想がつぶされてしまうということが
頻繁に起こっています。
しばしば、改革を起こせるのは、
「よそ者、バカ者、若者」
だけだと言います。
こうした人々は、
そもそも常識を知らないか、
または、あえて常識にこだわらず、
「異化」
の視点、つまりまるで
なにも知らないかのようにものごと
を見て、
「なぜこうなってるんだろう?」
と疑問を持つ。
そして、常識を打ち破る
「斬新な発想」
を得ることができる人たちなのでしょう。
社会調査を行なう意義は、
既知の事実や考え方
を「異化」の視点、つまり
「知らなかったこと」
として改めて把握することを通じ、
私たちの認識や理解を豊かにすること
にあります。
この考え方をマーケティングリサーチや、
新しいビジネスアイディアの発想に
当てはめるなら、
「異化」
の視点で、消費者行動なり、
自社のビジネスを見直してみることが、
新しいインサイト(洞察)やビジネスのヒントを
得るのに有効だと言えるのではないでしょうか?
*オイシックスの話は、
日本経済新聞(2012/11/21)の高島氏のコラムを
参考にしました。
参考文献
「商いは広告をすべき」
と説いていたのです。
---------------------
慶應義塾大学の創設者、福沢諭吉は、
教育者としての評価が高いですね。
彼は一方で、明治15年に
「時事新報」
という新聞も創刊しています。
同紙は、政党色のない、
独立不偏を編集方針としていました。
そして、福沢は、
時事新報の紙面充実と部数拡大
に力を入れつつ、
・広告の効果
・媒体としての新聞の価値
を繰り返し力説しました。
実際、彼は、
新聞広告を集めるための広告主向け広告
にも積極的で、
「日本一の時事新報に広告するものは、
日本一の商売上手である」
と刷ったビラを風船で飛ばしたことも
あったそうです。
すると、とたんに広告申し込みが殺到したとか。
さて、彼は明治16年、時事新報の社説に
「商人に告るの文」
を書いています。
この社説で展開されているのは、
『商いは広告をすべき』
という彼なりの「広告論」でした。
この社説は結局のところ、
「新聞広告を出しましょう(出しなさい!)」
といういささか説教的な
「自社広告」
という側面があるのですが、
彼の広告論はビジネスの本質を突いています。
そこで、この社説から一部を紹介しましょう。
---------------------
1 商売繁盛は、「正直」「熟練」「廉価」で
客に対応すべきである。
2 それを知らせる工夫をしなければ商売繁盛は
ありえない
3 商いは「人に知られること」がもっとも大切である
4 人に知られる方法は、まず人通りの多いところに
店を開くこと
5 店頭に看板を掲げ、店を飾り、人目につくよう
品物を並べ、注意を喚起すべきである
6 人通りの多い場所にポスターを掲げ、さまざまの
チラシを配布しなければならない
7 商いには「広告するに適当なチャンス」がある。
その機会を見極めるのが肝要である
8 広告文は素人では書けない、有名な筆者に依頼すべきと
信じている人が多いが、それはとんでもない間違いだ
9 世の中に手紙が書けない人はいないはず。
手紙で自分の意志が通じる人が、広告文を書いて
自分の意志ができないはずがない
----------------------
テレビさえまだない時代ですし、
彼の具体的なアドバイスについては実に
「アナログな教え」
ではありますね。
しかし、単純に「古い」と
片付けてしまわないで本質を見ましょう。
現代は、リアル・ヴーチャルの両方を俯瞰して、
・「人通りの多いところ」とはどこなのか?
・「広告するに適当なチャンス」とはいつなのか?
を熟慮することが必要でしょう。
また、福沢は、
「広告文は自分(自社)で書け」
と言っています。
これは「極論」ではあると思いますが、
まさに今でこそ、ソーシャルメディア上での
消費者・顧客とのパーソナルな対話
は基本的に企業・組織内で取り組むべき活動で
あることを考えると意義深いものがあるように
思います。
時代が流れ、媒体やマーケティング手法が
多様になっても、ビジネス(商売)は
「知られること」
から始まることは普遍的な法則です。
福沢諭吉は優れたマーケターでもあったと
言えるのではないでしょうか?
*参考文献
仕事以外の時間の生活、すなわち
「ライフ」
を充実させてこそ、
ちょっとしたきっかけから
すばらしい閃きが得られます。
---------------------
現在日経本紙で連載中の私の履歴書は、
オムロン名誉会長の立石義雄氏ですね。
この数日は、自動改札機開発についての
秘話ですが、自動改札機の開発において
課題となっていたいくつかの事項は、
開発担当者の趣味・余暇の時間に、
解決策につながるアイディアが
生まれていたことを明かしています。
まず、小さな切符に乗車区間や料金など
の情報を搭載し、また機械に瞬時に読み取ら
せる技術開発についての閃き。
開発チームリーダーの田中さんが、
ある日、自宅で音楽を聴いていたそうです。
当時はまだオープンリールのテープレコーダー
だったようですが、プラスチック製テープに
磁気が塗ってあるのをみて閃いたわけです。
すなわち、音楽テープと同じように、
切符の裏に磁性体を塗ることで情報の搭載と
読み込みが可能となりました。
次に、自動改札機に投入された切符が、
横になったり、斜めになったりして
うまく出口まで運べないという問題の解決に
つながる閃き。
機械担当の浅田さんは、
久々の休日に子供を連れて渓流釣りに。
川面を流れてきた竹の葉が岩にぶつかって
くるっと向きを変えたとき閃いた。
すなわち、自動改札機の投入口の近くに
岩に見立てた駒を置くと、切符がきれいに
縦に揃うようになったのです。
このように、なんらかの仕事上の問題の解決に
つながる閃きは、仕事とはかけ離れた場所や状況
において得られることが多いものですね。
同じようなことが、日経産業新聞のコラム、
「実践WLB(ワークライフバランス)経営」(2012/11/13)
にも書かれていました。
玩具メーカーA社でヒット企画や商品を
生んでいるエース級の社員のうち、
退社時間が早い3人がどのようなライフ(生活)
を送っているかをインタビューしたところ、
・A氏は、異業種交流会に積極的に参加
・B氏は、コンサートやアートギャラリーに足を運び
・C氏は、自宅近くの公園に子供たちと行き、自社の玩具を
近所の子供たちに遊ばせたり壊すのを観察
といったように、仕事以外のライフを楽しむ、
また活用することで、斬新なアイデアを得ていたこと
がわかったのです。
そもそも、優れたアイデア、使えるアイディアは、
「異質なもの」
の組み合わせから生まれます。
ですから、普段からできるだけ
多様な経験・情報
を得るように心がける必要があります。
逆に、目先の仕事があるからと、
朝から晩まで、あるいは休日まで出勤して
デスクに座ってだけだと、良いアイデアは
全く出なくなってしまうでしょう。
(株)ワーク・ライフバランス社長の
小室淑恵氏が、以前TEDのプレゼンテーションにおいて、
「日本企業の人たちは働きすぎ、会社に篭ってばかり
いるから、ヒット商品のアイデアが出なくなる」
といった趣旨のことを指摘されていました。
まさに、今の日本企業において魅力的な商品が
見当たらなくなったのは、あいかわらずの長時間労働を
強いられ、ライフが充実していないからなのかもしれません。
高い品質と驚く安さ
を両立させていることです。
「高品質」と「低価格」という、
二律背反的課題
をどのように解決しているのでしょうか?
-------------------
LCC(Low Cost Carrier)は、
マスコミでは「格安航空会社」と
称されていますね。
‘格安’という言葉の語感からは、
「安かろう、悪かろう」
という印象をどうしても受けてしまいます。
しかし、実のところ、
LCCは高い品質、そして高い安全性を
維持しつつ、低価格を提供しているのです。
逆に言えば、品質を下げたり、
単純に利益を削って低価格を
提供しているわけではないということ。
一定の利益を確保しつつ、
低価格を提示できる最大の秘密は、
機材の効率活用
にあります。
端的に言えば、
1つの機体を高頻度で飛ばすことです。
例えば、
・関西⇔福岡
といった、基本的に乗り継ぎが発生しない
短い路線を1日に何度も往復することで、
1便当たりの
「単位コスト」
の低減を可能にしているというわけです。
もちろん、座席数を増やし、
一度に運べる旅客数を増やすことによって
総収益を引き上げる工夫はしています。
(また、もろもろのサービスを有料化すること
での追加収益もありますが)
しかし、最も重要なのは、
目的地に着いたら、すばやく客室内の清掃や
給油を終え、乗客を乗せてすぐにトンボ返り
できるオペレーションを確立すること。
LCCは基本的に、チェックイン時間を
厳密に定めており、わずか1-2分でも遅れたら
搭乗できない(キャンセル、払い戻し不可)
のも運航スケジュールを滞りなく守るためです。
また、ビジネス、エコノミーの区分がなく、
基本的に全席「自由席」なのも、早く乗った人
からさっさと座ってもらえるようにするため。
預ける手荷物も、
最初の1個から別料金が発生しますが、
追加収益を得ると同時に、
預かる荷物をできるだけ減らして、
積み下ろしの時間を短くすることを狙っています。
座席は
「革張り」
で高級感を演出していますが、
実は、さっと拭くだけでいいので
清掃時間が短縮できる!
このような様々な工夫・仕組みを積み重ね、
すばやく離陸準備が整うようにして、
短い時間での折り返し運航を可能にしている
というわけです。
LCCに不慣れな日本人としては、
既存航空会社とは異なる、このような
LCCの独特なルール
に戸惑い、また不満を感じる人もいます。
しかし、慣れるにしたがい、
「だから安いんだね」
ということで納得して利用するように
なるのだそうです。
さて、旅客航空の品質は、
主に以下の3つの指標で判断されます。
(品質を評価するための「KPI」ですね)
・定時出発率(時間通りに出発できたか)
・就航率(予定通りに飛ばせたか)
・手荷物事故発生率
(預かり荷物の紛失などの事故がどの程度発生したか)
世界のLCCの実績を見ると、
実は、既存大手航空会社よりも、
これらの指標の数値がいい。
例えば、欧州の某LCCの「定時出発率」は
90%
であるのに対し、
既存の欧州大手航空会社は80%台です。
「就航率」も既存航空会社を抑えてトップ。
「手荷物事故発生率」は、
数字が低いほど優秀ですが、
前述の欧州LCCはわずか
0.6%
なのに対して、
既存航空会社は10%を超えているのです。
このように、機材の効率稼動を追求することが、
結果的に「航空旅客サービス」の品質向上にも
つながるのがLCCの強さだと言えますね。
他にも、コスト削減の工夫として、
利用する航空機を燃費の良い機種1種類だけに
絞ることで、
・パイロットの教育コスト低減
(航空機の場合、航空機の種類毎にそれぞれ
専用の免許が必要です)
・整備コストの低減
を実現。
しかも、基本的に
「新造機」
をリースして、短期間で新しい機体に
更新することで故障が圧倒的に減るとのこと。
これもまた、機材の高稼働に寄与すると同時に、
「安全性」
の高さにもつながる点が実に面白いところです。
ところで、こうした低価格のビジネスモデルが
登場すると、一般には、既存企業の顧客が、
安さに惹かれて流れてしまうものです。
しかし、LCCについては、
既存航空会社の旅客をほとんど奪っておらず、
むしろ、新たな需要を生み出しています。
新規需要の多くは、
これまでは、電車、バスなどを利用していた人々が
LCCを利用するようになったり、以前よりも旅行の
回数を増やした結果なのです。
他国では、ビジネス目的では既存航空会社を
利用し、家族旅行ではLCCを利用するといったように
上手に使い分けられています。
日本でも、そうした使い分けが
これから普及していくのでしょうね。
*以上は、ピーチアビエーション社長、井上慎一氏の
夕学五十講でのお話も参考にしました。
⇒ 受講生レポート 「アジアの架け橋 LOVE & PEACH」
*参考文献
]]>そこで、そもそも会話にはどんな機能が
あるのかを理解しておいたほうがいいでしょう。
--------------------------
会話には、次に示すように、
大きくは4つの機能があります。
(会話の「目的」と言い換えてもいいでしょう)
1 説得する
2 説明する
3 心理的結合を深める
4 情緒的変化を与える
以下、簡単に解説します。
----------------
1 説得する
相手が、自分の期待する行動を
してもらえるように働きかける会話です。
セールスパーソンの商談はもちろんですが、
広告、販促などの様々な
マーケティングコミュニケーション
の最終目的は、最終的に相手に自社製品・サービスを
購入してもらうことです。
したがって、マーケティングコミュニケーションとは
「説得」である、と言い切ってもいいかも。
----------------
2 説明する
相手がわかっていないこと、疑問を持っていること
について、理解してもらうための会話です。
例えば、自社がなんらかの不祥事を起こしたとき、
第一に、現状を正しく理解してもらうことが
重要ですね。
こうしたときは真摯な「説明」をまず行うわけです。
さらに、謝罪して許し(受容)を求めるとしたら、
「説得」の目的が加わります。
----------------
3 心理的結合を深める
お互いの親密さを高めること、
言い換えると、
心理的距離感
を縮めるための会話です。
企業としては、消費者に自社、あるいは自社製品・
サービスに対する
「心理的ロイヤルティ」
を感じてもらい、リピート購入やクチコミを
期待したいわけですから、この機能の活用も
非常に重要ですね。
これには、2つのアプローチがあります。
まず、適切な問いかけをして、
相手のことを深く理解することです。
そして、顧客データベースに個々のお客様の関心事、
好き嫌いなどを蓄積し、活用することが理想ですね。
これは、相手に対して
「自己開示」
(ありのままの気持ち、意見、評価などを伝えること)
を求めることだと言えます。
もうひとつのアプローチは、
こちら側が「自己開示」をすることです。
企業人の立場でいえば、自社が大切にしている
価値観や理念、思いなどを率直に伝えること。
ただし、宣伝っぽくなると、
「自己呈示」
(自分の良さを伝えるためのプレゼンテーション)
になってしまうのでご注意!
ヒトは、お互いに相手のことを深く知れば知るほど、
心理的距離感が縮まるものです。
----------------
4 情緒的変化を与える
相手を楽しませたり、驚かせたり、喜ばせたり、
感激させたりするための会話。
誰でも、面白い話や笑える話を聞かせてくれる人が
好きですよね。
会話を通じて、相手を心地よい気持ちにさせてあげること
ができたら、自分に対する好意はぐっと高まるもの。
企業のフェイスブックページやツイッターの中の人でも、
人気が高いのは面白い人ですよね。
また、「ほめること」は、相手を喜ばせるために効果的な会話。
調査によれば、「お世辞」でも効果があることが
わかっていますが、できれば心からの賛辞でありたいものです。
----------------
企業人としての立場であれ、個人であれ、
以上の4つの目的を意識しながら話せるようになれば
「会話の達人」
になれること間違いなしです!
「売上増」
などを置いてはいけません。
広告活動のPDCAに、
こうした目的は役に立たないからです。
広告を含む多様化した、
現代のマーケティングコミュニケーションに
おいても同様のことが言えます。
--------------------------
先日、私が講師を務める
「マーケティング効果測定」
(シナプス・マーケティング・カレッジ)
で受講生の方から
「DAGMAR(ダグマー)」
についての質問を受けました。
これは、ソロモン・ダトカによって
書かれた古典的名著である、
『新版|目標による広告管理-DAGMAR(ダグマー)の新展開』
で提唱されている考え方です。
いい機会だと思って本書を再読してみました。
ちなみに、「DAGMAR(ダグマー)」は、
以下の頭字語です。
Defining
Advertising
Goals for
Measured
Advertising
Results
現在、同書は実質的には忘れられた存在に
なっていますが、今でも通用する重要な主張が
含まれていることを今回はお伝えします。
同書の中で最も重要な主張は、
以下の部分だと私は考えています。
-----------------------
消費者向け商品・サービスの広告、
およびマーケティングの最終目標は、
購入を引き起こすことである、とされて以来、
広告とマーケティング目的との区別が、
不明瞭なままにされてきた。
マーケティングのほんの一部分である広告は、
「ブランド選好」のような心理学的な効果を
生み出すことにかかわっている。
一方、マーケティングは、商品(あるいはサービス)
がつくられ、集められれ、消費者あるいはユーザーに
届けられるまでのすべての機能-広告も含めて-
をカバーしている。
「あなたの広告目的は何か?」という問いが、
広告をつくり、あるいはその広告を承認する数多くの
人々に対してなされてきたし、これからもなされる
だろう。たいていの会社はこの問いに対して答えを
用意している。
しかしながら、それらをよく検討してみると、
これらの答えが、広告の特定の目標というよりも、
もっと広い、企業目的あるいはマーケティング目的で
あることが多い。
(同書、P5-6)
------------------------
ここで、ダトカが指摘している点は、
マーケティングの一部にすぎない「広告」が
目的とすべきは、対象とする製品・サービスの
・認知
・関心
・理解
・好意
といった心理的な変化(態度変容)を
起こすことであるべき。
ところが、現実には、
マーケティング全体(広告含む)や、
あるいは企業・事業事態の究極的な目的
であるはずの、
・販売増大
・顧客増加
・市場シェア拡大
などが、広告の「目的」として、
‘間違って’
設定されているということです。
広告もまた、あらゆる他の企業活動と同様、
究極的には「収益貢献」が求められることは
間違いありません。
しかし、だからといって例えば、
「広告の目的は売ることである」
として、広告に対して
「売上目標」
を設定するのは意味がありません。
(ダイレクトレスポンス広告を除く)
なぜ意味がないのか?
それは、「売上目標」は、
最終的な「成果・結果」の良し悪し(到達度)
が判断できるだけにすぎず、
広告の企画・開発・展開・改善
というPDCAのプロセスに対して
ほとんど具体的な示唆を与えないからです。
そもそも、目的を明確化し、
具体的な目標を設定する意義は、
それによって、活動をより効果的・効率的に
改善していくこと。
ドラッカーが提唱した、
「目標による管理(management by objective)」
の真髄はここにあります。
したがって、DAGMARのアプローチによる
広告活動における、望ましい目的は前述した
・認知
・関心
・理解
・好意
といったものであり、
例えば、「認知向上」が目的とするなら、
具体的な目標設定としては、
「認知率」を
10%(現状)→30%(1年後)に引き上げること
といったものとなります。
このように「認知向上」という目的、
そして、こうした目的に基づく目標設定であれば、
実際の広告活動の内容、すなわち
・メディアミックス
・投下量(リーチ&フリークエンシー)
・広告表現
などにおける
問題点の洗い出し(問題仮説立案)
が可能になり、より効果的・効率的な施策へと
内容を改善していくことができます。
一方、ここで「売り上げ増」といった目的を
置いてしまうと、実際の広告活動との関連性が
遠すぎて、具体的な問題点の洗い出しが難しい
ことがおわかりだと思います。
さて、今のマーケティングにおいては、
「広告」
という言葉がもはや「時代遅れ」に感じられるほど、
多様なメディア(ペイドメディア、オウンメディア、
アーンドメディアなど)を通じて、消費者と多様な
コミュニケーションを企業は行なっていますね。
こうした多様なコミュニケーション、
すなわち「マーケティング・コミュニケーション」も
また、究極の目的は「収益貢献」だとしても、
直接の目的として「売上増」などを置くのは、
適切ではないことが多い。
例えば、自社フェイスブックページでの情報発信
の直接目的はどうでしょうか?
「売上増」
としていない(むしろ、そうすべきでない)
企業が多いはずです。
消費者は以前よりもますます、
「企業からのアプローチを受けてすぐに購入する」
ことをしなくなっていますね。
むしろ、様々な情報を積極的に収集し、
人の意見・評価に耳を傾け、比較検討して賢明な選択を
しようとすることが増えている。
このような環境変化において、
マーケティングにおける「広告」、いや
「マーケティング・コミュニケーション」
は、より適切な目的の明確化と目標設定を
踏まえたPDCAをまわす必要があります。
すべてのマーケターにとって、
『新版|目標による広告管理-DAGMAR(ダグマー)の新展開』
を一読してみるのは無駄ではないでしょう。
『新版|目標による広告管理-DAGMAR(ダグマー)の新展開』
*マーケティング効果測定(シナプス・マーケティング・カレッジ)
http://www.cyber-synapse.com/college/course/mz/
この情報(以下「SNSデータ」)からは、
人々の
「●●に行った」「●●を買った」
といった「行動」が把握できることに加えて、
行動に伴う、
感情や思い、意見、評価
などの「心理」情報が含まれています。
したがって、購買履歴データやWebアクセスログデータ
などの行動データと、SNSデータの心理データを
ユーザー単位で結びつける、すなわち統合された
「シングルソースデータ」
を分析することによって新たに見えてくることがあります。
-----------------
今日は、昨日に引き続き、
「ビッグデータ時代を勝ち抜くための
データマイニング活用セミナー」
(IBM SPSS主催)
に登壇された、
清水聰氏(慶應義塾大学教授)
のお話の中から面白い事例をご紹介します。
(なお、事例の元となっている調査概要については
まだ公開できないものらしく、具体的な数値など
はお話されていません)
清水氏が実施した
消費者対象のビール系飲料の調査
によれば、
・アサヒ・スーパードライ
・キリン・淡麗(生)
は併飲している消費者が多いことがわかっています。
その理由としては、
「この2ブランドの味が似ているから」
ということのようです。
どのように併飲しているかというと、
平日は淡麗を飲み、週末はスーパードライを飲む
というパターン。
スーパードライ&淡麗の組み合わせだけでなく、
平日は価格の安い「発泡酒」や「新ジャンル」を飲み、
週末はレギュラービール、あるいはプレミアムビール
を「ごほうび」的に飲むという消費行動については、
以前から指摘されていたことではあります。
ビール系飲料にも人によって味の好みがありますから、
スーパードライが好きな人は淡麗も好きということに
なるのでしょう。
さて、こうした消費者の購買履歴データだけを
‘縦に’分析してしまうと、当然ながら
平日飲んでる淡麗の消費量のほうが、
スーパードライよりも多いという明白な結果に
なります。
したがって、「消費量」だけを見ると
この消費者は、
「淡麗のロイヤルユーザー」
と判定されてしまうわけです。
ところが、購買履歴データとWebアクセスログデータ、
SNSデータをユーザー単位で統合しシングルソースデータ
にして‘横’に分析すると別のことが見えてきます。
例えば、淡麗のロイヤルユーザーと判定された
消費者のサイト閲覧状況を見てみると、
アサヒのWebサイトにはしばしば訪問し、
キャンペーンにも応募している一方、
キリンのWebサイトにはまったく行っていない。
また、SNS投稿では、
「日曜夜にゆっくりスーパードライを楽しんだ」
などと、スーパードライには
よく言及しているけど、淡麗にはほとんど
書いていないということがわかったのだそうです。
このシングルソースデータの分析からは、
上記消費者が本当に好きなのはスーパードライであり、
淡麗は(おそらく、経済的な理由から)代替品として
平日に飲んでいるのだという(より確からしい)推測が
可能になりますね。
ロイヤルティは、
・行動的ロイヤルティ(消費量、購入金額に基づくもの)
・心理的ロイヤルティ(どの程度好きかに基づくもの)
の2区分で分析することもありますが、
この区分で見ると、上記消費者については
以下のような分析ができるわけです。
・淡麗に対しては行動的ロイヤルティは高いが、
心理的ロイヤルティは高くない。
・スーパードライに対する行動的ロイヤルティは
低いが心理的ロイヤルティは高い。
こうした深い分析は、購買履歴データだけでは困難であり、
WebアクセスログデータやSNSデータと統合するからこそ
可能になるのがおわかりになりますよね。
シングルソース化されたビッグデータの分析からは、
以前とは比較にならないほど多くのインサイト(洞察)
をもたらしてくれるのは間違いありません。
「ビッグデータ」
と呼ぶにふさわしいボリュームがありました。
しかし、これまでとは異なる
「今」のビッグデータの特徴は、
消費者一人ひとりを識別できるIDキーによって、
・販売履歴
・アクセスログデータ
・コールセンターへの問合せ履歴
・SNSでのアクション履歴
などを統合して、
分析できる可能性が拓けたことでしょう。
つまり、消費者の商品情報の獲得から、
購入意思決定、商品の利用、感想・評価、その共有まで
一連の消費者行動のデータを「横」に眺めることが
可能になったのです。
こうした「今」のビッグデータに対して
「データマイニング」
を実行する際には、従来の「直線型」ではない、
「循環型マーケティング」の理論と戦略を
前提とする必要があります。
------------------------
今日は、2012年11月2日にIBM箱崎本社で
行なわれた、
「ビッグデータ時代を勝ち抜くための
データマイニング活用セミナー」
に登壇された、
清水聰氏(慶應義塾大学教授)
のお話のエッセンスを簡単にご紹介しましょう。
(私見も入っていますのでご了承ください)
今までのデータマイニングが対象としてきた
ビッグデータとしては、
・小売業の購買履歴データ(POS)
・Webのアクセスログデータ
などがありました。
これらは、基本的に「データフォーマット」が
決まっていて、基本的にコード化が可能なもの。
(商品分類コードとかが最初からあるわけです)
つまり同質で定量的なデータなものでした。
データは大量だけど、データとしては扱いやすい。
一方、今のビッグデータは上記の
「同質・定量的データ」
だけでなく、コールセンターに寄せられる
意見・苦情・要望等のデータ、
およびSNS上の投稿のデータといった、
データフォーマットが固定しにくく、
コード化も難しい、
「異質・定性的データ」
が加わり、しかも、ユーザーのID情報などによって
一人ひとりにすべてのデータが紐付けられたものです。
つまり、多様なデータが顧客単位で統合されている
のが今のビッグデータ。
(私自身も実際の業務で取り組んでいますが、
当然ながら、統合作業は簡単なものではありません。)
こうした、顧客単位でデータが統合されているものを
「シングルソース(のデータ)」
と専門的には呼びます。
顧客一人(シングル)ひとりが、
全ての情報・データの源(source)
となっているからですね。
さて、従来のビッグデータを対象とする
データマイニングでは、
・販売履歴データ
・Webアクセスログデータ
など、個別に存在している
ひとまとまりのデータをそれぞれ
別個に分析していました。
つまり、いわばデータを「縦」にだけ
眺めていたということになります。
このデータマイニングは主に、
新たな仮説発見を狙ったものであり、
ともかくデータを回すことで、
優良顧客(セグメント)
の発見(識別)などで、
成果を上げてきたわけです。
しかし、しょせん消費者行動の一部分を
切り取ってみているだけなので、
セグメンテーション
を行なうのがせいぜい。
・消費者は、ある状況において
どのような反応をするのか
・どのような働きかけをすれば、
こちらの期待する反応をしてくれるのか
といった消費者行動の深い理解や、
予測モデルの構築には限界があったのです。
しかし、
「シングルソースデータ」
として扱える「今」のビッグデータ対象の
データマイニングでは、
・消費者行動のより深い理解
・消費者の反応(購買や離脱など)予測モデル構築
が可能となります。
購買履歴データでは、
何をいつ、いくらで買ったか(行動)
を把握できるのみ。
しかし、その人のアクセスログデータから、
・その商品を購入する前にアクセスしたサイト・情報
が、さらに、その人のSNSの投稿データからは、
・なぜその商品を買ったのか(理由)
・商品を使ってみて満足してるか(感想・評価)
・商品について、他者にはどんなことを話したか(共有)
も併せて把握できるかもしれないからです。
すなわち、今のビッグデータ分析からは、
・購買にいたるまでの行動(商品認知から情報収集)
・購買の場での行動(商品の比較検討・購買決定)
・購買後の行動(商品利用評価・共有)
の一連の消費行動が全体として見えてくるのです。
ただ、今のビッグデータ対象のデータマイニングに
おいて留意しなければならないことがあります。
それは、上記の一連の消費行動はぐるぐると
循環している点です。
一人の消費者が、ある商品についての情報を集め、
比較検討し、購買・利用した後、その評価を他者とも
共有することを通じて、この消費者の再購入に向けて
の新たなサイクルが開始されるからです。
そこで、これまで提唱されてきた、
情報収集→比較検討→購買→消費(利用)→廃棄
という線的な消費行動モデルではなく、
以下のように、循環する消費行動モデルに基づく
分析を行なう必要があります。
情報収集→比較検討→購買→消費(利用)→共有→廃棄
(*共有後は、情報収集に戻る)
なぜなら、個別のデータを「縦」に眺める場合なら、
とりあえず分析してみるというアプローチでもなんとか
なりましたが、統合されたデータを「横」に眺める場合は、
一定の理論・モデルを分析の枠組みとして用いないと、
どこからどう分析していいか混乱するからです。
(これは実感値としてあります)
実のところ、こうした消費行動に立脚する
「循環型マーケティング」
の理論と戦略はまだまだ手探りの段階。
したがって、ともかくも
シングルソースのビッグデータ分析
に取り組みつつ、並行して
循環型マーケティングの理論・戦略
の構築を急ぐ必要があると思われます。
今回はちょっと難しい話になってしまいました。
明日は、清水先生が紹介してくださった面白い事例を
取り上げたいと思います。
「ありそうでなかったもの」
の開発につながるヒント(手がかり)です。
ただ、そのヒントは、
当初は平凡な発見にしか思えないことが多い。
そのヒントについて深く、ディープに掘り下げ、
具体的な商品コンセプトに役立つ
「ディープインサイト」
へと仕立て上げる必要があります。
------------------
文具・オフィス家具メーカーのプラスが
今年(2012年)1月に発売した新しいハサミ、
「フィットカットカーブ」
のシリーズ(3タイプ、全16アイテム)が、
好調な売れ行き。
8ヶ月で異例の160万本を販売しています。
同社としては、
「10年後のスタンダードとなる圧倒的No.1商品を目指した」
とのことですが、狙い通りスタンダードの地位を
確保できそうな勢いです。
さて、業務用の特殊なハサミはさておき、
汎用的に使われるハサミは、百均でも買える、
ありふれたコモディティのひとつ。
もはや技術革新の余地はそれほどなさそうですし、
どれを買っても大差はないように思います。
そんな現状において、フットカットカーブは、
どのような「インサイト」に基づいて
開発されたのでしょうか?
販促会議(2012.12)の記事によれば、
プラスでは、
家庭でのはさみの利用状況
についてのアンケート調査を
約2700人を対象に実施しました。
その結果、ハサミに対する要望として
多かったのが、
「切れ味」
に関するものでした。
具体的には以下のような要望です。
・切れ味が持続して欲しい(21%)
・負担なく軽く切りたい(6%)
・メンテナンスして永く使いたい(5%)
これらの要望、こういっちゃ失礼ですが、
ごく平凡な要望ですよね。
ぱっと見の企業側の反応としては、
永く使ってればどうしても切れ味が
落ちてくるのは仕方ない。
買い換えるか、刃を研ぎなおすとか
してもらうしかないよねぇ~
みたいなところでしょうか。
しかし、プラスさんとしては、
意外な結果だったようです。
同社のハサミの「切れ味」には、
自信を持っていたからです。
そこで、ヒアリング調査を実施して、
利用実態を掘り下げたところ新たな発見が。
それは、紙以外の多様なもの、
つまり、
プラスチック、ビニール、ダンボール、
布、観葉植物
などを切ることにも使われていたこと。
紙以外の比率はなんと92%でした。
確かに、家庭では1本のハサミでいろいろ
切りますね。切る対象に合わせて、
いちいち専用のハサミを用意しないものです。
私も、観葉植物の剪定に普通のハサミを
使っています。
また、ビニールやダンボールとかだと、
なかなかうまく切れなかったという体験が
確かにある。
プラスではこれらの調査を踏まえ、
「いろいろなものがスパッと切れるハサミ」
の開発に着手しました。
そして、丸くカーブした刃を持ち、
硬いものから柔らかいものまでしっかり切れる
「フィットカットカーブ」
が完成し、ヒット商品となったわけです。
この商品の場合、
「硬いもの、柔らかいもの、なんでもスパッと
切れるハサミが必要とされているのでは?」
というのが
「ディープインサイト」
だと言えますよね。
ただ単に
「よく切れるハサミが必要とされている」
という「浅いインサイト」からは、
フィットカットカーブは生まれていない
でしょう。
今のハサミはそもそも結構切れ味がいい。
それなのに、こんな要望が出てくるのはなぜだろう?
と疑問を持ち、さらに利用実態を深く調べることで、
「紙以外のいろんなものを切ろうとするから、
うまく切れないこともあるんだ!」
「だから、いろんなものがスパッと切れるハサミが
歓迎されるのでは?」
という気づき=発見につながったのでしょう。
ヒット商品を生むためには、
一見、平凡で何気ないことに目を留め、
「なぜだろう」と疑問を持ち、
深く掘り下げてみる必要がありそうですね。
*フィットカットカーブの詳細については、
販促会議(2012.12)を参考にしました。
【ご報告】
私が代表を務めます(有)シャープマインドは、
このたび(株)ジェネシスコミュニケーション(代表:杉田裕一)
の出資を受け、ジェネシスコミュニケーショングループの一員と
しての活動を開始します。
-----------------
ジェネシスコミュニケーショングループにおける、
シャープマインドの主たる機能・役割は、新たなマーケティング
コミュニケーションの研究開発、およびマーケティングスタッフの
ナレッジ、スキル向上です。
*ピンでお受けできる仕事、すなわち研修・セミナー講師や
執筆などについては、従来どおりシャープマインドで
直接お引き受けいたします。
*マーケティングリサーチ、マーコム施策、Webサイト開発など、
組織対応が必要なものはジェネシスグループとして受けさせて
いただきます。
------------------
今回、このような形での活動を行なうことにした理由としては、
1.なんでも一人ベースでやるのは寂しくなった(笑)
2.マーケティングが高度化・複雑化したため、
ナレッジやノウハウを共有し、高めあえる、ある程度固定的な
組織としての対応が必要。
の2点があります。
今後ともよろしくお願いします。
-----------------
早速ですが、ジェネシスコミュニケーショングループとしての
活動第一弾として、「新・顧客創造マーケティング研究会」を
発足いたします。フェイスブックページを開設しましたので、
ぜひ「いいね」お願いします。
こちらでは、マーケティングコミュニケーション関連の
情報をご提供していきます。
-----------------
【ご案内】
リアルセッション(第1期)の参加者募集します!
ご興味ある方はぜひご応募ください。
●新・顧客創造マーケティング研究会
●研究会の趣旨
新・顧客創造マーケティング研究会は、
消費者が大きな影響力を手にしたソーシャルメディア時代に
おいて、見込み客・顧客との良好な関係の形成を目的とする
マーケティングのあり方について考え、議論する場・機会と
して発足しました。
今後、長期的に運営継続し、その時々で注目されている
様々なトピックを取り上げていく予定です。
運営主体は、シャープマインドおよびジェネシスグループです。
*シャープマインドは、マーケティングリサーチの企画・実行、
ブランディング、およびマーコム戦略のコンサルティング、
Webサイト企画・設計などを強みとしています。
また、心理学の知見をマーケティングに活用し、
顧客心理を深く洞察する「マーケティング心理学」の体系化に
取り組んでいます。
*ジェネシスコミュニケーショングループは、
「私たちは顧客を増やす提案をします」というスローガンを掲げ、
様々な業界の企業に対して、マスマーケティングから、
ダイレクトマーケティング、ソーシャルメディアマーケティングも
含む、各種マーケティングサービスをワンストップで提供している
マーケティング会社です。
*シャープマインドは、ジェネシスコミュニケーションの
グループ会社として、新たなマーケティングコミュニケーションの
研究開発や、マーケティングスタッフのナレッジ、スキル向上を
担当しています。
●リアルセッション(第1期)テーマ
これからのマーケティングのメインストリームになるか?
「インバウンドマーケティング」徹底研究!
●参加資格・定員
*一般事業会社のマーケティング担当の方
*1社最大2名様まで出席可能です。
*定員:最大10社程度
*マーケティング(広告、販促関連)、経営・マーケティングコンサルティング
の方は、恐縮ながらご遠慮ください。
*参加希望者多数の場合は抽選とさせていただきます。
(2期以降では優先的にご案内します!)
●開催スケジュール
第1回:2012年11月22日(木) インバウンドマーケティングとはいったいナニ?
第2回:2012年12月20日(木) 「つきぬけたコンテンツ」はどう作る?
第3回:2013年01月20日(木) 「リーチ」じゃなくて「ファインダビリティ」
第4回:2013年02月21日(木) インバウンドマーケティングとCRMの熱い関係
第5回:2013年03月21日(木) インバウンドマーケティングの効果はどう測る?
*開催時間は、各回とも19:00‐21:00
*参加企業さま同士の交流を深めるための懇親会も時々企画します。
●リアルセッションの進め方
・まずは松尾より、当日テーマについての基本的な枠組みや具体事例を提示します。
・その後、参加者のディスカッションを通じて理解を深めてまいります。
・ディスカッションの内容は、各回終了後、「議事録」にまとめて参加者に送付します。
●開催場所
ジェネシスコミュニケーション本社
平河町VISIX 2階会議室
〒102-0093
東京都千代田区平河町一丁目5番15
最寄り駅:麹町駅(有楽町線)・半蔵門駅(半蔵門線)
●参加費用
1,000円/人
*会場代として充当させていただきます。
●参加お申し込み先
シャープマインド 松尾順
*eメールの件名に「リアルセッション参加希望」、
本文には、参加されるお名前、所属会社・団体、部署名、
役職、メールアドレス、連絡先電話番号のご記入を
お願いします。
●お申し込み締切
2012年11月11日(日)
以上よろしくお願いします。
「インバウンドマーケティング~
従来型デジタルマーケティング脳を切り替えるためのレッスン」
(株式会社スケダチ 代表取締役 高広伯彦氏)
を聴いてきました。
今回は、高広氏の講演内容に、私の考えも踏まえ、
インバウンドマーケティングとは何かについて
まとめました。(したがって、内容に対する文責は
すべて私にあります)
----------------
「インバウンドマーケティング」の主な特徴は、
私の理解では以下の3点になります。
----------
1 対象顧客を探し出し、「ターゲティング」するのではなく、
消費者にとって有益なコンテンツを公開し、見つけてもらい
やすい工夫をして、関心のある消費者に見つけてもらう(get found)
2 近々購買したい人に今すぐの購買を促すだけでなく、
ちょっと関心がある、情報を集めているだけの人も含め、
見込み客(lead)との関係性を確立し、育成していく。
3 上記の目的達成のために、ブログ、動画、ソーシャルメディア、
e-newsletter(メルマガ)、SEM/SEOなど、様々なメディア、ツール
を整合性、一貫性のある形で統合的に活用する。
----------
高広氏も強調していましたが、
インバウンドマーケティングは、
「全く新しい方法」
というわけではありません。
インバウンドマーケティングの核にあるのは、
「ユーザー視点」
です。
そのルーツ(原点)は、
1999年発刊されベストセラーとなった、
セス・ゴーディンの
「パーミションマーケティング」
に遡ることができると高広氏は指摘します。
同書の中で、セス・ゴーディンは、
マスメディア広告は、
消費者(オーディエンス)の生活に
勝手に割り込んでくる
一方的なコミュニケーション
だから嫌われ、アテンション(注目)を
得られにくいと主張し、まず消費者の
「許可(パーミション)」
を得ることから始めるべきだと説いたのでした。
その後、検索エンジンが普及する中、
Googleのリスティング広告、
「AdWords」
では、サイト閲覧者のクリック率に応じて
表示順位が決定される仕組みが採用されましたが、
これは、消費者の当該広告に対する関心の強さ、
すなわち
「支持率」
によって広告の露出度合いが決定されるものであり、
広告が「企業視点」から「ユーザー視点」へと
移行しつつあることを表すものでした。
また、ブログやソーシャルメディアを通じて、
消費者自らが積極的に情報発信し、
消費者同士のつながりを通じて情報共有が
頻繁に行なわれるようになったことから、
マス広告の影響力は弱まっています。
消費者はもはや、
マス広告にあまり依存することなく、
検索エンジンを活用し能動的に情報収集する
と同時に、ソーシャルメディアでつながっている
友人・知人の情報を頼りに、
購買意思決定
を行なうようになっていますね。
このような歴史的背景を踏まえ、
消費者の購買意思決定の変化に対応する
解決策として提唱されたのが
インバウンドマーケティングです。
企業は、ターゲットオーディエンスに対し
マス広告を通じて一方的にメッセージを送る
「アウトバウンドマーケティング」
だけでなく、
「消費者に役に立つ、喜ばれる情報」
をその道のプロとしての企業が、
様々なメディア・ツール活用して公開し、
またその情報を見つかりやすくしておく。
そうすることで、消費者が、
その情報を必要としたときに
「見つけてもらう」
ようにすることが重要なのです。
このため、インバウンドマーケティングで
最も重視されるツールは、
「ブログ」
なのだそうです。
ブログは更新が容易なため、
最新の情報を手軽にアップできることに
加えて、検索エンジンに引っかかりやすく、
また、ソーシャルメディアなどでの共有も
しやすいというメリットがあるからです。
高広氏は、
「ブログなくしてインバウンドマーケティングなし」
と言い切っていました。
さて、インバウンドマーケティングの場合、
適切なコンテンツを提供する目的が
目先の販売(売上)
にだけ向いているのではないことに、
留意する必要があります。
近年のマーケティング、
特にネットマーケティングでは
ターゲットの絞込み(ターゲティング)
が技術的に容易になったため、
すぐに購入しそうな
「熱い見込み客」(hot prospect)
にばかり注力する傾向が強まっています。
一方で、ある製品・サービスに
ちょっと関心を持っただけ、あるいは
情報収集をしているだけの
「ぬるい見込み客」(warm prospect)
を実質的に切り捨てています。
というか、むしろ、
「ぬるい見込み客」
にまで強引に、
今すぐの購入を勧めてしまう
コミュニケーションをやってしまい、
そっぽを向かれることも起きています。
インバウンドマーケティングでは、
ぬるい見込み客も含め、検索エンジンでの検索結果や、
フェイスブック・ツイッターなどで目に留まった
他者の投稿を通じて、まず自社が提供する
「お役に立てるコンテンツ」
に触れてもらうことを目指します。
そして、さらに価値の高い
「プレミアムコンテンツ」
を提供することで、
見込み客のコンタクト情報(メールアドレス等)
を収集する。
その後は、e-newsletter(メルマガ)などを
活用しながら、見込み客との良好な関係を形成
していきます。
また、既存客をリピーター、ロイヤル顧客へと
育成していくのです。
実は、こうした見込み客からロイヤル顧客への
育成を目的とするアプローチは、
「CRM」(Customer Relationship Management)
と考え方が同じ。
この意味でも、インバウンドマーケティングが
全く新しい方法ではないことがおわかりでしょう。
インバウンドマーケティングは、
私に言わせると、
「検索エンジン、ソーシャルメディア時代のCRM」
とも言い換えることができるのではないかと
思っています。
なお、インバウンドマーケティングは、
「コンテンツマーケティング」
ともアプローチが似ていますね。
しかし、コンテンツマーケティングでは、
必ずしも、見込み客を育成することが目的には
なっていません。
この点が、決定的な違いだと言えます。
高広氏は2012年9月、
株式会社マーケティングエンジン
を設立、インバウンドマーケティングに
関するワンストップサービスの提供を開始しており、
その実行環境として、
「Hubspot」
というツールを取り扱っています。
Hubspotは、
・SEO
・ブログ、ソーシャルメディア
・eメールオートメーション
・マーケティング統合分析
など、インバウンドマーケティングを
統合的に実行できる機能を備えています。
消費者に役に立つ有益なコンテンツを提供し、
そのコンテンツを見つけられやすくする。
また、見込み客を育成するプロセスを
効果的・効率的に実行するためには、
多様なメディア・ツールの活用と施策検証の
ためのデータ分析を含む
PDCA(Plan-Do-Check-Action)
を統合的に行なわなければなりません。
Hubspotは、そうしたインバウンドマーケター
のニーズに応えることができる優れたツールと
いうことで、高広氏は日本市場への導入を
推進しているようです。
私自身、Hubspotはぜひとも使ってみたい
と感じました。
高広氏は、講演の最後に、
「ハンターからハーヴェスターへ」
(from Hunter to Harvester)
という言葉を示しました。
これは、従来のように、
顧客を「狩る」ために狙い撃ちする
(ターゲッティング)のではなく、
有益なコンテンツという土壌を整備し、
そこに見込み客の種をまき、
時間をかけて丹念に育てるアプローチへと
切り替えるべきということです。
私もこの主張には完全に同意します。
狩猟型、短期志向のマーケティングは
もう通用しない時代だからです。
多くの企業が今後、
インバウンドマーケティング
へと舵を切ることは間違いないでしょうし、
私もそうなることを望んでいます。
*株式会社マーケティングエンジン
http://mktgengine.jp/
(参考文献)